2009/06/04

お久しぶりです

 長い間続けていると、時々、書く気が起きないというか、書けない時があるのです。書かなくちゃと思ってもネットサーフィンしてみたり、本を読んでしまったり、違うことをやってしまうという……。そんな訳で更新をサボっておりました。ごめんなさい。

 サボっている間にいろいろありましたが、一番ショックだったのはグイン・サーガが未完に終わってしまった、栗本薫さんの早すぎる死です。書きたい事はまだまだあったでしょう、元気であればあと30年書けたでしょう。残念です。
 高校時代から10年くらいは良く読んでいたのです。栗本薫探偵もの(作者と同姓同名の男の子)、伊集院大介探偵もの、グインと魔界水滸伝は、当時発表されているところまで読んでそのまま遠ざかってしまっていました。
 久しぶりに読んだのは、去年の秋、たまたま図書館の新館コーナーで目にした「木蓮荘綺譚」でした。伊集院大介は髪に白いものが混じり初老の域に入っていました。彼も私たちと一緒に年をとっていたんだなぁと思ったものです。その頃栗本薫さんは闘病されていたのですね。
 中島梓さんとして出演されていた、クイズ「ヒントでピント」での才媛ぶりが思い出されます。
 ご冥福をお祈りいたします。

 さて、今年最後になるスミレたちを紹介しましょう。

Sikokusumire シコクスミレ
(2009.05.09静岡県境で撮影)
スミレサイシンの仲間です。

Sakuresumire サクラスミレ
(2009.05.10群馬県で撮影)
スミレの女王と呼ばれる、花が大きく綺麗なスミレです。

Naebakisumire ナエバキスミレ
(2009.05.18群馬県で撮影)
亜高山に生えるオオバキスミレの変種です。

Fuirifumotosumire フイリフモトスミレ
(2009.05.18群馬県で撮影)
葉に白い斑が入っているフモトスミレです。

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2009/05/08

争奪戦

  朝、外が「ギャーギャー」うるさいので、しまったと思いながらカーテンを開けると、飛び立つ3つの影。オナガです。
 庭のカジイチゴが赤く色づき始め、明日が収穫一日目と、楽しみにしていたのですが、先を越されてしまいました。冬場は全く来なかったのに、毎日食べ頃をチェックしに来ていたのでしょう。鳴かなければ気付かなかったのにね。
 今日は先に幾つか赤い実を摘み、今年の初物を味わいました。甘くて子供の頃を思い出す味がします。
 しばらくの間、仲良く苺を楽しみましょうね、オナガさん。
 
 

Ibukisumire イブキスミレ
(2009.05.04長野県で撮影)
群馬県では見られる場所が少ないスミレですが、長野県では見られます。

Otomesumire オトメスミレ
(2009.05.04長野県で撮影)
距(きょ)という花の後ろの突起だけにうっすらと色が残っているタチツボスミレの白花です。

 野鳥の会のメッシュ調査に行ってきました。
 オオルリ、キビタキをばっちり見ることが出来ました。いよいよ夏鳥の季節です。他には、サンショウクイ、アオバト、ツツドリなどの声を聞けました。帰り道の林道を横切る、群馬県の県鳥、ヤマドリにも出くわしました。尾が長くて綺麗な雄でした。
 以下は、出会ったスミレたちです。他の花はまた後日に紹介します。

Marubasumire マルバスミレ
(2009.05.05群馬県で撮影)
葉も花も丸い可愛らしい白いスミレです。

Tisiosumire チシオスミレ
(2009.05.05群馬県で撮影)
スミレの女王と呼ばれるサクラスミレの葉脈が赤くなっているものを血潮スミレと呼びます。

Gennzisumire ゲンジスミレ
(2009.05.05群馬県で撮影)
見に行くのが早かったのか、やっと咲いていた1輪です。

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2009/04/24

レッドクリフPartⅡ観に行ってきました

 昨日からの草彅くんはかわいそうですねぇ。容疑者といわれてTVで報道されて、家宅捜索を受けるほどのことだったのかしら。私が勤めていたような中小企業の会社員だったら上司にお目玉を食らうくらいで済んだでしょうに。謹慎中に心身を癒して、また元気な姿を見せてほしいと思います。

 レディースデイで、「レッドクリフPartⅡ」を観に行ってきました。 クライマックスの‘赤壁の戦い’はさすが、映画館の大きなスクリーンで観ると大迫力です。‘苦肉の’が……‘関羽、義によって曹操を見逃す’が……と言うのは止しておきましょう。我が国の‘忠臣’に色々な描き方があるのと同じということで。
 PartⅠの時に紹介していなかった人について。
 孫権役の俳優さん、精悍な顔立ちですね。
 甘興役の中村獅童さん、日本からの特別出演ということで、日本人らしい最期を見せてくれました。豪傑ぶりも関羽張飛に負けていませんでした。
 曹操は三国志の中で2番目に好きな人物です。演じた方も曹操らしく威厳があって素敵でした。PartⅠの時から川合伸旺さん(時代劇で悪役をされていた方です)に見えてしょうがなかったのは、私だけでしょうね。
 唯一悲しかったのは尚香(あら?演じていたのは少林サッカーで饅頭を作っていた人なのですね。今テレビを観ていて気がつきました)の純朴な青年との再会シーン。累々と横たわる戦死者は、大昔も現在も私たち一般市民の姿……なんていうことも少しだけ考えてしまいました。

 今日の写真は静岡県(2009.04.19撮影)に会いに行ったキスミレと仲間たちです。

Kisumire1_6 キスミレ
こんな風に群生していました。

Kisumire2 野焼きの後に咲き出します。

Nyoisumire ニョイスミレ
紫がかっているのでムラサキコマノツメに近いのかも知れません。

Nioitatitubosumire ニオイタチツボスミレ
花のメリハリがしっかりしています。

Hinasumire2 フイリヒナスミレ
葉に斑が入っています。

Tatitubosumire タチツボスミレ
花に縦線が入っていて珍しかったので、モデルになってもらいました。

Akanesumire アカネスミレ
赤みが強い花の色をしています。

Yamatosimi1 最後に
我が家に同居している
ヤマトシミ
おとなしくモデルになってくれていると思ったら、

Yamatosimi2 食事中だったようです。
障子に穴を開けられてしまいました。
初めて紙を食べた証拠を見られたので、ちょっと嬉しかったです。変ですか?

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2009/04/15

劉備くんとスミレの写真

 レッドクリフPartⅡ公開記念ってことで、また三国志ネタです。
 Yahoo!で紹介されていて、見に行ったらはまってしまいました。
 曹洪の三国志の「三国志漫画劉備くん」
 なんか、懐かしい匂いがするんですよねぇ。小学生の頃、授業中に先生の目を盗んで描いた4コマ漫画を楽しみに見せてもらっているような感じが。
 はちゃめちゃなギャグと設定なのに、不思議といやな感じがしないのです。もちろん三国志演義の通りにお話は進みます。
 関羽Love!な私は曹操とライバル?なんて思えてしまいます。

 今日の写真もスミレです。

Midoritatitubosumire
ミドリタチツボスミレ
(2009.04.11埼玉県で撮影)
タチツボスミレの先祖返りと言われています。
一つ見つけると、周りに何株も見つかることが多いのです。

Midoritatitugosumire2

Hikagesumire

ヒカゲスミレ
(2009.04.11埼玉県で撮影)
葉の表面が焦げ茶色のヒカゲスミレをタカオスミレと言います。
写真のスミレも少し葉が茶色がかっていますね。

Akebonosumire

アケボノスミレ
(2009.04.11埼玉県で撮影)
花が咲く時期は、写真のように葉が丸まっている事が多いです。

Hinasumire

ヒナスミレ
(2009.04.12群馬県で撮影)
優しいピンク色をしたスミレです。

Sumire

スミレ
ただの「スミレ」という名前を持つスミレ。
近所の公園では、こんな色変わりのスミレが咲きます。
(2009.04.15群馬県で撮影)

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2009/04/02

スミレの季節

 家の周りのスミレポイントを確認して歩くのが楽しみな季節になりましたね。

Nozisumire

ノジスミレ(野路菫)
普段自動車で行くスーパーに歩いて行って、工事用の柵で囲われた狭い範囲に群生しているのを見つけました。周りの目を気にしながら怪しく撮した1枚です。新しいポイントの発見ですが、工事現場ですので来年は見られないかも知れません。

 ETC1000円記念で出かけた新潟県と埼玉県で出会ったスミレたちです。

Nagahasisumire

ナガハシスミレ(長嘴菫)
距(きょ)という後ろの部分が長いのが特徴です。
ナガハシスミレでは、距を長いくちばしにたとえていますが、別名テングスミレでは、距を天狗の鼻にたとえています。

Huirihumotosumire

フイリフモトスミレ(斑入り麓菫)
咲いていることを見逃してしまいそうな小さな菫です。
葉に斑が入っているのでフイリフモトスミレになります。

Makinosumire

マキノスミレ(牧野菫)
別名・ホソバスミレ
シハイスミレの変種です。

Eizannsumire

エイザンスミレ(叡山菫)
別名・エゾスミレ
咲立てのエイザンスミレを見つけたら顔を近付けてみて下さい。甘い良い香りがしますよ。

Nagabanosumiresaisinn

ナガバノスミレサイシン(長葉の菫細辛)
私を植物観察好きにしてくれた菫です。

Himesumire

ヒメスミレ(姫菫)
名前の通り小さな菫です。アスファルトの隙間などにも生えるど根性菫です。

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2009/03/27

グイン・サーガ ダイエット

 BSアニメ「タイタニア」が終わりました。これからの展開が面白くなるところで、原作も、この先どうなるの?というところで止まってしまっています。
が、原作者の田中芳樹さんが番組中で続きを書いて下さると言っていたので、楽しみに待つことにしましょう。
 これで夜中のアニメを見なくてよくなると思っていたのですが、次作は「グイン・サーガ」です。アニメになったイシュトヴァーンやナリス様やスカールが見てみたいですね。やっぱりみんなハンサムなんでしょうねぇ。

 二昔以上も前のこと。就職して、お小遣いが自由に使えるようになって、初めてした大人買い(当時そんな言葉は聞いたことがありませんでしたが)が、栗本薫さんの文庫本「グイン・サーガ」でした。毎週5~6冊買って明け方近くまで読みふけり、世界観に酔いました。読み終わる頃には、8キロの減量に成功していました。現在までリバウンドはありません。
 本を読んだことだけではなく、社会人になってお給料をいただくだけの働きをしなければならないという生活の変化も大きかったと思います。今になって思うと、睡眠不足から来る食欲不振+仕事のストレス、ダイエットのつもりでやったことなら、かなりの無茶でした。若かったから出来たことなのでしょう。
 今100冊を超えているグイン・サーガも、当時は40冊弱。そこで、次作を待つ間に熱が冷めて作品から遠ざかってしまいました。また読み返してみたいのですが、またあんな風に酔えるのか、体力と気力がついて行けるのか。手に取ることが怖いような気がするのです。

Katakuri 今日の写真埼玉県で撮したカタクリとコガネネコノメです。

Koganenekonome

Neko 公園で見つけた枯れ草に模様が溶け込んだカムフラージュ猫です。
気持ちよさそうに目をつぶっていますね。

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2009/03/16

雪中の赤い鳥

 赤い小鳥、ベニヒワは10年周期で大量に渡ってくるのだそうです。去年がその年でしたが、今年も各地で見られていました。今年を逃したら来年は見られないかも知れない、と言うことで、土日は去年のリベンジを果たすべく、赤い鳥に会いに福島県に行ってきました。去年は一日中歩き回っても会うことが出来なかったのです。
 土曜日は天候が悪く、吹雪、とは現地の人は言わないのでしょうが、雪の降らない地方に住む者にとって、一面の銀世界、吹き付けるように降る雪はとても冷たく感じます。そんな中でつがいのベニヒワに会うことが出来ました。
 翌日曜は風は吹いていましたが、空は青空。ですが、なかなか小鳥たちが来てくれません。2時間ほど待った頃、ベニヒワとイスカの群れが、どうぞ写真を撮って下さい、とばかりに近くによって大サービスしてくれました。イスカも赤い鳥ですが、くちばしがかみ合っていないという、珍しい特徴を持っています。松ぼっくりの傘をこじ開けて実を食べるのに適した形をしているのです。
 私は小鳥の写真は撮れませんが、ベニヒワ、イスカで検索をかけると、たくさんの写真が見られると思いますので、見てみたい方は検索してみて下さい。

Misumisou

写真は我が家植栽の「ミスミソウ」です。
雪割草の名前で市販されています。
この花が咲くと、家の庭にも春が来た!

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2009/03/06

幸せの青い鳥

 土曜日は栃木県へ行ってきました。珍しく、他のウオッチャーが1人しかいなくて、お目当てのメジロガモをじっくり見ることが出来ました。

 午後は私たちにとっての春の使者、セツブンソウに会いに行きました。今年は暖かい日が多かったせいか春の訪れが早いですね。セツブンソウは盛りを過ぎていました。

 日曜日は県内のレンジャクポイントへ。レンジャクたちの地道な種まきのおかげで広範囲にヤドリギがあり、実をたくさん付けています。
 今年はヒレンジャクに混じってキレンジャクもかなりの数が来ていました。
 150羽ほどの群れが止まっているのを、フィールドスコープで見ていると、突然、ワッと飛び立ちました。オオタカに追い払われたのです。

 午後は埼玉県の公園に行きました。
 ここでの幸運はアリスイを見られたことと、ルリビタキの美しい雄が2メートルの距離まで寄ってきてくれたことです。動くと逃げてしまうから、カメラも出せずに唯々見とれていました。青い鳥って、幸せな気分にさせてくれますね。

Yadorigi1_2今日の写真はヤドリギです。
黄色い実は甘くてネバネバしています。この実を食べたレンジャクたちのフンもネバネバしていて、彼らが飛んでいった先の木の枝にくっついてヤドリギが生えてくるのです。おしりからフンをぶら下げたレンジャクの写真を見たことがありませんか。
最後の一枚はヤドリギの花です。今咲いているということは、実になるまで1年近くかかるのですね。

Yadorigi2_2

Yadorigi3

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2009/02/19

カレー鍋

 月9ドラマを見ていたら、眩しい物を見るとくしゃみが出る、じゃなく、く
しゃみが出そうなときに、眩しい物を見るとくしゃみが出る、と言う話をして
いました。4人に1人はいるそうですから、そうだそうだ!と思った人は大勢
いたのではないでしょうか。私もその四分の一に入っています。今の季節、杉
花粉のせいもあってくしゃみが出て仕方ありません。出したいときには便利な
体質ですね。

 そろそろ鍋の季節も終わりに近付いてきましたね。
 今年の我が家は、流行に乗って市販の鍋つゆを試してばかりでした。去年ま
では水炊きをポン酢で、ということが多かったのですが。
 キムチ鍋、豆乳鍋、寄せ鍋、カレー鍋など。特にカレー鍋、モランボンは和
風だしが利いていて、ハウスは食べ慣れたカレーらしい鍋つゆでした。今日、
3種類目のヱスビー製の物を食べてみる予定です。鍋までカレー味なんて、カ
レー好きなんですね、私を含めた日本人って。

Aosagi 今日の写真はアオサギとカエルです。
水に落としてくわえ直してみたりして、何とか飲み込む努力をしていました
が、獲物が大き過ぎたようで、最後には諦めてしまいました。
アオサギに対してこの大きさと環境はウシガエルのようです。

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2009/02/06

松ぼっくりのバードケーキ

Meziro1 大好きだった「女番社長レナ」のレナ社長が、2月3日未明に亡くなってしま
いました。
猫が見せる可愛いだけじゃない、悪そうな表情や、ずるそうな表情に、スカッ
とする女社長らしいセリフが入ったブログを、毎日楽しみに訪問していまし
た。
会社で飼われていた頃は、女子社員の膝に乗ったり、お世話係の方との楽しい
掛け合い漫才のような日常を見せてくれました。でも、社員の皆さんが帰って
しまうと、独りの夜を過ごしていましたね。
社員と別れて今の飼い主さんに引き取られて、3匹の先住猫たちとも仲良くな
Meziro2 って、おやつをねだったり、こたつに入ったり、日だまりで日向ぼっこしたり
……。穏やかな晩年を過ごせましたね。
社長、安らかに眠って下さい。

今日の写真は、松ぼっくりのバードケーキを食べるメジロです。
松ぼっくりに付けている理由は、ヒヨドリに食べ尽くされないようにするた
め。

Hiyodori1

ヒヨドリは食べにくそうです。

バードケーキのレシピはこちら
・小麦粉 5
・砂糖 1か2
・ラード又は食用油 2
の割合で混ぜてこねるだけ。生のままでOKです。

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2009/01/26

復活

Tugumi1  年明け早々風邪をひき、ん十年ぶりに発熱しました。まさに鬼の霍乱、おか
げで旅行中と併せて4キロ減量しました(すでに半分戻ってしまいました
が)。
 そんなことや、いつものサボり癖でぐずぐずしている間に、今頃の更新にな
ってしまいました。

Tugumi2  さて、年末の旅行はどこへ行ったかというと、小笠原諸島の母島です。東京
から父島まで約25時間、さらに父島から母島まで約2時間半の船旅でした。
 最大の目的は、母島でしか見ることが出来ないメグロです。バードウォッチ
ャーの方はご存じと思いますが、メジロだけではなく、メグロという名前を持
つ小鳥もいるんですよ。ほかに、離島ならではの珍しい植物とガイドブックで
存在を知ったカタマイマイなどです。HP「みけのみちくさ」で少しずつ紹介し
ていきたいと思います。
 
今日の写真は庭のピラカンサ(ヒマラヤトキワサンザシ)の実をを食べに来た
ツグミです。横顔はキリッとしていますが、正面は変な顔ですね。
漫画の「とりぱん」に登場する‘つぐみん’のように、食べ終わってもボーッ
と物思いに耽っています。ヒヨドリ軍団がやって来ると、端に追いやられてし
まいます。

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2008/12/08

今年も行ってきました

Sake  今年も雁に会いに行ってきました。初日は気仙沼方面、穏やかでいい日でした。河口でカモとカモメの仲間を観察しました。初めて遡上した鮭を見ました。

 翌日は朝から寒くて、雁の飛び立ちも爆発的なところを見られず、その後の観察でも、マガン以外の種類を見つけることが出来ませんでした。ハイイロチュウヒの雄が飛んでいるところを見ることが出来ました。

今日の写真はサケとマガンです。

Magann  パソコンの調子が悪くて困ります。

 前々回の再セットアップの後、4回も再セットアップを繰り返しています。下に冷却ファンをおいているのですが、また何時突然動かなくなってしまうかも知れません。

 どうにもならなくなれば買い換えざるを得ないのですが、再セットアップをすると暫くの間は動くんですよねぇ。

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2008/11/27

感謝

 自分でカウンター77777を踏みました。
 キリ番をあまり気にしたことがありませんでしたが、ちょっと嬉しいもので
すね。
 もう一つ嬉しいことがあります。
 私のホームページ「みけのみちくさ」に、陸貝の名前の誤りを指摘するメー
ルをいただきました。メールのやりとりで陸貝の面白さを教えていただきまし
た。来年度はまだ見ていない種類に出会う気満々です。
 同時に名前の同定の難しさを再確認させていただきました。ページを見て下
さった方たちに、誤った情報を提供してしまわないように努力していきたいと
思います。ですが、素人で初心者の同定です。誤りを見つけたら教えて下さ
い。皆さんよろしくお願いします。

 先日BS熱中夜話の三国志特集を見ようと、チャンネルを変えると、ちょっと
時間が早かったようで、アニメをやっていました。
 それで知ったのが「タイタニア」。夜遅くにアニメを放映することは、今で
は珍しくないのでしょうが、旧型人間にとっては??という感じでした。
 主題歌は違いがわかる男(古すぎる!)、錦織健さんが歌い上げているし。
スペースオペラだから、オペラ歌手が歌うのかと、親父ギャグのような納得を
しつつ見入ってしまいました。だって、色とりどりの髪をした5人のハンサム
が、ねちねちとした会議を繰り広げているのですもの。
 絶対的な権力を持つタイタニア一族と、彼らに追われている軽薄そうに見え
るファン・ヒューリック提督。3話目か4話目から見始めたので、追われてい
る理由がわかりませんでしたが、本屋で文庫本を見かけてしまったのです。
「買って、買って」と言われているようで手にしてしまいました。1988年に書
かれたもので、未完であると言うことを知りました。前半の疑問も解け、1冊
目はアニメより話が先に進んでしまいました。今後の興味は自覚を持った提督
がどのように変貌するかです。アニメならではの行動、見た目、声音の変化が
楽しみです。ジュスラン・タイタニアとリー・ツァンチェンの対決も。

Kitamisou1  
今日の写真は「キタミソウ」ゴマノハグサ科
(2008.11.23埼玉県で撮影)
小さな植物で、顔を近付けて目をこらさないと花が咲いていることに気がつか
ないかも知れません。

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2008/11/12

再セットアップ

 今日びっくりしたことがあります。
 春から姿を見せなくなったバードケーキ猫が久しぶりに顔を見せました。松
ぼっくりのバードケーキを下げる頃になるとやってくるのでしょうか。冬鳥み
たいですね。

 パソコンの調子が悪いのをだましだまし使っていたのですが、とうとう動か
なくなってしまいました。予兆があったので、写真などのバックアップは取っ
ておいたのですが、再セットアップは初めて。こうしてブログが書けるように
なるまで、1週間もかかってしまいました。
 Windows xpのインストールから始まって、Ms office、無線Lanの設定、ネッ
トと繋いで、ウィルスバスターのDLとインストール、ホームページビルダー、
そのほかのソフトを入れ直して、試してはやり直しの繰り返しでしたが、何と
か使えるようになりました。
 おばさんでもやれば出来るんですねぇ。
 でも、疲れました。

 「レッドクリフ PartI」を見に行ってきました。
 内容は三国演義で有名な赤壁の戦いですから説明はしません。
 冒頭で手乗りのキレンジャクが出てきて、バードウォッチャー的にはびっく
り。キレンジャクって人に馴れるんですね。
 陣形戦の美しさと、見せ場いっぱいの槍使いの趙雲、舞っているような青龍
偃月刀さばきの関羽、張飛の人間離れした堅さと怪力、英雄豪傑たちの戦いぶ
りは格好良かったです。
 主役の二人の軍師、周瑜は素敵でしたし、目元涼しい孔明は、金城武さんフ
ァンの方なら必見です。
 来年4月公開 PartⅡのクライマックスが今から楽しみです。

Awakoganegiku
今日の写真は
アワコガネギクに止まるイカリモンガ
(2008.11.02群馬県で撮影)
アワコガネギクは泡黄金菊、イカリモンガは碇紋蛾です。
漢字にして見ると、なるほどと思いませんか?羽に碇の模様があるのが分かり
ますか。

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2008/10/28

狂い咲き

 ショッピングモールに行ったら、マンドリンのミニコンサートが行われていました。
「マンドリンのまち朔太郎音楽祭2008」の開催中だったのです。
 子供が喜ぶ‘崖の上のポニョ’、ディズニーの‘星に願いを’、懐かしい映画音楽‘太陽がいっぱい’などを聞かせてもらいました。
 前にも書いたと思いますが、萩原朔太郎は私にとって一番身近な有名人です。彼の事を知る前から、彼の歩いた河原や公園を歩き、橋を渡っていたし、色々な場所で彼の詩碑を見る事が出来るからです。

 *萩原朔太郎とマンドリンの関係はこちらで。――朔太郎さんってなかなかのイケメンなんですよ。
 
Eizannsumire

エイザンスミレ(スミレ科)
(2008.10.22群馬県で撮影)
スミレやタチツボスミレのものは見た事がありますが、エイザンスミレの狂い咲きには、初めて出会いました。
今の季節、ホトケノザなんかが間違えて咲いていますね。

Sennburi_2

センブリ(リンドウ科)
千回振りだしてもまだ苦い、日本固有の生薬です。
小さな花ですが美しいでしょ?

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2008/10/15

鹿の舌か羊の足か

 前回CMの話をして、実家に遊びに行ったら、お茶菓子に出してくれたのです、ナボナ。懐かしいから1つとって置いてくれたのだそうです。確かに、十何年、いや二十何年ぶりかも知れません。そういう事ってあるのですね。
 私が子供の頃の東京土産は、ひよこ、ナボナ、いも羊羹、くず餅が定番でした。ひよこは福岡が本社だそうですが、私にとっては東京のお土産でした。

 秋の山を散策してきました。
 花はヤクシソウ、ナギナタコウジュなど晩秋の花が咲いていました。
 キノコは、ムキタケ、カノシタ、オシロイシメジ、ノボリリュウタケ、ドクツルタケなどが見られました。

Kanosita

カノシタ(カノシタ科)
落ち葉の上にいびつな形で生えています。傘が丸くなく、裏側が針状なので、判りやすいキノコです。甘く、フルーティーな香りがするので、バターで軽く炒めてオムレツにすると美味しいですよ。

Kanosita2

裏側の様子から、日本では鹿の舌(かのした)、フランスではピエ・ド・ムトン(羊の足)と呼ばれています。どちらがイメージに近いでしょう?

Mukitake4

ムキタケ(キシメジ科)
皮がむけるからムキタケ。汁物に入れると、つるん、ぷるん、としていて美味しいキノコです。
毒キノコのツキヨタケと似ているので、慣れていない人はベテランさんに見極めてもらいましょう。
(今日の写真は2008.10.09群馬県で撮影)

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2008/10/06

星になった‘よだか’

 毎年休耕田廻りをしていると、思いがけない珍客に会うことがあります。
 今年は、海の近く谷津干潟では珍しくないけれど、ここでは珍しいセイタカシギがやってきました。ここでは初めて見るマガン。カルガモと一緒に畦で休んでいて、大きさに改めて驚きました。

Yotaka2 今日の写真は
轢かれたヨタカ(ヨタカ目ヨタカ科)
(2008.09.28群馬県で撮影)
注・苦手な人は写真をクリックしないで下さい。
 若い雄だそうです。渡りの途中で通ったのでしょう。低く飛びすぎて交通事故に遭ってしまったのかも知れません。轢かれてからあまり時間は経っていないようでした。なぜなら、掃除屋のカラスに気付かれる前だったから。
 写真を見ると、鷹のような風切り羽根と大きな口が分かります。山で、キョッキョッ、キョッ、キョッ、キョッ……という単調でもの悲しい声を聞いた事がありますが、姿を見たのはこれが初めてでした。初見がこの姿は悲しいです。
 子供の頃、絵本を見て泣いた、宮沢賢治の「よだかの星」を思い出します。ネット検索していて、宮沢賢治作品を読めるサイトを見付けました。著作権が消滅した文学作品を公開しているネット上の図書館・青空文庫です。
 秋の夜長に懐かしい作品を探してみては?Nabena1  
死骸写真だけではなんですので、
ナベナ(マツムシソウ科ナベナ属)
(2008.09.15群馬県で撮影)
 マツムシソウ科と言われてみれば花後の姿は似ています。

 見付けると頭を過ぎってしまうCM、味わい深い棒読みのセリフ。
「ナベナはお菓子のホームラン王です。森の詩もよろしく」(本当はナボナ)
 こんな事を言っていると年がばれますね。
 王監督、長い間お疲れさまでした。

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2008/10/02

痕跡

 きのこ狩りに行ってきました。
 採れたキノコは多い順に、ハナイグチ、シロヌメリイグチ、ヤマイグチ、ナラタケ、クリタケなどです。汁にして美味しくいただきました。

Tumeato  木に刻まれた爪痕は、ツキノワグマのものだそうです。
(2008.09.27群馬県で撮影)

Kurosuzumebati

 丸く掘られた穴の底には、クマが食べ残したクロスズメバチの巣。巣の周りには修復に忙しい蜂たちが飛んでいました。
 クロスズメバチ、NHKの「ダーウィンが来た!」でハチクマに食べられていましたね。

Miyamatutitorimoti

 最後はミヤマツチトリモチ(ツチトリモチ科)
 思いがけない所で出会えました。

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2008/09/20

森のブローチ

 キノコの季節になりましたね。
 今年出会った可愛いキノコの紹介をします。

Fukurotutigaki

フクロツチガキ(ヒメツチグリ科)
このままブローチに出来そうな形と大きさです。
(2008.08.31長野県で撮影)

Tamagotake

タマゴタケ(テングタケ科)
傘が開く前の幼菌です。
カタツムリが付いている所がご愛敬。
良い出汁が出る美味しいキノコです。
(2008.09.07群馬県で撮影)

Benitenngutake_2

  ベニテングタケ(テングタケ科)
赤い傘に白い点々の配色が美しいキノコ。キノコのグッズではお馴染みの姿形ですね。
上のタマゴタケとそっくりですが、こちらは毒キノコ。食べると酷い目に遭います。
白樺林でよく見られるところも、神秘的ですね。
(2008.09.14長野県で撮影)
 

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2008/09/06

なぜか、三国志

 お久しぶりです。
 私は元気にしていました。が、書けない病は相変わらずです。

 テレビを付けていると、映画「次郎長三国志」の宣伝をしていますね。
 時々話題にしている「レッドクリフ」の三国志とは全く違う、幕末から明治にかけて実在した清水の次郎長一家の活躍を描く時代劇です。
 主題歌も懐かしいし、今、映画化するなら納得のいくキャスティングですね。一番楽しみでもあり驚きなのは、癒し系、温水洋一さんの森の石松でしょうか。

 それと、もう一つ。これもこちらで時々話題にしているコナミのRPG「幻想水滸伝」が、13年の時を経てインターネットラジオでドラマ化されました。どんなに弱くても運が無くても使い続けていたビクトール&フリックの登場が楽しみです。

Kumoirinndou1 

それでは前回の日記で、後ほど、とお約束していた花を紹介していきますね。

クモイリンドウ(リンドウ科)
今回の旅で、出会えて一番嬉しかった花です。
本州で見られるトウヤクリンドウと同じと言う説もあるそうです。

Kumomayukinosita1

クモマユキノシタ(ユキノシタ科)
小さなユキノシタ科の植物です。
上のクモイリンドウと同じ場所で撮しました。
飛ばされて転ぶほどの強風の中、しがみつくようにして撮した1枚です。

Iwabukuro1

イワブクロ(ゴマノハグサ科)
この花も高山帯の砂礫地に咲きます。
本州でも何回か出会っていますが、数も状態も今まで見た中で一番でした。

 今日の写真は3枚とも(2008.08.07北海道で撮影)

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2008/08/19

北海道旅行

 夏休みで、北海道旅行へ行ってきました。
 旭川→層雲峡→然別湖→網走→濤沸湖→知床→野付→霧多布→釧路湿原への鳥と花を見るための旅です。
 鳥の初見はヤマゲラ・エゾライチョウ・シマフクロウ・エトピリカです。
 花は後ほど画像と共に紹介していきたいと思います。

Pennginn

写真は超有名、旭山動物園の水中を飛ぶペンギンです。
(2008.0806北海道で撮影)

Kapibara_2

カピバラさん。
(2008.0806北海道で撮影)
最近、図書館で写真集を見てラブリィさを再確認。確認してみたい方は本の著者ホームページ「カピバラ大好き」へどうぞ。

Simafukurou

最後の写真は釧路空港のシマフクロウのオブジェ。
(2008.0811北海道で撮影)
夜だったのでなかなかの雰囲気がありますね。羽を広げた方は高さ3m、幅5mだそうです。ちゃんとオショロコマを捕まえています。

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2008/08/05

高い山のニョロニョロ達

Hakusennnazuna1 今日の写真はハクセンナズナ。
標高が高い山に行かないと会えない植物です。
ナズナという名前から春の七草のナズナの大きさを想像していましたが、想像を超える大きさにビックリ。図鑑で見る印象と実際に見るのとの違いを久しぶりに感じました。
(2008.07.30長野県で撮影)

Hakusennnazuna2
この花のニョロニョロに見えるものは、長く伸びたおしべです。

Ozesou2

もう一つ、こちらも高くて特定の場所に行かなくては会えないオゼソウ。
緑色で地味ですが、たくさん咲いているので目立ちます。
(2008.07.13群馬県で撮影)

Usagigiku

最後の写真はウサギギク。
なぜ、ウサギギクを選んだのか。
見付けるたびに「ウナギイヌだ!」と呼んでいたので。
幼稚園の頃、秘密のアッコちゃんのコンパクトを買ってもらいました。
コンパクトを開けると角度で絵が変わるシールが貼ってあったような……。
シェーッ!もやったし、バカボンパパの年齢も超えました。
赤塚不二夫さんのご冥福をお祈りします。
(2008.07.30長野県で撮影)

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2008/07/27

アラフォー世代

around 40、この言葉が今年の流行語大賞に選ばれるかどうかはわかりませんが、同世代の私にとっては気になる言葉です。バブル全盛期、ディスコ、ボディコン、海外旅行、親父ギャルなどなど、私が若かった頃のテレビの向こう側の女性達は、現在どのように過ごしているのか、と。
そう、それはテレビの向こう側の話。普通の容姿で地味に生きていた一般女子の私には、アッシー君やメッシー君はいなかったし、流行に乗ったワンレングスだって、3年B組!!にしか見えなかったかも(それはお前だけだという突っ込みOK)。
それでも、高い就職率という時代の恩恵を受けさせたもらいました。勤めていた会社の民事再生法の適用、なんていうバブル崩壊も経験させてもらいましたが、こうしてお気楽に生きている所が、アラフォー世代なのかな。
昨日ドラマ「ROOKIES」の最終回を見ました。平均年齢は何歳なんだろう、あの格好で試合に出られるのか、という突っ込みどころ満載の暑苦しいほどの青春ドラマでした。嫌いじゃないですねぇ、懐かしくて。昔はああいう青春ドラマ、よくあったんです。中村雅俊先生なんかの。でも、一番心を惹かれたのは、登場人物の名字でした。阿仁屋、御子柴、若菜、湯舟、新庄、川藤……プロ野球が熱かった時代を思い出させてくれませんか。

Noibara2

今日の写真はピンクの野ばらです。
ノイバラは白色が多いのですが、たまにピンクがかった花を咲かせるものがあります。レア物を見付けたような嬉しさがあります。

Karafutoibara1

次の写真はカラフトイバラ。北海道と長野県、群馬県の一部で見る事が出来ます。
(2008.07.06長野県で撮影)

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2008/07/15

うり坊

Uribou1 県内、某高原の駐車場。先客の足下にゴソゴソ動く茶色い影。
犬の散歩かと思ったら、野生のうり坊だと聞いてびっくり。人を恐れることなく、イノシシらしくブヒブヒと地面に鼻先を突っ込んでエサを探していました。そんなに痩せているように見えなかったから、親とはぐれたばかりだったのか、親は人が恐くて遠くで見守っていたのか。用を済ませて駐車場に戻った時はいなくなっていました。お母さんが迎えにきてくれたのなら良いですね。

Uribou2_2 

初めて見た野生のイノシシがうり坊だなんてラッキーでした。
これで、本州の大型野生動物ウオッチングは制覇です。
あとは、北海道のヒグマ……会いたくないですねぇ。
(2008.07.14群馬県で撮影)

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2008/07/07

深い森の妖精ニョロニョロ

今日は七夕なのに雨模様で残念ですね。

Himenuyourann ヒメムヨウラン(ラン科サカネラン属)
目立たない色と大きさから見逃してしまうかも知れません。針葉樹林内に生える葉緑素を持たない腐生植物です。

Sakanerann1 サカネラン(ラン科サカネラン属)
ニョロニョロキングが現れた!!と、思うぐらいの大きさにビックリ。
図鑑で受けた印象と実物との違いに驚かされました。食べ終わったとうもろこしの芯を、立てた位の大きさでしょうか。

Oomuzuao3_2最後は、空色の羽根、ミンクのコートをまとったようなふわふわそうな胸元、ゴージャスな櫛形の飾り(触覚)、シックなエンジ色の肩飾りと脚。Oomizuao2
森の貴婦人(!?)、オオミズアオです。
おいでよどうぶつの森で、今の季節、夜の木に止まっているヤママユガの仲間です。似ていますか? 
今日の写真は(2008.06.21,22長野県で撮影)

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2008/06/20

落とし文

 落とし文を辞書を引くと、「政治批判など公然とは言えないことを書いて、人目につきやすい所に落としておく文書。落書(らくしょ)。」と、書かれています。
 その文に似た形に巻いた葉を落とす虫の名前もオトシブミです。

Higenagaotosibumi2

 落とすタイプ
 中には卵が産み付けられていて、ゆりかご&食べ物になります。

Himekobuotisubumi2  
 ぶら下げておくタイプ

Higenagaotosibumi1

 落とすタイプの制作者はこちら
 ヒゲナガオトシブミ(同定が不確かです)

Himekobuotosibumi1
 

ぶら下げておくタイプの制作者はこちら
 ヒメコブオトシブミ(同定が不確かです)

Otosibumi1

 ついでに普通のオトシブミ
 今日の写真は(2008.06.07~15群馬県で撮影)

 ちょっと前にニコニコ動画の「幻想三国志」のことを書いたのを覚えていますか?   
 あの時、「三國志9」と「幻想水滸伝」を元に作られたオリジナルストーリーと書いていましたが、その後、「スーパーロボット対戦」と「十二国記」の登場人物も参戦しました。
 私は三国志と幻想水滸伝しか分かりませんが、それでも面白さは変わりません。作者さんの構成力、キャラクターの掴み方などが素敵で週1回の楽しみになっています。
      
 三国志といえば、この秋、ジョンウー監督の「レッドクリフ」が公開されるそうですね。
赤壁の戦いは(演義が元であれば)、苦肉の策、連環の計、など見所がいっぱいです。周瑜(トニー・レオン)、諸葛亮(金城武)の軍師対決は美しそう。

 アクションシーンに定評がある監督が、どのように見せてくれるのか今から楽しみです。

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2008/06/12

森の妖精ニョロニョロ

Azumasiraitosou1   ごめんなさい。
 全然更新出来ませんでした。
 こうして見に来て下さる方がいるのが分かっているのに、書けませんでした。
 写真は色々撮っているのに、書けませんでした。
 わかっちゃいるのにやめられない、ちょっと違いますね。
 明日からは、明日こそは、という感覚で、逃避していました。
 お察しの通り、ダイエットや日記は続けられないタイプです。その私が、このブログをこれだけ続けられているのは奇蹟に近いのです。申し訳ありませんが、逃避モードを脱出するまで、もう少し時間を下さい。

                                                                           
Azumasiraitosou2

 今日の写真はムーミン谷のニョロニョロのようなアズマシライトソウです。
 (2008.05.21埼玉県で撮影)
 薄暗い林床にひっそりと群生している様子は森の妖精のようです。

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2008/05/21

5周年

 ホームページ「みけのみちくさ」を始めて丸5年、今日から6年目に入りました。
 開設当時は今のような写真図鑑風ではなく、花の写真を載せた旅行日記のようなものでした。そして、冬に書く事がなくなっちゃうかも、と、始めたのが、稲作が登場するお話「みちくさ」です。作中の喫茶店、「月の光」のマスターが開設したブログが、ここ、〔月の光〕だより。だから、こちらの管理人はマスターの絹になっているのです。行き当たりばったりでやってきたから、ややこしいことになっちゃってます。この適当さがだらだら続いている秘訣なのかも知れませんので、このままやっていこうと思います。
 

Kazaguruma1

 今日の写真は「カザグルマ」
 (2008.05.18群馬県で撮影)
 今の季節、園芸種のクレマチスが庭を彩っていますね。カザグルマは、その原種です。
 〔月の光〕だよりの常連さんは、私が色々な所に出掛けている事をご存じの事と思います。それでも出会う事がなかったお花です。見る事が難しくなってしまった理由は、土地開発、盗掘など。
 写真のお花は個人宅の裏山、案内して下さった家の方が、長年に渡って大切に見守ってきたものです。

Kazaguruma2

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2008/05/14

コウガイビル

Kougaibiru1  水たまりの中から銀杏の葉形の頭をもたげて、左右にゆらゆら揺れている姿がとってもユーモラスだったので、モデルになってもらいました。全長15センチほどでした。
 ヒルという名前が付いていますが、綺麗な川底の石をひっくり返すとくっついているプラナリアに近い仲間だそうです。ミミズやナメクジなどを食べる肉食性。頭をもたげて獲物の気配を探っていたのでしょうか。人の血は吸わないそうですが、ミミズを食べるのとどっちが恐いかしら。

Kougaibiru2

 コウガイって?
 公害?口外?何となく口蓋というイメージを持っていましたが、正解は笄(こうがい)なのだそうです。笄という昔の女性の髪飾りに銀杏の葉形の頭の形が似ているからなんですって。
 ちょっとイメージ回復しました?
(2008.05.12群馬県で撮影)

Gennzisumire0  

  上記のような写真が苦手な方のためのお口直しにスミレの写真を。
 盛りは過ぎていましたが、思ってもいなかった所での出会いに声をあげてしまいました。
 ゲンジスミレ
(2008.05.12群馬県で撮影)

Miyamasumire0

 咲き始めたばかりの
 ミヤマスミレ
(2008.05.12群馬県で撮影)

 
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2008/05/09

ちょっと前のアキバ写真小僧よりも……

Himegifutyou1  今日の写真は、春の一時期しか会う事が出来ない、昆虫界の春の妖精、ヒメギフチョウです。
(2008.05.06群馬県で撮影)

 ちょうど、調査をしている人たちに出会って、運が良いと言われて観察に混ぜていただいて、撮した写真です。10人位いたでしょうか、ぐるりと取り囲んで写真を撮っても飛んで逃げる事が出来ないんですね、2頭でくっついている時って。

Himegifutyou2

 その後の愛の結晶は、緑色の小さな真珠のようです。

Himegifutyou3

 最後の写真は、羽を広げた姿です。
(2008.04.27長野県で撮影)

 と、ここで終わる所ですが、マイミクさんからショックな情報をもらいました。
 ヒメギフチョウ観察の帰り道、もう少しで咲きそうなヤマシャクヤクを見付けました。目立つ所にあったので、無事を願いながら帰ったのですが、7日には盗掘されていたそうです。酷い事をする。どうして山の花をそのままにしておいてくれないのでしょう。可哀想に。

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2008/05/04

交雑するスミレたち

  自分では見付けにくい交雑種のスミレを教えていただきました。
 別種類のスミレが近くに生えると、両方の特徴を持つスミレのハーフが生まれる事があり、見つかった場所や特徴などから名前が付けられています。今日の写真は2008.04.20長野県で撮影。

Suwasumire_12   

 スワスミレ

エイザンスミレ×ヒカゲスミレ
 葉の形に両種の特徴が混ざって出ていますね。花の見た目はヒカゲスミレに似ていますが、香りはエイザンスミレと同じ甘い匂いでした。

 

Hiratukasumire_4

ヒラツカスミレ

 ヒゴスミレ×エイザンスミレ
 この個体は、葉はヒゴスミレ、花はエイザンスミレの特徴が出ています。

Marubatatitubosumire_4

マルバタチツボスミレ

 タチツボスミレ×ニオイタチツボスミレ
 この個体は、花の色はタチツボスミレ、花の形はニオイタチツボスミレの特徴が出ています。香りは、感じる事が出来ませんでした。

 

Yakimannzyuu_4

最後は、県外でも売っているかしら?
 上州焼き饅頭味スナック
 小さな焼き饅頭を思わせる形のコーンスナックです。塩味が強く、本物とはちょっと味のイメージが違いますが、スナック菓子としては美味しいと思います。

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2008/04/25

新潟の花たち

 4月19日、新潟県に行って来ました。
 雪解け直後の新潟は群馬県では見られない花たちがいっぱいでした。
Kosinokobaimo_2
コシノコバイモ
カイコバイモよりも大きな花です。
Azumasiroganesou_2
アズマシロガネソウ
シックな柄が素敵じゃないですか?この旅で一番のお気に入りになりました。
Oobakisumire_2
オオバキスミレ
一面に咲く黄色いスミレは春そのものです。
Anamasumire_2
アナマスミレ
海岸に適応した葉が厚いスミレです。
Isosumire2_3
イソスミレ
花が大きく、華やかな印象のスミレです。


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2008/04/19

ど根性スミレ

Himesumire
Ariakesumire
Sumire
Hinasumire
Eizannsumire
 何年か前に流行りましたねぇ。アスファルトの隙間に生えた、ど根性大根、その他、ど根性な植物たち。
 スミレでど根性といえば、このヒメスミレでしょう。こういう場所で見る事が多いのです。興味がない人には、咲いている事にも気が付かないかも知れない、花も草丈も小さいスミレです。
 今日の写真は、散歩コースで毎年チェックしている、ヒメスミレ・アリアケスミレ・スミレと、県内の里山で出会ったヒナスミレとエイザンスミレです。

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2008/04/11

幻想三国志

Sirokitunenosakazuki1
 にはまっています。
 って何だ?という方へ。
 三国志の世界に幻想水滸伝の登場人物が迷い込んでしまう、ニコニコ動画の「幻想三国志」です。コーエーのシミュレーションゲーム「三國志9」とコナミのロールプレイングゲーム「幻想水滸伝」を元に作られたオリジナルストーリーで、両作品の登場人物が、あのキャラならああいう行動をとるに違いない、いや、とらないんじゃないかな、と想像をしながら見られる人にお勧めの紙芝居風動画です。
 この動画で、馬超と呂布が好きになりました。

 三国志は英雄豪傑が活躍する三国演義。
 幻想水滸伝は水滸伝ではなく、グッドエンディングを見るために108人の仲間を集める、ドラゴンも出るし魔法も使うファンタジー。これ、10年ほど前のゲームですが当時ずいぶんやり込みました。大好きだった傭兵コンビが出ているのも嬉しい。現在はPSPで遊べるそうです。

 今日の写真は「シロキツネノサカズキ」(2008.03.30新潟県で撮影)
 こういう変で美しいものに出会えるから、自然観察は止められません。
 ベニチャワンタケ科の小さなキノコです。狐の杯なんて、素敵な名前をもらいましたね。

Sanngokusi
 今日2枚目の写真は「人形劇三国志」(2008.04.10群馬県で撮影)
 今日の表題にちなんで。
 チョコエッグファンには定評がある海洋堂のフィギュアです。3~4年前にコンビニで見付けて飛びつきました。315円、ライチ味一口ゼリーのおまけの食頑です。どっちがおまけだ、と突っ込まないように。
 関羽雲長(右) 諸葛亮孔明(左) 曹操孟徳(後)
 この3体を手に入れたくて、コンビニで見付けるたびに購入しました。今回撮影のために組み立ててみましたが、着物の模様から持ち物まで、大変美しい出来に改めて驚きました。

 人形劇三国志は1982~84年NHKで放映されました。
 切っ掛けは、好きな俳優さんが登場人物の声優をするから見てみようというものでしたが、見始めたら人形達の美しさに魅了されてしまいました。

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2008/04/05

花の山

Oomisumisou
 日曜日、新潟県の角田山に行ってきました。
 県内各地から乗り合わせて30人、登山の後は日帰り温泉、寺泊の角上で海産物のお土産タイムがある、初めてのツアー参加でした。
 標高は481メートルと低い山ですが、海岸0メートルから登るため、坂の上り下りが私にはきつく、まだ筋肉痛が残っています。花好きには有名な山なので、登山者の多さにも驚きました。
【見られた花】オオミスミソウ・カタクリ・オウレン・エンレイソウ・コシノチャルメルソウ・コシノカンアオイ・スミレサイシン・ナガハシスミレ・キクザキイチゲ・ショウジョウバカマ・トキワイカリソウ・ヤマネコノメソウ・キジムシロ・オクチョウジザクラ・アブラチャン・ヒメアオキ・ヤブツバキ・マルバマンサク・ナニワズ 

 そうそう、前回の羽根の落とし主はカケスでした。翼の一部にあの綺麗な模様の羽根があります。
 
 今日の写真は「オオミスミソウ」(2008.03.30新潟県で撮影)
 雪割草の名前で親しまれている早春の花です。
 ご当地本にはこう書かれています。
‘最近、角田山系で盗掘があり、よい花色は少なくなった’
 白い花が多かったのは、そのせいだったのでしょうか。悲しい事ですね。

Naniwazu
 今日2枚目の写真は「ナニワズ」(2008.03.30新潟県で撮影)
 黄色いチンチョウゲみたいな花です。甘酸っぱいのではなく、甘い香りがしました。

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2008/03/29

赤いマフラーか吹き荒ぶ風か

 先日、昭和のアニメソングのテレビを見て、懐かしかったと話しているうちに、この歌の話になりました。
♪吹き荒ぶ風が よく似合う
 タレントさん達は合唱していました。が、知っているような知らないような……。
 自分たちの世代はこっちだから、とPさん。
♪赤いマフラー なびかせて
 確かにこっちの方が知っているし、しっくりくる。
 でも、思い浮かぶ彼らの姿は赤いスーツに黄色いマフラー。赤いマフラーじゃない。

 昨日NHKBSを見てわかりました。
 赤いマフラーは、最初の映画とTVシリーズ(1966~68)で、吹き荒ぶ風は(1979~80)だったのです。1964年生まれの私は、リアルタイムで見るには最初の作品は早すぎで、2期目の作品は歳をとっていたのですね。再放送も漫画も見なかったのかなぁ。
 番組で流された最初の映画とTVシリーズの1作品をPさんは覚えていたそうです(さすが昔は男の子)。2期目の作品も1作品放送され、女性ファンが多い事にも納得(内容がメロドラマ風でした)。
 石ノ森章太郎さんがライフワークとして描いていた作品、読んでみたくなりました。
 肝心な題名を書いていませんでした。サイボーグ009です。
 今夜は仮面ライダーやってます。 

Azumahikigaeru
 今日の写真は「アズマヒキガエル」(2008.03.29群馬県で撮影)

キャンプ場入り口でお出迎え。
あまりの大きさに置物かと思いました。
夫婦仲が良いのはいいんですが(^^;) 
Sihaisunire
 「シハイスミレ」(2008.03.29群馬県で撮影)

小さなスミレですが、綺麗なピンク色です。

Nannnnohanedsyou
 「誰の落とし物でしょう?」(2008.03.29群馬県で撮影)

拾うと嬉しい綺麗な宝物。答えは次回で。

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2008/03/19

春が来た

Katakuri
 3月16日。埼玉県のカタクリ自生地に行って来ました。
 カタクリはまだ蕾。見に来ている人はほとんどいませんでした。
 でも、足下をよく見ると、目立たない小さな花たちが咲き始めています。

Aoisumire
 一番早く咲き始める菫、アオイスミレ。

Senntousou
 オウレンダマシとも呼ばれる小さなセリの仲間セントウソウ。

Kibananoamana
 黄色い花を咲かせるキバナノアマナ。

Himenira
 マッチ棒大のチューリップみたいなヒメニラ。幅広の葉は、ちゃんとニラの匂いがします。

Yamanekonomesou
 実が猫の目に似ているヤマネコノメソウ。

Amana
 小さなチューリップのようなアマナ(これは同じ埼玉県内の別の公園で撮影)。

 紹介した花の他に、アズマイチゲ、ニリンソウ、マルバコンロンソウ、カキドオシも咲き始めていました。セツブンソウは終わりかけでした。
 花の咲き始めが、去年より1週間くらい遅れているようです。

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2008/03/14

雪景色

Yukigesiki
Sunosyu
 日曜日に会津裏磐梯に行ってきました。
 目的は、役10年に一度の周期で多く観察される赤い鳥ベニヒワに会うためだったのですが、残念ながら会えませんでした。
 初めてスノーシューを履きました。足を開いて歩かなくてはならないのが大変ですが、柔らかい雪の上でも忍者みたいに歩ける事が新鮮でした。雪が積もらない所に住んでいる私たちは、一面の雪景色に大喜び。ついはしゃいで歩き回った翌日は全身筋肉痛でした。

 今日の写真は「雪景色&スノーシュー」(2008.03.09福島県で撮影)

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2008/03/04

節分草に思うこと

Setubunnsou
 セツブンソウに会いに行ってきました。
 ロープで簡単に遊歩道を分けてあるだけの自然度が高い自生地です。
 先客でマイクロバスで撮影に来た中高年の一団がいました。周りを気にせずに遊歩道に寝そべって動かない事も、長い間立ち止まっていた訳ではないのに写り込むからどけと声を荒げる事も、お年寄りだからしょうがない、もう少し気持ちにゆとりを持って撮せばいいのに、と思う事が出来ます。
 ですが、綺麗に咲いている花の傍に行って写真を撮りたいために、ロープ内に入り込む事だけは止めて下さい。まだ花は咲き始めで、あなたの足の下では、数日後に咲くはずだった花たちが踏みにじられている事をわかって下さい。
 このままでは、自生地がまた1つ無くなってしまいます。
 どうにもいたたまれなくなって、鑑賞もそこそこに、その場所を後にしました。
 花のためにはしなければいけなかったのですが、人生の大先輩方に対して注意をする事が、どうしても出来ませんでした。
 ドラマ(漫画)の「斉藤さん」のように行動するのは難しいことですね。

 悲しい事ですが、稀少植物の自生地は、監視されて入場料がかかるくらいの方がいいのです。せめて、このブログを見てくれた人にはわかっていただきたく、書いてみました。


 今日の写真は「セツブンソウ」(2008.03.02栃木県で撮影)
 草や枯れ葉から、やっと顔を出している小さな花です。木々が起き出す頃には、来年に向けて眠りに入るスプリング・エフェメラルです。

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2008/02/23

恋の歌

Fukuzyusou
 日の出が早くなり、梅や福寿草が咲き始め、鼻がムズムズし始め、庭ではウグイスがさえずりの練習を始めています。
 そして、猫たちも。「ンガァ~、ンガガァ~」って鳴きながら縄張りを歩き回っています。人にとっては耳障りで迷惑な鳴き声ですが、彼らにとっては身も細るような恋の歌なんですよねぇ。

 今日の写真は「フクジュソウ」(2008.02.15群馬県で撮影)
 庭に咲いた福寿草です。

Neko2
 今日2枚目の写真は「新顔」(2008.02.14群馬県で撮影)
 新顔の恋の歌うたいです。酷く汚れていますね。日だまりで寝ている時も、時々寝言のように「ンガガァ~」って鳴いています。カメラを睨む眼光は、横綱朝青龍のよう。
 
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2008/02/15

激写!?これがバードケーキ猫だ!

Birdkakecat
 2月9日は渡良瀬遊水池で鷲鷹定点調査に参加しました。遊水池を9カ所で同時刻に観察し、鷲鷹がどのくらい飛ぶのか調べるのです。
 いつもは夕方近くに、ハイイロチュウヒを見る為だけに訪れるだけなので、10時から12時30分まで15分ごとに真剣に鷲鷹の姿を探すことは貴重な体験でした。
 私たちが観察した地点で見られた鷲鷹はトビ、ノスリ、チュウヒ、ハイイロチュウヒ、ミサゴでした。ミサゴがナマズを食べている様子を観察出来ました。最後の15分、観察のご褒美のように、ハイイロチュウヒのオスが、ずいぶん長い間目の前で飛翔してくれました。


 今日の写真は「バードケーキ猫」(2008.02.06群馬県で撮影)
 この子が前回紹介したバードケーキ猫です。
 えさ台に乗って、松ぼっくりのバードケーキに猫パンチを繰り出していました。拾い食いだけでは物足りなかったのですね。この後、台に乗れないように場所を移動したことは言うまでもありません。

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2008/02/05

バードケーキ猫

Yuzu

Zyamu
 chick庭ではスズメがパンくずを、ジョウビタキとヒヨドリがピラカンサスの実を、メジロがミカンを食べに来ます。ピラカンサスの実は今頃にならないと食べに来ません。あまり美味しくない非常食なのかも知れませんね。
 例の松ぼっくりのバードケーキ、下の方からケーキが剥がれ落ちています。風のせいかと思っていたら、ウグイスが止まって食べているのを確認しました。可愛いheart04

 今は、猫も恋の季節。家の庭にも出会いを求めて、新顔の猫たちがやって来ます。小柄で鯖虎+白柄の猫が来ていました。鳥のえさ台の下で不審な動きをしています。しばらく観察していると、何をしているのかわかりました。ウグイスが落としたバードケーキのくずを拾って食べていたのです。小麦粉+砂糖+ラードを捏ねて固めた物ですから、栄養価は高いはずですが、猫が食べるなんて思いませんでした。「つぐみん」より悲哀感が漂いますね。もちろん、庭を縄張りにしている‘みみげ’に、凄い勢いで追い払われてしまいました。

*「つぐみん」=マンガ「とりぱん」に登場する、他の鳥たちに追い立てられるツグミ。小さな幸せを感じる姿がとても可愛いのです。
  
 今日の写真は「ゆず&ジャム」(2008.02.02群馬県で撮影)
 庭でなったゆずは、金柑かカラタチの実くらいの大きさでした。去年の夏、カラハナソウに覆われてしまったのを(カラハナソウを切るのは可哀想だからと)、放っておいたせいかも知れません。
 1㎏ほどありましたが、種や色が悪い皮などを除いて、使えた量は500グラムほどでした。出来上がったジャムは小さなビンに3本。砂糖をかなり入れましたが、すっぱ~い。
 韓国で親しまれている、ゆず茶にして飲んでみます。

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今日からココログでも絵文字が使えるようになりました。遊んでみましたが、いかが?

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2008/01/30

珍鳥三昧

Nekomo
 今年に入ってからのバードウォッチングは、珍鳥との出会いに恵まれています。
 尾の上げ方が可愛いオジロビタキ、今度は雪景色で見てみたいアオシギ、黄色い線が目立つカラフトムシクイ、手持ちの図鑑には載っていないほど珍しいコノドジロムシクイ。どの鳥も、どんなにたくさんのレンズを向けられても、シャッター音が凄くても、全然気にしていない様子です。嫌だったら飛んでいってしまいもすものね。
 姿を確認したい方はネット検索してみて下さい。綺麗な写真を載せている人がたくさんいますよ。
 自分もその一員でありながら、100人を越えて集まる様子は、一般の公園利用者には恐いものがあるだろうと思います。バードウォッチャーの皆さん、鳥や人に迷惑をかけないように趣味の世界を楽しみましょうね。

 今日の写真は「猫もバードウォッチング」(2008.01.27群馬県で撮影)
 地元の公園の野鳥観察小屋です。向こう側は池で、窓から鳥を脅かさずに観察出来るようになっています。
 猫たちは小屋を風除けにしているのでしょうか。人が近づくと側に寄って来ます。

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2008/01/25

鳥見とナマズ

Matubokkkuri2
Matubakkuri
 日曜日、渡良瀬遊水池方面で鳥見をしてきました。
 多々良沼ではコハクチョウとアメリカコハクチョウの勉強。違いは、くちばしの黄色の部分が多いかほとんど無いかなのだそうです。
 板倉の田んぼでは、ミヤマガラスの群れの中からコクマルガラスを探しました。残念なことに淡色型は見られませんでした。
 最後は遊水池でハイイロチュウヒ。こちらはバッチリ見られました。今回、猛禽類だけでも8種類見られました。
 鳥見もそうですが、この日の目的はもう一つあります。ナマズを食べることです。
 え!?ナマズなんて!
 何て言わないで。アユやウナギよりも癖が無く、淡泊で上品なお味なのです。
 毎年行っているお店は新装開店で予約出来ず、館林うどん「本丸」でナマズの天ぷら付き釜揚げうどんをいただきました。うどんも天ぷらも、待っている間に出される三桝屋の「麦落雁」もとても美味しいですよ。

見られた鳥の記録
【県 名】 群馬県・栃木県・埼玉県
【市町村】 邑楽町・館林市・板倉町・藤岡町・北川辺町
【場 所】 多々良沼・田んぼ・遊水池
【年月日】 2008年1月20日(日)
【時 刻】 10:30~17:00
【天 候】 晴
【観察者】 新春群馬鳥見オフ
【環 境】 湖沼・田んぼ
【観察種】
1. カイツブリ 20. オオタカ 39. セグロセキレイ
2. カンムリカイツブリ 21. ノスリ 40. タヒバリ
3. カワウ 22. ハイイロチュウヒ 41. ヒヨドリ
4. ダイサギ 23. チュウヒ 42. モズ
5. コサギ 24. コチョウゲンボウ 43. ツグミ
6. アオサギ 25. チョウゲンボウ 44. ウグイス
7. オオハクチョウ 26. オオバン 45. シジュウカラ
8. コハクチョウ 27. イカルチドリ 46. ホオジロ
9. マガモ 28. シロチドリ 47. カシラダカ
10. カルガモ 29. ケリ 48. アオジ
11. コガモ 30. オオハシシギ 49. カワラヒワ
12. トモエガモ 31. ツルシギ 50. ベニマシコ
13. ヨシガモ 32. クサシギ 51. スズメ
14. オカヨシガモ 33. セグロカモメ 52. ムクドリ
15. ヒドリガモ 34. キジバト 53. コクマルガラス
16. オナガガモ 35. カワセミ 54. ミヤマガラス
17. ミコアイサ 36. コゲラ 55. ハシボソガラス
18. ミサゴ 37. ヒバリ 56. ハシブトガラス
19. トビ 38. ハクセキレイ

 今日の写真は「松ぼっくりのバードケーキ」(2008.01.21群馬県で撮影)
 高崎の観音山バードハウスで小鳥が突いているのを見て真似してみたくなりました。
 松ぼっくりの松かさの間に、バードケーキを埋め込んだものを、木の枝に吊してみました。まだ誰も来てくれません。

 高崎の観音山バードハウスの開館日は、土曜、日曜、祭日の午前10時~午後3時です。暖かい室内で野鳥観察をすることが出来ます。

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2008/01/19

届きました!

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 去年の末から存在を知りました。毎日通っていたら、社長業引退、長年お世話をしていた社員との別れ(淡々としたお二人の姿に涙しました)、不安いっぱいの新生活、優しく接してくれる新しい家族と徐々に馴染んでいく様子……。リアルタイムでドラマを見せていただいて、気高いあなたのお姿にメロメロなのです。「女番社長レナ」様。
 
 今日の写真は「カレンダー&ハガキ」(2008.01.19群馬県で撮影)
 注文して2日で届きました。社長の目ぢからに励まされながら1年間を過ごせそうです。

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2008/01/18

鉄道博物館

Sinnkannsenn1
 山陰に出掛ける前の空き時間に「鉄道博物館」に行きました。
 広い建物の中に、見たことがない古い時代から、子供の頃家族で乗った思い出のある懐かしいものまで、本物の鉄道車両が展示してありました。中で飲食しても良い車両もあって、駅弁を広げて楽しむ人の姿も見られました。
 他には、子供達が喜びそうな運転体験が出来るシミュレータ、鉄道模型のジオラマ、鉄チャンには涙もの(?)の資料や備品の展示もされていました。
 ビューデッキでは実際に走っている新幹線を見ることが出来、外では、これも子供達が喜びそうな、実際に乗れるミニシャトル列車が走っていました。
 入館料は¥1000。鉄道素人の私でも十分楽しめました。

 今日の写真は「初代新幹線」(2007.12.28埼玉県で撮影)
 懐かしいですね。新幹線というと、この丸い鼻の顔を思い出します。おかいこ(いもむし)っぽくて可愛くありませんか?
 今の新幹線はどんどん流線型になって、益々未来の乗り物っぽくなっていますね。

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2008/01/10

ねずみ男駅

Kitarou1
Kitarou2
 明けましておめでとうございます。
 
 年末はバードウォッチング旅行をしてきました。今回は、山陰に行って来ました。見られたらいいなと思っていた、ホシムクドリ、クロツラヘラサギを見ることが出来ました。特にホシムクドリは、15~20羽の群れで大根の葉の上を飛び跳ねている姿が可愛かったです。
 旅行から戻った正月中は、オジロビタキ(初見)、ヘラサギ、ハイイロチュウヒに会いに行ってきました。
 鳥の写真が無くてごめんなさい。姿を確かめたい方は名前で検索してみて下さいね。素敵な写真を載せているサイトさんがたくさんありますよ。ホシムクドリはとても綺麗なので、興味がある方は検索してみて下さい。

Nezumiotoko1
 今日の写真は「鬼太郎列車&ねずみ男駅」(2007.12.29鳥取県で撮影)
 米子駅と境港駅を結ぶJR境線の駅には、別名として妖怪の名前付けられているのだそうです。境港駅は「鬼太郎駅」、写真の撮影場所、米子駅は「ねずみ男駅」でした。絵が描かれている列車は鬼太郎・ねずみ男・猫娘・目玉おやじの4種類があるそうです。鬼太郎列車にしか会えなかったのが残念でした。
 
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2007/12/28

今年のベストモデル

Siraneaoi0
 明日から出掛けるため、今年最後の更新になります。
 皆さん、良いお年をお迎え下さい。

 今日の写真は「シラネアオイ」(2007.04.30新潟県で撮影)
 今年最後の写真は、今年のベストモデルです。ゴールデンウイークの佐渡島は初めて見る規模と密度のお花畑でした。いつの日か、もう一度行きたいです。

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2007/12/24

台風の傷跡

Dourohouraku
 今朝は、日が差しているのにみぞれが降っていて、青い空に薄く虹が架かっていました。なんだか良いものを見たような、得をした気分になりました。夜は綺麗な満月ですね。

 今日の写真は「台風の傷跡」(2007.12.22群馬県で撮影)
 春2回と冬1回行うメッシュ調査(野鳥の種類と数の)に行くと、調査予定の林道に下記のような看板が。

  前面通行止 
この先 道路崩壊の為
当分の間前面通行止めとなります。
御協力を御願いします。

Rakuseki
 落ち葉を集めていた地元の人に、自動車はダメだけど歩きなら行けると教えてもらい、先に進むことにしました。
 道は荒れていましたが、車が通らないぶん、マヒワ、イカル、ツグミ、カシラダカの群れを見たり、ヤマドリのつがいを見たり、今までにない充実した調査が出来ました。
 終了地点まであと700メートルの所で先に進むのを諦めた理由がこの写真です。
 下の写真の落石までは通れましたが、上の写真の道路崩落の所で断念しました。
 
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2007/12/21

奥日光

Okunikkou
 今日の写真は「奥日光」(2007.12.16栃木県で撮影)
 オオワシとアオシギ狙いで出掛けましたが、雪のため視界が悪く、オオワシを断念。アオシギにも振られてしまいました。
 滅多に雪が降らない所に住んでいると、こんな雪景色の中でアオシギに会ってみたいのです。
 紅葉の季節の混雑が嘘のように雪に覆われていました。

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2007/12/14

双子座流星群

Kitamisou1
 今夜は‘双子座流星群’が良く見られるそうです。寒くなってきましたが、外に出てみましょうか。

 今日の写真は「キタミソウ」(2007.11.25埼玉県で撮影)
 樺太や択捉島などのきわめて寒冷なツンドラ地帯に生息する植物です。ですが、埼玉県熊本県で確認されています。ツンドラの夏と同じ気温になるこの季節に花を咲かせます。
 植物観察者の間では有名で、現地には大きな看板が立っていました。探し回っても見つかりません、花は1㎜ほど、葉はご覧のように細く小さく、存在に気付かないほどでした。
 皆さん、わかりますか?

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2007/12/07

雁の飛び立ち

Oohakityou1
 12月1日、2日と毎年恒例の雁の飛び立ちを見に、伊豆沼&蕪栗沼に行って来ました。夜明けと共に沼からエサ場に飛び立つ雁を観察するのです。頭上を飛んでいく数万のガン達の鳴き声と羽音は毎年でも包まれたくなる重低音です。この数万のガン達の胃袋を満たす落ち穂があるなんて、それも凄いことですね。

 今日の写真は「オオハクチョウ」(2007.12.02宮城県で撮影)
 一緒にいると大きさが違いますが、オオハクチョウとコハクチョウは、くちばしの黄色い部分の模様が尖っているか丸いかで見分ける事が出来ます。
 冬の使者ハクチョウ到来、などというニュース映像を見ると、ハクチョウには目もくれず、足下を泳ぐカモの中に珍しい種類がいないか探してしまいます。バードウォッチャーの方は思い当たるのでは?

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2007/11/30

猛禽系

 明日から「椿三十郎」が公開されますね。
 前作では、素浪人姿の三船敏郎さんが懐に手を入れて歩く後ろ姿に惚れました。衝撃のラストシーンと、モノクロ映画だったのに赤と白の椿の鮮やかさが印象に残っています。
 今回主演の織田裕二さんは、真似ではない新しい素浪人姿姿を見せてくれそうで楽しみです。自然観察好きの私は、人の顔が動物に見えてしょうがないことがあるのです。キリッとした表情をした時の織田裕二さんはオオタカやハヤブサを連想してしまいます。同じ猛禽でもフクロウやオオワシではなくて。猛禽類のような精悍な表情と、笑った時のいたずら小僧のような笑顔のギャップが私にとっての彼の魅力です。
 若手では、松山ケンイチさんが楽しみですね。初めて見たのはデスノート、次はセクシーボイス&ロボなのです。同一人物とは思えない演じ分けが出来る彼に興味津々です。

Fuyuitigo1
 今日の写真は「フユイチゴ」(2007.10.28静岡県で撮影)
 この季節になる美味しいイチゴだそうです。関東地方南部・新潟県以西で見られます。群馬で見られるコバノフユイチゴは食べたことがあります。こちらは美味しいですから、フユイチゴも美味しいでしょう。

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2007/11/23

もう一人の手代

Tumadurohyoumonn1
 今日は明日放送の「しゃばけ」の番組HPを見てきたら面白かったのでもう一度。
 前回手代の一人、仁吉(白沢)の谷原さんのことを書いたので、今日はもう一人の手代佐助(犬神)の高杉亘さんのことを書きましょう。私は、彼のように、これをやらせたらこの人が一番という存在感がある役者さんが好きです。どんな人かって?踊る大走査線シリーズでSATの隊長を演じていた人です。強面で大男っていう所はうちの稲さんにも似ていますしねぇ。
 その他、屏風のぞきの宮迫博之さん、獺の山田花子さん達の特殊メイクも必見です。鈴彦姫の早乙女太一さんは流し目王子という方らしいですよ。

 嫌いな人にはごめんなさいね。
 今日の写真は「ツマグヒョウモンの幼虫」(2007.11.19群馬県で撮影)
 冬を越せるのかが心配な暖かい地方の蝶です。今年初めて我が家で繁殖しました。見た目はグロテスクですが、綺麗な蝶になります。パンジーなどで見かけたら、観察してみて下さい。

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2007/11/19

県警ヘリがぐるぐる

Isogiku2
 日曜日に邑楽郡を通って渡良瀬遊水池に行って来ました。
 途中、カモ類やシギチ類の様子を見に立ち寄った多々良沼公園の駐車場にお巡りさんが10人くらい集合していました。
 何か事件があったのでしょうか。
 それにしては公園の立ち入りは制限されていません。
 みんなでお昼、何ていう感じでもなさそうです。
 園内では、お巡りさんを見ることもなく、カモ達や(パンダガモが見られなかったのが残念)、ハマシギ、アオアシシギがみんなで漁をしている様子を観察出来ました。
 のんびり観察していると、上空をヘリコプターが何度も旋回しています。Pさんが確認すると(バードウォッチャーは双眼鏡を持っているのです)、群馬県警と書いてあります。すっかり忘れていたさっきのお巡りさん達のことを思い出しました。
 やっぱり何かあったのか?
 地元の探鳥会をしている人たちに聞いて理由がわかりました。
 逃げたイノシシを探していたのです。
 もう山に帰ったのでは?と聞いてみると平地なので帰る山がないとのことです。
 そういえば、前日ニュースで見ていました。
 踏切を渡ろうとしていた主婦が線路を突進してきたイノシシにぶつかったとか。
 群馬県だということは覚えていましたが、ここだったとは。
 神戸などでは住宅地を徘徊しているというのに大騒ぎをしたものですね。
 謎が解けたあとは板倉町でミヤマガラス、コクマルガラスを探し、夕方に遊水池へ。お目当てのハイイロチュウヒを見ることが出来ました。
 
 今日も「風林火山」。
 長尾影虎が厩橋城にやってきましたね。ただそれが書きたかっただけだったりします(郷土愛!)。現在の厩橋城跡には県庁があり、高い建物がほとんど無い前橋市では、どこからでも見られる道標となっています。
 初めてガグト謙信を見た時、戦国武将のゲームから抜け出してきたか!と思いましたが、今では、有りかもと思うようになりました。今度はぜひ、エリマキトカゲのような衣装に身を包み「エロイム・イッサエム」か、黒の着流し姿で「円月殺法」と言って欲しいですねぇ。

 今日の写真は「イソギク」(2007.10.29静岡県で撮影)
 園芸品としても馴染みがありますね。

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2007/11/16

最近気になる章介さん

Komikannsou1
 主人公の山本勘助が宗像コーチだなんて嫌!と、期待をしないで見始めた大河ドラマ「風林火山」でしたが、思いの外はまってしまい、気が付くと終盤になってしまいました。歳をとると一年って早いのです。
 ドラマの中、今川義元を演じていた谷原章介さんが気になります。私が気になる人にしては珍しくイケメンです。谷原義元の最期は白塗りお歯黒ではなかったこともかえって新鮮でした。
 谷原さん、ちょっと前までは、お金持ちでハンサムでいい人で非の打ち所がないのに、何故か最後はヒロインに選んでもらえない可哀想な役が多かったように思いますが、ここの所、情報番組の司会やクイズ出演、演じる役も金髪好きのエロ親父や妖怪まで、色々挑戦されていますね。今度ドラマ化される「しゃばけ」の妖怪手代役は彼にピッタリですよ。

*宗像コーチ=上戸彩ちゃん見たさに見た「エースを狙え!」で内野聖陽さんが演じた役。原作に忠実に作ったから?和服で囲碁を打つ姿に違和感有り。マンガを読んでいないから感じる感想なのでしょう。

 今日の写真は「コミカンソウ」(2007.10.28静岡県で撮影)
 本州、四国、九州、沖縄で普通に見られる小さな草ですが、私は初めて見ました。
 この直径わずか 2.5㎜の実を見てミカンの名を付けるなんて、なんかいいですね。

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2007/11/09

写真を載せない理由

Mimige1
 去年の春は、庭に遊びに来た4匹の仔猫の写真を頻繁に載せていました。今、彼らが来ない訳ではないのです。4匹の内3匹は、かわりばんこにやって来て、撫でられたり、ミルクを飲んだりしていきます。
 写真を載せないのは、写真写りがとっても悪いからなのです。私にとっての彼らは、性格が優しく、人懐っこく、実家の猫たちよりもよっぽど懐いているので、可愛くて仕方ないのですが……。
 と、言うことで久しぶりの‘みみげ’です。来春の収穫を楽しみスナップエンドウを埋めたはずの鉢は、彼女のお気に入りの寝床になってしまいました。春になったら苗を買うことにしましょう。

Mimige2
 今日の写真は「みみげ」(2007.10.30群馬県で撮影)

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2007/11/03

ソナレセンブリ

Sonaresennburi1
 昨日テレビで「三丁目の夕日」を見ました。
 時代は私が生まれるより少し前ですが、懐かしさは共有出来ました。氷を使う冷蔵庫は記憶にないけれど、冷凍室に霜が付きまくりの冷蔵庫は我が家にもありました。オート三輪も道を走っていましたっけ。
 今と昔では生活の様子はずいぶん違っているけれど、人の心はそんなに変わっていないから、若い人たちにも受け入れられて、続編も作られたのでしょうね。 

 今日の写真は「ソナレセンブリ」(2007.10.28静岡県で撮影)
 磯馴千振と書きます。名前の通り海の近くの岩場に生えます。
 この花に会うために静岡県に訪れました。

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2007/10/27

自虐の詩

Sennburi1
 映画「自虐の詩」が今日から公開になります。

 3月28日のブログでこんな風に書いていました。
『「自虐の詩」を読みました。週刊宝石に連載されていた4コママンガの文庫版です。
 なぜか?ずいぶん前にNHKのBSマンガ夜話という番組で、この作品について熱く語っていて、ぜひ読んでみたいと探し回ったことがあったからです。置かれているコーナーもわからず、古本屋でも見つからなかったので、そのままになってしまっていたのが、たまたま書店に並んでいました。
 働かなくてギャンブラーで飲んだくれで、すぐにお膳をひっくり返すダンナに、そこまでしなくても、というくらいに献身的に尽くす幸江さんの物語。
 書店に並んでいた理由は、映画化されるらしく、出演は阿部寛さんと中谷美紀さんだそうです。読みながら映画のキャストとダブって仕方ありませんでした。どんな映画になるのでしょうね。
 上下巻のうち、上巻だけ買ったのですが、下巻も読みたくなってしまいました。最後は幸江さんに幸せが訪れるのでしょうか。』

 下巻は、幸江さんの少女時代の思い出を中心に進んでいきます。
 子供の頃も貧乏で、ひとりぼっちだった幸江さんにも友達が出来ます。彼女より厳しい状況に置かれているのに弱みを見せない熊本さんを、作中では「孤高の人」と称しています。この熊本さんがとても素敵なのですが、幸江さんは彼女を酷い形で裏切ってしまうのです。
 母になる幸江さんに、20年ぶりに熊本さんから連絡が……。
 映画でこのシーンまで描かれているのでしょうか。描かれていたら感動のラストになることでしょう。
 マンガの最後はこんな言葉で結ばれています。
 「人生には 明らかに意味がある」


 今日の写真は「センブリ」(2007.10.20東京都で撮影)
 晩秋に咲く、小さく清楚な花です。
 昔から胃健薬として使われていました。紅茶のティーバッグのように布袋に入れて、千回振り出しても苦いことから千振りというそうです。
 葉をちょっとかじってみても苦いですよ。

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2007/10/16

みぃちゃんの現在

Mii1
 毎日必ず見に行ってしまうブログがあります。
 「はっちゃん日記」と「女番社長レナ」両方とも猫好きの方には定番のサイトですよね。
 はっちゃんは成猫なのにとっても可愛くて、おかんさんが書き込むコメントに癒されます。
 レナ社長はわがまま放題、これぞ猫そのもの!目元が他人とは思えない(実家のみけにそっくり)な所が好きなのです。
 
 今日の写真は「みぃちゃん」(2003.04.22群馬県で撮影)
 mixiの表紙にしている写真です。写真に釣られて(?)訪問して下さる方も多い、彼女にとって奇跡的な1枚です。

Mii2
 今日2枚目の写真も「みぃちゃん」(2007.10.09群馬県で撮影)
 今のみぃちゃんです。

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2007/10/10

稲作の宗教観

Tumagurohyoumonn1
「ダンナは神様なんて信じてねえんでしょうねぇ」
「そうだよね、自分しか信じないタイプかも」
 好き勝手なことをいう半次と妙ちゃん。
「そうともかぎらねぇぜ。俺は天に神様がいるなんて思っちゃいねぇが、信じる人間が多いってことは、何かがあるんだろうって事は認めてる」
「何ですかい?そりゃ」
「あの、おねえがクリスチャンなんだから」
「昌子姉さんが?」
「不思議だろ」
 人には思いがけない一面があるものだ。
「へぇ。……ボクも教会に行ってみようかな」
 友達の誘いにのった所をみると、今の妙ちゃんの心は、信仰に頼りたい状態なのかも知れない。
「宗教もいいが、飲み込まれちまわねぇように気を付けろよ。俺たち一般庶民は、神や仏にゃ、困った時に頼るくれぇがちょうど良いんだから」
 ちょっと違うような気がするが……。

【つぶやき】
 今日の写真は「セイタカアワダチソウとツマグロヒョウモン」(2007.10.08群馬県で撮影)
セイタカアワダチソウは北アメリカ原産の、花の少ない今の季節の貴重な蜜源植物です。
止まっているツマグロヒョウモンは西の蝶で、群馬では見ることが出来ませんでした。今年は我が家のタチツボスミレで幼虫を見ました。段々、温かい所でしか見られなかった虫たちが、群馬でも見られるようになってきました。身近に感じる地球温暖化です。

Tamashigi1
 今日2枚目の写真は「タマシギの父子」(2007.10.08群馬県で撮影・写真提供Pさん)
今年は昨日になって初めて見ることが出来ました。もう、来なくなってしまったのかと心配していたのです。
毎年タマシギの話を書いてきましたから、覚えている方も多いと思いますが、タマシギはオスが子育てをします。このお父さんも、冷たい水に足を浸けながらエサを食べるヒナたちを、寒くなると岸に呼び寄せ、羽根の下に入れて温めてあげていました。
観察記録はこちらをどうぞ。 

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2007/10/05

危険度の違い

Oonannbanngiseru1
「友達だと?どの程度の友達だ」
「高校2年の時の同級生。東京に出て来てるから会おうよって言われて――」
 妙は北海道の出身。
「会いに行ったのか。ずっと音信不通だったのに?」
「うん」
「そりゃぁ、いけませんねぇ、妙ちゃん」
 半次も会話に加わってきた。
「?」
「妖しい勧誘の何者でもねぇな」
「何か売りつけられたりしやせんでしたか?」
「この紙渡されただけだよ。また会ってねって」
「行くのか?」
「約束しちゃったし……」

「あれぇ、こういうアンケート、僕も答えたことあるよ」
 と、妙が注文したマロンパイとミルクティーを運んできたマスターの絹さん。
「何年ぶりかで、友達から電話が掛かってきてね――」
「絹さん、道ばたで外国人に声掛けられたり、駅であなたのために祈らせて下さい、とか言われたことはありやせんか?」
 面白そうに、質問する半次。
「ただで本を渡されたこともあるよ、読んでないけど」
「やっぱりな。あんたはそういう顔をしてるからな。俺なんか声掛けられたことねぇぜ」
 今度は稲作。
「僕、悩みがあるように見えるのかなぁ」
「そいつは、ちょっと違うんじゃねぇかと」
 と、半次。
「なになに?」
 続きが聞きたい妙ちゃん。
「絹さんにだったら、ちょっと声掛けてみて、信者になってくれなくても、自分たちの身に危険はおよびやせんが、旦那だったら、虫の居所が悪かったら殴るかも」
「うん、そういうオーラが出てる出てる」
「失礼なことを言うな。虫の居所じゃねぇ、場合によっては、だ」
 ね、という風に、半次は、妙ちゃんと絹さんに目配せをした。

【つぶやき】
 今頃になって言うのも変ですが、インターネットって便利ですね。
 実家から初めて見る野菜をもらいました。母も南国の野菜だと説明されてもらった物で、茹でて食べるようにとのことでした。
 長さ15~20センチで、切ると4角形、角にヒラヒラが着いた実野菜でした。知っている人はこれだけでなんだかわかるのでしょうが、私には何の仲間なのかも見当が付きません。
 「南 野菜」で検索しても、「南 果菜」「南 豆」で検索してもわかりません。次は「豆 フリル」で、「うりずん豆」という名前が出てきましたが、サイトが閉鎖されていました。もう一度「うりずん豆」で検索を掛けて、正体が解りました。
 四角豆(うりずん豆)と呼ばれる熱帯アジア原産のマメ科の植物。沖縄での生産が中心と書かれていました。最近は東京のスーパーでも売られているそうです。名前がわかって食べたうりずん豆は、独特の香りと苦みがある野菜でした。
 インターネットって本当に便利ですね。
 
Oonannbanngiseru2
 今日の写真は「オオナンバンギセル」(2007.08.25山梨県で撮影)
 前回紹介したナンバンギセルと比べると大形で、花びらに細かいフリルがあります。

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2007/10/03

秋の香り

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「いらっしゃいませ、妙ちゃん」
 涼しくなった外の空気と一緒に入って来た妙ちゃん。ほのかな甘い香りも一緒に連れてきた。
「もう金木犀が咲き始めたんだね」
「そういえば良い匂いがしていた。すっかり秋だね、食欲の。新メニューのマロンパイとミルクティーがいいな」
「はい、ありがとうございます」

「妙、昼飯は?」
 と、いつもの席から声を掛けた稲作。隣に半次。二人はケチャップたっぷりの特製ナポリタンを食べている。
「さっきダブルバーガー食べたから、デザート食べに来たんだもん。……今日はカレーじゃないんだ」
「半次が食いたいって言うから作ってもらったんだ。うめえだろ?」
「へぇ」
 強制的に言わされている半次。

 妙ちゃんは、二人と一緒に座らずに、隣のテーブルに着いて紙を広げた。
「どした?」
「汚されると困るから」
 確かに、稲作の食べ方はケチャップを飛ばすかも知れない。
「珍しく勉強か……なんだ?こりゃ」
「友達に誘われたんだけど、今まで考えたこと無かったから、迷っちゃうんだ」

 あなたは神の存在を信じますか?
 それは、出だしだけはキリスト教みたいだけれど、色々な宗教の良い所どりのような、いかにも妖しげな内容だった。

【つぶやき】
 今日の写真は「ナンバンギセル」(2007.10.02群馬県で撮影)
 スーパーで一目惚れして買ってしまいました。寄生相手の細い葉は屋久島薄です。
 県内で野生状態のものを見たくて、色々な場所を探しましたが、見つからず、2005年の東京でした。

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 今日2番目の写真は「ケシガイ」(2007.09.26群馬県で撮影)
 芥子の実のように小さいからケシ貝です。一緒に写っているのは、大きさの比較のために置いた爪楊枝です。

 皆さんは、この小さなカタツムリに気付いたことがありますか。
 小学校の低学年の時、庭で遊んでいて殻だけを見付けたことがあります。手持ちの図鑑には載っていなくて、キセルガイの生まれたてだと思っていました。庭で成長したキセルガイを見たことがなかったのが、ずっと引っ掛かっていて、後にケシガイの存在を知りましたが、見付ける機会がありませんでした。
 今回、買ってきたナンバンギセルの鉢の中で見付けました。
 ケシガイにはニホンケシガイやスジケシガイなどの種類があるそうですが、私には見分けが付けられません。

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2007/09/25

月見酒

Hanaiguti3
「あっ、もう摘んじゃったの」
 積み上げた月見団子の一番上のお団子がない。
「んが?――作りたてがうめぇんだもの」
 ま、いいか。どうせ食べるのだから。
 お団子にすすき、栗に葡萄に柿にさつまいも……。
 今日は中秋の名月。喫茶店〔月の光〕もお月見。
「今日はいいお月見になるね」
 昼に風が吹いていたせいか、夜空はすっかり晴れている。
「ああ、綺麗な月が出てる。地酒をもらったんだ。秋の夜長の一品を作るから飲もうぜ」
「?」
 稲作は、下げてきたレジ袋を持って厨房に入っていった。

「材料を用意してきたから、早いだろ?」
 と、言いながら彼が運んできたのは、刻み葱を浮かべた豆腐ときのこの味噌汁。
 冷や酒で乾杯してから、きのこ汁をいただく。
 ナメコのようなとろみと独特の泥臭い風味が口の中に広がった。 
「美味しい。ナメコ?」
「さっき採ってきたハナイグチとナラブサだ。小さい方がナラブサ、歯触りがシャキシャキしてるだろ」
「うん、これも美味しい」
 たまには二人で月見酒も良い。

【つぶやき】
 23,24日でタカの渡を見に行ってきました。
 23日お昼頃現地に到着。1時間もしないうちに凄い雨が降り始めました。400人近かった見学者のほとんどが帰りましたが、諦めきれずに雨宿りをしていたら雨が止み、帰りは傘を差さずに済みました。見られたのは、サシバとハチクマが数羽。
 24日は午前中いっぱい深い霧でほとんど飛んでくれませんでした。2日間で30羽見られませんでした。ちなみに、今日は1000羽以上飛んだようです。
 午前中、霧が酷かったので急遽植物&キノコ観察モードになりました。1月前だったら、マツムシソウ、クガイソウ、ヨツバヒヨドリの花が見られたでしょう。キノコは、採取禁止なので採れませんでしたが、かなりの量のハナイグチとベニテングタケ、名前の見当が付かない多くのキノコが見られました。
 帰りに寄った道の駅で「ジゴボウ」と書かれたキノコが1パック500円で売られていました。長野ではハナイグチ=ジゴボウなのですね。
 
 今日の写真は「ハナイグチ」(2007.09.24長野県で撮影)
 いくつもの地方名を持つ、愛されているキノコです。

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 今日2枚目の写真は「ベニテングタケ」(2007.09.24長野県で撮影)
 見た目は愛らしいですが、毒キノコなので食べないように。白樺林に赤いキノコ、おとぎの世界みたいですね。

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2007/09/21

まだ若かった頃

Nekonosita1
「珍しいッスねぇ」
 と、半次こと広瀬欧彦。
「なあに?」
「この曲」
 喫茶店〔月の光〕では、大抵ボーカルのないクラシックか軽音楽を流しているが、今日は違う。
「小田和正?」
 応えたのはチョコレートパフェを食べながら、プリントに何かを書き込んでいる妙ちゃん。
「知ってるの?」
「大好き。月9や朝ドラの主題歌歌ってるよね。この曲、声が可愛いね」
「オフコース時代の曲だから。……嬉しいねぇ、こんなに若いファンがいるなんて」
「男の人のファンの方が珍しくない?」
「そ、そうかなぁ」
 最近はそんなことはないと思うけれど。
「どっちにしても、絹さんらしい眠くなりそうな歌ですねぇ」
 あくびを噛み殺しながら言う半次。まだ、疲れが抜けないのか。
「私には新鮮に聞こえる」
「思い出すなぁ、この曲が流行ったのは僕が高校生の頃」
 あの頃、何をしていたのか。勉強と淡い恋愛と――。

「きっと校則きちっと守って7・3分けだったんだろうなぁ」
 後ろから、聞き慣れた低い声。
「稲さん」
「こいつは早いお帰りで」

【つぶやき】
「エッ、エッ」
 という遠慮がちな鳴き声が、来たよ、のあいさつのキジトラ模様の猫‘みみげ’。
 居間の引き戸を開けると、再び「エッ、エッ」(訳:撫でて撫でて!ミルクちょうだい!)
 網戸に両前足をかけ、肉球見せ攻撃。肉球好きとしては我慢出来ません。
 が、彼女の視線は部屋の中から、網戸の上の方へ。その目つきは、美味しそうなスイーツを見せられた女の子のように、うっとり。
 !!
 彼女が見ていたのは、枯れ草色の小さなコカマキリ。
 目の前でカマキリが食べられるところを見たくない。
 こんな時、我が家では、
「ミミ、こっちにおいで、牛乳あげるよ」
 と、台所の出入り口に呼び寄せ、気を逸らせ、Pさんが外に出てカマキリを安全な場所に逃がす、という連係プレーが行われます。

 今日の写真は「ネコノシタ」(2007.08.26神奈川県で撮影)
 砂浜でよく見かけるキク科の植物です。
 名前の由来は葉を触ってみて下さい。猫に舐められたようなザラザラした感触。で、猫の舌です。

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2007/09/13

理想的な寝室

Hototogisu1
「何なんだよ、ここは」
「何でしょう?」
「隠し部屋なんて気味が悪い。拷問部屋か何かか?」
 暗くて狭いこの空間にいることは、稲作にとってそれに近い。
「まぁ、想像力が豊だこと。ここは現代の日本よ。……日本ではあまり普及していないけれど、海外では当たり前のように準備している所もあるわ」
「準備?何の?」
「核戦争」
「これって、核シェルターか」
「ええ、隣の部屋に発電機や貯蔵庫があるけれど、使わなかったみたい。ベッドもジルちゃんが自分で持ち込んだのよ」

 古城の深窓とはいかないから、今の日本では理想的な寝室だ。
 ノストラダムスの予言は外れたけれど、北斗の拳の199X年も過ぎてしまったけれど、明日、核ボタンが押されないとは限らない。もし、核戦争が起こって、俺たちが滅んでいたとしても、彼がいれば……。
 稲作は、瓦礫の中に独り起き立ったジルの姿を想像した。

「もういいでしょ。あなただけは、ここに通して良いと言われているの。私ももうこの部屋には来ないつもりよ」
 ずいぶん用心深い。長い間眠りにつくのだから当然なのだが、稲作の部屋で寝た事は、かなりの我慢があったに違いない。誘拐(泥棒)され掛けるほど危険な寝室だったのだから。
「さぁ、上に戻ってお茶の続きをしましょう。美味しいケーキがあるのよ。あなたの好きなおせんべいも」

【つぶやき】
 朝晩ずいぶん涼しくなりましたね。虫の音もうるさいくらいになりました。
 それにしても、昨日の安倍首相、突然の辞任には驚かされました。誰が後継になるとしても、私たちが安心して暮らせるように力を尽くしてくれる事を期待したいです。
 
 今日の写真は「ホトトギス」(2007.08.25山梨県県で撮影)
 花の形と模様が独特のホトトギスは園芸品としても馴染みがありますね。このホトトギス、草丈が小さいので同定に自信がありません。

Tamagawahototogisu1
 今2枚目日の写真は「タマガワホトトギス」(2007.08.10長野県で撮影)
 こちらは黄色いホトトギスです。

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2007/09/10

隠された部屋

Kusabotann1
「付いてきて」
 麗華は、奥から2番目のワイン棚に触った。
 スイッチがあったのか、棚は静に移動した。
 空間が出来た場所に隠し扉は、無い。
「こっちよ」
 麗華が、壁に着いていた棚の側面に触ると、下の方から音がした。
 棚があった床に、真っ黒な長方形が現れ、どんどん大きくなっていく。
 真っ暗な穴は、人が通れるほどの大きさになると音が止んだ。
「ここで必要なのよ、これ。ここから下は電気が通っていないの」

 コンクリート打ちっ放しの狭い階段を下りて行く。
「何で蝋燭なんだよ、懐中電灯だっていいじゃねぇか」
 稲作は、蝋燭の灯りで踊る自分たちの陰に怯えていた。
「趣味よ。この方が気分が高揚するでしょ」
「するか!」
 怖がっているせいだろうか、階段は、やけに長い。

「これは……」
 ついた先には金属製の重厚な扉。
 麗華が重そうに開けた扉の向こう側も漆黒の闇。
 彼女は慣れた様子で、何ヶ所かの燭台に火を灯した。目が慣れてくると、ぼんやりと中の様子が見えてきた。
 階段と同様コンクリート打ちっ放しの10畳ほどの四角い空間。
 真ん中に、ぽつりと通販で売っているパイプベッドが置かれていて、ジルが眠っている。置かれているのが棺じゃなくて良かった。
 ジルはいつもと変わりない寝顔だ。
 そっと金色の髪に触れてみる。

【つぶやき】
 去年からこのブログをご覧になっている方にはわかると思います。
 何度も写真を載せていた4匹の仔猫たち、デカ、クロ、チビ、ミミゲのその後です。
 デカは、一番先に姿を現さなくなってしまいました。どこかで男を磨いているのでしょうか。
 チビも、デカの後すぐに来なくなってしまいましたが、最近それらしい女の子が遊びに来ます。目元に幼い頃の面影があるような気がするのです。
 クロは、ミミゲと一緒に大きくなるまで遊びに来ていましたが、ここ数ヶ月姿を見せなくなっていました。が、昨日、一回り大きな身体になって顔を見せました。以前のようにミミゲと仲良く寄り添っています。
 ミミゲだけは、ずっと来続けています。が、彼女にも色々ありました。痩せて毛が抜け落ちて、どうしたのかと思っていたら、たった1回だけ2匹の仔猫を連れてきました。でも、翌日から連れてこなくなって、鳴きながら捜し回っていました。可愛い仔猫たちでしたから、もらわれていったのかも知れません。 

Kusabotann2
 今日の写真は「クサボタン」(2007.09.02群馬県で撮影)
 今の季節、山道を車で走っていると出会えます。小さくて目立ちませんが、良く見ると、くるんと巻いた空色の花は可愛いですね。

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2007/09/07

ワインセラー

Mizutonnbo2
「少しは大人になったのね」
「?」
「前のあなただったら、お茶なんか飲まずに捜し回ったでしょ?」
「するか」
 それだけ麗華を信頼しているのだ。
 それに、
‘私が眠るところに立ち会ってくれなくて結構です。どうせ、来るなと言ったって私が眠っているところを見に来るのでしょうから’
 などと言われているから、あまりせっかちに行動出来ない。お喋りな麗華が目覚めたジルに何を言うかわからない。
 そう、来るなと言われてないから、様子を見に来たのだ。

「あなたって本当に分かり易いのよねぇ」
「何が?」
「ソワソワして落ち着きがない。……しょうがないわね、ついていらっしゃい」
 麗華は飾ってあった年代物らしい手持ちの燭台に灯を灯しながら言った。

「何ビクビクしているの?」
 キョロキョロと辺りを見回す稲作に麗華が言った。声がやけに響く。
「何でもねぇ」
 稲作は、暗くて密閉された所が嫌いだ。恐怖症に近いかも……。

 階段を下りると地下はワインセラーになっていた。
「素敵なコレクションでしょう。これも全部譲り受けたのよ」
 素敵かどうかわからないが、凄い量のワインが収納されている。
「持って行かなかったのか」
「旅に出てしまったのよ。世界のどこかに気の向くままに。彼が日本に戻ってきた時は、あなたを会わせたいわ」
 世の中には、稲作などには想像もつかない大金持ちもいる。
「それ、必要あったのか?」
 稲作は、麗華が持っている蝋燭を見ていった。ワインセラーの中は温度調節されていて電気も点く。 
 
【つぶやき】
 台風の風雨は酷かったですね。みなさんは大丈夫でしたか。
 今年も休耕田のシギチ観察をしていますので、興味がおありでしたらHPをご覧下さい

Mizutonnbo1
 今日の写真は「ミズトンボ」(2007.08.25神奈川県で撮影)
 わっ!耳が大きな宇宙人!!みたいな花を咲かせるミズトンボ。日当たりの良い湿地に生えるランの仲間です。

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2007/08/30

薔薇屋敷

Renngesyouma1
 やっぱりここか。
 稲作は、古い洋館の前に立っていた。手に持っているのは、住所をメモした紙切れ。
『TAKAKURA』古びた煉瓦造りの門に、まだ新しい表札が取り付けられている。
 曲がり角から、この洋館が目に入った時、嫌な予感がしたのだ。
 こういう建物で育った者は、こういう場所に安らぎを感じるのだろうか。庭の雰囲気が違うのは、前オーナーの趣味か。初夏の咲き残りなのか、秋の咲き始めなのか、たくさんの薔薇の木が、1,2輪ずつ花を付けている。見たことがあるような草も茫々と茂っている。
 閑静な住宅街に建っている古びた洋館は、東京都心とは思えないほど静な緑に包まれている。

「あんたらしい住まいだな」
 内装は、彼女の店ほど煌びやかではない。これも前オーナーの趣味か。
「素敵でしょ」
 ハーブティーを出しながら、この館の新しい主、クラブ〔Madam☆Rose〕のマダム麗華、こと、高倉京介は言った。どう見ても、年齢不詳の美しい女性にしか見えない。
 店の常連だった帰国するイギリス人から、格安で買い取ったのだそうだ。格安といっても、その日暮らしに近い稲作なんかには考えられない値段なのだろう。
「不味い……けど、懐かしい。庭に茂ってたやつか」
 見たことがある草だと思った。
「レモンバームのお茶よ。飲んだことがあるの?」
「智紘(ちひろ)んちで」
「そう……。ここだったら、光(ひかる)が帰りやすそうだし。智紘も来てくれるかしら」
 麗華は死者を呼び寄せる気なのか。
「変な儀式にでもはまってんじゃねぇだろうな」
 妖しい占い師みたいな風貌の彼女が、妖しい魔術に凝っていると言っても驚きはしない。
「もう、冗談も通じないんだから。……ジルちゃんが気に入ってくれたからよ」

【つぶやき】
今年もシギ・チドリの観察を始めています。内陸の休耕田には珍しいキリアイが1羽見られました。ネットで調べてみると、今年はキリアイがたくさん渡ってきているようで、各地で見られているようです。

 今日の写真は「レンゲショウマ」(2007.08.22群馬県で撮影)
山の中で、蓮の花を吊したような花を咲かせます。

Kakasi1
 今日2枚目の写真は「案山子?」(2007.08.30群馬県で撮影)
稲穂が出始めるとあちこちに立てられます。が、黄昏時などは、スズメより人の方が驚かされます。 

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2007/08/15

チョビとハナコ

Uruppusou1
「ハナコか」
 ライトバンから出てきたのは、以前チョビとお見合いしたグレートデーン・ハールクインのハナコ――だけじゃない。ドアの中から白地に黒の斑模様の足が、1本2本3本4本5本6本……。ハナコと子犬たちは飛び出してきて、チョビに駆け寄った。
 全部で6匹の子犬は、みんなでチョビにじゃれついている。
「おはようございます。ここに来ればチョビに会えると思ったから」
 と、ハナコの飼い主、山田有紀ちゃん。
「いつの間に」
「知らなかったの?チョビは良いパパでしょ?」
 チョビは子犬たちとじゃれ合っている。
「ああ」
「これは凄いね。撫でてもいい?」
「ウウッ」
 子犬を触ろうとする絹さんを威嚇するチョビ。
 絹さんは手を引っ込める。
「お前の子なんか盗るわけねぇだろ」
 しゃがんだ稲作に6匹の子犬が突進し、尻餅を付いた。
「うわっ、やめ――」
 子犬といっても身体が大きい彼らに、稲作は負けそうだ。身体中舐められた上、おしっこまで掛けられている。
「うらやましいねぇ、チョビは君なら安心なんだね」
 チョビとハナコは子供達を稲作にまかせて、身体を寄せ合って久しぶりの再会を喜んでいるようだ。
「先を越されちゃったね、稲さん」


【つぶやき】
今日は62回目の終戦記念日です。
 戦争を知らない私たちは、戦争の愚かさや悲惨さを、テレビでも新聞でも何でも良いから、見て学ばなくてはいけません。両親や祖父母に体験を聞ければ、もっと身近に感じることが出来るでしょう。
桃の味は、HPを開設した頃、私の父の思いでを元に書いた作品です。良かったらご覧になって下さい。
 
 8月6日~8月10日。栂池→乗鞍岳→小蓮華山→白馬岳→鑓ヶ岳→鑓温泉→猿倉のコースで白馬に行ってきました。
 天候に恵まれ雨具を着ることもなく、山小屋宿泊も良い体験になりました。私よりずっと年輩の方々が、元気で歩いているのに、日頃の運動不足も思い知りました。
 お花以外では、シーズンになると組み立て式の宿泊施設を建てて営業する、秘湯鑓温泉の夜の露天風呂は星が降るようでした。
 
見られた花の一部をHPに載せましたので、良かったらご覧になってみて下さい

〔確認出来た花たち〕ハナニガナ・シロバナニガナ・ヤマハハコ・ゴマナ・オタカラコウ・フキユキノシタ・ウサギギク・ミヤマアズマギク・シロウマタンポポ・タカネヤハズハハコ・クロトウヒレン・カンチコウゾリナ・ミヤマコウゾリナ・タカネヨモギ・ミヤマオトコヨモギ・ヒトツバヨモギ・ミヤマアキノキリンソウ・ウスユキソウ・タカネニガナ・マルバダケブキ・オニアザミ・イワギキョウ・チシマギキョウ・トウヤクリンドウ・ミヤマリンドウ・タテヤマリンドウ・ミヤマアケボノソウ・タカネリンドウ・ツルリンドウ・オニシオガマ・ヨツバシオガマ・エゾシオガマ・タカネシオガマ・ミヤマシオガマ(実)・クチバシシオガマ・イブキジャコウソウ・ウルップソウ・テングクワガタ・ミヤマクワガタ・ヒメクワガタ・イワツメクサ・タカネツメクサ・ホソバツメクサ・クモマミミナグサ・タカネナデシコ・シナノナデシコ・アラシグサ・クロクモソウ・ミヤマダイモンジソウ・シコタンソウ・イワオウギ・オヤマノエンドウ(実)・タイツリオウギ・シロウマオウギ・オオレイジンソウ・ヒメイチゲ(実)・モミジカラマツ・ハクサンイチゲ・シナノキンバイ・ミヤマキンポウゲ・トリカブト・ミツバオウレン・ミヤマオダマキ・カラマツソウ・ミヤマカラマツ・ヒメカラマツ(実)・サラシナショウマ・ミヤマツボスミレ・ウスバスミレ・クモマスミレ・キバナノコマノツメ・クロバナロウゲ・オニシモツケ・タカネバラ・ミヤマキンバイ・ミヤマダイコンソウ・コガネイチゴ・ベニバナイチゴ・タテヤマキンバイ・チングルマ・ウラジロナナカマド・ハゴロモグサ・ノウゴウイチゴ(実)・チョウノスケソウ・ゴヨウイチゴ(実)・シモツケソウ・ミヤマホツツジ・アカモノ・シラタマノキ・クロマメノキ・コケモモ・イワヒゲ・ジムカデ・ミネズオウ・ツガザクラ・アオノツガザクラ・オオツガザクラ・イワウメ(実)・ウラシマツツジ(葉)・ハクサンシャクナゲ・オオイタドリ・ウラジロタデ・イブキトラノオ・ムカゴトラノオ・サンカヨウ(実)・キヌガサソウ・シラネアオイ(実)・カワミドリ・ヒメシャジン・ミヤマコゴメグサ・コマクサ・コイワカガミ・リンネソウ・ゴゼンタチバナ・ハクサンコザクラ・ツマトリソウ・イワアカバナ・ムシトリスミレ・ヒメウメバチソウ・コウメバチソウ・ハクサンフウロ・イワベンケイ・ヤマガラシ・オオバミゾホオズキ・オトギリソウ・モウセンゴケ・オオヒョウタンボク・ハリブキ(実)・ムラサキツリバナ・オガラバナ・ズダヤクシュ・クロバナヒキオコシ・タテヤマウツボグサ・ソバナ・ミヤマムラサキ・ヨツバムグラ・キヌタソウ・ミソガワソウ・ヤグルマソウ・ハナチダケサシ・ワタスゲ(実)・ヨブスマソウ・ツリガネニンジン・クガイソウ・ヤマルリトラノオ・ヤグルマソウ・シロウマアサツキ・エゾアジサイ・タマガワホトトギス・ツルアリドオシ・ヤマホタルブクロ・ハクサンオミナエシ・ナツノタムラソウ・ショウジョウバカマ(実)・ユキザサ(実)・オオバタケシマラン(実)・タケシマラン(実)・タカネシュロソウ・イワショウブ・クルマユリ・クロユリ・コバイケイソウ・ヒメイワショウブ・チシマゼキショウ・マイヅルソウ・ノギラン・ネバリノギラン・キンコウカ・ムラサキタカネアオヤギソウ・ツバメオモト(実)・ヤマブキショウマ・コバノトンボソウ・フタバラン・キソチドリ・テガタチドリ・ホソバノキソチドリ・ハクサンチドリ・ヒオウギアヤメ・イワイチョウ・シラネニンジン・ミヤマシシウド・ミヤマセンキュウ・ミヤマウイキョウ・ミヤマゼンコ・オオカサモチ〔計185種〕

 今日の写真は「ウルップソウ」(2007.08.08長野県で撮影)

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2007/08/04

一人と一匹

Tateyamautubogusa1
「おはよう、稲さん。半次くんは?」
 いつも通り、チョビとやって来た稲作。昨日の様子だと今日も一緒だと思ったのに。
「今日は留守番。日頃の不摂生のせいで、あの程度のことで動けなくなっちまったんだ。ま、じっくり鍛えてやるさ」
「壊さない程度にしてやってくれよ。君と彼は身体の出来が違うんだから」
 誰だって、彼のような野生児と一緒にされてはもたない。
「ヤツは俺より若いんだぜ。チョビなんか、もっと爺さんだ」
 ジャブジャブ音を立ててミルクを飲んでいたグレートデーンのチョビは、一瞬飲むのを止め、悪かったな、という目つきで稲作を見る。息がぴったり合った一人と一匹だ。
 と、チョビの落ち着きが無くなり、尻尾を振って、道路の方に行きたがる。
「どした?」

 早朝の喫茶店〔月の光〕の駐車場に、ライトバンが入って来た。
「ワホッ!」
 嬉しそうなチョビ。
 ドアが開き、白地に黒の斑模様の前足が見えた。


【つぶやき】
 毎日足を運んで下さっている皆さん、更新が出来なくてすみません。時々書けなくなることがあるのです。パソコンを開いても、つい他のことをしてしまって、どうしても書けないことがあるのです。ごめんなさい。

 阿久悠さんの追悼番組を見ました。流れる曲のほとんどを知っていました。
 あの時代は、子供も大人も関係ない流行歌があったことを懐かしく思いました。子供だった頃聞いた大人の歌を、大人になった今、もう一度じっくり聞いてみたくなりました。
 
 今日の写真は「タテヤマウツボグサ」(2007.07.29群馬県で撮影)
 見た気がする大きな花を付けるウツボグサです。
 ウツボは、魚のウツボではなく、矢を納めて射手の腰や背につける細長い筒。

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2007/07/20

ワケあり

Isimotisou1
 稲作はこの生活に満足している。将来のための蓄えは……必要ない。
 だが、半次はまだ若い。
 それに――。
「おまえこそ、どうして正業に就かない?」
「あっしも旦那と一緒で」
「向いてない?まともに仕事したことがあるのか?」
「いいえ。型にはまるのが嫌なんで」
「そんなこと言ってると、今に後悔するぜ」
「――」
 腰を揉んでいる指先に、一瞬、筋肉の緊張が伝わってきた。こういう時、相手の気持ちも伝わってくることがある。――無理をしている。
 彼の時代劇のような言葉遣い。育ちの良さを誤魔化しているのだ。立ち居振る舞いにはジルに通じる品の良さがある。
「寝たのか?」
 寝たふりをしている半次こと広瀬欧彦に声を掛けてみた。
 いつか話したくなったら聞いてやる。
 俺の周りには、ワケありのヤツばかりが集まってくる。


【つぶやき】
 長野県内の遊歩道で観察を終えて、駐車場に向かうところでした。音はほとんどしないのに大型の打ち上げ花火のような振動が二回、木々に残っていた水滴が雨のように降ってきました。
 自衛隊の演習か?
 と、思った時、足下が揺れ出しました。しゃがみ込みたくなるような揺れ、駐車場の車も激しく横揺れしていました。車に戻ってラジオを付けて新潟中越沖地震を知りました。
 被災された方々に心からお見舞い申し上げます。  


 今日の写真は「イシモチソウ」(2007.07.01千葉県で撮影)
 葉に小石がくっつくほどだから石持草だそうです。が、小さな草ですから、小さな砂くらいしかくっつかないかも知れませんね。
 モウセンゴケの仲間ですが、花が大きく見た気がします。

Oziroasinagazoumusi1
 今日2枚目の写真は「オジロアシナガゾウムシ」(2007.07.01千葉県で撮影)
 葛に付くパンダ模様のゾウムシです。アゲハの幼虫のように、鳥の糞に擬態しているのでしょうか。

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2007/07/10

向き不向き

Syoukirann2
「旦那」
「なんだ」
「どうしてこんな稼業をしていなさるんで」
 腰を揉まれながら半次が言った。
 稼業――探偵事務所と看板が挙がっているものの、何でもやる便利屋をしないと立ち行かない。最近は元働いていた便利屋の親方に、仕事を回してもらって糊口を凌いでいる。だから、主に肉体労働系だ。
「あ?」
「旦那でしたら、もう少しマシな仕事が出来るんじゃないかと思いやして」
「マシな仕事ってのはどういう仕事だと思う?」
「楽して儲かるような」
「サラリーマンで営業ってヤツをやってたことがある」
「本当ですかい?」
「ああ。似合わねぇだろ?」
「旦那のスーツ姿なんて、傘張り浪人が裃を着るみてぇで想像が付きやせん」
 相変わらずおかしな例えだ。
「そうだろ、だから辞めたんだ。――人には向き不向きってもんがある。組織の一部ってのは俺には向いていないのさ」
「一匹狼っすか」
「そんなにカッコイイもんじゃねぇさ」


【つぶやき】
 県内にある百名山の1つ、皇海山の登山口まで行ってきました(登らないところが情けないです)。道は全て狭い砂利道で、落石がゴロゴロしている悪路でした。
 オオバアサガラが花盛りの登山口付近を歩いていると、シマヘビを踏みそうになりました。
 しばらく道を走っていると、ヤマドリ(♀)が現れ、慌てて崖の上に飛び去っていきました。
 また、しばらくすると、ガードレールの所に2つの大きな黒い影。
 母子熊!
 ガードレールの側に静に車を着け、窓越しに谷側をのぞいてみると、目が合いました。向こう側からもこちらの様子をうかがっていたのでしょう。襟元の白い月の輪が可愛い!手を伸ばすと届きそうな近さでした。
 軽とはいえ自動車に乗っているから、安心して観察出来たのです。歩きで出会うと恐いから、熊避けの鈴を持ちましょうね。特に母熊は恐いそうです。
 母子は、崖側で実っているクマイチゴを食べに出てきていたのでしょうか。
 興奮が冷めきらない最後に車の前を横切ったのは、薄茶色の夏毛になっている野ウサギでした。
 1種類でも出会えると嬉しいのに、サファリパークを走っているみたいに次々と野生動物に出会えた幸運な1日でした。
 ところで、「皇海山」って読めますか?

 今日の写真は「ショウキラン」(2007.07.08群馬県で撮影)
 名前は、鍾馗様のかぶっている帽子に形が似ているから付けられました。葉緑素のない腐生植物です。
 今の季節、華やかなお花は少ないのですが、ジメジメを好む変わった花に出会えます。

Kumaitigo2
 今日2枚目の写真は「クマイチゴ」(2007.07.08群馬県で撮影)
 色が濃くて種が大きい木苺です。モミジイチゴと違って水分が少なく、ラズベリーに似た香りがあります。

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2007/07/07

有難味

Tasirorann3
「どうしたの?」
 いつも通り、チョビにミルクを飲ませて、顔を洗った稲作は、河原の方を気にしている。
「さっきまで付いて来てたんだだけどなぁ」
「?」
「半次」
「一緒だったの?」
「あっ来た」
「――旦那ぁ~」
「大丈夫?半次君」
「駄目っす」
「水飲んで」
 汗だくの半次にコップ1杯の水を差し出す。
「すんません」
「お前、ウオーミングアップでそんなにバテてちゃ、仕事になんねえぞ。土方は無理だな」

 その夜。
「すんません、旦那」
 ヘトヘトになって帰って来た半次の腰を揉んでいる。
 田植機が使えない狭いところの田植えを手伝ったらしいが、この有様。そのうえ、使えないから明日は寄越すなと断られてしまった。
「米の有難味がわかったろう」


【つぶやき】
 今日は七夕。残念ですが星は見えません。
 子供の頃は街の七夕祭りに連れて行ってもらい、各店の趣向を凝らした飾り付けを見て回るのが楽しみでした。
 商店街は寂れる一方です。今でもあの頃と同じ規模でやれているのでしょうか。そういう私も何年もお祭りに行っていません。
 
 今日の写真は「タシロラン」(2007.06.29群馬県で撮影)
 田代は発見者の名前です。キノコと間違えそうですがランの仲間です。花をよく見ると蘭の花に見えませんか?葉緑素のない腐生植物です。

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2007/06/28

エクササイズ

Musitorisumire3
「何だよ、もうバテたのか?」
「だって、マラソン、並みじゃ、ないっすか」
「速く走んなきゃ、チョビの運動になんねぇだろ」
「こんな事なら、迷わねぇで、入隊しとけば、よかった」
「?」
「軍隊式エクササイズ」
「今流行の?」
「旦那、知っていなさるんで?」
「チョビの飼い主の奥さんがやってたぜ。部屋の中で埃立てながら運動するよりチョビと河原を走った方が健康的なのにな」
「そうかもしれやせんが、インドア派のあっしとしては、たったの7日で良いって所にそそられやす」
「そう甘いもんじゃねぇぞ。その腹筋を引き締めたいか?」
 半次は肥満ではないが、運動不足が体に現れている。
「へぇ、出来ることなら」
「よし。田植えの手伝いと土木作業どっちがいい?片方譲るぜ」
「へ?」
「手を抜かずに働けば、体力と筋力が付くぜ。足りなかったら、じいさんの道場を紹介するから心配するな」

【つぶやき】
 初めて見た時、何のコマーシャルだろう?と思いました。
 マッチョな外国人が汗だくで体操していて、最後に「ぶんぶん」とWebで検索して下さいとテロップが流れます。ブログ巡りをしていたらキャンプ参加5日目、などのレポートが。そうこうしているうちにビリーさんが来日して、アイドルのように歓迎されていますね。
 20万人の人が参加しているとか。
 見ているだけで疲れてしまうようじゃ駄目でしょうねぇ。

 今日の写真は「ムシトリスミレ」(2007.06.23群馬県で撮影)
 大きさと色合いがスミレにそっくりです。が、この花は亜高山から高山の湿った所に生える食虫植物。葉の表面に粘液を分泌して虫を捕らえます。スミレという名なのにスミレじゃない、タヌキモ科の植物です。

 

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2007/06/22

散歩

Miyamahannsyouzuru2
「ジルの代わりをしてくれるんだろ?」
「へえ」
 半次は後退りながら言った。
「ガルルルルルゥーッ!」
「ヤツは、このチョビと仲良しなんだ」
 早朝。
 契約している犬の散歩から一日の仕事が始まる。
「大きなブル公っすねぇ」
 チョビは超大型犬のグレート・デーン。自分より弱そうな相手には容赦しない。
「ガウゥゥ」
「ひぇぇぇ」
「仲良くなれそうか?」
「無理っす。あっしの元稼業の天敵ですんで」
「行くぜ!付いて来いよ、半次」
 2時間走るのが、俺たちの散歩だ。


【つぶやき】
 私は昔ながらのバードウォッチャーのつもり。‘見るだけ’写真を撮ら(れ)ないバードウォッチャーです。
 自分の判断だけで、見た野鳥の種類を数える。何の証拠も残らない趣味のために全国の探鳥地を訪ねる。ちょっと前までは、何かを作ったり集めたりする趣味を持つ人には理解しにくい事のようで、不思議がられることもありました。今では認知度が上がりましたね。
「10年前、ここで見た鳥は綺麗な成鳥だった。またいないかなぁ」
 なんて言う、バードウォッチング歴が長い夫の話を聞いて、こういうのも悪くないなぁって思います。
 植物観察も、バードウォッチングのようにと心掛けています。
 まずはよく見て、撮せる状態だったら撮し、登山道から外れている時はあきらめます。コンパクトカメラしか持っていないから、あきらめは早いです。
 崖の上の方だったり、行けそうもない沢の向こう側に見付けた花は、首から提げた8倍の双眼鏡で観察。双眼鏡はフラワーウォッチングにもお勧めですよ。

 排気ガスをまき散らし、登山道を踏み荒らしながら趣味のために花に会いに行く。
 綺麗なお花の前に伸びる邪魔な草も、まだ地上に顔を出していない枯れ葉の下の芽も、自然の一部。それを肝に銘じて、自然を傷つけないように行動しなければなりません。

mixiで題にした「やさしいきもち」は、日本野鳥の会で提唱しているフィールドマナーです。

や・・・野外活動無理なく楽しく
さ・・・採集は控えて自然はそのままに
し・・・静かに、そーっと
い・・・一本道、道からはずれないで
き・・・気をつけよう、写真、給餌、人への迷惑 
も・・・持って帰ろう思い出とゴミ
ち・・・近づかないで、野鳥の巣
   詳しくはこちらで→http://www.wbsj.org/birdfan/bw/manner/guide.html

「憂き世に」の歌詞の最後はこんな言葉で締めくくられています。

♪人をいたわる思いやりが少しでもあれば この世を 嘆くことなどないのに♪

 今日の写真は「ミヤマハンショウヅル」(2007.06.10長野県で撮影)
 3度目で、やっと開き掛けの花に会うことが出来ました。深山半鐘蔓と書くこの花は、半鐘のような釣鐘型の花を咲かせます。
 今度会う時は咲いていてくれるでしょうか。

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2007/06/18

ミノムシ

Birodomouzuika1
「ガキみたいな顔しやがって」
 寝顔は、幼く可愛く見える。これまでに、何があってここに流れ着いてきたのだろう。青いミノムシになっている半次の顔を眺めていると、彼は片目だけ開けて言った。
「旦那、駄目っすよ。あっしはそっちの気はねえんですから」
 俺にだってない。
「そんな寝返りも打てねぇような格好で、よく寝られるもんだと思って見てただけだ」
「……旦那だってバイク乗りでしょ?持ってねぇんですかい、寝袋」
「新聞紙と段ボールで間に合わせた」
「さすが、ワイルドっすねぇ。……あっしのことは気にしねぇで、旦那も休んでおくんなせぇ――」
 眠ってしまった。
 この若者と妙だけは、俺たちのことに巻き込みたくない。

 
「あなた、ご飯よ」
 女の声。
 朝か。
「――」
「あ・な・た」
 耳元で。
「!?――変な声出すんじゃねえ!」
 寝床はいつものソファベッド。半次が、ジルのエプロンを掛けて立っていた。夕べ泊めたんだっけ。
「どうです?ちょっとしたもんでしょ?あっしの声色(こわいろ)」
「ビックリするじゃねえか」
「目が覚めたでしょ、あ・な・た」
「お前なぁ――」
「まさか、旦那」
 途中で止めるな。
「なんだよ」
「おネエちゃんに、こんな風に言ってもらったことがねえなんて、こたぁありやせんよね」
「知るか」
「何です、赤くなっちまって。顔のわりに以外と可愛いんですね、ダ・ン・ナ」
「悪かったな」


【つぶやき】
♪緑が見たいと 誰もが車走らせ ゆくから 緑が消えそう♪
 植物観察に出掛ける時、花たちに会える嬉しい気持ちの片隅で、この歌が頭を流れます。

(ある山小屋の主)
 盗掘が多くて年々稀少植物が減ってしまっている。なかなか現場を押さえることが出来ない。
(出会ったアマチュア写真家)
 盗掘をする人なんかほとんどいない。踏みつけの方が問題なのではないか。見付けた穴場はどんどん人に教えることにしている。
(友人)
 目立つところに咲いている美しい宿根草は花を摘み取ってしまう。そうすれば盗掘を免れるから。
(気にしない人)
 綺麗だから摘んじゃった。庭に植えてみようかな。

 みなさんは、どう思われますか?

 私は……長くなりそうなので次回に続けます。

*冒頭の歌は「憂き世に」。初期のオフコースのアルバム「ワインの匂い(1975年)」の中の1曲です(作詞は鈴木康博さん)。


Birodomouzuika2
 今日の写真は「ビロードモウズイカ」(2007.06.18群馬県で撮影)
 全体が白い毛におおわれている、不気味にも見えるこの巨大な姿を見かけることが多くなりました。ヨーロッパ原産で観賞用に栽培されていたものが逃げ出した帰化植物です。
 生えている場所をご覧下さい。アスファルトとコンクリートの隙間です。たくまし過ぎて「ど根性」と言ってもらえそうもありませんね。
 でも、よく見ると花は可愛いのです。

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2007/06/13

正体

Hoteirann1
「旦那、お強いんですねぇ」
 目元を赤く染めた半次が言った。
「酔わない体質だ」
「うらやましい。あっしは訓練で何とかここまでになりやした」
「訓練?」
「って言っても毎日飲むってだけなんですが」
「ふ~ん」
 テーブルの上には空になったビールの缶が散乱し、さきいか、ピーナッツ、ポテトチップが散らばっている。
 久しぶりに普通の人間と普通に飲んでいる。
 ここのところ、風呂上がりに缶ビール1本と決まっていた。あまり飲むと体に悪いからと、ジルがいい顔をしないからだ。どうせ酔わないのだから同じ事だが、たまには人間らしい無駄も良い。
「それにしても、旦那とあっしは不思議なご縁ですねぇ」
 泥棒と被害者。半次は、眠っているジルを等身大フィギュアだと思って盗もうとしたのだ。
「なんで、ジルの僕になった?」
「へ?シモベ?――あっしはジルさんの友達にはなりやしたが、そんなモンにはなっておりやせん」
「ヤツの正体を知ってるのか?」
「嫌ですねぇ、正体だなんて。ジルさんは優しくていいお人だ。あっしの考えていることなんか全部お見通しで可愛がって下さいやす」
「ジルはどこに行くと言った?」
「しばらくお国に帰るから、自分のかわりに旦那の傍にいるようにと」
 ジルは半次に正体を明かしていない。


【つぶやき】
 なぜか埋めてみたくなるアボカドの種。
 茶色く大きい丸い種。切る時にうっすらと付けてしまった包丁の痕。洗ってテーブルに置いておいたら、翌朝ヒナが孵る寸前の卵のようなひび割れが。どんな芽が出るか見てみたい。
 ネットで検索したら、同じ思いに駆られた人が大勢いることがわかりました。
 とりあえず水栽培してみます。

Hoteirann2
 今日の写真は「ホテイラン」(2007.06.10長野県で撮影)
 会いたかった花です。登山道にぽつりぽつりと咲いていました。

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2007/06/08

そんな自分にorz

Hosobanoamana
「相変わらず綺麗になってますね」
 事務所件住居に、半次が付いてきた。嫌な予感がする。
「だから、お前に手伝ってもらうことなんかねぇんだ。帰れ」
「いえいえ、そうもいかねぇんで。ジルさんに頼まれていやすもんで」
「布団もねぇし。ジルのベッドを使うか?」
 主人のベッドを使うなんて、彼が絶対に出来ないだろう事を言ってみる。
「そんな大それた真似は出来やせん。ご心配なく――」
 彼は、持ってきた大きなボストンバッグを持ち込んでいる。
「あっしはこれで寝やすんで」 
 バッグから、寝袋を出しながら言った。
 やっぱりジルがいない間ここに泊まるつもりだ。
 せっかく羽を伸ばせると思ったのに……。
「留守の間、旦那が羽を伸ばし過ぎねぇように見張っておけと、ジルさんにきつく言われておりやすんで」
 読まれた。
「明日の朝飯は、納豆とシャケの塩焼きと目玉焼きとお新香とみそ汁でいいですかい?」
「好きにしてくれ」
 と、言いながら久しぶりの和食が嬉しい俺。そんな自分にorz


【つぶやき】
 前回、月影兵庫の事を書いたら、テレビ朝日の時代劇枠で7月からドラマ化されるのだそうです。月影兵庫役は松方弘樹さん。お父さん近衛十四郎さん(の当たり役でした)に迫れるか、追い越せるか。
 北大路欣也さんの旗本退屈男は、お父さんの市川右太衛門さんと見間違いそうになるほどそっくりでしたから、両作品を比べてみるのも楽しみです。
 焼津の半次は出るのでしょうか。こちらの配役も楽しみですね。

 お前は何歳なんだ、何て言わないで。おばあちゃん子でしたから、物心が付いた頃から時代劇を見ていたのです。

 今日の写真は「ホソバノアマナ」(2007.05.27長野県で撮影)
 山地の草原に生える多年草です。
 アマナと比べると、ほっそりとしていて繊細な感じです。

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2007/06/05

総動員

Kuwagatasou2
「バーベキューですかい?」
「半次君、久しぶりだね」
 ハンチングをかぶった半次、こと広瀬欧彦がやってきた。
「へえ。あっしにしては珍しく真面目に働いておりやした」
 ここでだけなのだろうか、相変わらず時代劇の遊び人口調だ。
「ジルの差し金か?」
 と、稲作。
「さすがは旦那、お察しの通りで」
 さすがも何も、さっきから木イチゴの木ではオナガの‘ぴょん太’がギャーギャー鳴きながら赤い実をついばんでいるし、餌台ではワカケホンセイインコの‘ぴょん子’がヒマワリの種を食べている。眠りについたジルは、僕(しもべ)達を総動員して俺を見張ろうって事なんだろう。夜はネズミとコウモリが来るはずだ。
「それにしても水くさいよねぇ、言ってくれれば空港に見送りに行ったのに」
「そんな事されたら恥ずかしいから、言わずに行ったんだろう」
「寂しがらねえでくだせぇ、絹さん。ジルさんがいねぇ間は、あっしが居りやすから、何なりと使ってやっておくんなせぇ」


【つぶやき】
 「浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話」を読みました。
「月に吠えろ!」を読んで以来、書店で見付けると手に取ってしまう鯨統一郎さんの新刊です。

 旨い日本酒をワイングラスに注いで出す日本酒バーに夜な夜な集う、自分たちを‘ヤクドシトリオ’と呼ぶ中年男たち。彼らは、一人で離れた席に座っている若い女性の存在を気にしつつ、‘昔のテレビ番組などのなつかし話’を始めます。思わず頷いてしまうのがこの部分。スポーツ、テレビドラマ、フォークソングなど、1960年前後生まれの人には懐かしい、そういえばそんな事があったよなぁ、と思い出す三人の会話。
 実写版‘レインボーマン’の主人公役の人が‘太陽に吠えろ!’にゲスト出演し、マカロニ刑事を刺殺した犯人の役を演じたなど、どうでもいいけれど、当時小学生だった私も鮮明に覚えている、同年代のツボにはまる会話をし続けた後、今起こっている事件に話が移り、最後には探偵役の若い女性が昔話の新解釈になぞらえて、事件を解決するという短編集です。

 カバーの折り込み部分に著者の言葉として、こう書かれています。
――この作品は、ミステリ部分、昔話の新解釈部分、昔のテレビ番組などのなつかし話部分と、三つの要素から成り立っていますが、その三つがお互いに少しも関連していないという珍しい構成をとっています。――

 うちの半次君も作中の会話に登場する月影兵庫の相棒、焼津の半次さんをイメージしたキャラクターなのです。
 ちなみに、‘レインボーマン’は、川内康範さん原作のヒーローものです。そういえば‘レインボー・ダッシュ7’は月光仮面に似ていますね。主題歌も川内さん作詞。強烈すぎて忘れられない‘死ね死ね団のテーマ’もです。かくしゃくとしていてダンディーなお姿、さすがは愛の戦士の生みの親ですね。

 今日の写真は「クワガタソウ」(2007.05.26群馬県で撮影)
 オオイヌノフグリに似た、少し大きめのピンク色の花です。
 クワガタとは、実の形が兜の飾りの鍬形に似ていることから付いた名前です。

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2007/01/02

明けましておめでとうございます

 新年明けましておめでとうございます。

 今日の早朝、というより真夜中に、奄美大島から帰って来ました。また、島で撮した写真を紹介しながら、のんびりと行かせていただこうと思います。

 今年も、喫茶店〔月の光〕をよろしくお願い致します。

 そうそう、〔月の光〕は読んで下さっている皆さんにも、書き込んでいただけるように、名前・メールアドレスを書かなくてもコメント出来るようになっています。気軽に遊びに来て下さいね。

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2006/11/01

ディナーⅡ

Imgp31221
「来て下さってありがとうございます」
「一度あんたと2人で話してみたかった」
「今日は、お部屋の用意はしていませんからご安心を」
 たぶん冗談のつもりなのだろう言葉を、彼は笑いもせずに言った。この間の経緯を知っているようだ。
「してあったって断るさ」
 ここは、この間稲作と食事をしたホテルのレストラン。
 今日の昌子は残業帰り、きっちりとしたグレーのビジネス仕様のスーツを着ている。
 向かい合って座っているのは、稲作と一緒に住んでいるという、智紘にそっくりな顔をした金髪碧眼の外国人ジル。そっくりなのに、これほど綺麗に見えるなんて。生きている人間とは思えないほどだ。まるで、完全に作られたアンティーク・ビスクドールのよう。
 吸い込まれそうな青い瞳がこちらを見ている。
 何を企んでいるのか、彼から食事に誘って来たのだ。
「うふふ。そんなに警戒しないで下さい。何も企んでいません」
 料理が運ばれてくると、彼は見たことがないほど優雅で美しい仕草で食事を始めた。犬食いの稲作と同じ人間とは思えない。
「何か?」
 見とれてしまった。
「いや、何でもない。あんた、良い所のお坊ちゃんなんだねぇ。……ところで、話って言うのはなんだい?」
「稲作の誤解を解きに来ました」
「誤解?」
「あの日以来、稲作は寝込んでいます。そのうえ、可哀想なほど落ち込んでいるのです。彼は性病ではありません。もちろん仮病でもありません」
 ジルは、食事をしながら平気な顔をして言う。
「嘘ならもっとマシな嘘をつくだろ。で、まだ寝込んでるなんて、どういう事だ?」
 稲作は気が弱い男だが、精神的なショックで寝込むほど弱くはないだろう。
「――マジか?」
 信じられないような理由はキノコ中毒。――あいつは本物の馬鹿だ。
「信じていただけますか」
「あまりにバカバカしくて、冗談とも思えないね」
「ありがとうございます」

*最初から読みたい方はこちらをクリックしてください。HPにまとめてあります*

『いらっしゃいませ』
 喫茶店〔月の光〕マスターの絹(けん)です。
 悲しくて仕方ありません。
 虐めにあっている子供達。お願いですから、自殺しようなんて考えないで下さい。
 新聞やテレビのニュースを見て、あなたの大切な人を、どれだけ悲しませる事になるのかを想像して下さい。学校なんか行かなくていいから、1年や2年休んでもいいから死なないで下さい。
 先生達も同じです。自殺などという楽で無責任な道を選んで子供達に見せないで、みっともなくたっていい、先生なんて辞めてもいいから、生きて子供達の手本になって下さい。
 あなたが死んでしまったら、残されたあなたの大切な人の時間は止まり、何年も何年も後悔し、嘆き悲しみながら老いていくのです。あなたの大切な人にそんな思いをさせないで下さい。

 今日の写真は「クリタケ」(2006.10.28群馬県で撮影)
 見るからに美味しそうですね。今頃の季節、秋が深まった頃に出始めるキノコです。
 たまに地元のスーパーで売られていることもあります。
 写真のキノコは油で炒めて食べました。

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 今日2枚目の写真は「ニガクリタケ」(2003.11.16群馬県で撮影)
 山を歩いていると一番よく見かける毒キノコです。木道などに生えていて硫黄のような黄色をしています。
 今日1枚目の写真クリタケと間違えて食べてしまうことがあるそうです。比較のために載せてみました。こうして見ると、あまり似ていないと思うのですが、いかがですか?命に関わるほどの猛毒キノコですからご注意を。

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2006/02/06

油断大敵

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「どこに行っていたのですか」
 真っ暗な部屋の中、青い二つの光が瞬く。
 何度経験しても身が縮むのは、こういう時のジルは怒りに燃えているからだ。瞳の光は高温の青く静かな炎の色だ。小早川伸木の奥さんより恐い。
 電気を点けつと、テーブルの上に冷めたカレーライスが置いてある。
「悪かったよ。親方にどうしてもって頼まれて、断れなかった」
「身体と仕事、どちらが大切ですか」
「男は義理も大切なんだ。親方には色々世話になっているし。ちゃんと薬、飲んだから大丈夫だ。それもチンして食べるから――」
「鬼は外!」
 豆を投げつけられた。
「わっ!何すんだ!」
「妙ちゃんに教わりました。稲作は、なぜ鬼なのですか」
【登場人物紹介】はこちらへ。


 今日の題名「油断大敵」は、どちらかというと、この雑談の方になります。
 土曜、日曜で千葉県銚子市、利根川を挟んだ茨城県神栖市に行ってきました。内陸の群馬県では見られない、海鳥を見るためです。土曜の午後近くに出発したために付いた頃は暗くなっていました。途中、印旛沼に住み着いているモモイロペリカンに会うための寄り道をしました。どこからカゴを抜けてきたのかわかりませんが、たった一羽で寒風に耐えている姿は可哀想でした。

 翌朝、銚子港でカモメウオッチング。
 皆さん、カモメの仲間の区別が付きますか?下は、よく見かける3種類です。
 ユリカモメ(全長40㎝)背中が淡い青灰色で、小さくて、くちばしと脚が
             真っ赤なカモメです。
             夏は、黒いお面を被ったような姿に変わります。
 ウミネコ(全長46.5㎝)背中は濃い青灰色で、くちばしと脚は黄色です。
              くちばしの先には黒と赤の点があります。
              羽根の先は黒で、飛ぶと尾に黒い帯があります。
 セグロカモメ(全長60㎝)大きく、背中が青灰色で、脚はピンク色です。
              黄色いくちばしの先には赤い点のみです。
羽根の先は黒。

 カモメの仲間は、日本でも20種類ほど見られるようですが、夏と冬、幼鳥成鳥で違うので、見慣れない僕はなかなか見分けが付けられません。
 昨日は、シロカモメとワシカモメが見られました。両方ともセグロカモメにそっくりで、少し大きく、シロカモメは羽根の先が白のため、止まっていると尾が白いように見えます。ワシカモメは、羽根の先が黒ではなく、背中と同じ色なので、見分けが付けられるのです。

 神栖市の波崎海岸。風力発電の風車が並ぶ観光スポットで海カモウオッチング。
 アラナミキンクロという、Pさんも見たことがない珍しいカモが見られるというので長時間粘りました。クロガモ、ビロードキンクロ(いつか紹介したいじわる模様のカモです)はたくさん見られました。
 風が寒くて、駐車場の車に戻って休んでは出直し、と言う行動をとっていました。20分くらい誰も居なかった隙にやられてしまいました。後ろの窓が割られていました。初めは悪戯で石を投げられたのかと思いましたが、バールで割られて、中に置いてあったくたびれたディパックを2つ盗られてしまいました。中にはそれぞれのデジカメと小物が入っていたのです。
 それから警察に通報して1時間くらい時間が掛かって。哀れな車はガムテープで窓を塞がれて、高速を走って戻りました。
 車通りもあり、警察を待つ間に何組も観光客がやってくるような駐車場でした。
 皆さんも車上荒らしにはご注意を。

 今日の写真は「アカネスミレ」(2005.05.20 群馬県で撮影)
 茜菫と書きます。赤が強い独特の色をしていて、よく見かけるスミレです。

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2006/02/03

年の数だけ

pict0089111
「おはよう、ジルちゃん。稲さんはどう?」
「さっき病院に連れて行きました」
「一人で行けないほど具合悪いの?」
 午前10時半の〔月の光〕。
 お客は妙ちゃんしかいない。
「いいえ。注射が恐いからと行きたがらないので、無理矢理連れて行ったのです」
「チョビと同じだね」
「何で?」
「病院に連れて行くっていうだけで動かなくなっちゃうんだって。やっと引きずって連れて行くと、今度は予防注射を怖がって大暴れするんだって。危うく稲さんが注射を打たれる所だったって言ってたよ」
「打ってもらった方が静になったかもね」
 そういう効果がある注射じゃないと思うが――。
「どうしましょう」
「?」
「診察室まで付いていけば良かった。稲作は暴れているでしょうか」
「まさか、一応人間なんだから、そのくらい我慢出来るんじゃない?」
 思わず暴れる彼を想像してしまう。案外ありそうな想像図だ。
「そうですよね。……絹さん大盛りのカレーライスを持ち帰りたいのですが」
「ウッソー、今日もカレー食べたいんだって?まだ熱あるんでしょう?」
「はい」
「それだけ元気があれば大丈夫だね。けんちん汁もあるから、持っていってね。……待っている間、福豆でも食べてて」
 1合マスの中に、豆がまだ残っているはずだ。
「いいなぁ」
 妙ちゃんは羨ましそうに言う。
「妙ちゃんは食べないのですか」
「もう食べちゃったんだ」
「もっと食べれば」
「ジルちゃん、福豆はね、年の数だけ食べると、その年は厄を逃れて無病息災で過ごせるっていわれているんだよ。だから年の数だけ食べてね」
 僕と妙ちゃんには、ジルの言葉の後半が聞き取れなかった。
「年の数だけ――1300粒もありません」
【登場人物紹介】はこちらへ。
 デーモン木暮閣下よりは食べる数が少なくて済みそうですが……。
☆お知らせ―明日・明後日 喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます☆


 今日の前橋は自動車のハンドルが取られるほどの空っ風が吹き荒れています。急に気温も下がったようで寒くなってきました。明日は立春だというのに最高気温は3度の予報です。
 一昨日の宣言通り、恵方巻きを買ってきました。皆さんの仰る通り、色々な種類の巻き寿司が山積みされていました。買おうと思うと目に入りますね。
 穴子の中巻と太巻きのハーフを買ってみました。半分でも効果があるのでしょうか?穴子巻きを買った理由は、先々週のドラマを見て、穴子寿司が食べたくなったらしく、時々言っていたからなのですが、スーパーのものでは美味しくないかも知れませんね。

 今日の写真は「ミヤマスミレ」(2005.05.22群馬県撮影)
 深山菫と書きます。昨日に続き標高が高い所に咲くスミレです。

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2005/12/23

……

「どした?」
「なんでもない」
「そうか」
 喫茶店〔月の光〕。いつの通りの時間が流れている。


 もう2年も経ってしまっているのです。
 2年前、どうして何も出来なかったのでしょう。
 会いに行けば良かった。
 結果が変わらなかったとしても、会いに行くべきでした。

 あなたは読書家でいつも本を読んでいましたね。幸せとは言えない家庭環境でしたが、あなたはいつも笑顔でした。幼い頃の想い出しかないけれど。
 独りで寂しかったでしょう。

 1つ年下の従妹の訃報を知りました。
 今更泣いても仕方がありません。
 でも、涙が流れてしょうがないのです。

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2005/11/11

尾行?

PICT00961
「どうした!」
 〔月の光〕に向かって走り出すと、ジルが付いて来ないことに気付く。
「何でもありません」
「飯、食って来たのか」
「今日もバイトに行きますから」
「腹減ってるんだろ」
「大丈夫です。少しふざけ過ぎました」
 ジルは眩しそうに空を見上げた。
 今朝は快晴。朝の光はジルにはきついのか。
「遠慮しなくていいんだぜ」
「していません。あなたには、特別な時にいただきたいのです」
「わかった」

「ちわ~す」
「おはようございます。稲さん、ジルちゃん、チョビ」
 いつも通り、俺たちの帰りを待っていた絹さんがチョビのミルクを持って外に出て来た。
「今日はいい天気だねぇ」
 チョビは、もらったミルクを豪快にジャブジャブ音を立てて飲んでいる。
 腹を壊すんじゃないかって?
 大丈夫。チョビが飲んでいるのはドッグ・ミルク。缶に入った粉ミルクを溶いたものだ。
 それほど美味くはない(こっそり飲んでみた)と思う。

「なあ、ジル」
「はい」
「気付いているか」
「はい」
 こんな早朝だというのに、俺たちの後を付けて来ているヤツがいる。
 

 今週3度目の喪服です。野鳥観察の大先輩が亡くなりました。
 季節の変わり目で風邪も流行っています。皆さん、お体に気を付けてお過ごし下さいね。

 今日の写真は「ツルリンドウの実」(2005.11.03群馬県で撮影)
 蔓竜胆と書きます。花は色が薄くて地味ですが、こんなに可愛い実が付きます。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/11/10

ミミクリ

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 朝の河川敷。
 いつものように、チョビを連れて散歩をしていた。
「稲作、無事でしたね」
「あのなぁ」
 無事に決まっているじゃないか。そう何回も柿の木から落ちてたまるか。
 バイトの翌朝、ジルは始発に乗って帰ってくる。寝ていないはずだがいつもの通り。眠るサイクルが普通の人間とは違うのだ。
「チョビ、良い子にしていますか」
「ワン!!」
 ジルには大人しく従うチョビだが、人には飼い主と便利屋の親方と俺にしか懐かない大型犬だ。
「牛乳もらいに行こうぜ」
「ワン!!」
「なぁ、ジル」
 〔月の光〕に向かいながら話す。
「はい」
「いまさら聞くのも何なんだけど」
「?」
「お前、初めてあった時、黒髪で黒い瞳だったよな?」
「こんな風に?」
「うわっ!」
 一瞬で髪と瞳の色が変わる。ホラー映画も真っ青だ。
「こちらでは、金髪と青い目に見えるように暗示をかけているのです。そのせいで顔のパーツの印象が薄らぐでしょう」
「そうか?」
 動悸が治まらない。
 現実ではどっぷりと浸かっているのに、ホラー映画は大嫌いだ。
「来日するまで、日本人はみんなあなたのような黒髪だと思っていました。顔も凹凸が少なく似た印象だと」
「来てみてビックリだったろう?」
「はい。赤や青の髪や瞳の人もいます」
 ジルのバイト先は新宿。東京には色々な格好のヤツがいる。
「ご主人様」
 一瞬、青い髪と赤い瞳に変わったジル。
「うわっ!!」
 あまりのショックに、萌え~という感情は湧かない。
「ま、まさかお前、サムライやニンジャが居るとは思っていなかっただろうな」
「少しだけ」
 ジルにとっては江戸時代なんて、つい最近の事なのだ。


 リンクに、掲示板 喫茶店〔月の光〕を加えました。
 本館〔みけのみちくさ〕の掲示板です。「ブログ」のコメントとは違う味わいがあるものなのですが、あまり活用されていないのです。
 管理人は僕ですので、よろしかったら遊びにいらしてみて下さい。

 今日の写真は「アゲハモドキ」(2002.06.16群馬県で撮影)
 本人にとってはあずかり知らぬことでしょうが、モドキ、とか、ダマシ、とかが名前に入るのは気の毒な気がしますね。食草は、ミズキ・クマノミズキ・ヤマボウシ。アゲハモドキガ科の蛾の仲間です。
 今日の題名はミミクリ(擬態)です。アゲハモドキはジャコウアゲハに擬態しています。
 なぜでしょう。
 ジャコウアゲハはウマノスズクサを食草にします。幼虫がウマノスズクサにある毒分を体内に取り込む毒蝶なのです。ゆっくり飛んで、鳥などに毒蝶であることを見せつけるのだそうです。
 アゲハモドキはジャコウアゲハの真似をして、食べられないように毒のある蝶になりすましているのですって。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/11/09

収穫

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「ギャーッ、キャッキャッキャッキャッキャッ!」
 頭のちょっと上の枝に、オナガのぴょん太が止まって鳴いている。近くで聞くと随分な騒音だ。
「うるせえなぁ、お前のせいで木から落ちるぜ」
 今日はお千代ちゃんの家の柿をもいでいる。
「稲作、気を付けておくれよ。前みたいに落ちて脚折ると大変だからね」
 何年前のことを言っているんだ。6,7年も前の話じゃないか。年寄りにとってはつい最近の出来事なんだろう。
 ジルも誰かから聞いたに違いない。きっとその誰かは面白可笑しく話したのだろう。おかげでぴょん太の監視がうるさい。
「最後の1個は残しておこうな」
「今年は落ちずにすんだね」
「またそれを言う」
 週に一日、お千代ちゃんの家に来る。ひとり暮らしの彼女の、男手が必要な家事を手伝う家政夫のような仕事だ。ここ何回かは、来るたびに柿の収穫を手伝った。
「さあ、お食べ。今年はほんとに豊作だったねぇ」
 鉢に山盛りに盛られているのは、前に収穫した柿。渋柿だから樽柿にしたものだ。
 縁側に腰掛けて、渋茶と柿とせんべいをもらう。
「おーい、ぴょん太!こっちの柿の方が甘えぞ」
「ギャーッ?」
 木の上から、返事が返ってくる。
「へーえ珍しい。飼っているのかい?」
「ジルの友だちなんだ」
「来いよ!」
 柿の木の根本に一欠片置いてやったら飛んできてくわえ、もと居た枝に戻った。
「可愛いもんだねえ」
「ギャーッ!」
 ぴょん太は羽根をばたつかせて鳴いた。喜んでいるようにも見える。
「可愛いかねぇ」
 !!
 靴の上を走り回るのは、大きなネズミ。
「お前もか」
 俺と目があった大きなネズミは、長い2本の前歯をむきだして頭を激しく縦に振っている。
「ヨロシク!」とでも言っているように。 


 上記の会話にある柿の木から落ちたエピソードは本館の短編「Indian summer」にあります。超オバカなお話ですが、よろしかったらご覧になってみて下さい。

 
 今日の写真は「ツチグリ」(2005.11.05群馬県で撮影)
 土栗と書きます。このキノコには、ちょっとした里山でも出会うことが多いのです。
 湿度によって開閉する、キノコの晴雨計と言われているそうです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。
ねずみ&こうもり&オナガのぴょん太……ジルの友達。

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2005/11/05

「準備中」

「あれ?」
「どうしました」
 〔月の光〕に「準備中」の札が下がっている。灯りも点いていない。
「人の気配がしねえな」
「どこかにお出かけでしょうか」


 伯父が亡くなりました。
 子供の頃、遊びに来てお土産を買って来てくれたり、お小遣いをくれたり、してくれた伯父でした。

 明日、明後日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます。

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2005/11/04

卵かけご飯のこだわり

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「腹減ったな。飯と卵!」
「またお金がないのですか?好きな物を食べてください。私が支払います」
「今日の気分が飯と卵なんだなぁ、これが」
「僕も真似したい気分だな」
「珍しい」
「この間、ニュースでやっていたんだよ。10月30日は卵かけご飯の日なんだって。みんな凄く美味しそうに食べてた。……君の食べっぷりには負けるけどね」
 稲作は大盛りのどんぶり飯の真ん中に箸で穴を開け、生卵を割り落とした。真っ黒になるほどしょう油をかけている。
「何か体に悪そうな食べ方だね」
「しょっぱい方がいっぱい飯が食えるんだ。そっちこそ何だよ、女っぽいな。それに洗い物が増えるじゃないか」
 別の小鉢に割入れて、カラザを取ってよくかき混ぜる。しょう油を少し垂らす。普通の食べ方だと思うけれど。
「カラザ気持ち悪いし、黄身と白身、ちゃんと混ざっていた方が美味しいでしょ」
 ジルまで真似してどんぶり飯をかき混ぜている。
「――あっ、ジルちゃん、それソースだよ」
「絹さんのご飯を一口下さい。……私のソース味の方が美味しいように思うのですが」

「こんばんは。どうしたの?みんなで侘びしく」
 やって来た妙ちゃんが言った。
「いらっしゃいませ、妙ちゃん」
「今日の気分なんだ。妙もどうだ?」
「美味しそうだけど、生卵は苦手だなぁ。……絹さん、ご飯とバターを1カケちょうだい。マーガリンじゃ駄目だよ。それと、うま味調味料ある?」
 妙ちゃんは、熱いご飯に穴を開け、バターを埋め、周りにしょう油を回しかけた。その上から、うま味調味料を振りかけて、かき混ぜている。
「ゲッ!妙、何やってんだ?お前」
「ボクの定番はこれなんだよね~。北海道名物バターご飯。食べてみる?」
「いらねぇ。ほんとに名物なのかよ」
 4人で並んで食べる。
 どんぶり飯にはカウンター席がよく似合う。
 

 シンプルな料理(って言わないかな)に限って人それぞれに思い入れがあるのですね。
 ニュースでは野外の会場で、色々な種類の卵、調味料、トッピングの漬け物など、参加者は楽しそうに思い思いの卵かけご飯を食べていました。
 目玉焼きも、焼き加減やかけるものに人それぞれのこだわりがありますよね。僕は子供の頃はソース派でしたが、今はしょう油にコショウ。これを思い出すとジルちゃんの作ったソース卵かけご飯もありかも知れません。
 卵焼きだって、家庭や地域によって思い入れのある味があると思います。出汁巻き卵、砂糖を入れた甘い味、塩味など。僕にとっての卵焼きは、砂糖に塩をひとつまみ入れた甘い味、母が作ってくれたお弁当の卵焼きの味です。
 
 今日の写真は「本日閉店(タマアジサイの実)」(2005.10.23東京都で撮影)
 写真は花が咲き終わった後の玉紫陽花。つぼみの時はまん丸の玉のよう、それが割れて、花火のような紫色の両性花(真ん中の部分)と白い装飾花(周りの花びらのような)が咲きます。
 自然観察の先輩と歩いていると、面白いことを教えていただくことがあります。花が終わって実を結ぶと、周りの装飾花が下を向いて、本日は閉店しましたって看板を返すのですって。 

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/11/02

ザクロの味

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「ちわ~す」
「お帰りなさい、稲作!」
「いらっしゃいませ」
 ここは喫茶店〔月の光〕。
「ジル、もう来ていたのか。ちょうどいいや。お千代ちゃんの家になってたのをもらってきた」
 いつも通りの夕方。いつもの席に着いた稲作は、手に持っていたスーパーの袋から何かを取りだし、ジルに手渡した。
「何ですか?」
「食ったことねえのか。それはいい、この味の感想をお前に聞いてみたかったんだ」
 稲作が手で二つに割ったのはザクロの実。
「美しい。宝石のようです」
 ジルはザクロの実を一粒摘み取ると、光にかざしながら言った。
 いわれてみれば、宝石のガーネットのことをザクロ石という。割った様子と結晶が似ているのだ。
「歯で軽くジャリジャリやって、周りの汁を吸ったら、種は吐き出すんだぜ」
 相変わらず、母親のよう事を言う稲作。ジルには意味がわかっていないようだが、素直に口に入れている。
「どうだ?」
「甘酸っぱい果物の味がします」
「他には?」
「味がするだけで、食べた気がしません」
「なーんだ、お前でも特別な味はしねぇのか。……子供の頃、祖母ちゃんに脅かされておっかなくて食えなかったんだ。人の子供の味がするんだって言われて」
「鬼子母神の伝説だね」
 水を出しながら、僕は言った。
「人の味?」
 ジルは、再び幾つかの宝石のような実を取りだして口に入れてみている。


 昨日、ドラマ「火垂の墓」を観ました。
 毎年終戦記念日近くに1度は放映されるアニメ版は観たことがありませんでした。観ることが出来ないでいたのです。お恥ずかしい話ですが、子供と動物の受難ものには涙腺が壊れてしまうのです。このお話は、題名を見るだけで駄目でした。
 今回、ついに見てしまいました。哀れな兄妹の姿に、涙腺は予想通りの反応でした。でも、見てよかったと思っています。兄妹を悲劇に追いやった時代、祖母の生きた時代を見ることが出来たからです。松嶋菜々子さんが演じた久子さんに祖母の姿を重ね合わせました。祖母は早くに祖父を亡くし東京から疎開してきて、女手一つで6人の子供を育てました。農家の人に着物と食料の物々交換をしてもらった話や電車に揺られて闇米を買いにいったを聞かせてもらったことがあるのです。
 祖母は気が強い明治生まれの女性でした。気が強くならなければ生きていけなかった時代を生きてきたのだと、祖母を懐かしく思い出しました。
 番組の最後に、世界には今でもあの兄妹ような子供達がいるというテロップが流れました。
 重い現実を突き付けられました。
   
 今日の写真は「ザクロの実」(2005.11.2群馬県で撮影)
 石榴と書きます。西南アジア原産。
 春に咲く花も独特の朱赤で独特の色をしています。実はもっと美しく宝石のようですね。

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2005/11/01

キャラクター問答

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「あれ?」
「あれじゃねぇよ。前も言ったろう、脅かすなって。また篠原先生に来てもらったんだからな。おかげで俺が怒られちまったぜ」
「何?」
「何じゃねえよ。……打ち所悪かったのかな」
 僕は〔月の光〕の奥の小部屋で寝ていた。傍に稲作がいる。
 そうだ!
「ジルちゃんは?」
「先に帰した。今何時だと思ってるんだ」
 時計は12時。
「ランチタイム……」
「夜だよ。さっきは夕方だったろう。……ほんとに、どういう精神構造してんだ?タヌキが化けてるんじゃねぇだろうな。シッポが生えてても驚かねぇぞ、俺は」
「ごめんね。ジルちゃん見たら、ブラッシー思い出して」
「何だ?そりゃ」
「噛み付きレスラー。……腕、大丈夫?」
「ついでに篠原先生が診てくれた。ジルは、噛み付いたんじゃなくて舐めたんだ。あいつ、傷は舐めれば治ると思ってるから」
「そうなの?……ジルちゃん気を悪くしちゃったかなぁ。良い子だっていうことはわかっているんだけれど、恐いんだ、アンティークドールみたいな青い瞳が」

 極楽とんぼの絹さんでも、ジルの異常さを感じるのか。

「腹減ってない?サンドイッチがあるぜ。妙が作ったんじゃないから。ジルが作っていったんだから大丈夫だ」
「ありがとう」
「前から聞こうと思ってたんだけど」
 俺は下手くそなコーヒーを淹れながら言った。
「なあに」
「ここに出入りしている連中って美形が多いだろ?」
「そうだね、おかげで目の保養になる」
「なのに何で主役の俺が猛犬顔なんだ?どうも納得がいかねぇ」
「僕に言われてもねぇ。筆者は個性派脇役好きだそうだから、それでじゃない?君は智紘君が生きていた時は、脇役だったじゃない。……僕だって店の看板背負っているのに、何度会っても思い出せないような無個性な人という人物紹介だよ」
「気絶魔って言うのも入れといてもらった方がいいな」
「も~う。……そう言えば、この間聞いたんだ。2時間ドラマ好きの筆者は、月9を振って2時間ドラマの帝王と女王の夢の共演を見たらしい。何でも、いつも主演女優の使い走りみたいな役ばかりだった帝王が狩矢警部の役で、女王はその奥さんだったとかで大層な喜びようだった」
「俺たちって、そんなやつに書かれているのか……」
「そうなんだよ……」 
 二人は大きな溜め息をついた。


 今日の写真は「メナモミ」(2005.10.23東京都で撮影)
 豨薟と書きます。花が咲いているのに地味で目立ちません。良く見ると花の周りにベトベトした粘液を出すせん毛がありますね。
 同じひっつき虫でも、メナモミはベトベトで、オナモミはカギ状のトゲでひっつきます。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/10/31

たぬき寝入り

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「嫌です。稲作に危害を加えたら、私はあなたを許しません」
 言葉に反応した和哉の部下2人が、ジルに飛び掛かった。
 弱々しく見えるジルが、大切な和哉にかけた言葉が許せなかったのだろう。愚鈍な彼らにはジルの能力を感じられないのだ。
 手を出さなくてもジルは自分で避けらる。
 わかっているはずの、俺の身体も勝手に反射した。
 わかっているはずなのに、智紘にそっくりなジルを庇わずにいられない。
 部下のナイフが俺の腕を傷つけ、血が飛び散った。
「イッ!!」
 痛いなどと言っている暇はない。
 和哉は見てしまっただろうか。顔に血が降りかかったジルの嬉しそうな表情を。
 傍観していた絹さんは、失神寸前。
 どうする、俺?
「ジル!絹さんを!」
 言いながら、傷を押さえて割って入る。
「止めろ!!」同時に和哉の一声。
 部下は素直に引き下がった。
「大丈夫か?」と、和哉。
「かすり傷だ」
「面白いものを見せてもらった。……深入りすると身を持ち崩すぜ。ま、俺には関係ないが」
 騒がせ代だ、と言って数万円をカウンターに置き、
「ますます昌子は渡せねえな」
 捨てぜりふを残し、和哉は帰っていった。

「稲作、大丈夫ですか」
「ああ」
「下さい」
 ジルは嬉しそうに傷に口を付ける。

 バタン!!
 椅子が倒れる音。
 床には、白目をむいた絹さんが……。


 タヌキって、ショックを与えるとほんとに気絶するらしいのです。鉄砲で撃つと、弾が当たっていなくてもバタンって。それがたぬき寝入りの由来とか。

 昨日ルナシーの話が出たので、一時期夢中になった邦楽の話をしましょう。
 彼らの歌詞の暗さと不条理さに、なぜか惹かれたのです。
 ソフトバレエは、AMERICAを聞いて。
 ピエロは、鋼鉄のメシアを聞いて。
 ラルクアンシエルは、花葬を聞いて。
 グレイには、あまり惹かれませんでした。
 いつも話しているオフコースとはずいぶん違う世界観です。   

 今日の写真は「オケラ」(2005.10.30群馬県で撮影)
 朮と書きます。特徴は、魚の骨のような花の下の苞。もう11月になると言うのに、咲いていました。面白い名前と特徴を持った花です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/10/30

一触即発

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「昌子はどうした!」
「会社に帰ったけど。こいつら何とかしろよ。二人が怖がるだろう」
 怖がっているのは絹さんだけだが、とりあえず二人と言っておく。
 和哉が合図をすると、部下は手を放した。
「……おまえさぁ、人の迷惑を少しは考えろよ。あんな強面に付け回されたんじゃ息が詰まってしょうがねえだろうが。あいつ、お前のこと嫌いになっちまうぞ」
 稲作は、緊張感無く言った。
「お帰りなさい、稲作」
 嬉しそうにジルが駆け寄ってくる。
「広木、そのオモチャ、どこで拾ってきた」
「私はオモチャではありません」
 昌子の無事を確認した和哉の興味はジルに移っている。尊大な言い方をしているが、和哉はジルを恐れているようだ。ジルを怖がるなんて、からかってやりたくなる。
「気にするな、和哉はこういう男なんだ。お前、友だちになってやれ、和哉は仕事柄友だち少ないんだ」
「嫌です。稲作に危害を加えたら、私はあなたを許しません」


 昨日「13歳の遺言」という再放送番組を見ました。少年の5年間に渡る壮絶な闘病記。
 学校に行くこと、勉強をすること、小学生にとって当たり前ことを懸命にする彼の姿に感動の涙を流してしまいました。
 自分は大切な命を何て無駄に使っている事でしょう。
 皆さんはどうですか。
 
 番組中に元ルナシーの河村隆一さんが少年に感動して作った歌が流れていました。
 化粧をしていない彼の表情は優しくて
 
 汚れた天使の羽 飛ぶことさえ許されず 疲れ果て見た夢に 明日はなかった
    (彼らの曲の中で一番好きな曲です。が、題名がわかりません)
 
 と、歌っていた頃とは作風が変わったのでしょう。
 久しぶりに、彼の甘い歌声を聞きたくなりました。

 今日の写真は「コウタケ」(2005.10.22東京都で撮影)
 香茸と書きます。生のものでもほんのりとしょう油のような魚の干物のような香りがしますが、乾燥させたものは、より香りが強くなります。地域によってはお正月に欠かせず、松茸よりも珍重されるそうです。
 前日に、乾燥コウタケを入れた炊き込みご飯をご馳走になりました。香り、歯ごたえがいいキノコです。
 写真は、別働隊が採取してきたもの。いつか、自分で見つけて写真を撮ってみたいものです。
 
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2005/10/27

ジルの告白

PICT00151
「ジルちゃん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。子供じゃないんだから」
「だから心配なのです」
 ジルには稲作に対する恋愛感情があるのだろうか。
「はい、ブラッドオレンジジュース。これ、メニューに加えたら結構注文が多いんだよ。君が飲んでるのを見て、注文してくれる娘もいるんだ」
「そうですか」
 ジルは、僕の話すことには上の空で、ぴょん太からの報告を待っている。
 午後の〔月の光〕。
「少し、お話ししようか」
「?」
「君のことをもっと知りたい。君ともっと仲良くなりたいんだ。稲さんとの出会いや、どうして、稲さんのことをそんなに好きになったのか教えてくれない?」
「本当のことを言って良いのですか」
「もちろん」
「19歳だった稲作が、私が住んでいた国に現れました。彼は私と間違われて殺されかけたのです。私たちは逃げ、二人で旅をしました。稲作は私に約束してくれたのです。仲間になってくれると。そんな事を言ってくれる人間は初めてでした」
 信じた相手にはとことんまで付いていく、稲作らしい話だ。19歳の頃の稲作は、いなくなった智紘を捜して東京に出ていた。あの時、海外にも行っていたのか。初めて聞く話だった。
「彼の言葉を信じて、私は日本に来たのです。私は彼に会うために500年――」
 店のドアが開き、不穏な空気が流れ込んできた。
「いらっしゃいませ――」
 入り口には、石坂和哉が立っていた。
 

 今日の写真は「不機嫌な顔(トビナナフシ)」(2005.10.22東京都で撮影)
 これまで、大好きなナナフシの仲間、エダナナフシ、トゲナナフシに会いました。3番目の出会いはトビナナフシです。背中に、飛べるとは思えないような小さな羽が生えています。
 嬉しくて一生懸命写真を撮っていると、不機嫌そうな目が……。虫に表情があるわけはなく、そういう顔なんですね、トビナナフシさんって。
 あまりに可愛いので接写、あれ?近付きすぎてカメラに上ってしまいました。逃げようという気がないのんびりやさんのトビナナフシです。

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2005/10/26

ずっと……

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「人の心配より、自分はどうなんだ?行き遅れるぜ」
「あたしにそういうことを言うのかい?」
「冗談だ。和哉が煩わしいなら話しを付けてやる」
「その時は自分でやるさ。……今日は逢えて良かったよ。ずっと言いたかったことを言えた」
 昌子はずっと気にしていたのだ。
 缶コーヒーは飲んでいる間に冷たくなった。
「何か、寒くなってきたな。そろそろ帰るか」
「あんまり無理するなよ。あたしに出来ることだったら力になるぜ」
「その時は頼む」
 バイクの後ろに跨った昌子は、耳元で囁いた。
「……あんた、ウソが下手だから」
 俺たちは、こんな風にお互いを気に掛けながら生きていくのだろう。ずっと……。


 今日の写真は「チャワンタケ(?)」(2005.10.22東京都で撮影)
 枯れ葉の上に咲いた赤いバラの花のようですね。こういう不思議なものもあるからキノコが好きなのです。チャワンタケの仲間のようですが名前がわかりません。
 夕べ、報道ステーションで野生キノコの特集を放映していました。
 「官邸に毒キノコ!!」という題。生えていたのはテングタケ、ヒカゲシビレタケ。両方とも幻覚幻聴などを引き起こす神経毒系のキノコで、ちょっと前に流行ったマジックマッシュルームでした。見つけた場所が皮肉っぽいですね。でも、このキノコ、僕も両方とも普通の公園で見つけています。写真もありますよ
 アウトドアブームのせいで、きのこ狩りをする人が増えているそうです。きのこ狩りを楽しむ仲間としての助言は、100%間違いないもの以外は絶対に食べないことです。

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2005/10/25

倖せなんて

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 もしも、俺とジルのことを知ったら昌子はどんな反応を示すだろう。
 笑って「あんたらしい」と言ってくれるだろうか。
 それは人の幸せではないと、俺たちを地の果てまで追い掛けるかも知れない。
 俺は、昌子の美しい横顔を見ながら思った。
「……あんたさ、今の生活に満足しているのかい?幸せなのか?」
「どして?」
「あんたみたいなその日暮らしと、過去の亡霊のような連中に付きまとわれた生活は、あたしから見ると幸せとは思えない」
「それだったら、幸せだぜ。美味いものはたまに食うから美味いんだ。腹が減っていればなお美味い。……妙には、智紘の分も幸せになってもらわなきゃ困る」
「それが先約か」
「まさか、俺には無理だ。見届ける、智紘の代わりに。俺よりいい男を捜すのは大変だ」
「馬鹿言うな。ジルは?」
「ヤツは、ああ見えても俺よりずっと強い、心も体も。……だから、おねえが心配するようなことは、何もねぇんだ」


倖せなんて(オフコース)

どんなにあなたを 愛しても愛されても
あふれるほほえみに 包まれた時でも
よく晴れた午後には
誰も知らない街へ
ひとりで消えてゆきたい
そんな時があるから
*倖せなんて 頼りには ならないみたい
 今日はよく晴れた 暖かい日です

*Repeat…

 「でももう花はいらない」以来、オフコース付いています。今日の曲はマイナーなのでファンしか思い浮かばないかも知れませんね。
 残された人には思い当たる事がないのに、行き方知れずになった人の中にはこういう気持ちの人もいるのかなぁ、とぼんやりと考えてしまいます。全てのしがらみを捨てて……。

 今日の写真は「ムラサキシメジ」(2005.10.22東京都で撮影)
 お腹がぷっくりしていて何とも可愛らしい姿ですね。枯れ葉の中からフェアリーリング(菌輪)を描いて輪になって顔を出しています。味にあまりクセがないキノコです。

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2005/10/24

先約アリ

PICT01051
「このまま、どっかへ逃げようか……あんたとだったらどこででも生きていける」
 気が弱ったのか、普通の女に近付いたのか。昌子の口から出た言葉とは思えない。
 逃げ隠れして暮らすなんて、彼女には一番似合わない生き方だ。
「俺は、付き合えねえな。先約がある」
「本気にしたのか?冗談だ。……先約ねぇ」
 昌子は俺を見てニヤリと笑った。
「たまにはこういうところも良いね。山はすっかり秋だ。……いい機会だから言っておくよ」
 昌子は缶コーヒーを開けながら言った。
「5年前のこと。あたしがあんたの立場だったら同じ事をした。惚れた女には少しの間でも悲しい思いはさせたくない。それが裏目に出ただけさ」
 全く、自分のことを惚れた女だなんてよく言う。こっちの方顔が熱い。
「あたしは、あいつに頼まれたんだ、あんたのこと。だから、気に掛けない訳にいかない。遺言だからな」


 今日の写真は「ズミ」(2005.10.15長野県で撮影)
 酢実と書きます。別名・コリンゴ、コナシ、ミツバカイドウ。
 日当たりの良い高原の湿地に多く、春、つぼみはピンク、花は真っ白で木を覆い尽くすように咲きます。
 小さな実は、別名でコリンゴ、コナシといわれるように食べられますが、大きさは1センチ弱。果実酒にも使えます。

【登場人物を少しずつ紹介します】
赤木昌子……地元の有力会社赤木建設の美人社長令嬢で元不良。
      稲作、智紘の同級生。
      稲作に事務所を提供し、陰で仕事を世話している。
      稲作と相思相愛だったのだが……。

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2005/10/21

逃走

PICT01101
 俺は途中自販機で買った温かいコーヒーを昌子に渡した。
「サンキュ」
「たまにはバイクもいいだろ?」
「あぁ、久しぶりだ。いつもこんな無茶な走りしてんのかい」
「今日は特別だ。族上がりのおねえを満足させるには、このぐれぇしねぇとな」
「族じゃねえ。ヘッドの女だっただけだ」
 だけ?昌子らしい。
 ここは赤城山の中腹。ちょっと開けていて見晴らしが良い場所にバイクを止めた。
 なるべく細い悪路を選んで突っ走ってきたのだ。妖しい車は付いてこないところを見ると完全にまいたようだ。ぴょん太も付いてきていないがバイクに発信器は付いたままだ。
「黙って見張らせてるのか?」
「普段は気にしやしないさ――」
 息抜きは必要なかったか。昌子はそんなことを気にするような女じゃなかった。
「けど、あんたといるところは見られたくないね。何するかわかんない。さっきみたいなことや、こんな事を平気でする」
 昌子にボディーガードを付けているのは石坂和哉。覚えているだろうか。〔月の光〕に時々息抜きにやってくる、地元のやくざ石坂組の若き組長だ(6/6サメと子犬)。
 5年前。智紘の最期を看取ったのは昌子。それを見届けたのは和哉だった。
 和哉はあの時から昌子に思いを寄せているが、彼女の気性をわかっているのか強引な手段をとらないでいる。
「このまま、どっかへ逃げようか……あんたとだったらどこででも生きていける」


 今日の写真は「ミヤマウメモドキ」(2005.10.15長野県で撮影)
 深山梅擬と書きます。別名・ホソバウメモドキ。東北地方、中部地方~近畿地方日本海側の湿地に生える木です。
 もっと秋が深まると枯れた葉が落ち、枯れ木に赤い実の花が咲いたように見えます。
 撮影場所の群生地、唐花見湿原ではこれからが見頃になるでしょう。 

【登場人物を少しずつ紹介します】
森本智紘……店に飾られた肖像画の主。
      22歳で早世した〔月の光〕常連で、稲作の親友。
      彼の亡くなり方がみんなの心に影を落としている。

☆お知らせ☆―明日明後日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/10/20

監視×2

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「一人、しつこいヤツがいるんだ」
「?……お坊ちゃん達は、正体バラせば泣いて逃げるだろ?」
「そこが可愛いと言うんだ」
「おねえ、のろけに来たのか?」
 稲作は昌子を‘おねえ’と呼ぶ。
「そういう問題じゃない」
 昌子は、俺の耳元で囁いた。
 次の瞬間、俺は昌子を突き飛ばし、胸ぐらを掴んで吊り上げた。
「止めろ!!撃ち殺される!」
「ほんとだ」
 今まで上手く隠れていた男達が、こちらに向かって一斉に動いた。ただのチンピラではなく、プロの動きだ。
 俺は、彼らに向かって両手を挙げる。降参のポーズだ。
「あいつら、どこにでも付いてくるんだ」
「金掛けてるな」
 俺の頭上にもオナガのぴょん太が飛んでいる。こっちはタダだ。
「あたしが結婚して幸せになったら、あきらめるんだとさ。その前にこれじゃデートも出来ねえだろ?」
「一般人には気付かれないだろ」
 俺は男達の方を顎でしゃくった。
「見られてて、デートなんか出来るかよ」
「ちょっと息抜きさせてやる。走れ!」
 俺たちは、〔月の光〕の駐車場まで走り、止めて置いたバイクに跨ると疾走した。


 風太君の次はツヨシ君。
 好きだった動物たちが注目を浴びるのは嬉しいですね。子供の頃、動物園に行くとレッサーパンダとマレーグマを見るのが楽しみでした。レッサーパンダは顔が可愛いから、マレーグマは、熊とは思えないだらけた姿、笑ったような弛緩した顔が見たくて檻の前に行ったものです。
 今、そのマレーグマのツヨシ君が人気者だそうです。
 食べ物を年上のメスに横取りされた時、そのメスに遊んでもらえなかった時、二本足で立ち上がって、前足で頭を抱え激しく頭を振りながら「ウオーン」と啼くのです。そんなに駄々をこねなくてもいいのに、という様子が可愛いのです。CMにも出演していますね。
 人間にもツヨシ君のような男の人、増えていません?

 今日の写真は「アケボノソウ」(2005.10.15長野県で撮影)
 以前紹介しましたが、ほとんど枯れていた湿原で出会った一輪です。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/10/19

でももう花はいらない

PICT00881
「ちわ~す」
「いらっしゃいませ、稲さん」
 〔月の光〕。カウンター席に座っていた赤木昌子がこちらを見た。
 予想通り、いや、期待通りだ。
 昌子は出ようと、目で合図した。
「絹さん、また後で来る」
 
 〔月の光〕を出て河川敷を歩く。
 前を行く昌子の髪が風になびいている。あの頃のままだ。色を付けようとかパーマを掛けようとかいう考えはないのだろう。
 昌子はいい女だ。
 新宿で評判の麗華や彼女の店の連中と比べても引けをとらないだろう。
「もう5年だ。少しは考えろ」
 振り返った昌子が言った。
「何を?」
「うちに来いよ」
「言ったろう、コネは嫌だと」
「その日暮らしじゃ、嫁ももらえねえだろ?」
 気付いただろうか。俺が二人いるようなこの会話。昌子は俺の前では、何年たっても不良少女のままだ。
「そんな気は無ぇんでな。お前こそそんなんじゃ婿が来ねぇぜ」
「期待を裏切って悪いが話は山ほどある」
 だろうな。みんなこんな昌子を知らないだろうから。
 こうして話しているとあの頃のままだが、俺たち二人の間には埋めることが出来ない溝がある。


でももう花はいらない(オフコース)

もう僕には花は咲かない
いつの間にか大事なものを失くした
もう戻れない道を振り返っても
人ごみに落としてきた
いくつかの愛は見えない

緑の髪に胸をおどらせ
歩いた学生時代は
夢のように過ぎて終わった
その時に落としてきた
かげりのない心も見えない

今は欲しくはない
*花なんて大人に 似合いはしない
 花なんて大人に 似合いはしない
花なんて大人に 似合いはしない
花なんて大人に 似合いはしない

*Repeat…

 僕とオフコースの出会いの曲。
 初めて聞いた時は誰が歌っているのか、どんな題名なのかも知りませんでした。新入生歓迎会でフォークソング愛好会の先輩方が歌ってくれたのです。
 茶髪は不良(ヤンキーではなく(^^;)といわれた時代、ほとんどの生徒が緑の黒髪だった時代です。
 秋には、あの時代を懐かしんで聞きたくなってしまうのです。

 今日の写真は「バイカモ」(2005.10.15長野県で撮影)
 キノコ続きだったので。
 梅花藻と書きます。他の花はほとんど終わっていたのに、水中のバイカモだけは咲いていました。湧水池など清流にしか咲けない可憐な花です。撮影地は姫川源流。

【登場人物を少しずつ紹介します】
赤木昌子……地元の有力会社赤木建設の美人社長令嬢で元不良。
      稲作、智紘の同級生。
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      稲作と相思相愛だったのだが……。

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2005/10/18

命日

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 あの頃。稲作は、今のアパートと同じ土地に建っていたボロボロのアパートに住んでいた。
《あの夜。
「俺ん家に泊まるの久しぶりだな」
「そうだね。電気、点けないで」
「襲う気か」
「ふふっ、やっぱり素敵だ」
 智紘がカーテンを開けると、青白い光が部屋の中を照らした。
「明日は満月なんだ」
「そんなもんいちいち覚えているのか?」
「みんな知っているよ、昨日は十三夜だった。和菓子屋さんの店先にススキがあるの気付かなかった?」
「知るかよ」
「お団子、食べ損ねたな」
「明日、食えばいいじゃないか」
「明日は売ってないな。……それに、月見の日に食べないと意味がない。縁側に台を置いて、お団子と、ススキと、秋の実りをお盆に乗せて――」
「俺ん家は、柿、栗、なし、ミカン、サツマイモだったな」
「お月様に暫く見て頂いてからいただきなさいっていうのが待ち遠しくなかった?」
「そういえば、耕作と二人でお袋の許しが出るまで正座して待った覚えがあるな」
「年に二回しか食べられない特別なお団子だったんだ。ただ上新粉を丸めただけなのに、おいしかったんだよ」
「俺は、こっちに来て驚いたんだ。中にあんこが入ってなかった」
「稲作の田舎のお団子はあんこが入っているんだね。……ねえ、ここってこんなに静かだった?」
 虫の鳴く声だけが聞こえている。
「二年も経つとガキも成長するのさ。朝なんか、きちんと挨拶が出来るぜ」
「そうだよね。……これ、食べる?」
 成長してないのはぼくだけだ。
 沼田のおじいさんにもらったリンゴを渡すと、稲作は自分のTシャツでちょっと拭いて囓った。カリッという良い音がする。
「稲作、ありがとう。きみに会えてよかった」
「?」
「十歳の夏休み、ぼくが庭に出ていなければ、きみが庭に迷い込んで来なければ、ぼく達はこうしている事はなかっただろう。縁ていうのは不思議だね」
「ああ」
「楽しかったな」
「何が?」
「今まで」
「これからだって、楽しいことあるぜ」
「そうだね。ぼくはとても幸せだった」
「過去形にするな」
「こだわるね?今も幸せだよ。みんなに愛してもらえたもの」》
 智紘と過ごした最後の夜。
 翌日、おまえは、あっけなく死んでしまった。
 俺は、おまえの事を守ってやれなかった。

 あれから5年……。
 俺たちはみんな元気でやってるぜ。新しい仲間も増えたし、妙もお前の傍に来ている。
「私もお参りしてもいいですか」
「もちろんだ。喜ぶぜ。……智紘、こいつが新しい仲間のジルだ。絹さんと妙はあとで来るから」
 仕事前の早朝の事だ。


 今日の写真は「ナメコ」(2005.10.14長野県で撮影) 
 野生のナメコは栽培品と似た形で生えていますね。説明の必要がない美味しいキノコですね。

【登場人物を少しずつ紹介します】
森本智紘……店に飾られた肖像画の主。
      22歳で早世した〔月の光〕常連で、稲作の親友。
      彼の亡くなり方がみんなの心に影を落としている。

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2005/10/17

さよなら

PICT00851
「ギャーッ!」
 一は膝を押さえて火がついたように泣きじゃくった。アパートに戻って風呂から出た直後だ。
「どうしました?一君」
「ちょっと転んだだけだろ?大げさに泣くな」
 俺は、脱衣室から声を掛けた。一は風呂から上がって、走り回って転んだのだ。全く落ち着きがない。誰に似たんだ。
「膝から血が出ていますよ」
 例によって、ジルは、一の膝をぺろりと舐めた。
「!?」
 ジルの行動に固まる一。
「今、救急箱を持ってきますから、じっとしていて下さい」
「大丈夫か!?」
「うわ~ん!」
 一は、俺が声を掛けた途端に泣きだした。
「驚かすなよ、ちょっと擦りむいただけじゃねぇか。……男は滅多なことで泣くもんじゃねぇんだぜ。俺も親父に言われたんだ。さあ、ジュース飲もうぜ」
「うん!」
 リンゴジュースを飲んでいる一は、ジルのトマトジュースが気になるようだ。俺はもちろんビール。
「ジル、一口くれ」
「どうぞ」
 一は変な顔をした。
「甘ぇ……」
「オレンジジュースですから」
「ウソだ!オレンジ色じゃねぇ!」
 一は、ジルが買い置いていたブラッドオレンジジュースの味見をしたのだ。
「楽しいですね、一君がいると」
「ああ」
 ずっとこのままという訳にはいかないだろう。

 昨日から、応接室の床に布団を並べて寝ている。並べても、一は俺の布団に入って来て、腕を枕にして寝ているから、一組しか使っていない。
「明日は、俺が飯とみそ汁を作ってやるからな」
「うん」
「梅干しは、お袋が作ったのがあるから」
「うん」
「もうすぐお兄ちゃんになるんだから、弟を可愛がらなきゃ、駄目だよ」
「弟なの?ほんと?」
「そうだ。お前は、弟を守る強いお兄ちゃんにならなきゃいけない」
「うん、なる!」
「稲作って言う名前、そう悪くはないぜ。みんながすぐに覚えてくれる」
「うん――」
 ふっと、腕から一の頭の重みと温もりが消えた。
 俺は起き上がって、一が居た場所を見詰めた。
 敷き布団が、小さく凹んでいる。

 俺が3歳の時。
 赤ん坊が生まれる直前でお袋に構ってもらえなかった。
 みんなが笑うから、自分の名前が嫌いだった。
 好きな絵本の主人公の名前を自分の名前だと言い張っていたことがある。一だと。
 そんな時、一度だけ、親父に遊園地に連れて行ってもらった覚えがあるんだ。
 今の俺は、あの頃の親父とそっくりで……。

「……一君、帰りましたか」
 ジルが部屋の入り口に立っていた。
「知っていたのか」
「あなたと同じ味がしました。初めて会った時のあなたと同じ味が」
「俺が作る朝飯、食わしてやれなかったなぁ」
 手のひらに、柔らかな坊主頭の感触が残っている。

 翌日〔月の光〕。
「いらっしゃいませ、あれ?一君は?」
 稲作がジルと一緒にやってきた。
「帰った。……夕べ親が連れに来た」
「父親は、稲作じゃなかったのです」
「そういうことだ」
「うそー、あんなにそっくりだったのに?さよならぐらいしたかったな。また遊びに来てくれるかなぁ」
 先に来ていた妙ちゃんは残念そうだ。ちょっと母性本能が目覚めかけたのかも知れない。
「何か、一君がいないと静だね」
 僕も残念だ。今日のお昼は何を作ってあげようかと張り切っていたのに。
「うん、何だか寂しい」
「お母さんは、稲さんの知り合いだったの?」
「まあな」
「大丈夫なのかなぁ、一君。一人で稲作の所なんかに置き去りにされたんだよ。お母さんとお父さんに愛されているのかなぁ」
「あいつが両親に愛されていることは、俺が保証する」
「稲さんがそう言うのなら、大丈夫だよ、妙ちゃん」
「もっと一緒に遊びたかったなぁ。写真、撮しておけば良かった」
 たった2日間の出来事だったのに、僕らは、変に脱力してしまった。
 それぞれが、これからのことに思いを巡らせ、希望と不安を抱いていたのだ。
「何か、子供欲しくなっちゃった。ねぇ、稲作」
「悪くなかったぜ。父親の真似事も」


 このエピソードは、今流行のファンタジー風にしてみました。
  *最初から読みたい方はこちらをクリックしてください。10/8分に飛びます

 今日の写真は「ブナハリタケ」(2005.10.14長野県で撮影)
 ブナの倒木にびっしりと付いている様子は大変美しく、針茸の名の通り下面は無数の針が垂れ下がったようになっています。
 独特の甘い芳香は、昔のお母さんの白粉みたい。持ち帰る車の中も甘い香りで一杯になります。
 炊き込みご飯にしても香りは消えません。
 パン粉を付けてフライにしたら、歯ごたえは豚もも肉の薄切りのようで、香りは消えず、キノコだと信じてもらえませんでした。
 泊めていただいたペンションのご主人によると、キノコは天ぷらよりパン粉を付けたフライの方が低温で火が通るためうま味や香りがとばないのだそうです。
 ブナハリタケと一緒に市販のマイタケもフライにしてみました。美味しくいただけましたから、皆さんもぜひお試し下さい。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/10/16

レトロな遊園地

PICT01011
 午後はオフ。
 というと聞こえがいいが、仕事がないし日曜日だから、一をどこかに連れて行ってやろう。
「どこに行きたい?」
「遊園地!」
 俺は、‘親子水入らずで行っていらっしゃい’というみんなに見送られて、ウエスタンスタイルで決めた一を、華蔵寺公園に連れて行った。華蔵寺公園遊園地は隣の伊勢崎市にある、江戸川乱歩の小説に出てきそうなレトロな感じの遊園地だ。
 二人で豆汽車に乗り、バッテリーカーに乗る。3歳児だから、保護者同伴じゃないと駄目なのだ。子供の身体ってやつは柔らかくて暖かい。髪だってビロードのように柔らかいのに、そのうち俺のように針金みたいな髪になってしまうのだろう。
 ‘小型の乗り物’というのは子供一人で乗せても大丈夫。
 一はご機嫌で俺に向かってVサインを出している。
 こんな時、父親だったらカメラを構えるものなのだろう。使い捨てカメラを買っておけば良かった。
 昼飯は売店で買ったホットドッグとジュースをベンチで食べる。
「チキンナゲットも食うか?」
「うん!」
 俺たちは、誰が見ても親子に見えるだろう。このままずっと、一と暮らすのも悪くない。
 メリーゴーランドに乗り、大観覧車に乗った。
「うわーっ、高けぇなぁ」
「降りたら、ソフトクリーム食おうぜ」
「うん、チョコ味がいい」
「俺も遊園地に、一度だけ、親父に連れてきてもらったことがあるんだ」

「ただいま!!」
「お帰りなさい、元気がいいね。楽しかった?」
「うん!楽しかった!」
 稲作と一君が遊園地から戻ってきた。手をつないで入ってきた二人は、誰が見ても仲良し父子だ。
 ここは〔月の光〕。
「お腹空いたでしょう?何を食べますか、一君」
 と、僕。
「スパゲキーとプリン!」
「あれ?一ちゃんはプリンが好きなんだ。お父さんは嫌いなのに」
 と、からかう妙ちゃん。
「俺だって、子供の頃は食ったぜ。ガキの頃から酒飲んでたわけじゃねぇ」
「稲作だったらほ乳瓶に日本酒が入ってても不思議じゃないよね、人肌の濁り酒とか」
「バカいうな」
「あれ?ジルとオバチャンは?」
 と、一君。
「ジルちゃんは一足先に帰ってお風呂や布団の準備をしておくって。……麗華さんは仕事があるからって帰ったよ。一君によろしくって」
 色々が一君を中心に回り始めている。
「手に負えなくなったらいつでも言って、だって」
 と、妙ちゃん。麗華さんは、もしもの時は一君を引き取る気満々の様子だった。
「一君はどんなスパゲティーがいいですか?」
「赤いの!」
「トマト味がいいんだね。具は何がいいかな」
「俺専用のナポリタンを作ってやってくれ」
「味、濃いんじゃない?」
 妙ちゃんが味が濃いのではないかと心配した稲作専用のナポリタンは、タマネギ、ピーマン、ウインナーの具をバターで炒め、ケチャップで味付けをしたものだ。昔のデパートの食堂や、昔の喫茶店、今ではお弁当の付け合わせなどに入っている懐かしい味のスパゲティーだ。
「二人で同じものを食いたいんだ」
「稲作、自分が食べたいだけでしょう?」
「まあな」
 ナポリタンとカスタードプリンを目の前にした一君は目を輝かせた。
「どう?」
 今の子の口には合わないのではないかと、僕はドキドキしてしまう。
「うめえ!」


 華蔵寺公園HPはこちらです。江戸川乱歩感が味わえますよ。ドナルド~。

 今日の写真は「ハナイグチ」(2005.10.15長野県で撮影)
 カラマツ林に生える赤くて美しいキノコ。その上美味しいのです。
 ラクヨウ・ラクヨウモタシ・ジコボウ・リコボウなどの地方名があります。ナメコのような滑りと食感があり、信州の人に愛されているキノコです。
 ハナイグチが入ったきのこ汁は美味しいですよ。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/10/13

ファッションショー

P90600871
「一君、お父さんが帰ってくるまで、ジルちゃんとお留守番なんだ」
「うん」
 ここは〔月の光〕。
 一君は稲作のように大きくなるのだと、ホットミルクを飲んでいる。
「ただいま!……一ちゃん、こんな感じでいい?」
 妙ちゃんが、大きな袋を下げて入ってきた。
「はい、歯ブラシと、バナナ味の歯磨き。あとは下着と洋服。もっと大きい方が良かったかなぁ」
 衣類はみんな5~6歳用だ。
「奥の部屋でお着替えしようか。昨日の服のままでしょう?」

「ご免下さい」
「いらっしゃいませ、麗華さん!」
 一君をオモチャにしそうな人が、また一人やって来た。
 いつも通りの派手なロングドレス。
「マダム、いらしゃったのですか」
 ジルが連絡したらしい。
「だって、逢いたかったのですもの。――あなたが一ちゃんね。可愛いわぁ」
 一君は、麗華さんをじろりと睨む。
「うそつき!俺は、可愛くなんかねぇ!オバサンもジルの一味だな」
 一君は、麗華さんに警戒心むき出しだ。
「まぁ、オバサン!?言うことまで、広木にそっくり。一ちゃんにお土産があるのよ」
「食いもんか?」
「ケーキもあるわよ」
「わーい!」
 後から、大きな袋を幾つも抱えた殺し屋みたいな男が入ってきた。
「青田さんまで」
 と、ジル。
「俺も見に来たんだ。期待通りだぜ」
 青田さんはジルに向かって親指を立てた。麗華さんの店の用心棒だそうだ。

「とりあえず着せてみたけど、イメージと違うわねぇ」
 一君は、それはないだろう、というような格好で奥の部屋から登場した。麗華さんに言われたのか、くるりと回ってポーズを決める。
 襟元と袖口にフリルが付いた真っ白なブラウスに、紺のベルベットのスーツ。どこかの国の王子様みたいだ。服だけは。中身は日に焼けたくりくり坊主の子猿君みたい。鼻水垂らしてるし。
 次は、入学式みたいなカチッとしたスーツ。普段着としては、あり得ない。
 次は、青田さんみたいな黒ずくめ。これは、ありかも。父譲りの強面には似合っている。小さなサングラスを胸ポケットに差している。
 次は、ウエスタンスタイル。胸元にヒラヒラの付いた革のベストと小さなカウボーイハットが可愛い。ベストを脱げば普通にジーンズとスニーカーだ。
「これが一番似合うわね」
 
「ちわ~す。ジル、子守り頼んで悪かったな。マダム、青田さんまで。何の騒ぎだ?こりゃ」
 稲作がチョビの散歩から戻ってきた。
「オヤジ!」
 一君は、稲作の片脚にしがみついた。
 稲作は、一君の帽子をとると、大きな手のひらで、しがみつく一君のくりくり坊主頭を力強く撫で回した。


 今日の写真は「オオイヌタデ」(2003.09.06群馬県で撮影)
 大犬蓼と書きます。昨日のイヌタデと比べてみましょう。名前の通り全体的に大型で、花の先が垂れ下がっているのが特徴です。

【登場人物を少しずつ紹介します】
麗華……クラブ〔Madam☆Rose〕のマダム。年齢不詳の超美形(♂)。

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2005/10/12

メイド・ロボット

P82500511
 一は、夕べ夜泣きもせずに俺の隣で寝て、食卓についている。
 テーブルにはフレンチトースト、スクランブルエッグ、サラダ、ヨーグルト、果物。俺の前にはコーヒー、一には牛乳、ジルにはトマトジュースが置かれている。
「珍しいパンだな」
「‘クレーマー・クレーマー’を思いだしたものですから。一君には柔らかくて食べやすいかと思いました」
 古い映画か。
 ダスティン・ホフマンが息子にせがまれて作ったフレンチトーストは黒焦げだったが、ジルが作ったものは焼き加減も甘さも非の打ち所がない。
「オヤジ、すげーな」
「何がだ?」
「ロボット買ったのか。オフクロ、ブスだから」
 口が悪い子供だ。
「買ってねえ」
 一はジルを指さした。
「メイド・ロボット。昨日、絹さんの所のテレビでやってた」
「何だ?そりゃ」
「ニュースかワイドショーで、秋葉原の特集を放映したのでしょう。今一番注目されている場所ですから」
 でかい電気屋が出来たんだっけ。その上オタクも注目されている。
 一には、アニメかゲームのキャラクターとコスプレした娘の区別が付いていないようだ。
 言われてみればジルは、メイドカフェのウエイトレスみたいだ。ゴージャスな金髪碧眼、自分の想像力の中で一番の理想の姿に見えてしまうのだから。短いスカートとフリルの付いた真っ白なエプロンのメイド服を着せたら、きっと‘萌え~’って感じになるだろうな。
「鼻の下が伸びていますよ、ご主人様」
 げっ、妄想を読まれた。僕(しもべ)は、どちらかと言えば俺の方なのだ。
「やっぱりだ。ご主人様って言ったぞ」
「止せよ、ジル。子供に冗談は通じねぇぞ」

「どうしました、一君。お口に合いませんか?」
 一は、朝食になかなか手を付けようとしない。
「ご飯とみそ汁と納豆と梅干し――」
「あ?」
「――じゃねぇと、腹の足しになんねぇ」
「お前、肉体労働者か?……今日はジルが作ってくれたものを食え」
 ジルは気を悪くしているかと思ったら、珍しく笑っている。
「うふふ、あなたにそっくりですね。明日はあなたが腕を振るって下さい」
「好き嫌いしてると、俺みたいに大きくなれねぇぞ」
「食う!」
 一は、フレンチトーストにかじり付いた。
「いかがですか?」
「うめえ!」
 一は、俺にそっくりなガツガツした食べ方で、朝食と格闘している。
「一、もう少しゆっくり食え。よく噛んで。逃げやしねぇから」
「うん。……ジル、どうしてトマトジュースしか飲まねぇんだ?やっぱりロボットなのか?」
 顔を上げた一は言った。
「私はダイエット中なのですよ、一君」


 今日の写真は「イヌタデ」(2003.09.06群馬県で撮影)
 犬蓼と、書きます。別名アカマンマ。
 葉に辛みがないため、役に立たないから、犬蓼。
 役に立たない=犬が付く。植物にはそういう名前が多いのです。イヌヨモギ、イヌゴマ、イヌガラシ……イヌノフグリは違いますね。
 猫が付くものは、形や見た目に寄る物が多いですね。ネコノメソウ、ネコノシタ、ネコヤナギ。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/10/11

父子ごっこ

P51200161
「稲作、一君に私のベッドを使ってもらって下さい」
「いや、応接の床でいい。俺が一緒に寝る。ベッドは落っこちると大変だからな」
「羨ましい。一君、お布団を敷くのを手伝ってくれますか?」
「やだ!」
 一は、つないだジルの手を振り払った。

「一人で歯磨き出来るか」
「うん」
「歯ブラシ、大きいのしか買い置きがねぇんだ。明日買ってくるから、今日はこれで我慢しろ」
「うん。……バナナ味」
「なに?歯磨き粉か?それも明日買ってやるから。歯磨いたら、風呂だ」  
「うん」
 一は嬉しそうにうなずいた。
「稲作、本当の父親みたいですね」
「しょうがねぇだろ。絹さんや妙に頼むよりは俺の方がまだマシだと思うぜ」
 3人で事務所兼住居のアパートに戻ってきている。
 歯磨きを終えた一は、言われた通りにシャツを脱ぎだした。ぽこんと突き出た幼児のお腹は突いてみたくなるほど可愛い。でべそも愛嬌だ。
 一はシャツが頭に引っ掛かってなかなか脱げずにいる。
「一君、手伝いましょうか」
「やだ!!さわるな!!」
 俺がシャツを上に引っ張ると、シャツが脱げてくりくりの坊主頭出てきた。
 一の剣幕に、ジルは一歩下がったところから俺たちを見ている。
 小さな子供には、ジルが自分たちとは違うことが感じられるのかも知れない。
「せっかく手伝ってくれるというのに、何で嫌がる?」
「バケモノ、さわるな!」
「一!言って良いことと悪いことがある。ジルのどこがバケモノなんだ?」
「恐いんだもん。手が冷たいんだもん」
「何が恐い?」
「いいんですよ、稲作。慣れていますから」
「こいつのために良くねぇだろう。言ってみろ、一」
「目と頭の色が恐い」
「テレビで見たことあるだろう。ジルは外国の人だから俺たちと目と髪の毛の色が違うんだ。恐くなんかないんだよ。‘ごめんなさい’しなさい」
 一は、ジルの傍に行って、ちょこんと頭を下げた。
「一君、頭を撫でてもいいですか?」
「うん!――姉ちゃん、オヤジの愛人か?」
 お袋さんは、一に昼メロでも見せているのか。
「私は、一君と同じ男の子ですよ」


 今日の写真は「ハルタデ」(2004.05.12群馬県で撮影)
 春蓼と書きます。タデの仲間では一番早くに見られます。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/10/10

オヤジと呼ばないで

P82500301
「ちわ~す」
「こんばんは」
 稲作とジルがやって来た。
「稲さん、大変だ。そうっと奥の部屋を見てきなさい」

「何の冗談だ」
 戻ってきた稲作が言った。
「お父さんは君で、お祖父さんは耕助さん、お祖母さんは早苗さんだそうだ。身に覚えは?それとも僕らに隠して育てていたのか?」
「ネズミにもコウモリにもそんな報告は受けていません。それにしても可愛い。寝顔があなたにそっくりだ。食べてしまいたい」
 ジルの感性は僕らとは違うらしい。
「身に覚えがないとは言い切れない」
「なんか煮え切らないね」
「わかんねぇんだもの」
 わからない。そうなのかも知れない。妙ちゃんのような素人娘にはシャイな稲作も、夜の街ではもてるらしい。

 一君が、奥の部屋から目を擦りながら起きてきた。
「オヤジ!?」
 稲作を見つけて駆け寄ってくる。
 親子の対面。
「お前、名前は?」
「一」
「一か。……こっちにおいで」
 一君は、稲作の片脚にしがみついた。
 稲作は、大きな手のひらで、そっと一君のくりくり坊主頭を撫で回す。
「帰ろう、俺んちに」
「うん」
「稲さん、連れて帰るの?」
「この子が大事なら、そのうち何か言ってくるさ」
「来なかったら?」
「わかんねぇ。一が俺をオヤジと言ってくれるからなぁ」
 一君は、稲作が出した人差し指を、小さな手のひらで掴んだ。
「オヤジ!肩車!」
「そうか」
 稲作は、一君を肩に乗せると帰って行った。

 残された僕らは、それぞれつぶやいた。
「ボクがママ、じゃなくてお袋になっても良い」
 と妙ちゃん。
「私がもらって、理想の姿に育てたい」
 と、ジル。
「お母さんが迎えに来てくれるのが一番なんだけれどねぇ。まだあの子には母親が必要だ。出来れば両親が……」

 
 今日の写真は「シロバナサクラタデ」(2003.08.25群馬県で撮影)
 白花桜蓼と書きます。長い雄しべが印象的な、華やかな蓼。
 7日から田んぼに生える植物を紹介しています。しばらく続けてみますのでご覧下さい。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/10/09

推測

PICT00511
「こんにちは、絹さん」
「いらっしゃいませ、妙ちゃん」
 お客様は小さな男の子が一人。いつも稲作が座る席に腰掛けている。妙ちゃんの所からは、くりくりの坊主頭しか見えないだろう。
「珍しいお客さんだね」
「うん、とっても珍しいんだ。――あ、妙ちゃん!」
「坊や一人でお利口だね。お母さん待ってるの?」
 妙ちゃんは、一君が座る席の隣に行き、しゃがんで声を掛けた。
「坊やじゃねぇ」
 味噌を塗った大きなおにぎりを頬張りながら答える一君。
「一君だよ、妙ちゃん」
 こちらを振り返った妙ちゃんの頬が、笑顔が、引きつっている。
 こちらに走って戻る。
「どういう事よ!絹さん」
 耳元で言うには声が大きい。
「お父さんは稲さんだって」
「言われなくたってわかるよ!にゃう~!……水1杯ちょうだい」
「落ち着いて。あの子に罪はないんだから」
「わかってるよ」

 気を落ち着けた妙ちゃん、再挑戦。
「坊や――」一君はじろりと妙ちゃんをにらむ。
「じゃなくて一ちゃん幾つ?」
 一君は指を3本出した。3歳?にしては大きすぎる。
「大きいのねー。お母さんの名前は?」
「わかんねぇ」
「じゃ、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは?」
「耕助と早苗。……姉ちゃん、オヤジの愛人か?」
 おにぎりを食べ終えた一君は、大きなあくびをした。

「瓜二つだね。稲さんの子供時代はきっとあんな風だっただろうね」
「憎たらしいところまでそっくり。絹さん、フルーツパフェ!」
「はい、ありがとうございます。……お味噌を塗ったおにぎりが好きなんて、好きな食べ物まで同じなんて可愛いよね」
「可愛いかなぁ?3歳にしてはしっかりしているけど。お母さんの名前、わざと言わないのかもよ」
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの名前を言えるのだものね」
 一君を奥の小部屋に寝かせた僕らは、あれこれ推測する。
「一ちゃんだからね、天才なのかも」
「じっちゃんが耕助だから?」
「お父さんがバカボンパパだから」
「誰それ?」
 歳の差で、話がかみ合わない僕ら。

「ちわ~す」
「こんばんは」
 稲作とジルがやって来た。

 
 今日の写真は「キカシグサ」(2005.10.08群馬県で撮影)
 和名は不明だそうです。高さは10㎝ほど。昨日のホソバヒメミソハギの足下で小さな花を咲かせていました。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/10/08

この子誰の子

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「オヤジ来てるか?」
「いらっしゃいませ――?」
 あるべき場所にお客様の姿がない。視線を下に下ろすと、小さな男の子。5,6歳か。
「ぼく、どこの家の子?お父さんに、ここで待つように言われたの?」
 見たことがある子だ。近所の子供?
「ぼくじゃねえ、オレだ。オフクロに言われた」
 この小ささで親父お袋は珍しい。一般的にはパパママだろう。
「ジュースでも飲んで、お父さん待っていようか」
「オレ、金ねえぜ」
「お父さんにいただくから心配しなくていいよ」
「じゃ、みそむすびもくれ」
「みそむすび?」
「そんなことも知ねぇのか。味噌を塗ったにぎりめしだ」
 この言いぐさ。まさか……。
「ぼく、お名前は?」
「ぼくじゃねえって言ってんだんべぇ。一(はじめ)だ」
「一君って言うんだ、お父さんのお名前はいえるかな?」
「広木稲作」
「!?」
 見たことがあるはずだ。この子は稲作にそっくりなのだ。話し方まで。


 今日はシーズン最後に近い休耕田観察に行きました。
 見られたシギ・チドリは、コチドリ・ツルシギ・コアオアシシギ・アオアシシギ・タカブシギ・ダイゼン・アメリカウズラシギ。田んぼの水がほとんど抜かれてしまっているため、みんな僅かに水が残ったところに集まっていました。

 今日の写真は「ホソバヒメミソハギ」(2005.10.08群馬県で撮影)
 細葉姫禊萩と書きます。帰化植物で田んぼの雑草ですが、よく見るとピンクの可愛らしい花を段々に咲かせています。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/10/07

想い出の味

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「絹さん、いいもん持ってきたぜ」
 いつもの通りスーパーのレジ袋に入れて稲作が持って〔月の光〕にやってきた。
「ギンナンだね、それとクルミ」
 ギンナンはきちんと下処理してあり、クルミは中身が出してある。
「公園と河原で拾ってきたんだ。午後はオフだったから」
 オフというと聞こえがいいが、ただ仕事がなかっただけのような気もする。
 彼がギンナンやクルミをしゃがんで拾っている姿を想像してしまった。色黒、長髪、まるで原始人だ。
「何笑ってるんだ?ギンナン炒ろうぜ」
 炒ったギンナンを割ると、半透明に見える美しい緑色。
「綺麗だね」
「ああ、美味いな。……なあ、絹さん。頼みがあるんだけど」
「なあに?」
 
 2時間後。
「なになに?香ばしい匂い!」
 匂いに誘われて妙ちゃんがやってきた。
「いらっしゃいませ、妙ちゃん。クルミのケーキだよ」
「絹さん、一番良いところを一切れ皿に載せてくれ。好物だったんだよ、お袋さんが作ったクルミのケーキが」
 稲作は、店に飾られた智紘の肖像画にケーキを供えた。
「そうなんだ。……ボクは、キミのことをぜんぜん知らない。会っていれば、きっと仲良しになっていたのに」
 妙ちゃんは、自分とよく似た肖像画に話し掛けた。
「このケーキに入れてもらったオニグルミは、俺と智紘が友だちになった切っ掛けなんだ」


 今の季節、必ずニュースでスズメバチの話題が出ますね。
 彼らはクマが天敵なのだそうです。クマのような黒っぽい色の服装は避け、白い帽子をかぶり、香水に反応するので付けるのは止めましょう。
 植物観察を趣味にしていると、ちょっとした林を歩くだけでもスズメバチに遭遇することがあります。独特の低い羽音で近付かれると、思わず首をすくめてしまいます。羽音が聞こえたら、急な動きをせずにそっとその場を離れる事にしています。
 先日も、ヤマノイモのムカゴを見つけ、夢中で採っていたら、周りを飛び回られ、途中であきらめて帰りました。飛んでいたのは民家の近くに丸い巣を作る黄色スズメバチではなく、一回り大きくてオレンジと青のはっきりした色のコントラストのオオスズメバチでした。綺麗ですが恐いハチです。その時、少しだけ採れたムカゴは塩ゆでにしていただきました。 
 
 今日の写真は「チョウジタデ」(2005.09.19群馬県で撮影)
 丁字蓼と書きます。花が丁字に、葉が蓼に似ているからだそうです。
 田んぼにたくさん咲いていますが、花が小さいので目立ちません。

【登場人物を少しずつ紹介します】
森本智紘……店に飾られた肖像画の主。
      22歳で早世した〔月の光〕常連で、稲作の親友。
      彼の亡くなり方がみんなの心に影を落としている。

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2005/10/06

大人の科学

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「皆さん、準備が出来ましたよ」
「何だ?何が始まる?」
 店の電気が消え、天昇、壁、一面に満天の星空が広がった。

「なんだなんだ?カラオケでも始めるのか」
「やはりここは暗いから、よく映りますね」
「オリオン座はどれだ?俺はそれしかわかんねぇんだ」
「親方、カシオペアや北斗七星くらいわかるだろう。これと、これだ」
 篠原先生は天井の星に向かって指を差す。
「どれどれ?わかんねえなぁ」
「これが夏の大三角形。この明るい星が、ベガ、デネブ、アルタイル」
「大三画関係?すげーなぁ」
「親方、一杯飲んでるのか」
「よし!稲の意見に乗った。……♪別れ~るこ~と~は辛い~け~ど~」
「しょうがないなぁ、親方、私はこの歌がいい。♪あの娘~どこにいるのやら~」
 〔月の光〕に集まったオヤジ達の声は、妙に生き生きしている。
「絹さん、こりゃ何だ?何の集まりだ?」
「何の集まりだろうねぇ。これ、‘大人の科学’っていう本の付録なんだよ」
「オトナの?エロ本か?」
「違う!僕と親方は学研世代なんだ」
「ガッケン?」
「僕らが小学生の頃はね、毎月学研のおばさんが‘科学と学習’っていう雑誌を学校に売りに来たんだ。付録が毎月楽しみでね」
「俺は学習しか買わせてもらえなかったぜ。少し勉強しろって」
 と、親方。親の言うことを聞かなかったようだ。
「私が子供の頃はそういう本はなかったな」
 篠原先生は二人よりだいぶん年上だ。ここにいる理由は、星が好きだからなのだろう。
「僕は、科学派でした。トランジスタラジオなんか必死で組み立てて、聞こえた時の嬉しかったこと」
 絹さんは、子供のようにはしゃいでいる。
「?」
「本屋にこれが売っていて、子供の頃のことを思い出したら、つい買っちゃたんだ。今月の付録はピンホール式プラネタリウム」
「以外と細かい作業だったな」
「子供の頃より、指先が鈍ったのかも知れないですね」
 絹さんと親方は共同作業をしたらしい。

「皆さん、こんばんは。歌声が聞こえていました。コンサートですか」
「ジルちゃん?いらっしゃい」
 ジルは真っ暗な店の中をすたすたと俺の方にやって来て、耳元で囁いた。
「黙って出て行かないで下さい。あなたが暴れたら私しか押さえられないでしょう」
「もう暴れねぇよ。お前、顔の傷は?」
「治りました。お陰様で」
「ジル君、体調はどうかね?」
 この中で、俺の他に篠原先生だけがジルの秘密を知っている。
「良好です。今は特に。ねえ、稲作」
 一瞬、ジルの全身が輝いた。
「ばかやろう」
「……絹さん、ピアノを弾いてもいいですか」
 ジルが奏でたのは、ディズニーの星に願いを。

 
 〔月の光〕の僕らの会話は、先日のきのこ狩りの夜にされた話が元になっています。
 夏の大三画関係とか、学研の科学と学習とか、大人の科学とか。
 その時の話題になったピンホール式プラネタリウムの付録が気になって、買ってしまいました。組み立ては久しぶりに楽しめましたし、僕は気に入りました。
 
 今日の写真は「ツクバネソウの実」(2005.10.01群馬県で撮影)
 名前の通り、羽子板の羽根みたいですね。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/10/05

プラネタリウム

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「いらっしゃいませ、稲さん大丈夫なの?」
「あ?」
「お腹。ふらふらしているし」
「もう治った。何か食わしてくれ」
 お粥だけじゃ腹が減って眠れない。寝過ぎのせいもある。
 ジルのおしゃべりめ。ヤツが部屋で休んでいる間に抜け出して来たのだ。もちろん〔月の光〕に着くまでの間、頭の上をコウモリは飛んでいた。
「春と秋が油断するから一番危ないんだ。古い物を食べちゃダメだよ」
 そっちの食中毒ってことになっているのか。最近は古い物を食いたくたって食えない状況にある。消費期限切れの食料はジルが容赦なく捨ててしまうからだ。
「おい、病原菌を振りまくなよ」
 絹さんにしゃべったのはジルじゃなかった。チョビの散歩を頼んだ便利屋の親方。
「親方。何でここにいるんだ?遅いから明日挨拶に行こうと思ってたんだ。迷惑かけてすまなかった」
 夜の10時を回っている。
「いちゃ悪いか、俺だってたまにはコーシー飲みたいこともある。誰かさんのせいで余分な運動したからな。いってぇどんな散歩させてんだ」
「チョビは大型犬だから、たくさん運動させないとな」
 チョビは飼い主と俺と親方にしか心を開かない超大型犬。グレート・デーンという種類だ。
「大丈夫なのか?近付くな」
「移る腹痛だったら今頃ここにいねぇよ。どっかの病院の隔離病棟だ」
「なぜうちに診せに来ない。腹痛を軽く見ない方がいい。こっちに来なさい」
「え?」
 なぜ先生までいるんだ?
 俺は一番奥の席にいる篠原先生の傍に行った。彼は近所の開業医だ。
「何食べた?わざとじゃないだろうな」
「まだ変か?わざとじゃねぇ」
「わざとだとしても、懲りただろう」
「わざとじゃねぇって!」
 ベニテングタケをトリップ目的、マジックマッシュルームとしてわざと食うやつがいるらしい。美味かったけど二度とご免だ。
 
「皆さん、準備が出来ましたよ」
「何だ?何が始まる?」
 店の電気が消え、天昇、壁、一面に満天の星空が広がった。


 今日の写真は「シラタマホシクサ」(2004.09.29愛知県で撮影)
 白玉星草と書きます。秋の湿原、緑の中の天の川のようです。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/10/04

二人の関係

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「んが~……ん?」
 事務所。稲作は、ソファ兼ベッドの上で何度目かの目覚めを迎えた。
「目が覚めましたか」
「また見ていたのか。どうした!?その顔」
 ジルの綺麗な顔の左側、目の上から頬にかけて酷い傷がある。人間だったら大変だ。
「覚えていませんか。あなたが投げ飛ばしたのです」
「?」
「覚えていなければいいです。あなたをからかった罰が当たったのでしょう」
 俺がよく言うからジルまで使っている。罰が当たったなんて。
 起き上がった俺は、部屋の中を見回した。時計が壊れて床に散乱している。机の上にあった書類も、粉々になった花瓶も、灰皿も床の上。
「何があった?」
「あなたがしたことです。……よかった。今度暴れたら押さえきれる自信がありませんでした。もう陽が高い。今はあなたの方が力が強いですから」
 昼間のジルは力が人並みに落ちるのだ。
「陽が高い?今、何時だ?」
「11時47分です。お昼の」
「なんだと!?」
「チョビの散歩は、あなたが体調不良だと話して便利屋の親方に頼んでおきました」
「体調不良?」
「毒キノコを食べて暴れていると伝えた方がよかったですか」
「みんなは?」
「キノコを食べたのはあなただけでした。5本全部」
「ベニテングか?」
「だから篠原先生にも連れて行かなかったのです。あなたなら死にはしないから。……あんなに暴れるのなら連れて行けばよかった」
「すまなかった。本当に申し訳ない。……頭痛ぇ。……けど、腹減った」
 謝って、頭を上げ下げすると頭痛がする。
「でしょうね。全部吐いたし、お腹も下しましたから。お粥を温めてきます。今日は一日安静にしていたほうがいいでしょう。食べたらまた休んで下さい。私も少し休みます」
「待て!!」
 キッチンに行きかけたジルの背中がビクリと動いた。夕べ余程酷い目に遭わせたらしい。
「またですか!」
「こっちが先だぜ」
 俺は、ジルの後ろから首に左腕を回した。
「もう止めて下さい」
「飲めよ」
 ジルは不思議そうな顔をして俺を見た。いつも通りの青い瞳。
「いりません。明日、マダムの所でいただきますから」
「その顔で東京まで行くのか?」
「明日には少し戻るでしょう」
「夕べ何言ったか知らねぇが、これが俺の気持ちだ」
 ジルは、回した俺の手首に優しく噛み付いた。
 
 
 今日の写真は「チシオタケ」(2005.10.01群馬県で撮影)
 傷つけると暗赤色の液が出ます。確認のために裂いてみると手に液が。乾いても血のようでした。かぶれたりしませんが、食用も不可です。
 これは血潮茸ですが、一度見てみたいキノコに乳茸(チチタケ)というのがあり、こちらは傷つけると白い液が出ます。なぜ見たいのかというと、栃木県に行くと「チタケうどんあります」という看板を見かけることがあるからです。栃木の人の大好物が見てみたい、「チダケサシ」と植物にまで名前が使われるキノコを見てみたいのです。
 ちなみに、群馬県ではウラベニホテイシメジが人気ですが、食べたことはありません。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/10/03

本音

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「いらっしゃいませ、妙ちゃん、ついさっきまでジルちゃんがいたのだけれど、稲さんを迎えに行くって帰ったんだ。追い掛ければまだ間に合うかも知れない」
「いいよ、夕飯食べに来ただけだから。稲作とはさっきまで仕事で一緒だったし」
 ふと、思い出した。この三人、昔の稲作、智紘、春菜の関係に似ている。稲作の恋人だった春菜は、いつも智紘の次に自分を置いていた。だから二人の仲は破綻してしまったのだ。
「ねえ、妙ちゃん。稲さんのこと、好きなんだよね?」
「いやだなぁ、何言ってるの?あらためて言われると恥ずかしいよ」
「ごめんね。ジルちゃんに遠慮しているのかな、って思ったものだから」
「遠慮なんかしてないよ。……でもね、何か割り込めない所があるんだよね、あの二人の間って……」

 目覚めたら、幻覚に襲われるのだろうか。
 本当に、しょうがない人だ。
 だからこそ、私はこうして稲作の傍にいる。彼は、この私にさえ何の躊躇いもなく与えてくれ、渇きを癒してくれたのだ。
「ん?」
 事務所。ソファ兼ベッドの上で彼は目を開けた。
「目が覚めましたか」
「智紘?」
「私は智紘ではありません。まだ戻りませんか。何か飲みますか」
 目が据わっている。酒に酔わない彼の、泥酔状態を初めて見た。
「ジル!!」
 飛び起きた稲作は、私を突き飛ばした。普段のような抑制がきいていない。私は壁まで飛ばされた。大きな手が私の首を掴んで壁に押さえつける。震えが伝わってくるのはキノコの作用。身体が痙攣している。
 ベニテングタケは幻覚を見たり精神が錯乱する。その昔シャーマンが儀式に使ったりもした。
「一度やってみたかった!やっぱり死なねぇのか!」
 大きく見開かれた目が私を見詰める。尋常ではない。彼の本音を訊きだしてみようか。
 今度は私が彼を突き飛ばした。しりもちを付いている彼に問う。
「私を消したいのですか」
「わかんねぇ!」
「仲間になりたくないのでしょう」
 私は彼の傍に座り、彼の髪を撫でながら言った。
「違う!」
「それでは、妙ちゃんのことはどうするのですか」
「――妙は、そのうち俺を卒業する。してくんなきゃ困る!」
「田舎のご家族やこの町の皆さんを悲しませることになりますよ」
「――俺は、誰よりも長生きする!そうすれば誰も俺を知らなくなる――」
「試してみませんか」
 私は、銀の短剣を差しだした。
「何をする気だ」
「これで胸を貫けば、私は消えて無くなるはずです」
「はずだと?」 
「試したことがありません。さあ」
「いやだ」
「なぜです」
「わかんねぇ。……今のままがいいんだ、ずっと、今のままが」
 先のことを考えられない可哀想な人。愛おしい人。
 唇をいただこうか。
「うっぷ!」
 稲作は、私を払い退けると、トイレに駆け込んだ後、昏倒した。


 中毒の話を書きながら、きのこ狩りときのこ汁を堪能してきました。入れたキノコはハナイグチ、ナラタケとたくさんの野菜。食べる時間には辺りは真っ暗。正に闇鍋状態でした。口に入った感触で、このにゅるにゅる感はハナイグチ、なんて考えながら食べるのもまた一興でした。
 今回はナラタケの見分けを教えていただきました。聞いている時はわかるのですが、自分たちだけで鑑定して食べる勇気がなかなか湧かないキノコの一つです。

 一昨日、昼メロのお話の中で「デザイナー」の話が出ました。新聞を見てびっくり。今日から始まりましたね。これだったら舞台は日本、流行の韓流ドラマみたいですからいいかも知れません。一条ゆかりさん物は視聴率がいいのでしょうか。
 主人公はマンガから抜け出してきたような瞳の大きな女の子ですね。朱鷺さんの真っ白なスーツと教育係の長髪が笑えました。
 こちらは原作を読んでいるので違った楽しみ方が出来そうです。
 
 今日の写真は「ツリバナ」(2005.10.01群馬県で撮影)
 くす玉を割ったような、吊花の実です。花は小さくて目立ちませんが秋の実は可愛くて綺麗ですね。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
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2005/09/30

チョット、イイデスカ

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「稲さん、遅いね」
 たまに声を掛けないと心配になることがある。
 ジルは、今話題のハシビロコウのように微動だにしないことがあるのだ。
 ここは、〔月の光〕。
「迎えに行ってきます」
「どこにいるのかわかるの?」
「使いが来ました」
 窓の外にはコウモリが飛んでいる。

「ちょっといいですか、皆さんこんばんは」
 河川敷の片隅。
「なんだ?何か用かい?あいにく俺たちの神様は八百万の神だぜ。ワハハハハハ」
「やっさん、神道なのか?」
「さあな」
「言っている意味がわかりません」
「俺たちは宗旨替えはしねえってことさ」
「私は宗教者ではありません」
「何だ、あんたお目目が青いし金髪だから、改宗のお誘いかと思ったぜ。ワハハハハハ」
「友だちを引き取りに来ました」
「友だちって、そのデカい兄ちゃんかい?」
「はい」
「おい、りょうさん、兄ちゃんのお迎えが来たぜ」
「お迎えだと?」
 振り返って私を見た、りょうさんの目に映ったのは、
「智紘か?」
「知っているのですか」
「一度だけ、会った」
「私は智紘ではありません。稲作を連れて帰ります」

「すげえな、あの外人さん。あんな大男を担いで連れてったぜ」
「――」
「どうした?りょうさん。震えてるのか?」
「智紘は死んだはずなんだ。あいつ、亡霊だ。……稲作は、生きていたか?」
「いっぱい食って飲んで、りょうさんの隣で大の字になって寝てたじゃねぇか」


 お世話になっているサイト様の日記で、昼メロ(と言っていいのでしょうか)の話題がありました。今まで昼メロを見たことがなかったのですが、原作者のお名前が気になって、禁断の扉を開けてしまいました。「正しい恋愛のススメ」。マンガが原作のドラマです。
 登場人物がどんな風に描かれているのか目に浮かぶようですが、見るとガッカリするかも知れないと思うと書店で手にすることが出来ません。演じている俳優さんがピッタリだからということではなく、画風が変わっているだろうと思うからです。
 子供の頃、リアルタイムで一条ゆかりさんの作品を読んでいました。マンガって自分が作品に接していた頃の作者のクセが一番好きな表情だったり絵柄だったりしませんか。
「ティータイム」「デザイナー」「砂の城」「こいきな奴ら」時代の彼女の絵が好きです。
(完全な筆者モードの話題になってしまいました。お気付きでない方もいらっしゃるかも知れませんので。〔月の光〕のマスター僕(絹)は男性ですが、筆者は子供の頃「りぼん」を読んでいた女性です。チャンピオン、ジャンプも読んでいましたが)

 今日の写真は「ベニテングタケ」(2002.10.05群馬県で撮影)
 白樺の根本に輪になって生えている姿は、おとぎの国のキノコのようですね。この可愛らしさは、世界でも工芸品や絵画に描かれています。日本では、スーパーマリオを思い出す?
 食べようとは思えない、毒キノコらしい毒キノコですね。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

☆お知らせ☆―明日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/09/29

闇鍋

PICT00431
「稲作、稲作だろ?寄っていきなよ」
「あ?――りょうさん!生きてたのか」
「随分なご挨拶だな」
 黄昏時。
 仕事帰りの河川敷で4~5人の人影を見た。流行のアウトドアでバーベキュー、といった騒々しさがない。楽しげに鍋を囲む男達の中の一人に呼び止められたのだ。
 りょうさんの本名を知らなかった。会うのは6年ぶりか。今も時々仕事を回してもらっている便利屋にいた頃、派遣先で一緒に働いた仲だ。慣れない土木作業で吐いた弱音を聞いてもらったことがある。
 りょうさん達は一見ホームレス風だが、冬が寒いこの田舎でそんな暮らしは立ち行かない。住むところも、ある程度の仕事もあるのだろう。俺と同類だ。
「針金みたいでデカいし髪が長げーから、お前だと思った。相変わらずだな」
「お互い様だぜ」
「食ってかねーかい」
「何が入ってるんだ?」
 俺は鍋の中をのぞき込んだ。暗くて中はよく見えない。
「それぞれ持ち寄ったもんが入ってる」
「闇鍋か。靴下とか靴とか入ってねぇだろうな」
「マンガじゃねぇんだから。間違って入ってても、熱湯とこいつで消毒にならぁな」
 一人が焼酎の瓶を持ち上げた。
「何も持ってねぇけど、呼ばれてもいいのか?」
 俺は、輪の中に座って鍋を突いた。
「美味い!」
「ほら見ろ」
 りょうさんは、他の男たちから小銭を集めている。
「なんだ?」
「今の若いやつは癇性だから、絶対食わないって言うから賭けたんだ。おかげで儲かったぜ」
「気に入った。兄ちゃん、一杯やりな」
「すまねぇ」
 完全に一団にとけ込んでいる、俺。
「タマゴタケか。良い出汁がでてるぜ」
「タマゴタケ?おい、誰がキノコ入れちまったんだ?食えるやつだったのか?」
 みんな頭の上に?マークが付いている。
「食えるって?タマゴタケじゃないのか?」
「取ってきたの誰だ?」
「俺だ。赤いキノコで――」
 よかったタマゴタケか。
「傘に白い点々があって白樺の木の下で輪を描いてた」
「何だって!?そいつは毒キノコだ。みんな食うな――」
「あれ?兄ちゃん、寝ちまったのかい?案外酒に弱いんだなぁ」


 今日の写真は「タマゴタケ」(2005.07.23群馬県で撮影)
 真っ赤で毒キノコのようですが、とても良い出汁が出る美味しいキノコです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/09/28

彼岸花

PICT00251
「いらっしゃいませ、稲さん。珍しいね、花なんか持って」
 と、言ってもさっき田んぼで摘んできた彼岸花だ。
「こうして見ると綺麗なもんだな。妙がジルに持ってけって言うから」
「欧米の人はこの豪華さを好むらしいね」
「持って帰るまで差しておく物貸してくれ」
「牛乳瓶でいい?」
「ありがとう」

「いらっしゃいませ、ジルちゃん」
 アメリカンを飲んでいると、いつもの通りジルがやった来た。
「ネリネですか」
 テーブルの上の彼岸花を見たジルが言った。
「ネリネ?――妙からお前にだ」
「ネリネ、ギリシャ神話の水の神から取った名前です。南アフリカ原産の花、別名ダイアモンドリリー」
「これは彼岸花だ。原産は日本か中国だろう」
「美しい」
 牛乳瓶から1本、彼岸花を抜き取ったジルは、ちょっと鼻を近付けた後、パクリと花びらを口に入れた。
「お前!」
「うふふ、私に毒は効きません」
 俺を見たジルの瞳が青く輝く。
 元々生きていない者に毒は無意味だ。
 彼岸から、こちらを見ているお前に、この世界はどう映っているのだろう。


 今日の写真も「ヒガンバナ」(2005.09.25群馬県で撮影)
 昨日と同じ場所での撮影です。規模はずっと小さいですが一見、巾着田のようです。地方紙、ローカルニュースで話題になったそうで、雨模様なのに見学客が大勢いました。
*巾着田=埼玉県で有名なヒガンバナの自生地。

 ジルの言う「ネリネ」も園芸品として僕らを楽しませてくれています。
 色とりどりの花を咲かせるネリネは、彼岸花より時期が遅れて花も葉も同時に咲きますが、ヒガンバナ科の植物です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/09/27

曼珠沙華

PICT00261
「稲作!おにぎり持ってきたよ」
 コンビニの袋じゃない。水筒まで持っている。ってことは、妙の手作りの握り飯か?
 ちょっとだけ、不安が過ぎる。彼女が作った食べ物が美味かった試しがないからだ。
 見た目は上出来。きちんと同じ大きさの三角になっている。問題は中身か。
「どうしたの?美味しいよ。事務所の冷蔵庫に入っていた梅干し入れて握ってもらったから」
 握ってもらった?
「誰に?」
「決まってるじゃない、ジルだよ」
 なぜか安心してかぶりつく俺。冷蔵庫の中の梅干しは田舎のお袋の手作りだ。
「美味い」
「でしょ。はい、お茶。……なんかさぁ、もの凄く似合うよね。風景ととけ込んでるって言うか」
 ここは田んぼのあぜ道。周り一面の稲は穂を垂らして刈り入れの時を待つばかりだ。
 今日の俺は、ここの持ち主の婆さん、お由ちゃんに借りた年季が入った麦わら帽子をかぶり、首にタオルを巻いて畦の草刈り作業をしている。草刈りと言っても、先端に回転式の刃が付いた刈払機で畦に生えた草を刈るのだ。自分で言うのも何だけど、俺は器用だからこういう作業は得意なのだ。
「ねえ、スケジュールに入ってたから来てみたんだけど、これも仕事なの?」
 事務所の看板にある「探偵事務所」らしい仕事はほとんどない。恥ずかしいのに降ろせないのは大家の赤木昌子が承知しないからだ。しかも今日は、交換条件による無賃作業。田んぼに生えた野草や余った野菜をもらう代わりに、こうして草刈りの手伝いをするのだ。
「稲作、ちょっと大きくなりすぎてるけど、持ってくかい?」
 田んぼの持ち主、お由ちゃんが持ってきたのは大きく育ったオクラ。
「いつもすまねぇな」
「あれまぁ、そっちのお嬢ちゃんは許嫁(いいなづけ)かい?」
「ブーッ!」
 お茶を飲みかけていた俺は思わず吹き出した。
「お由ちゃん、水戸黄門の見過ぎだぜ」
「私は月形竜之介の黄門様が好きだった」

「綺麗な花なのに、毒があるんだよね」
 妙の前には、刈り残して置いた彼岸花が揺れている。
「ああ、でも食べられるんだよ」
 と、お由ちゃん。
「根っこを摺り下ろして、水で何回も晒せば毒が抜けるらしいぜ」
「よく知ってるね」
「まあな」
 さすがの俺もそこまで困ったことがないから試したことはない。昔、飢饉の時などにはそうして食べたと聞いたことがある。
「なんかさぁ、ジルに似合うゴージャスな花だと思わない?」
 彼岸花を見てゴージャスと思うのは若い感覚なのか。
 たしかに、ジルに似合う花ではある。

 
 今日の写真は「ヒガンバナ」(2005.09.25群馬県で撮影)
 彼岸花。説明の必要がない身近な花ですね。
 別名を幾つか羅列してみましょう。曼珠沙華・葉見ず花見ず・死人花・幽霊花・墓花・火事花……など、地方名は500以上あるそうです。
 
【登場人物を少しずつ紹介します】
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/09/26

僕(しもべ)

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「いらっしゃいませ、稲さん。ジルちゃんはどうしてる?」
 〔月の光〕に入るなり、待ちかねていたように絹さんが訊いた。
「後から来る。どうしてるって、どういうことだ?」
「オナガの雛、助からなかったでしょう。ガッカリしているんじゃないかと思って」
「知ってるのか、絹さん」
「最初に、ここに連れてきた」
 それで猫のエサなんか持ってたのか、あいつ。
「元気になった。おかげでダニに集られたぜ」
 稲作は思い出したようにおへそのあたりを掻いた。ダニは柔らかいところが好きなのだ。
「よかったね。でも、飼うのはまずいよ。野鳥だから、自然に帰してあげないと」
「それは大丈夫だろう」

 なぜなら――。
「ジル、頼むからカラスは止めてくれ」
 以前言ったことがある。
 夜、コウモリやネズミに付け回されても夜陰に紛れて目立たないが、昼間、カラスにカーカー鳴かれながら頭上を飛び回られるのは困る。元々恐そうに見える俺に、不気味さまでプラスされたのでは、益々商売あがったりだ。
「だめですか?カラスは頭がいい鳥です。友だちになりました。あなたを見守ってもらおうと思ったのですが、いけませんか」
「困る」
 だいたい、何でこの俺が、ジルに頼まれたカラスに見守ってもらわなければならない?
 どう考えたって誰かを守のは俺の役目のはずなのに――。

「いらっしゃいませ、ジルちゃん。オナガ、元気になったんだって?」
「はい」
「逃がしてあげたの?」
「逃がす?捕まえたわけではありません。友だちになりました」
 店の窓を開けたジルは、呼びかけた。
「ぴょん太、ぴょん太!」
 バサバサバサバサバサ。
 どこからともなくやって来たオナガのぴょん太は、窓枠に止まると、
「ギャーッ、キャッキャッキャッ」
 と、けたたましい声で鳴いた。
「キャットフードが気に入ったからえさ台に置いて欲しいそうです」
「凄い!たった二日でこんなに懐くなんて!言っていることも解るなんて。毎日、えさ台に置いてあげる!オナガは果物も好きだよね」
 楽しそうに相づちを打つ絹さんは、本気で言っているのではないだろう。彼は、ジルのことを15,6歳の子供だと思っているのだ。
「ギャーッ、キャッキャッキャッ」 
「ありがとうと言っています」

 ジルが言う、友だち=僕(しもべ)なのだろう。コウモリ・ネズミの忠実な働きぶりを、俺は見たことがある。その僕に見守られる俺は、彼にとってどんな存在なのか。
「稲作、ぴょん太だったら綺麗ですから、あなたの周りを飛んでもかまわないでしょう」
 オナガも彼の好きなカラス科の鳥だ。


 今日の写真は「シロツチガキ」(2005.09.25群馬県で撮影)
 一度見てみたかったのです。これほどいい状態のものに出会えるとは思えませんでした。大きさは3㎝ほど。このままブローチにしたいような可愛らしさですね。
 革細工のような写真の正体はキノコのシロツチガキです。資料には漢字で書かれていませんが見たまま「白土柿」でしょう。ホコリタケの仲間で真ん中の丸い部分を摘むと埃のような胞子が飛び出します。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/09/23

小鳥 

PICT01821
 夕立。閃光と同時の轟音と共に、店の灯りが消えた。
 近くで雷が落ちたようだ。
急に外が暗くなって激しい雨が降り始めたから覚悟はしていたが、これだけ近いと身が縮むほどの迫力がある。この町は雷が多いから慣れているはずなのに。
 ドアが開き、ずぶ濡れのジルが入ってきた。
「降られてしまいました」
「奥の部屋に入って。タオルと着替えを貸してあげるから」
「ありがとうございます。でも、その前にこの子を」
 ジルは、懐から何かを取り出した。
「まだ、生きています。温めれば助かるかも知れません」
 またネズミ!?いや、ビショビショになった灰色の小鳥だ。――手渡された時触れた彼の手は酷く冷たい。冷え切ってしまっているのだ。シャワーを浴びさせようとも思ったが、停電中だし、水を伝って感電することもあるというから、まだ落雷が恐い。
「速く着替えなさい。風邪をひいてしまう」
「それより、その子をお願いします。私には温めることが出来ません」
「わかったから――」
 僕の手のひらの中にいるのは、まだ尾が短いオナガ。幼鳥のようだ。乾いたタオルで拭いて、新しい一枚に包み、近くにある適当な大きさの箱に入れた。小鳥は、ぐったりして動かない。可哀想だけれど助からないかも知れない。
 そうだ、どこに仕舞ってあったっけ。……僕は、引き出しの中から冬の残りの携帯カイロを見つけ出し、タオルと箱の間に置いてみた。
「絹さん、どうですか?」
 着替え終えたジルが訊いた。
「まだわからない。……さあ、温かいコーヒーを飲みなさい」
「ありがとうございます」
「今夜は僕が預かろう」
「いいえ、私が連れて帰ります。元気になったら、何を与えたらいいのでしょう」
「そうだね。ここのえさ台に来るオナガはキャットフードが好きだよ。お湯で柔らかくしてあげてみたらどうだろう」
 食べる元気が出れば助かるだろう。僕はジルに少しのキャットフードを渡した。

 その夜。
「うわっ!」
 暗闇から、二つの青い光が俺を見た。
「脅かすな。いるなら電気ぐらい点けろ」
「すみません」
 遅くなったから、とっくに自分の部屋に行っているだろうと思っていた。ジルは眠らなくてもいいのかも知れないが、いつもは普通の人間と同じ行動をとっているはずなのに。
「何か食べますか」
「食ってきた。遅いから、すぐに寝るぜ」
「お願いがあります。一緒に寝てください」
「あ?」
「この子と」
 ジルは箱の中から、タオルに包んだ死にかけたオナガを取り出した。
「あなたは温かいし、この子の母親と同じように鼓動しています。きっと安心して眠れるでしょう」
「駄目だ。俺は寝相が悪いし、野鳥にはダニが湧いてるんだぜ。痒くなる」
「お願いします。あなたが潰さないように、私が見張っていますから。お願いします」
 結局、眠くて仕方なかった俺は、ジルに根負けして、オナガを抱いて眠った。

 バサバサバサバサバサ。
 朝。聞き慣れない音で目が覚めた。
「ぴょん太、飛び回ってはいけません。――そんなところでフンをして」
 ぴょん太?元気になったオナガに名前まで付けている。


 今日の写真は「ガガイモの実」(2005.09.17群馬県で撮影)
 蘿藦と書きます。実を触ってみると柔らかくなっていました。あと何日か経つと茶色くなって割れて、中からタンポポのおじいさんみたいに長い綿毛の種が旅立ちます。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

☆お知らせ☆―明日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/09/22

焼き肉奉行

PICT02291
「絹さんは?」
「年寄りは、家でお茶漬けの方がいいんだって」
 ってことで3人で焼き肉に来ている。
「ジル、特上カルビ追加していい?」
「どうぞ」
 妙のやつ、やっぱりパスタより焼き肉の方が好きなんだ。肉を前にして目がらんらんと輝いているし、顔がてかてか光っている。服装も髪型も今まで通りに戻っている。こっちの方が妙らしい。
「妙ちゃん、ゆっくり食べても肉は逃げません」
 ジルは、ビールを飲む振りをしながらレバ刺を食べている。
 俺は、妙の肉の焼き加減の見極めの良さに見とれていた。というよりは、箸が出ないというか、先に食われちゃうというか……。
「稲作、何もたもたしてるの。焦げたら美味しくなくなっちゃうよ、お皿出して!」
 焼き肉奉行だ。
「そうです、あなたにはたくさん食べていただかないと」
「なに?なに?どうしたの?」
「血が薄いのです」
「うっそ~、稲作、貧血なの?」
「違う!金欠だ」
「じゃ、レバー食べなくちゃね。レバーと、タンと、ハラミと」
 妙は俺の親父ギャグを無視して、次に注文するものを選んでいる。
「俺、レバーは食わねぇぜ」
「いいよ、ボクが食べるから」
「妙、ちゃんと野菜も食えよ」
「食べてるよ」
 と、いいながら、微妙に俺の皿に野菜を余分に乗せているようだ。野菜は好きだからいいけれど。奉行の手腕恐るべし。
「妙ちゃんが食べた栄養はどこに行くのでしょうか」
 そう、妙はいくら食べても太らない体質のようだ。
「謎だな。お前ほどじゃねえけど」
「うふふ」
 ジルの瞳が青く輝いた。 


 今夜、『電車男』が最終回を迎えますね。このシーズン、いくつか見た連続ドラマのなかで一番好きな作品でした。
 少しの勇気が自分を変えてくれるかも知れない、愛が自分を強くしてくれる。古典的なテーマなのに、多くの人の友情に支えられて成長する電車君の姿はとても素敵でした。電車君、勇気をありがとう!
 そういえば、僕も‘独男’でした。

 今日の写真は「ツリフネソウ」(2005.09.19群馬県で撮影)
 釣船草と書きます。ツリフネソウ属の属名は、lmpatiens(こらえきれない)というのだそうです。ツリフネソウは、ホウセンカの仲間。それを聞くとなぜ‘こらえきれない’のかわかりますね。
 僕が子供の頃は、どこの家の庭にも色とりどりのホウセンカが植えられていました。熟した種を見つけては、指で触って弾けさせて遊んだものです。もちろん、ツリフネソウの種も弾けます。どこかで出会ったら、触ってみて下さい。

【登場人物を少しずつ紹介します】
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/09/21

年上

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「今夜は焼き肉を食べに行きましょう。絹さんと妙ちゃんも誘って」
「んが?――俺は、年下のやつに奢ってもらうほど落ちぶれてねぇぜ」
 稲作は、肩を掻きながら言った。夕べ蚊に刺されたらしい。
 〔月の光〕で、注文した大盛りのライスと生卵を待っている。メニューにない特別注文品だ。ジルに懐が寂しいのがばれている。
「年下?」
 ブラッドオレンジジュースを飲んでいる、ジルの瞳が青く輝いた。
「どう見ても年下じゃねぇか」
「私の年齢は――」
「わかった、わかった」
「収入もあなたよりずっと多い」
「お前ってそんなに給料多いのか」
 ジルは週に何日か麗華の店で働いている。それも夜だけだ。
 俺は、朝から晩まで働いても節約しなければ暮らせないのに。
「マダムに頼んでみましょうか?」
「用心棒は安月給なんだ」
 生産性のない用心棒の小遣いは、ホステス(?)よりずっと安いのだ。
「そうなのですか」
「ところで、何で飯を奢ってくれようなんて思ったんだ?」
「味が、薄くなっています」
「?」
「あなたの」
「いつ吸った」
 俺は、自分の手首や腕を確認してみた。特に気になるところはない。
「うふふ」
「恐いんだよ、お前」
「夕べ、あなたの肩に蚊が止まりました。見ていると、お腹が膨らんできて」
 食ったのか……。


 今日の写真は「オタカラコウ」(2005.09.19群馬県で撮影)
 雄宝香と書きます。宝香=防虫剤の竜脳香のことで、根の香りが似ているのだそうです。
 林道の湿ったのり面に生えていました。草丈1~2メートルの目立つ花です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/09/20

一日遅れの

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「遅くなって悪かった」
 スーパーの袋を下げてやって来た稲作は言った。
 謝ってもらうような約束をした覚えがない。
「何か約束してたっけ?」
「まあいいから。そこに座れ」
 彼はカウンターから出て、椅子に座れと促した。
「お客様が来ちゃうよ」
「大丈夫だ。準備中にしといた。2,30分だから」
「何するの?」
 彼は、僕の後ろに回って肩を揉み始めた。
「お客さん、こってますね」
 何の冗談だろう。
「肩なんかこってないよ」
「候補者リストの名簿が最下位だったから、一日遅れになっちまったんだ」
「???」
 比例区の選挙じゃあるまいし。
「俺、年寄りとの付き合い多いから。……沼田のじいさんに、お千代ちゃん、お梅ちゃん――」
 稲作は、近所のお年寄りの名前を言い並べた……最後に僕の名前が入っている。
「も~う!」
「この間笑い者にしてくれたお返しだ。――待てよ、もう少し揉んでやるから」
 稲作は、からかわれたことがわかって立ち上がろうとした僕を止めて言った。
 僕は、肩こりじゃないけれど気持ちがいい。こんなに上手いのなら、お年寄りにも評判がいいだろう。
「実家の裏山に一杯なっていたから、持ってきたんだ。絹さんこういうの好きなんだろう?焼酎にでも漬けなよ」
 渡されたスーパーの袋には、たくさんのサルナシが入っていた。


 今日の写真は「サルナシの実」(2005.09.19群馬県で撮影)
 猿梨と書きます。実の大きさは2㎝ほど。断面が何かにそっくりですね。
 そう、サルナシはキウイフルーツの仲間です。柔らかく熟れている実は甘く、味もキウイフルーツにそっくりです。
 キウイフルーツの原種は中国原産のオニマタタビ。それをニュージーランドで品種改良したのがキウイフルーツです。
 キウイの由来はわかりますよね。実の形と色がニュージーランドにいる飛べない鳥「キウイ」に似ているからです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/09/19

月夜

PICT01971
 中秋の名月。
 早仕舞して、月に、団子と秋の実りとススキを供えた。
「さて」
 とっておきを開けて、月見酒といくか。
 BGMは虫の声。ミカドコオロギ、ツヅレサセコオロギ、カネタタキ……。
 たまには独りもいい。
 窓の外には月。……だけじゃない。
 河川敷から二人の人影が近付いてくる。一人は踊っているようだ。

「満月の夜は力が漲ります」
 月の光を浴びて踊るジルは、瞳は青く全身は金色に輝いている。
「狼男か、お前は」
 少し後ろで見ている稲作が言った。
「それは誰が見てもあなたでしょう。私は吸血鬼」

「ちわ~す。散歩してたら小腹が空いたんで団子食いに来た」
「素敵なオブジェですね」
 稲作は店に入って来るなり、お団子を一つ摘んでかじり付いた。
「やっぱり上新粉だけで丸めた団子は美味いな」
 近所の和菓子屋さんの期日限定人気商品。
「さすがに鼻が良いね。開ける前から匂ったのかい?」
「おっ!水芭蕉の純米大吟醸。こんな高い酒飲んだことねぇ」
 日本酒の瓶を見て嬉しそうな顔をする。
「何かつまみを持ってこよう」
「いいよ、俺は団子で」
「私は、夜気だけで十分です」
 稲作は2つ目のお団子に手を伸ばす。何の味も付けていない大きなお団子を、よく飽きずに食べられるものだ。僕は翌朝、焼いて砂糖しょう油を付けて食べるのが好きなのだ。
「僕はそれじゃつまみにならない」
 独りだったらお酒だけだったけれど、みんながいるのなら、つまみが欲しい。
「どう?」
「美味い!」
「美味しいです」
 二人は、僕のとっておきを気に入ってくれたようだ。
「ところで絹さん、これはススキじゃねぇ。オギだぜ」
 飾っていたススキを1本抜いて見た稲作が言った。
「オギ?」
 やっぱり独りより、誰かと一緒の方がいい。  


 先日参加した観察会で教えていただいた、ススキとオギの見分け方です。
薄(すすき) ノギがある。大きな株のようになる。どちらかというと乾燥した所に生える。
荻(おぎ) ノギがない。株にならない。河原や湿地に生える。
 穂の中から、一つだけ小さな実を取って見て下さい。
 実の真ん中から、1本だけ長い毛(ノギ)が出ていたら、ススキ。全体が同じ長さだったら、オギ。

 今日の写真は「ナンバンギセル」(2005.09.18東京都で撮影)
 南蛮煙管と書きます。煙草を吸うパイプの形。
 ススキの仲間やミョウガなどに寄生する寄生植物です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/09/17

虫除け効果

P92301191
「遅くなってごめんね」
「いらっしゃいませ、妙ちゃん。お待ちしてました――ほんとに妙ちゃん?」
 女の子は、服装でずいぶん変わる。
 午後は店を閉めてジルと二人で、妙ちゃんの誕生日祝いの準備をしていた。
「稲さん!?その顔――」
 妙ちゃんは、立てた人差し指をイタズラっぽく唇に当てると、シーッという仕草をした。何とも可愛らしい。
「また蚊に食われたかな、痒くねぇけど」
「大丈夫だよ、ボクが守っておいたから。それ以上顔が恐くなったら営業に関わるし」
「それに虫除けの効果があるのですか?」
 真面目な顔で訊くジル。可笑しくて、吹き出しそうだ。
「ふふふ、でも自分が刺されちゃった」
 妙ちゃんは、内股をボリボリ掻いている。せっかく女の子らしい格好をしているのに。――視線を感じた。それも、見るな!という威嚇の視線。
「妙、女なんだからそんな所掻くんじゃねぇ」
 僕から目を離した稲作が言った。
「だって、痒いんだもん。やっぱり、ジーンズがいいな。――目的果たしたし」
「なんですか?目的って」
「な・い・しょ」
 妙ちゃんが果たした目的は、稲作を見ていればわかる。

「さあ、妙ちゃん、好きなだけ食べてね」
 4人では大きすぎるイチゴのケーキとコーヒーで、ささやかな誕生会が始まった。
「これ、食いきれるのか?」
 ‘食べる人’はほとんど妙ちゃんひとり。
「大丈夫、大丈夫。明日も食べるから」
 僕は、稲作の顔が気になって仕方ない。吹き出してしまいそうで、コーヒーをまともに飲めそうもない。
「ねえ、妙ちゃん、そろそろ許してあげたら?」
「何をですか?」
 ジルには可笑しさの意味がわからないだろう。
「しょうがないなぁ。いいよ稲作、顔拭いても」
「何?まさかお前、またやったのか――あれ?何も付いてないぜ」
 稲作は、頬をゴシゴシ拭いたおしぼりを見て言った。いつかのように、キスをされたと思ったのだ。
 もう駄目、限界を超えた。
「ハハハ、稲さん、洗面所で鏡見てきて」

 洗面所から漏れてくる稲作の叫び声をバックに、ジルは冷静に言った。
「あの文字には、虫除けの効果があるのですね」
 額に口紅で『肉』。
 

 すみません。若い人には通じませんか?

 今日の写真は「ウリカワ」(2004.09.23群馬県で撮影)
 瓜皮と書きます。葉が、むいたマクワウリの皮に似ているから、ウリカワなのですって。オモダカ科オモダカ属ですから、花はオモダカとそっくりですね。
 皆さんマクワウリをご存じでしょうか?黄色く細長いウリです。僕が子供の頃はまだ売っていたのでしょう、食べた記憶があります。甘みが薄い素朴な味でした。当時のメロンといえば小さくて丸くつるつるした緑色のプリンスメロン。実は堅いけれど甘いメロンでした。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

☆お知らせ☆―明日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/09/16

プレゼントは……

P92101071
 もったいない気がしたのだ。
 他人に妙の生足を見せて走るなんて。
 ――なまあし。
 ゴクリ、生唾を飲み込んだ。
 何考えてるんだ、俺。どうしちゃったんだろう。
 今考えることは一つ。大切な妙を傷つけないように慎重にバイクを運転しなくっちゃ。
 消えろ!雑念。

 道を指示され、イタ飯屋に連れて来られた。
「どれにしようかな?」
 この店のランチは、好みのスパゲッティ、ドリンクとサラダ、スープが付いている。
「なぁ妙、バイク乗るつもりだったらミニスカートは止めろよ」
「なんで?……転ばないように運転してくれればいいよ」
 メニューに見入っている妙は、俺の話に上の空、まして気持ちになど気付かない。
「ボク、これとこれね」
 妙はペペロンチーノとミルクティーを指さした。
 デートなのにニンニクたっぷりのパスタ。……どうして、そんなことが気になるんだろう。
 俺はナポリタンとアイスコーヒー。
 ナポリタンが無い店が多いが、ここにはあった。あったことに一安心。無かったら、何を食べたらいいかわからなくなる。

「ねえ、稲作。それ、止めない?」
「?」
「早死にするよ、高血圧で」
 俺は味が薄すぎるナポリタンに塩を掛けまくっていた。
「お前こそ、それ全部食えるのか」
「あったり前じゃない。だからここに来たんだもん」
「デザートも頼んでいいんだぜ」
「いいの」
 遠慮してるのか。
「絹さんとジルがケーキ用意して待っててくれてるんだ。10号(30㎝)のだって」
 妙は、うっとりしながら言った。
 ジルの青い瞳…ケーキ…すっかり忘れてた。
「さあ、帰ろう!ケーキを食べに〔月の光〕に!」
 
「なんでここで止まるの」
 〔月の光〕の100メートルほど手前。
 バイクを止めた稲作は、妙を乗せたまま河川敷に降りた。
「危ないじゃない!」
「座れ!……渡しそびれた。〔月の光〕に行ってからじゃ渡せねぇから」
 草の上に座った稲作は、ポケットにしまい込んでいた小さな包みを手渡してきた。くしゃくしゃになっている。
「なによ」
「金がねぇから、小さな石だ」
 そう言って、草の上に横になる。
 小さな袋の中身はサファイアのピアス。……ピアスは、昨日までの妙が、唯一女らしさを残していた部分だ。
「ありがとう!大切にする。……付けてみるね」
 鏡無しで、ピアスを付け替えるのはなかなか大変だ。草むらに落とさないように気を付けなくっちゃ……。
 ……やっと出来た。
「どう?」
「んが……似合うよ、とっても――」
 心がこもっていない、っていうか半分寝てる?
 いくら付けるのが遅いからって。
「ねえ、〔月の光〕に行こうよ」
「少し眠ってから行くから、先行っててくれ……」
「こんな所で寝ると、また蚊に刺されちゃうよ」
「んが~」
「しょうがないなぁ」
 しばらく付き合うか。
 妙は、稲作の隣で草に寝そべってみた。
 空には、秋の雲が浮かんでいる。 
  

 群馬県のパスタ専門店は、量が多い店が多いのです。群馬にお越しの際、胃袋に自信がある人は試してみてください。

 今日の写真は「コガマ」(2004.09.21群馬県で撮影)
 小蒲と書きます。写真のコガマは毎年同じ場所、近所の田んぼの縁で見られます。農家の人に大切に保護されているところが嬉しいですね。
 何?
 フランクフルトが食べたくなったって?
 しょうがないなぁ、稲さんは。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/09/15

計画倒れ

P92101021
 最初の計画では、バイクの後ろに乗せて赤城山の覚満淵にでも連れて行こうと思っていたのだ。標高1360メートル、小尾瀬と呼ばれている手軽に行ける群馬県の避暑スポットだ。そして、焼き肉にでも連れて行こうと思っていた。
 これじゃ、計画は総崩れ。
 あの格好じゃバイクに乗せられないし、焼き肉の匂いが付くのは嫌だろう。

 全速力でボートを漕いで、汗だくになった俺は、今度はバラ園の「熱帯植物園」に連れてこられた。色とりどりの蘭の花が咲き乱れている。一角にある水槽には、熱帯魚、は虫類、両生類も飼われている。
「見て!こいつ可愛いよ!」
 ウパッという顔をして白くて、赤いエラが出ているアホロートルが、水槽越しにこちらを見ている。ウーパールーパーを久しぶりに見た。
 暑い。ここは温室、熱中症になりそうだ。

「バカ~、バカ~」
 白い大きなオウムが、俺に向かって叫んだ。
「おかしいな。ボクには‘コンニチハ’って言ってくれたのに」
「うるせえ!バカ鳥!」
「バカ~、バカ~、バカ~」
 オウムは興奮気味に、黄色い冠羽を立てて羽根をバタつかせている。
「オウム相手にムキにならないでよ。……かわいちょうにねぇ」
「オハヨー、オハヨー」
 赤ちゃん言葉で話し掛けられたオウムは、機嫌を直してカゴ越しに、妙にすり寄っている。
 かわいちょうなのは俺の方だ。
 計画は全て覆されて、どうしたらいいのかわからない。なんで何も思い浮かばないまま妙に主導権を握られてるんだ。そのうえ、鳥にまでバカにされて。
「あのバナナ食えるのかなぁ」
 青いバナナの実がたくさんなっている。
「もうお腹空いたの?しょうがないなぁ。バイクどこに置いたの?ランチ食べに行こう、もうすぐお昼だよ」
「その格好でバイク乗る気か?」
「もちろん!」


 これは、敷島公園バラ園内「熱帯植物園」の一コマ。
 白い大きなオオム「キバタン」が出迎えてくれます。実際の「キバタン」はお利口だから「バカ~、バカ~」とは言いません。
 今日の題は「計画倒れ」でしたが、実際の僕は無計画なこと甚だしいのです。家事をしながら朝の気分で考えて書き、そのままUPしてしまうのですから。

 今日の写真は「イボクサ」(2004.09.21群馬県で撮影)
 疣草と書きます。葉の汁を付けるとイボが取れるといわれることから付いた名前です。
 ツユクサ科だからでしょうか、小さいピンクの花はツユクサに似ていますね。
 僕が子供の頃は「イボコロリ」という薬のTVCMが流れていました。今はイボ・ウオノメ・タコ・シモヤケ・アカギレで悩んでいるという話をあまり聞きませんね。食生活や住環境が良くなったせいでしょうか。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/09/14

変身

PICT01771
 背中を突くやつがいる。
 なんだよ、と振り返った俺が見たのは――。
 さっきから目の縁には入っていたのだ。
 だが、俺が待つ相手とはまるで違うから、気にならなかった。
 俺が待っていたのは、白のTシャツ、ブルーのジーンズ、パーマヘアで、銀色の小さな球形のピアスを付けた、智紘にそっくりな女の子なのに。
「妙か?」
「そうだよ」
 妙は、ノースリーブでシワシワしたベージュのキャミソールを着て、同じような素材の青い短いスカートをはき、かかとが高いミュールサンダルを履き、真っ白でツバのある帽子をかぶっていた。帽子からのぞいた髪はストレート。パーマを伸ばした髪はいつもより長く見えた。当たり前だ。その上しっかりと化粧をしている。
「なんだよ、その格好」
「わるい?」
「いや」
 わるかねぇけど――露出した痩せすぎの肩と腕、細すぎる脚が、俺には痛々しく見えた。
 こいつ、こんなに痩せていたんだ。顔だけ見ていると丸顔だから気付かなかった。
 だが世の中の意見は、俺とは違うらしい。周りの視線が集まった。
 ヒールが高いサンダルを履いた妙は、身長が180近い。世間的には完全なモデル体型なのだ。顔だって、智紘似の可愛い顔をしている。
「稲作こそどうしたの、その顔」
 俺は思わず鼻の下を押さえた。伸びてたか?
「違う!まぶた」
「蚊にくわれた。ブユかもしれねぇ。……一緒に歩くの恥ずかしいか?」
 無傷でもみっともないのに。
「バカね。……今日の目的は、あれなんだから」
 妙が指さした先は、ボート乗り場。親子連れか子供同士しか乗っていない。

「いつか自慢してたでしょ。自分より速く漕げたやつはいないって」
 したけど小学生の頃の話だ。
 この後俺は、カルガモやバリケンを追い散らし、子供達の驚きの視線を受けながら、全速力でボートを漕いだ。
 キャーキャー言って喜ぶ妙は、22歳になったばかりの女の子なのだ。
 俺は、ポケットの中の小さな袋の存在をすっかり忘れていた。   
 

 今日の写真は「ミズオトギリ」(2005.08.06長野県で撮影) 
 水弟切と書きます。池や沼、湿原に生えます。
 僕の好きなオトギリソウの仲間では珍しくピンク色です。1㎝ほどの小さな花は午後に開いて夕方にしぼむ儚さ。

【登場人物を少しずつ紹介します】
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/09/13

悲しい伝説

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「困ったね」
「?」
「その顔でデートだなんて」
 稲作は、左目の上と、おでこの真ん中と、右のほっぺが、虫に刺されて腫れている。
 ここは夜が明けた喫茶店〔月の光〕。
 話は『9月10日 夜明けのコーヒー』の続きになる。
「デートじゃねえって言ってんだろ。これからチョビの散歩で汗流すから元に戻るさ」
「散歩、行くのかい。寝て無くて大丈夫?」
「当たりめぇだ」
 犬の散歩というとのんびりしていそうだが、彼らの散歩はちょっと違う。大型犬グレート・デーンのチョビと2時間ハードに走るのだ。自身のトレーニングも兼ねているらしい。

 待ち合わせ場所に10分前に着いた。
 まだ妙は来ていない。
 それにしても、こんな所を待ち合わせ場所にするなんて。
 恋人同士だったら、お艶さんの嫉妬で別れ話になるかも知れない。
 ここは敷島公園「お艶観音」前。
 こんな所に石碑があったっけ?
 暇に任せて読んでみる。
 お艶さんが淀君だったとは初耳だ。
 悲しい末路をたどった者は、こんな風にどこかで生きているかも知れないと思われるものなのか。義経が大陸に渡ってジンギスカンになったなんて言われるように。
 俺が知っているお艶さんの伝説はこうだ。
『昔、まだここが利根川の川原だった頃、お艶という名の美しい娘が、対岸に住む青年に恋をしました。娘は毎日この赤い岩の上に立ち、対岸の彼に逢うのを楽しみにしていました。
 でもある時、青年の気持ちが冷めてしまったのです。
 それでも娘は毎日あの岩の上に立って青年を待ち続けました。
 彼は姿を見せなくなってしまいました。
 娘は悲しみのあまり、あの岩から激流に身を投げてしまいました。』
 滋光池という小さな池の真ん中に赤い大きな岩がある。その岩の上に立って、お艶さんは毎日対岸を見ていたのだ。

 背中を突くやつがいる。
 なんだよ、と振り返った俺が見たのは――。


 今日もちょっと観光案内風でした。
 僕たちが慣れ親しんでいる公園に伝わるお話です。
 お艶観音、お艶が岩、石碑の内容が知りたい方はこちらをどうぞ。
 
 今日の写真は「オトギリソウ」(2005.08.28栃木県で撮影) 
 弟切草と書きます。この草を鷹の傷を治す秘薬としていた鷹匠が、その秘密を漏らした弟を切ったという伝説による名前。飛び散った血が葉や花の黒点になった……。
 名前の元の伝説は、悲しく恐いのですが、僕はこのおしべがキラキラしたオトギリソウの仲間が好きなのです。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/09/12

朝の風景

PICT01711
「んが~……!!」
 わっ!なんだ!!
 目覚まし時計より一発覚醒だ。
 目の前にジルの顔があった。
「おはようございます」
「脅かすな!心臓が止まるかと思ったぜ」
「心配はいりません。あなたの心臓は丈夫です」
「そういうことじゃねぇ。――いつから見てた?」
「3時間ほど前から」
「!?――頼むから止めてくれ。落ち着いて寝られねぇじゃねぇか」
「ぐっすり眠っていました」
「今晩から鍵掛ける」
 ソファから飛び起きて、タオルケットをしまえば寝床は応接室に早変わり。
「止めて下さい。見ませんから……少しの間しか」
 そう言いながらジルは、除菌プラスと書いてあるスプレーを、ソファに丁寧に吹きかけている。毎朝の風景だ。初めのうちは俺って臭いのかと気になったが、客を招く部屋だから、きっとジルは気を遣ってくれているのだろう。
「冗談だ。あんまり見るな、恥ずかしいから」
 ジルはちょっと嬉しそうな顔をした。どうせ、鍵なんか掛けたって手品のように開けてしまうに決まっている。
「朝食の用意をしましょう」
 朝飯は、トースト、コーヒー、スクランブルエッグ、サラダ。ジルが作ってくれる。納豆とみそ汁が懐かしいが、目の前で食べるなという納豆禁止令が出ている。苦手はニンニクじゃないらしい。 
 
 食後、俺はコーヒー、ジルはトマトジュースを飲んでいる。
「妙のやつ、誕生日に何をやると喜ぶかなぁ」
 妙の誕生日が近い。本人から聞いたんじゃない。知らないうちに頭の中に入っていたのだ。
「女性は誕生石の指輪を喜びます」
「指輪?誕生石って?」
「9月の誕生石はサファイアです」
 ジルのサファイアのような瞳がキラリと光った。
「サファイアって高いよなぁ。それに――」
「それに?」
「誤解されねぇか?」
 これが、『9月10日 夜明けのコーヒー』前の出来事だ。


 今日の写真は「アカエリヒレアシシギ」(2005.09.11群馬県で撮影)
 赤襟鰭足鷸と書きます。一昨日は18羽、昨日は5羽見られました。
 襟が赤く無いじゃないかって?襟が赤くなるのは夏羽で、今の季節の休耕田では夏羽を見ることは出来ません。
 鰭足?他のシギにはヒレがないのに、アカエリ君にはヒレがあります。でも、泳ぎはそれほど得意ではないようで、ゼンマイをまき過ぎたアヒルちゃん人形みたいに、ちょこちょこと忙しなく泳ぎ回る様子がとても可愛いのです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/09/11

睡眠学習?

PICT01021
 数日前。
「ねえ、ジル」
「はい」
 稲作の事務所件住居。主は仕事で留守で、暇を持て余した妙がジルに話し掛けてきた。
「好きな人の誕生日って気にならない?」
「私は気になりません」
「稲作のも?」
「男同士ではそんなお祝いはしないのだそうです」
「ボク、女なんだけどなぁ」
「お祝いをしましょう。稲作と絹さんも一緒に」
「ありがとう、ジル。でもね――」
 
 その夜。
 夜はベッドに横たわって、目を閉じているようにしている。
 普通の人間と同じように……。
 それが、今まで生き延びてきた秘訣。
 夜中に一度だけ、ベッドから出て夜気を浴びる。それが密かな喜びなのだ。
 自分がここに押し掛けて以来、稲作のベッドは事務所のソファ。
「んが~」
 なんと無防備な。大口を開いて寝ている。
 稲作は、私のもの。
 人の間は、人の楽しみを与えてやろう。
 耳元でささやく。
「稲作、妙ちゃんの誕生日は9月○○日ですよ」


 今日の写真は「トモエシオガマ」(2005.08.28栃木県で撮影)
 巴塩竃と書きます。上から見るとねじれた花が巴形に並んで見えます。

 塩竃とは?
 海水を煮詰めて塩を作る竈のこと。
 塩竃を「浜で美しい」ということから「葉まで美しい」に掛けた名前だそうです。
 オヤジギャグのように苦しい理由ですが、シオガマギク類の葉は特徴的で花が咲いていなくても見分けることが出来ます。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/09/10

夜明けのコーヒー

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 夜が明けていく。
「夜明けのコーヒーを君と二人で」
「あのなぁ、誤解を招くようなこと言うな。俺たち一夜を一緒に過ごした訳じゃねぇし」
「事実を口にしただけだよ」
 絹さんと向かい合って座ってコーヒーを飲んでいる。そういえば、こういう飲み方をしたことはなかった。同じ時間に飲んだとしても絹さんはいつもカウンターの向こう側だ。
「なに?」
「いや、こんな風にあんたと飲んだこと無かったなと思って」
「そういえば、そうだね。あれ?ジルちゃんは?」
「あの後、すぐに帰した。やつが一緒にいたんじゃ目立ってしょうがねえから」
 でも、一晩中頭の上をコウモリが飛んでいた。
「君――」
 絹さんはじっと俺の顔を見詰めて言った。
「橋の上で居眠りをしている間に不覚を取ったな」
「?」
 チン。厨房のオーブンから音がして、謎の言葉を残したまま絹さんは行ってしまった。

「ほんとはおやつに食べるものなんだろうけど。ジャムとサワークリームでどうぞ」
「パン?」
「スコーンだよ」
 腹が減っているから何でも美味い。
「そんなに慌てて食べなくても、取らないよ。もっと焼いてこようか?」
 ガツガツ食うのが俺のクセだ。
 絹さんは機嫌良さそうに俺が食うのを見ている。飼い犬を見る主人のようだ。
 人心地ついた俺は、さっきの謎を思い出した。
「さっきの、不覚を取ったって何のことだ?」
「かゆくない?……左目の上と、おでこの真ん中と、右のほっぺ。虫に刺されて腫れている……よだれの跡付いてるし。帰る前に顔を洗ったほうがいいよ」
「マジかよ。この後デートなんだ」
「デート!?」
「じゃねぇ、妙に呼び出されてるんだ」
 慌てて言い直した俺は、余計に墓穴を掘った。


 今日の写真は「アケボノソウ」(2005.08.27栃木県で撮影)
 曙草と書きます。花びらにある黒紫色の斑点を夜明けの空に見立てた名前です。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/09/09

独りじゃないから

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 橋の上に稲作がいると思うと、どうも寝付けなかった。
 窓の外が白み始めている。パソコンの電源を入れてみた。
件名 いなさくえ
‘あなた なんで こない かわり こわいおとこいた じやま しねない’
 僕は、稲作の携帯に電話した。
「何だ?こんな時間に」
 僕は、メールの内容を彼に伝えた。
「あんただったのか、人の名前を語って」
「違うよ、僕じゃない。身に覚えが全くない。君でもないみたい」
「じゃ?」
「うちの常連のお客様かなぁ」
 僕は店のブログ『〔月の光〕だより』を公開している。こだわりの豆や水、メニューや日々の出来事を書いている(すいません、書いてません)。そこには僕のメールアドレスも載せてある。
「どっかで見てたのか、気付かなかった。……そっちに戻らぁ」

 俺じゃなかったのか。
 気付かないうちに、誰かを傷つけていたのかと思った。
 軟派のつもりはないが、弱い立場のやつに弱いところがある。
「おはよ」
「いらっしゃいませ、稲さん。コーヒー淹れるね」
「ありがと。――絹さん、パソコン貸してくれねぇか」
「いいよ」
「返信どうにすんだ?」

 稲作は、不器用そうにキーを叩いている。今時珍しい一本指打法だ。
件名 Re.いなさくえ
‘こわいおとこでわるかったな。おれがほんもののいなさくだ。なにがあったかしらないが、しぬなんていうな。おれたちは、つきのひかりで、あんたをまっているから。あんた、ひとりじゃないから’
 送信した後、稲作は言った。
「とんだ、笑い者かも知れないけどな」

 この後、メールの送り主から、再びメールが来ることはなかった。 


 今日の写真は「トリカブト」(2005.08.27栃木県で撮影)
 トリカブトの同定は難しくて良くわかりません。これは、オクトリカブトかヤマトリカブトだと思います。
 鳥がかぶる兜のように美しいから付けられた名前ですが、毒性の強さで恐いイメージになってしまいました。花粉までもが有毒だといいますから本当に恐いです。
 昨日のアズマレイジンソウも同じく、キンポウゲ科トリカブト属です。
 花の形が似ていますね。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/09/08

月夜にダンス

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件名 いなさくえ
‘あたし あなた すき あいしてる きようよる おおわたりはし うえまてるよ いつまでもまてる あなた こなかたら あたし しぬ’
 これをどう読むか。
 こういう話し方をする外国人と付き合いがない訳じゃない。
 だが、愛されたり待たれたりするほどの仲になった女はいない……はずだ。
 メールの送り主は、〔月の光〕のアドレスに俺宛のメールを送ってきた。〔月の光〕に俺が出入りしていることも、先に絹さんの目に触れることも、彼が俺に知らせるだろうということも、近くに大渡橋があることも知っている。

「絹さん、この中にコーヒーを入れてください」
 ジルが魔法瓶を手に現れた。
「どうしたの?こんな時間に」
「稲作に持っていきます」
「仕事なんだ」
「いいえ、大渡橋の上にいます」
 店のすぐ近くに架かっている橋だ。
「?」
「ここで見たメールの指示だそうです」
 僕はパソコンを開くと、見ないつもりだった削除済みアイテムを開いた。やっぱりここまで消していなかった。
 彼宛のメールを読んだ。
「何これ、身に覚えがあるって?」
「わかりません」

 からかわれているのかも知れない。それならそのほうがいい。
 星が綺麗だし、夜風が涼しい。
 一晩ぐらい、知らない誰かにからかわれてもかまわないじゃないか。
 稲作は、橋の歩道に作られているベンチに座って空を眺めた。
 利根川の音が激しい。台風の影響で増水しているのだろう。
「稲作」
「どうした。今日は帰らないと言っただろう」
「これを持ってきました」
 紙袋の中にはコーヒーとサンドイッチ。
「ありがたい。あんまり暇で寝ちまいそうだったんだ」
「素敵な夜だ」
 両手を広げて空を見上げたジルは、夜気を全身に浴びて輝いて見えた。
「――稲作、一緒に踊っていただけませんか」
「できねぇ」
「手を――」
 立ち上がって手を伸ばした傍らで、優雅に踊るジルは美しかった。


 僕らは、この大渡橋付近に住んでいることになっています。
 橋にはこんな詩碑があります。 
『大渡橋』
大渡橋(おほわたりばし)は前橋の北部、利根川の上流に架したり。鉄橋にして長さ半哩にもわたるべし。前橋より橋を渡りて、群馬郡のさびしき村落に出づ。目をやればその尽くる果を知らず。冬の日空に輝やきて、無限にかなしき橋なり。

 僕らが思うより有名な郷土の詩人「萩原朔太郎」さんの詩です。
 セカチュウのサクちゃんも、おじいちゃんが萩原朔太郎さんから名前を付けたと言っていませんでした?

 今日の写真は「アズマレイジンソウ」(2005.09.03静岡県で撮影)
 東伶人草と書きます。麗人(見目麗しい人)ではなく、伶人は雅楽を奏する伶人の冠に花の形が似ているところから付いた名前です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/09/07

男と女

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「わほっ!何だこりゃ」
 伸ばしっ放しの黒髪が、大きなリアクションでバサッと揺れた。耳が長い犬みたいだ。
 稲作は、メールの件名を見て喜んでいる。
 パソコンのメーラーを開いたままだったのだ。
 奥様ランチ、人妻倶楽部、○○女子学園保健室……。送り主は何とかメールを開かせて、添付のURLをクリックさせようと必死なのだ。
「稲さん、見てもいいけれど、URLをクリックしないでね。変な請求が来ると困るから」
「男って、ほんとバカだよね」
 一緒にのぞき込んでいた、妙ちゃんの冷めた一言。
「何でだ?」
「そんなの見て喜んでるじゃない。女性向けのそういうメール見たこと無いよ」
 たしかに、女性向けの迷惑メールが来たことはない。
「だいたい、女が見ず知らずの男にお金払ってまで付き合うわけないよ。これぞ、と思った人には法を犯してでも貢ぐ人はいるけど」
 女性は現実的なのだ。
 毎日うんざりするほどの迷惑メールが送られてくる。僕などは、暇な時に消せばいいけれど、仕事でパソコンを開く人は毎朝嫌な気分になることだろう。先日メールした件ですとか、Re.とか、仕事関係かと思うと妖しい内容なのだから。でも、確認しないで消すことも出来ない。ほんとに仕事のメールだったら大変だから。
「あれ?このメール――」
「なに?」
「俺宛だ」
「なになに、見せて!」
 興味津々の妙ちゃん。
 稲作は、ノートパソコンを持って逃げ回り、ひとりで読むと、
「絹さん、これ消してもいいか」
 と、言った。
 何だか顔が赤いみたい。
「いいよ、君宛のだったら」
 Outlookは削除を押しても削除済みアイテムに内容が残ることを、稲作は知っているだろうか。見ないけれど。


 先日、思いがけない方からトラックバックをしていただきました。
 8月31日の「チャンス」托卵する野鳥の‘ききなし’について書いた日記です。
 いつものようにサイトさんにご挨拶に行くと、『続・八ヶ岳あかげら日誌』の主は「塀の中の懲りない面々」を書かれた作家の阿部譲二さんでした。サイト名の通り、野鳥に興味がおありのようです(アカゲラはキツツキの名前)。一時期よくTVでもお見かけしましたよね。
 今は、八ヶ岳に仕事場を設け、年間80日間は八ヶ岳で過ごされているのだそうです。
 羨ましい八ヶ岳での生活や野鳥などの写真満載の素敵なブログです。何より良いのはご本人の笑顔の写真がとっても素敵。充実した生活を送られているのですね。誕生日が僕の父と一日違い。同じ歳の父にも阿部さんのような笑顔でいてほしいです。
 興味がある方は、右側の「最近のトラックバック」から訪ねてみてください。それこそがトラックバックの本来の機能ですから。

*トラックバック=「あなたのブログを、私のページで紹介しました(リンクしました)」の自動通知機能。

 今日の写真は「アキノウナギツカミ」(2005.08.27栃木県で撮影)
 秋の鰻攫と書きます。茎の下向きのトゲがあり、ウナギでもつかめるという意味から付けられた名前。凄い想像力ですね。
 この、金平糖のような花が好きで毎年撮すのですが、なかなかうまく撮れません。

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2005/09/06

キノコの季節

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「腹減った!絹さん、飯!!」
「どうしたの!?」
 突然現れた稲作に、僕らは驚いた。退院するという話を聞いていなかったからだ。
「言ってくれれば手伝いに行ったのに」
「手伝いに来てもらうことなんか何もねぇ」
「もう大丈夫なの?」
「ああ。――ところで良い匂いがしてるな」

「稲作!あなたも食べますか?」
 厨房から出てきたジル。手には出来たてのオムレツ。
「どうですか?」
「うん、美味い」
 いつも表情が薄いジルが、一瞬嬉しそうに見えた。
「一度採ってみたいんだが、俺んちの方には生えてこねぇんだ。……もう、キノコの季節だな」
 稲作は、残りのアンズタケを摘んで匂いを嗅ぎながら言った。


 今年の休耕田は不作です。変な言い方ですね。休耕田なんだから作物を作っていませんものね。不作なのは、休耕田に現れるシギが少ないということなのです。
 例年だったら、今頃はキアシシギ・タカブシギ・アオアシシギ・コアオアシシギなどが訪れるのですが、今年はアオアシシギを一回確認しただけです。大勢で羽を休めるはずのショウドウツバメもまだ見ていません。ちょっと心配です。

 今日の写真は「ハイマツ」(2005.08.05富山県で撮影)
 這松と書きます。名前の通り風の強い高山の尾根に這うように生える低木です。
 今日はここも野鳥でいきましょう。ハイマツが生えているようなところで、カラスの鳴き声を聞いたら周りを見回してみてください。小柄で全身に白い点々があったら「ホシガラス」です。彼らの食べ物は、このハイマツなどの高い山に生えている針葉樹の松ぼっくりなのです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
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2005/09/05

仙人の贈り物

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 昨日一昨日とお休みをいただき、10人の仲間達ときのこ狩り&キャンプをしてきました。僕が参加させていただいたのは、今年で2回目。毎年、都合で来られない人がいたりして人数や顔ぶれが変わります。
 ただ、今年からずっと、人数がひとり足りなくなってしまいました。

 去年と違って天気に恵まれて暖かでしたが収穫は今一つ。いつものコースを歩き、昼食をとっていた時のことです。
 僕らがこれから下ろうとしていた道から、作業服を着て年季の入ったリュックを背負った人が、ゆっくりゆっくり登ってきました。リュックの中には新聞紙で包まれたものが幾つも入れられています。ちょっとオレンジ色のキノコが見えています。
 仲間のひとりが尋ねました。
「アンズタケですか?」
 リュックを背負った人は、嬉しそうに中身を見せてくれ、ご自身の体験談などを聞かせてくれました。途中、空っぽに近い僕らの籠に、新聞紙一包み分のたくさんのアンズタケを入れてくれ、自分が見つけた場所を教えてくれ、まだ採れることを教えてくれました。
 仲間達によると、彼のように、苦労して採ったキノコを他人にくれたり収穫場所を教えてくれる人は滅多にいないというのです。そうですよね。

 夜。キンキンに冷えた生ビールと、キノコ尽くしの料理を食べながら話が弾みます。
 思いがけないハプニングの話、アサギマダラが付いてきてなかなか離れていかなかった話、その風貌と話の内容から仲間達が‘仙人’と名付けたキノコをくれた人の話……。

 宴を始める前に仲間達は、彼女のために生ビールをお供えしました。
 創作料理が得意で、ワインを愛する人でした。
 キャリア・ウーマンで、元気溌剌とした人でした。
 2度しかお目に掛かっていませんが、彼女には教えていただきたいことが、まだまだたくさんあったのです。
 あのアサギマダラは、彼女だったのかも知れません。
 蝶になった彼女が、僕らに会う前の仙人に耳元でささやいてくれたような気がしてなりません。
『あの人達は、私の友だちだから収穫を少し分けてあげて』って。
 仙人が分けてくれたのは、彼女が大好きだったアンズタケだったからです。

 その夜、澄んだ空気の下で、初めて乳白色に見える天の川を見ました。
 Milky Wayの意味を初めて見ました。
 

「綺麗!本当に食べられるの?」
 仙人のお裾分けをいただいてきた僕は、店に来ていた妙ちゃんとジルに見せた。
「香りを嗅いでごらん」
「良い匂い。キノコじゃないみたい」
「干した杏みたいな色と香りがするから、アンズタケっていうんだよ」
「ジロール。市場でよく買いました。同居していた人の好物だったので。……彼女は、オムレツが好きでした」
「えーっ、ジル、国に彼女がいるの?」
「私がオムレツを作りましょう。彼女が好きだったオムレツを」
 ジルは、妙ちゃんの質問に答えずに、厨房に入っていった。
             (アンズタケの写真はこちら。キノコの国6でご覧下さい


 今日の写真は「テンニンソウ」(2005.09.03静岡県で撮影)
 天人草と書きます。花の色は地味ですが、高さが1メートルほどになるため群生して咲く姿には圧倒されます。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/09/02

目ヂカラ

PICT00781
 子供の頃から、じっとしていることが苦手だ。通信簿にもいつも落ち着きがないと書かれたていた。
 それが、じっとしていなければならないのだから拷問に近い。
 俺の前世は、きっと回遊魚だったのだ。

 ドアが開いて、大きな赤い薔薇の花束が入ってきた。
 俺には見慣れているが、この田舎では浮きまくる服装の男と共に。
「マジかよ、青田さん」
「何がだ?」
「そんな格好で花束を持って――めまいがするぜ」
「大丈夫か?」
 めまいの原因はあんただ。
 青田は〔Madam☆Rose〕の用心棒。稲作が勤めていた時に、良い意味でも悪い意味でも世話になった男だ。仕事柄、稲作と良い勝負の強面の上、マフィアみたいな黒服にサングラスを掛けている。抱えきれないほどの赤い薔薇の花束を、麗華に預かったといって持ってきた。
「マダムは用があってな。代わりに俺が来てやったんだ、面白そうだから」
「面白いか?」
「もっと唸ったりしてるのかと思った」
「サディスト」
「その様子じゃ、大丈夫らしいな。……これは俺からの見舞いだ」
 彼が差し出した箱の中身は、○◆◎●のラムレーズンのアイスクリーム。いつも長蛇の列が出来ている人気店だ。死んだ仲間との思い出がある、俺たちにとって特別な食べ物。
「その格好で並んだのか」
「悪いか」
 俺たちは無言でアイスクリームを食べた。大した話もしないまま、青田は帰っていった。
 半分は本気で俺を心配し、半分は麗華に報告するために。
 
 ドアの隙間から、カレーライスがのぞいた。
「遅いぞ!」
 楽しみが食べることだけというのが情けない。
「動かないのに、こんなの食べてると太っちゃうよ」
「!?」
 妙!
 いずれバレると思っていたが早すぎる。絹さん、なんて口が軽いんだ。
「酷いよ、稲作。ボクにだけ黙っているなんて」
 妙の、涙で潤んだ大きな瞳が俺を見た。
「ご、ごめんな。お前に心配かけたくなかったし、笑われたくなかったし」
「ほんと?」
 見る見るうちに満面の笑顔に変わる妙。……だまされた。
「なぁ、妙、そのアイスクリーム全部やるから――」
「ほんと!?○◆◎●のアイスだ!やったー、大好きなんだ!……今日からは、毎日、ずーっと傍にいるからね。カレー食べさせてあげようか?」
 貢ぎ物は逆効果。ある意味、ジルよりも手強い。 


 今日の写真は「シラタマノキ」(2005.08.28栃木県で撮影)
 見たまま、実が白いから白玉の木です。実は食べられませんが、葉に面白い特徴があります。どこかで出会ったら、ちょっとだけ葉を千切って匂いを嗅いでみてください。湿布薬のようなスーッとしたサロメチールの匂いがします。 
 
【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

☆お知らせ☆―明日明後日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/09/01

愛について

PICT00861
「止めなくて、良いのですか」
「いずれわかっちゃうことだからね。稲さんには言うなって言われていたから黙っていたけれど、バレちゃったものは仕方ない」
 ウソが下手な僕は、少しほっとしている。
「悪いようにはならないでしょう。稲作はいつも相手にとって最善の方法を考えていますから。自分のことは忘れてしまって」
「そうだね、そのせいで損ばかりしている。世の中は、少し器用でズルいぐらいじゃないと生き辛いんだけれどね」
「私が稲作を好きなのは、その不器用な所です。……彼は私たちに愛を与えようなどとは思っていない。愛してほしいとも思っていない。人は、愛されたいからその人を愛する。常に代償を求めるのではないのですか」
 宗教に関心がない僕には良くわからないけれど、ジルの考え方はキリスト教的なのではないかと思う。‘汝の敵を愛せよ、然れば汝も愛されん’という。
「彼はきっと慈悲深いのだよ」
「慈悲?」
「代償を求めない絶対愛、理由のない愛とでも言ったらいいのか」
 これは、仏教的な愛。
「それで満足出来るのですか」
「解らない」
 稲作は、ジルが言うように代償を求めない。でも、その対象を失った時の彼を見ているのは、こんな僕でも辛かった。
「稲作は、私とある約束をしてくれました。今とは状況が違う、旅の途中でのことです」
「君とその約束をした時、彼にもその約束をすることが必要だったのだと思う。心配しないで。彼は君との約束を破らない」
《明日につづきます》


 今日の写真は「タマガワホトトギス」(2005.08.28栃木県で撮影)
 玉川杜鵑草と書きます。名前は、京都府井出の玉川から。
 昨日に続いてホトトギスです。こちらは黄色が特徴。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/08/31

チャンス

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 大盛りのカレーライスを持って店を出ようとした時だった。
「あれ?いつから出前サービス始めたの?」
 と、妙ちゃん。
 今日は東京へ行くと言っていたのに。
「ちょっとね。……今日は学校に行くって言ってなかった?」
「稲作のおかげで、行きそびれちゃったんだ。いつも暇なのに、今日に限って依頼の電話が多くてさ。どこ行っちゃったんだろう、いつ帰ってくるかわかんないから仕事受けられないし、必要経費だって渡してないのに」
 妙ちゃんは経理も担当しているのか。
 妙ちゃんだけには知られたくない稲作は、極秘任務で出張(ウソっぽいが)ということになっている。妙ちゃんだけには…っていう所が二人の微妙な関係を思わせる。
「ねえ、絹さん。それ、カレーライスの大盛りだよね。それと、ウスターソース……」
 まずい。
「どこに持っていくの?」
「ちょっとそこまで」
「ふ~ん」
「絹さん、もう隠すのは無理です。実は――」
 ジルから話を聞いた妙ちゃんは、怒り出すと思ったら、黙ってしまった。
 それどころか泣き出しそうだ。
「どうしよう」
「?」
「おたふくかぜ……私たちの赤ちゃんが……」
 ふらふらと出ていこうとする。そんな情報どこで仕入れたんだ。
「待って、妙ちゃん。そんなことにならないために大事を取って入院しているんだよ。先生も大丈夫だって言ってくれたから」
 大人になってから罹る流行性耳下腺炎は、たしかに重いけれど不妊の原因になることはまれなのだそうだ。
「ほんと?」
「君に逢うのが恥ずかしいって言うから、黙っていたんだ。だから、待っていてあげてね」
「これ、私が持っていくね!食べさせてあげようっと!」
 僕の話をぜんぜん聞いていない妙ちゃんは、カレーを持って出ていった。スキップしながら。
《明日につづきます》


 今日の写真は「ヤマジノホトトギス」(2005.08.22群馬県で撮影)
 山路の杜鵑草と書きます。この斑点模様が好きという人と気味が悪いという人がいますが、僕は前者。花の形もいいですね。

 野鳥のホトトギスは、夏の高原には欠かせないBGM。「トッキョトカキョク」「テッペンカケタカ」という‘ききなし’が有名です。
 ホトトギスはカッコウの仲間。他の鳥の巣に卵を産んで育ててもらいます(托卵と言います)。
 カッコウの仲間は他に、ツツドリ、ジュウイチがいます。
「トッキョトカキョク、トッキョトカキョク」
「カッコウ、カッコウ」
「ポポ、ポポ、ポポ」
「ジュウイチ、ジュウイチ」
 どれも一度は耳にする高原の歌い手ですね。

【登場人物を少しずつ紹介します】
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。 
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2005/08/30

安全な場所

PICT00261
 〔月の光〕にはいつも通り、のんびりとした時間が流れている。
 ジルはいつも通りトマトジュースを飲んでいる。
「僕は、これを届けに行って来るけれど、ジルちゃんは行かない?」
 ふつう出前はしないがこれは特別。大盛りのカレーライスとソース。
「私は、ここにいます。店番をしていましょうか」
「ありがとう。すぐに戻るからいいよ、準備中の札下げておくからね」
「わかりました」
 ジルは綺麗だけれど、何をするかわからない所がある。お客様の前でネズミでも出されたら大変だ。
 わからないと言えば、情が厚いのか薄いのかもわからない。あれほど付きまとっていたのに、一度‘来るな’と言われただけで大人しく引き下がっている。
 3日前、僕の予想通りの展開になった。
 稲作は、篠原先生に診てもらい、そのまま何日かお世話になることになったのだ。彼と知り合ったのは彼が高校生の頃だったが、子供の頃から風邪もひいたことがないと言っていた。
 そして、この間子供との約束で田舎でカブトムシを捕ってきたのを覚えているだろうか。
 お梅ちゃんのお孫さんは、せっかくお祖母ちゃんの家に遊びに来ていたのに風邪をひいて、外に出られなかったらしいのだ。彼はとても元気で、負ぶさったり絡み付いたりしてきて強面の稲作に懐き、意気投合してカブトムシを捕ってきてあげる約束をしたのだそうだ。
 他の子供にうつるからと、外に出してもらえなかったお孫さんは、寄りによって流行性耳下腺炎に罹っていた。
「様子を聞いてきてあげるからね」
「心配はしていません。あそこほど安全な場所はありません。稲作は動けませんから、いなくなる心配もない」  
《明日につづきます》


 今日の写真は「ミズオオバコ」(2005.08.18群馬県で撮影)
 水大葉子と書きます。農薬を使ったり、水路がコンクリート製になる前は普通に見られた水草だそうですが、僕はここでしか見たことがありません。
 子供の頃、田んぼにトウキョウダルマがエルを捕りに行ったものですが、地元の田んぼでは何年も目にしていません。アオハダトンボやハグロトンボも見なくなりました。
 ふと思い出すと、あの頃当たり前に身の回りにいた自然の仲間達が、静に姿を消していたことに気付くのです。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/08/29

罰(バチ)

PICT00961
「絹さん、折り入って相談があるんだ」
 いつもだったら、もっと早い時間に「腹減った!飯!」という挨拶でやってくる稲作が、静にやってきた。
 ランチを終えてくつろぐお客が3組ほどになっている。忙しい時間を外して訪れたようだ。
「何?珍しいね」
「……紹介してほしいんだ」
 小さな声で、もごもご言っていて聞き取れない。これも大声で早口の彼にしては珍しいことだ。
「もっと大きな声で言ってくれなきゃ聞こえないよ」
「あんたが行ってた病院を紹介してくれ」
「ん?どこのこと」
「俺が後をつけたとこだ」
「後をつけられたっけ?」
「忘れちまったのかよ。○▲◇●が痛えから病院を紹介してくれって言ってんだよ!!」
「!?」
 最後の言葉はいつも通りの大声だった。
 店の中にいる全員が僕らを見た。
「ちょっと、みんな食事中なんだ。奥の部屋で聞こう」

「心当たりがあるのか」
 店の奥、僕の休憩部屋で話を聞いている。
「最近は、おとなしいもんだぜ。俺も歳をとったのかなぁ」
「その若さでそんなことを言うな。僕の立場はどうなる。……そんなことはどうでもいい、心当たりはないんだね?」
 だとすると、他の病気か。
「いや待て、一つある」
 稲作は、一昨日の妙に対しての心の葛藤を、恥ずかしそうに語った。
「――だから、罰が当たったんだ」
 こういう所が、彼の可愛い所なのだ。 
「君、本気で言っているのかい?……僕だって人間だし、男だ。色々な思いが渦巻くこともある。考えただけで、罰が当たったりなんかしないよ」
「そうかなぁ」
「病院を紹介してあげるから。言っておくけど、僕は君と同じ症状だった訳じゃないからね。――あれ?」
 気付いてしまった。稲作の耳の下が腫れていることに。熱もある。
「君、篠原先生に診てもらってからの方がいいみたい。子供の患者がいないか確認してあげるから」
《明日につづきます》


 時々、パソコンの情報誌を買います。今回は、付録のCD‐ROMに惹かれて買ってしまいました。AQUAZONEを使ってみたかったのです。その上、無料でカクレクマノミがゲット出来ると書いてあります。
 ニモだ!
 ということで、買った時のままだった僕のパソコンのスクリーンセーバーは今、ルリスズメダイ10匹とカクレクマノミ3匹が泳いでいます。エサを撒くと食べに来る所も可愛いですよ。
 もう一つ。そのCD‐ROMで紹介されていたアドベンチャーゲームのフリーソフト「ZODIAC2」にはまってしまいました。登場する「軽装の男」が気になって仕方なくなってしまったのです。6種類のエンディングを全て見終えた後出現するシナリオは、「軽装の男」ファンの僕には涙ものでした。気になる方は「ZODIAC2」のサイトに行ってみて下さい。

 今日の写真は「イワインチン」(2005.08.28栃木県で撮影)
 岩茵陳と書きます。花盛りの時期に会えずにいたので、嬉しい出会いでした。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/08/28

ご来店ありがとうございます

 お休みをいただいている間に、10000ヒットを越えていました。
 大勢の皆さまにご来店いただき、僕たちは幸せものです。
 喫茶店〔月の光〕登場人物一同、これからも精進して――
「おいおい、何かたっくるしい挨拶してるんだ?何を精進するんだよ」
「そうだよそうだよ、今まで通りでいいじゃない」
「私も、そう思います」
「そうかなぁ」
「そうだよ」

 それでは、あらためまして――
「またかよ!」
「ごめん、ごめん」
 喫茶店〔月の光〕は、今まで通りのんびりとやっていきますので、これからもよろしくお願い致します。 
 

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2005/08/27

葛藤

PICT01851
「ねえ!止まってよ!!」
「大丈夫か?」
 切羽詰まったような妙の声に、稲作はバイクを止めて聞いた。
 ソフトクリーム2個と牛乳1本、飲むヨーグルト1本、一度に腹に入れれば起こることは一つ。
「ちょっと待て、もう少し走れば町の中心に出る」
 役場や学校の側なら、コンビニの1件や2件あるはずだ。親切そうなオバチャンに借りてもいい。
 妙は、‘ご休憩4000円’と書かれた派手な看板を指さしている。
「我慢出来ねぇのか?」
 土産まで買わされた上に4000円は痛い。
「ちょっと、なに勘違いしてるのよ!!……見たこと無いの……見てみたいの」
 ご休憩4000円。
 誘われてるのか!?俺。
 体が熱くなっていく。
「駄目だ、金が無え」
「そのぐらい、私、持ってるよ」
「便所はコンビニまで我慢しろ。しっかり掴まれ、行くぞ!」

 帰り着くまでの間、ジルの二つの言葉が、ずっと頭の中を渦巻いていた。
『あなたは、貴重な乙女だ』
 ジルが初めて妙に会った時、言った言葉。ヤツには見分けがつくのだ。
『GPSの発信器をバイクに取り付けてもいいですか』
 いつも本人、ネズミ、コウモリのどれかしらに付きまとわれているから、別に構わないと思ったのだ。
 ――おかげで、取り返しがつかないことをせずにすんだような気がする。

「ただいま!ジル、ずっといたの?」
「はい」
 寄り道もせずに戻った稲作と妙。
「ほら、お土産!チーズケーキ。バターとチーズは絹さんにお土産だよ。後で美味しいケーキつくってね。チーズケーキ、食べようよ!」
 妙ちゃんとは対照的に、稲作は酷く疲れた様子だ。
「どうしたの?稲さん。お腹の具合でも悪いの?」
「――放っておいてくれ。心の葛藤の結果だ」
「お帰りなさい、稲作」
 稲作を見詰める、ジルの瞳が青く輝いた。


 ジルと妙ちゃんの初めてのやり取りは、『YUUGATOU―誘蛾灯―』というお話の中にあります。よろしかったらご覧下さい。

 今日の写真は「カセンソウ」(2005.08.07群馬県で撮影)
 歌仙草と書きます。この花が、田んぼの畦にところどころ残されているのは、農家の人に大切にされているのかも知れません。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
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2005/08/26

デジャ・ビュのように

 P81200621
…………
 …………
 …………
 稲作と妙ちゃんが出て行ってから、お客様が誰も来ない。
 彼の他に。 
彼はいつもの席で頬杖をつき、微動だにしないで窓の外を見ている。
 !?
 不思議な気分に襲われた。
 似ている。
 あの絵と構図も同じだ。
 今まで思ったこともなかったのに。
「何か?」
 ジルの青い瞳がこちらを見た。
「いや、何でも」
「稲作にも言われます。私は智紘に似ていると」
 思っていたことを、言い当てられてしまった。
「何か、飲む?」
「それでは、コーヒーをいただきます」
 コーヒーの注文を受けて、ホッとする僕。
「マンデリンを。智紘が好きだったコーヒー」
 マンデリン……。
「知っているの」
「はい。……あれを弾いては、いけませんか」
 ジルは、ピアノを指さした。弾き手のいないピアノは、今では店のインテリアになってしまっている。
「弾けるの?」
「前の前に一緒に住んでいた人は、ピアニスト。私は筋が良いと、褒められました」
「絹さんには、この曲を」
 ドビュッシーの月の光。
 ――涙が流れた。
「泣かないでください。……時々弾いても良いですか。私は彼を、あなたは智紘を思い出すために」


 予想通り、台風11号は群馬県を逸れました。
 被害を受けた方には、お見舞いを申し上げます。まだ天気が不安定ですから、十分気を付けてくださいね。

 台風のせいではないと思いますが、明け方おかしな夢を見ました。
 夢の中の僕は、上司に退職のあいさつをしました。帰り際、女子社員が腰に膝掛けを巻いてくれました。何?と思って下を見るとお尻丸出し。そんな格好で上司に会い、歩いていたことを恥ずかしいとも思わずに外へ出ると、火山が噴火していて熱い火山砂が降ってきました。これはたまらないと、入った建物はたぶん学校。迷ってなぜかなかなか出られない途中で、放送室にたどり着きました。そこにはお笑いコンビ「くりーむしちゅー」の二人がいて、3人で部屋を出ました。降りようとした階段に溶岩がせまってきています。
 それを見た「くりーむしちゅー」上田さんの緊張感がない一言。
「やべーよー」
 場面は地上に変わり、後ろからせまる溶岩から逃げる、僕。
 脇道を逃げようとしても、前から溶岩が。
 溶岩に飲み込まれた所で目が覚めました。
 この夢、どう思います?

 今日の写真は「キツネノカミソリ」(2004.08.12大分県で撮影)
狐の剃刀と書きます。葉の形を剃刀に見立てた事によります。濃い赤があまりに美しいかったのでモデルになってもらったのです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
森本智紘……店に飾られた肖像画の主。
      22歳で早世した〔月の光〕常連で、稲作の親友。
      彼の亡くなり方がみんなの心に影を落としている。

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2005/08/25

その笑顔を見るために

PICT01151
「ジルちゃん、二人は当分の間帰ってこないと思うけど」
「私は、待っていると約束しました」
「また、ネズミかコウモリに見張らせているのかい?」
「オートバイには付いていけません。だからこれです」
 ジルは、バッグから小さな機械を取りだし、電源を入れて見ている。
「高速道路を移動中のようです」
「なに?」
「GPSの受信機です」
 ハイテク機器も持っているのか。
「そんなの持たせているの?」
「オートバイに付けてあります」
「内緒で?」
「稲作はプロです。勝手にしろと言われました」
 プロ?……そういえば、彼は私立探偵だったっけ。そんな道具を使う仕事の依頼が来るとは思えないけれど。……普段使っていればメンテナンスも楽か。そういう問題でもないような……。

「ねえ、ねえ」
「なんだ?」
「あれ、何?」
 信号待ち。
 妙が指さした先には、雑然と植えられている農作物。大きさもまちまちだ。
「こんにゃく畑だ」
 もう目的地に近い。
「面白い。初めて見た、どうやって食べるのかなぁ。買って帰って絹さんに作ってもらおうよ」
 妙は、後ろで何かごちゃごちゃ言っている。が、稲作はそれどころではなかった。背中に神経が集中してしまうのだ。ガリガリに痩せているけれど、妙は一応女で、体も胸も柔らかい。
 胸……まずい、考えるな、俺。
「ちょっと!聞いてるの!」
「もうすぐ着くから」

 夏休み真っ只中。牧場は大勢の人で賑わっていた。家族連れも多いが、カップルが多い。
「どうだ?」
「おいし~い!」
 妙は幸せそうに笑った。
 その顔が見たくて、休憩も入れずにやって来たのだ。のどが渇いているだろうから、美味さも倍増のはずだ。
「牛乳も美味しそうだね」
 妙は、2つ目のソフトクリームをなめながら、次に目がいっている。
「いいなぁ」
「あんまり食うと腹壊すぞ」
 って、彼女の視線に先には、手を握りながらソフトクリームをなめ合っているカップル。
 俺は1歩後ずさった。
「逃げても駄目だよ。――まだ帰りがあるんだから」
 無事に帰れるのか、俺。 


 昨日からローカルネタですね。下仁田はネギとこんにゃくの町です。特産の太い下仁田ネギは、最近は都市部でも売っているそうです。手に入れたら、すき焼きに入れて食べてみてください。とろけるように甘くなりますよ。美味しい季節は秋から冬です。

 今日の写真は「ユウスゲ」(2005.07.31群馬県で撮影) 
 夕菅と書きます。別名はキスゲ。名前の通り、夕方に開いて翌午前中に閉じてしまいます。レモンイエローのユウスゲは、ニッコウキスゲとはまた違う美しさがあり、顔を近付けると、花にぴったりな爽やかな香りがします。
 撮影場所は榛名湖近くの「ゆうすげの道」です。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/08/24

ドナドナ

501681
「いらっしゃいませ、ジルちゃん、妙ちゃん」
 沼田さん篠原先生と、入れ替わるようにふたりが来店した。
「ねえねえ稲作、神津牧場って知ってる?」
 と、少々興奮気味の妙ちゃん。
「ん?下仁田の牧場かな?」
 ウスターソース掛けの大盛りカレーを食べ終えて、のんびりお茶を飲みながら答える稲作。
「そうそう、可愛いんだよね。ジャージー牛」
 ジャージーは、ホルスタインより小さくて全身ベージュ色の牛だ。
「そうか?ただの牛じゃねぇか」
「ねえねえ、そこのソフトクリームものすご~く美味しいんだって、知ってた?」
 どこで聞いてきたのか夢見心地の妙ちゃん。高原の牧場でソフトクリームをなめる自分の姿を想像しているのだろう。
「牛乳は濃くて美味かったぞ」
「ソフトクリームもコクがあって美味しいよ」
「え~!ふたりとも行ったことあるの?」
「ふたりで行ったんじゃないよ。僕は、若い頃に何度か行ったことがある」
 飼っている牛はジャージー種だけという、県内では有名な観光スポットだ。
「いいな、いいな、連れてってよ!」
「今からか?下仁田だぞ」
「どうせ、午後仕事無いんでしょ」
 一応探偵助手の妙ちゃんは、稲作の仕事状況を把握しているようだ。
「絹さん、車貸してくれ。ジルも来い」
「私は、行きません。ここで待っています。絹さん、トマトジュースを下さい」
「ジル、行かないの?残念だなぁ。……稲作、バイクでいいよ!高速二人乗りOKになったんでしょ」
 残念どころか嬉しそうな妙ちゃんは、助けを求めるような表情を浮かべた稲作を引っ張って出て行った。

「ジルちゃん、一緒に行かなくていいの?」
 ジルは気を利かせたのだろうか。
 稲作と妙ちゃんとソフトクリームの取り合わせは、「ソフトクリーム・キス事件」としてまだ記憶に新しい。大げさだけど、ジルにとってはそうだったのではないかと思っていた。思い過ごしだったのなら、その方がいい。
「私たちには、たくさんの時間がありますから」
 ジルの瞳が青く輝いた。


 手軽にハイキングが出来るような高原の売店で、一番の人気はソフトクリーム。軽く汗を流しながら高原の景色や空気を満喫した帰りのソフトクリームは格別ですね。
 色々な所で食べていますが、香料臭くない素朴な甘みの、神津牧場のソフトクリームは別格です。

 今日の写真は「ジャージーの子牛」(2003.10.05群馬県で撮影)
 もちろん、神津牧場撮影です。子牛って、黒目がちで可愛いですね。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/08/23

溜め息

PICT00141
《一昨日のつづきです》
「稲さんに何か問題があるのですか?どこか体の具合でも悪いんじゃ?」
「どうみても健康そのものでしょう」
「頭は少々弱いようだがな」
「もういい歳なんだから、少し考えて行動出来るといいんですがね」
「あいつは、脳味噌も筋肉で出来ているんだろう」
 篠原先生と沼田さんの会話を聞いていると、心配しているのか、けなしているのかわからない。
 僕は、??という気持ちで二人の会話に割って入った。
「あのぅ」
「話が脱線してすまないね、絹さん。……心の問題なんだ」
「智紘が亡くなってから、ようやく立ち直ったと思ったのになぁ」
 それは、僕だってわかっている。この中の誰よりも一番間近で見ていたのだから。
 今思うと、あれは共依存という状態だったのではないかと思う。稲作は智紘の行いを全て許し、見守り、後始末に奔走していた。あの頃の彼は智紘のためだけに生きていた。
 見た目と言動がそうは見えない所も、彼自身と周りが、余計に彼を追い詰める。
「ジルちゃんですか?あの子は智紘君と違って健康なんですよね。今は、稲さんにくっついて離れないですが、そのうち日本に慣れれば状況が変わってくるのではありませんか?あんなに綺麗なのですから、女の子達だって放っておかないでしょう」
 そうであってほしい。

「ちわ~す。絹さん、腹減った!……なんだなんだなんだ?ジジイが三人雁首揃えて溜め息付いて。みんなで老後の心配でもしてるのか」
 僕たちは、また、溜め息をついた。


 今日の写真は「オオヒナノウスツボ」(2005.08.16群馬県で撮影)
 大雛の臼壺と書きます。草丈は1メートルほどありますが、花の色と大きさのせいで目立ちません。大きく撮すと、こんな形のお花です。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/08/21

心配のもと

PICT02011
「いらっしゃいませ、先生、この間はジルちゃんがお世話になりました」
「いや、大した世話はしていないんだが――」
 篠原先生は、軽く会釈をすると、カウンター席の沼田さんの隣に座った。
「ジルが?」
「ええ、交通事故に遭いまして――」
 と僕。沼田さんは知らなかったようだ。
「先生、治療したのか?」
「したような、しないような」
 見交わす目と目。見つめ合う二人……。
「そうか、あんたも知ったか」
 何やら二人は深刻そうだ。
 ジルに何かあったのだろうか。彼の小食と顔色の悪さがいつも気になっているのだ。
「絹さん、心配そうな顔をしなくてもいいよ。ジル君に何かあった訳じゃない。私たちが心配しているのは……」
「広木の方だろう?」
「ええ」
《明日につづきます》 


つい先ほど、ドン、という近くで大きなものが落ちたような感じがしました。
 新潟でまた震度5強の地震があったようです。今のところ被害の報告はないようです。
 前橋は震度2でした。

 今日の写真は「フシグロセンノウ」(2005.08.14長野県で撮影)
 節黒仙翁と書きます。薄暗い林の下で輝くように咲く、朱赤色の大きな花です。
 なぜ、仙翁?=仙翁は中国原産の多年草です。直径 4 センチくらいの深紅色の花をつけるそうです。京都府嵯峨の仙翁寺に伝わったのでこの和名。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/08/20

雷雨

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「ヘチマ?食べるの?」
「本気で言ってるのか?まさか見たことねぇのか?」
「ヘチマじゃないの?」
「キュウリ」
「ウッソー!そんなの売ってないよ」
「売り物にはなんねぇからな」
 〔月の光〕キッチンでの稲作と妙ちゃんの会話。
 僕は、キッチンから閉め出されてしまった。
 お化けキュウリは店では売っていないけれど、この季節田舎では普通に見かける。と、言うよりはいただくのだ。キュウリは収穫時期を2~3日逃しただけで大きくなり過ぎてしまうから、持て余してしまうのだ。
「じゃ、これも見たことねぇだろ?」
「ミョウガ?」
「これもこうなったら売り物にはならねぇ」
 稲作は、花が咲いたミョウガを見せたのだろう。

「はい、絹さん」
「うん、美味しい」
 種を取って皮をむいたお化けキュウリとナスの薄切りとミョウガをピリ辛のタレで和えてある。何とも夏らしい一品。
「だろ。……お千代ちゃんの所で喜んでもらったら、どこに行っても持たしてくれるんだ。助かるけど、毎日食ってるとキリギリスになりそうだぜ」
 そういいながら、大盛りライスに和え物を乗せてかき込んでいる。
「美味しそうに食べるねぇ。でも、そんなのばかり食べているとキリギリスになる前に栄養失調になっちゃうよ」
「こればっかじゃねぇさ。俺にはこういう強い味方もある」
 彼は残りのライスの上に、生卵を割って落とした。
「あっ、雨だ」
 外が暗くなり、大粒の雨が窓を叩き始めた。


 3時過ぎから、さっきまで雷雨が降っていました。午前中の暑さとうってかわって涼しい風が吹いています。

 今日の写真は「ホツツジ」(2005.08.14長野県で撮影)
 穂躑躅。以前ミヤマホツツジを紹介しました。今日はホツツジの花を紹介します。見分け方は、めしべの向きです。ミヤマホツツジと比べてみてください。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/08/19

なるようになる…のか?

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「まだ大丈夫みたいだな」
「なになに?」
 やって来た稲作は、黄緑色の虫かごを下げて入ってきた。似合わないことこの上ない。
「見ろ」
「クワガタムシ!」
「お梅ちゃんちで、俺の田舎にはいっぱいいるって言ったら、遊びに来ていた孫がいつ帰るんだっていつ帰るんだって煩くてな。朝一で捕ってきた。夕べ、お袋に電話して街灯の下にスイカの食べかす置いといてもらったんだ」
「それでそんなに捕れるの」
「悪かったな、田舎で。……変な格好のヤツは混じってねぇな」
「?」
「今、子供達の間で飼うのが流行ってるんだと。ホームセンターにも売っていて、その孫がお梅ちゃんにねだってたんだ。それも輸入物。角がいっぱい生えているカブトムシなんて何か邪道な気がして」
「そういえば、放してしまった虫で雑種が出来てしまわないかとか、国産の虫が生存競争に負けてしまわないかとかニュースで言ってたね」
「なるようにしかならねえさ。ブラックバスやミシシッピーアカミミガメみたいに日本に溶けこんじまうかも知れねぇし。……やっぱり格好いいだろ?日本のヤツは」
 得意そうな彼の虫かごの中には、大きなカブトムシ、オオクワガタ、ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタ、コクワガタが入っている。
「ほんと、格好いいねぇ。僕はミヤマクワガタが好きだったんだ。このオオクワガタ、ちょっと前だったら相当高価だ」
「そんなだから、輸入なんかし始めるんだ。……あの子には、最後まで面倒見るように、ちゃんとした飼い方教えなきゃ」

 男の子は幾つになっても、カブト虫・クワガタ虫が好きなのだ。おじさんになってもね。


 ってことで、
 今日の写真は「ミヤマクワガタ」(2005.08.05富山県で撮影)
 深山鍬形。クワガタソウの仲間では、一番色が綺麗で華やかです。2本突きだしたおしべがチャームポイント。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/08/18

懺悔

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「もう帰れよ。若いお姉ちゃんじゃねぇんだから、心配いらねぇのに」
 見ている人がいたら、危ない男の独り言にしか聞こえないだろう。
 頭上を何匹かのコウモリが飛んでいるのだ。
 ジルには、俺がやんちゃな飼い犬にでも見えるんだろう。どっかで喧嘩でもしないか心配なのだ。

 事務所のドアを開ける。
 ジルの心遣いに乗ってみるか。
 部屋が暗い方が居心地がいいのかな。
 灯りを点けずにソファに座った。
 智紘――お前と俺の大切な人を、傍で守ることも出来ねぇ。おねえは、本人や周りが思うほど、強い女じゃねぇのになぁ。情けない男だよ、俺は。
 智紘――妙は少し元気になったよ。俺のことを好きだと勘違いしているようだけど、良くなっている証拠だろう。いつか、女らしくなって、彼氏を紹介してくれる日が来るだろう。
 智紘――考えても仕方ねぇ事だけど、ジルが5年早く俺の前に現れていればと思う事がある。
 智紘――俺はジルと約束をした。お前と会う、ずっと前の約束なんだ。……その約束を、破る気はねぇんだ。


 智紘と会うずっと前の約束。そのお話を書いたのは去年末のことでした。
 よろしかったらご覧になってみて下さい。題名は「間違われた男」です。

 今日の写真は「ツノハシバミの実」(2005.08.14長野県で撮影)
 以前紹介した角榛の実を見つけました。名前の由来がわかりますので紹介します。
 秋には、西洋榛(ヘーゼルナッツ)と同様に食べることができます。
 花の写真はこちら

【登場人物を少しずつ紹介します】
森本智紘……店に飾られた肖像画の主。
      22歳で早世した〔月の光〕常連で、稲作の親友。
      彼の亡くなり方がみんなの心に影を落としている。

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2005/08/17

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「私は、もう少しここにいます」
「わかった」
 と、言い残し、稲作は出て行った。
「どうしたの?」
 いつもべったりと稲作にくっついているジルなのに。
「二人だけで、話したいこともあるでしょう。また、1年会えないのですから」
 ジルにしてみれば、気を利かせたつもりなのかも知れない。
 16日の夜なのだ。帰ってきている智紘と本当に話せるわけではないけれど、そういう時間も必要かも知れない。
「コーヒー、飲む?」
「トマトジュースを」
 差し出したトマトジュースを、うっとりと見詰めるジル。どうしてあんな顔が出来るのだろう。
「何か?」
 ピカッ!一瞬、僕を見た目が青く輝いたように見えた。
 青い瞳、金色の髪、白い肌……。
 まずい。僕は、アンティーク・ビスクドールが恐いのだ。
 パタン、パタン、パタン、何かが窓にぶつかる音。
 ……風が、出てきたのか。
「窓を――」
「?」 
「開けてもいいですか?」
 バサバサバサバサ、黒い影が3つ、店の中に入ってきた。
 影はしばらく天井近くを飛び回ると、ジルの頭と両肩に止まった。
「稲作は無事に家に戻ったそうです」
「コウモリ!?」
「ネズミは駄目だと、稲作に言われたので」 
 

 今日の写真は「カリガネソウ」(2005.08.16群馬県で撮影)
 赤城山でもやっと咲き始めました。雁草と書きます。花の形を飛ぶ雁に見立てたのだそうです。
 昔は前橋でも、V字形の隊列を組んで雁の群が上空を飛んでいたそうです。今では、V字形の隊列を組んで飛んでいるのは、当時はいなかったカワウの群。
 ここで、野鳥の雁について。
 秋、雁は新潟や東北の水田地帯に渡っていきます。何千何百の群れのほとんどがマガンですが、時々ヒシクイ、シジュウカラガン、ハクガン、カリガネなどが混ざっていることがあります。中でも、マガンにそっくりで、一回り小さく、くちばしが短く、目の回りに黄色い縁取りがあることはわかっていても、カリガネを探すのは至難の業。
 カリガネソウ、どうしても、あの愛らしいカリガネの顔を思い浮かべてしまいます。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/08/16

盂蘭盆会

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「ジル、大したことなくって良かったね。顔に傷が付かなくて良かった」
「ありがとうございます、妙ちゃん」
「男なんだから、顔に傷の一つや二つあったっていいじゃねぇか」
「稲作だって、傷なんかない方がいいよ。それ以上恐くなったら、誰も近付かなくなっちゃう」
「悪かったな」
 〔月の光〕にはいつも通りの時間が流れている。

「みんな揃っているね、お墓参りに行って来たかい?」
「ああ、行って来たぜ」
 稲作は、そういうことはきちんとしている。
「はいお裾分け」
 お千代ちゃんが、開けた風呂敷の中身は――。
「わっ、おはぎだおはぎだ」
「今度はおはぎ?」
「暦の上では秋だからな」
「智紘君にも」
 僕は、いただいたおはぎを1つ、肖像画の傍に供えた。
「?」
 ジルは、目の前で起こっていることが理解出来ないようだ。
「気付かなかったか?13日に連れてきたんだぜ。今夜、帰るんだ。……お前が帰ってくる所は、ここだもんな」
 稲作は、優しく智紘の肖像画に話し掛けた。


 ここのところ、更新時間が不規則で申し訳ありません。
 今月一杯はそんな風になりそうですけれど、よろしくお願いします。

 今日の写真は「ナンバンハコベ」(2005.08.14長野県で撮影)
 南蛮繁縷と書きます。へんてこな形をしているために南蛮と付いていますが、外来種ではないそうです。この形が大好きで見つけると写真を撮ってしまいます。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/08/13

魅了

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《昨日のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックして下さい
 絹さんが店に戻った後。
 麗華と俺は篠原家のリビングに通されていた。
 篠原先生は鼻の下が伸びきっている。
「さっき教えたろう」
「そんなことは関係ない。美しいものは美しい」
「ありがとうございます」
 麗華は流し目で医師をからかっている。この俺でさえ、気が迷いそうになるのだ。
 医師はノックダウンに近い。
「ゴホン」
 彼は、女先生のわざとらしい咳払いと机の下の足蹴りで我に返った。
「私たちは、どうすればいい?」
「誰にも言わずに黙っていてくれればいい。今回みたいな事が起こったら、また助けてくれるか?……あんたたちのことだ、研究しようとか、どっかへ売り飛ばそうとかって気はねえよな」
 夫妻とは長い付き合いだ。二人がそんな了見の奴らだったら、最初からここに連れてきたりはしない。
「そんなこと、考えも付かなかったわ」
「すまない、余計なことを言った。俺たちは、俺たちが生きている間だけ、ジルを見守ってやれば良いんだと思う。俺たちの代で、消しちゃいけないと思う」
「どういうことだ?」
「あいつ、1300歳なんだとさ」
 誰も、何も言わなかった。みんなジルの不思議を見ているからだ。

「皆さん、こちらにいらしたのですか」
 俺たちは、ジルの青い瞳に魅せられていた。


 今日の写真は「チシマギキョウ」(2005.08.05富山県で撮影)
 千島桔梗と書きます。岩場にへばり付くように群生している姿は、強風に耐えているようですね。花の内側の長い毛が生えています。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

☆お知らせ☆―明日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/08/12

特製ドリンク

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《昨日のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックして下さい
「ビックリしたよ。大したことがなくって本当に良かった」
 昨日から何度も言っている。ショックだったのかも知れないが、繰り言を繰り返すなんて、やっぱり絹さんは年寄り臭い。
「食べる?」
 リンゴで器用にウサギを作っている。お子様ランチじゃないんだから。
 頭や腕に痛々しく包帯を巻いたジルは、困った顔をして俺を見た。俺たちの食べ物を食えない訳じゃないが、たぶん食欲はないのだろう。
「俺がもらうぜ。丸ごとの方がうめえんだけどな」
 稲作は、リンゴのウサギを口に放り込んだ。

「ありがとうございます」
 見なくてもわかる、薔薇の香りと、薔薇の花束と共に入ってきたのは、麗華。彼女にしてはいつもより地味な服装だ。
「マダム!」
 嬉しそうなジル。
「お見舞いよ。特製ドリンクもあるわ」
「ありがとうございます」
 特製ドリンクの中身は、もちろん……。
 これで、ジルの傷はすっかり癒えるだろう。

「広木君」
「?」
「彼女もジル君の仲間なのか?」
 初めて麗華を見た篠原医師は言った。
「仲間じゃねえが、女でもねえ」


 夕方からずっと雷が鳴っていて更新が出来ませんでした。落ちるとパソコンが壊れるらしいのです。他のものも壊れるかも知れませんが。
 今の季節、前橋は雷が多いのです。
 
 今日の写真は「ウサギギク」(2005.08.05富山県で撮影)
 兎菊と書きます。可愛い見た目と名前の菊です。この花に会うと、高山に行った感じがします。
 この花を見つけると「わー、ウナギイヌだ!」と言ってしまうのは、赤塚不二夫さん世代のせい。
 オオマルバノホロシ(湿地に咲くナスみたいな花です)を見つけると「おお、まるばのほろし」(おお牧場は緑の曲で)と歌ってしまうのは誰のせい?

【登場人物を少しずつ紹介します】
麗華……クラブ〔Madam☆Rose〕のマダム。年齢不詳の超美形(♂)。

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2005/08/11

共有

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《昨日のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックして下さい
 突然、診察室のドアが開いた。
「どうしたの!?」
「母さん」
 篠原医院のもう一人の医師である、彼の夫人が入ってきた。みんな「女先生」と呼んでいる、元気な女性だ。
 最悪。彼女からどう隠そうかと、相談する間もなかった。
「診せて!」
 彼女は外科が専門なのだ。
 俺たちは、どうしよう、と顔を見合わせた。
「!!」
「どうした?」
 彼女の勢いは止まり、診察台に横になっているジルを見詰めている。
「智紘君――」
「あんたにも、そう見えるのか。俺にも智紘に見えるんだ。先生、この秘密、女先生にも共有してもらうぜ」
「どういうこと?」
 こういう時、女性の方が順応が早い。彼女はジルの正体を追求せずに、協力することを約束してくれた。
「ごめん下さい」
 事故のことを聞いた絹さんが、駆けつけてきた。
《明日につづきます》


 本格的なシギ・チドリ観察を始めました。前橋・玉村・伊勢崎の休耕田です。
 今日の成果:タマシギ2・コチドリ17・イカルチドリ2・ムナグロ63・イソシギ1・オオジシギ1
 タマシギは、鳥の中では珍しくメスのほうが目立つ鳥。メスはのどが赤褐色で、目の回りにツタンカーメンのマスクのような勾玉もようがあります。
 繁殖は一妻多夫で、メスが求愛し、オスが抱卵・子育てをします。子供を連れて歩いているのはお父さんです。
 見てみたい方は、検索すると写真が見られると思います。タマシギはファンが多いのです。

 今日の写真は「タカネヤハズハハコ」(2005.08.05富山県で撮影)
 高嶺矢筈母子と書きます。花に白、ピンク、黄色が混ざった可愛らしいハハコグサです。

 サボりにサボっていたホームページの行動記を、やっと更新しました。
 ブログに載せたもの、載せなかったもの、これから載せようと考えているもの、一括で見られますので良かったらご覧になってみて下さい。
 こちらをクリックすると行動記に飛びます

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/08/10

秘密

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《昨日のつづきです》
「なんて、乱暴な、真似をするんだ。もしもの、ことが、あったらどうする」
 かなり遅れて入ってきた篠原医師は息切れ状態。
 稲作は、診察室のベッドにジルを寝かせて待っていた。
「珍しく客がいなかったぞ」
「客じゃない、患者だ。今日は午後休診だ」
「開いてたぞ。物騒な」
「母さん、閉め忘れたな」
「おかげで助かった」
 会話をしながらも医師はてきぱきと治療の準備を進めている。
「ジル君、痛いところは?」
「ありません」
「知ってるのか?」
「お千代さんたちのアイドルだからね。一目でわかった」
「バアサンたち、医者に用があるようには見えないが」
「高齢だから、悪い所もあるさ」
「待合室は社交場か」
「君らしくない、ずいぶん冷静だ。ジル君が心配じゃないのか。トラックに跳ねられたんだぞ」
「心配はいらねえ。それよりあんたの方が心配なんだ。巻き込むことになってしまった」
「?」
「脈を取って見ろ」
「?」
 医師は慌てて、ジルの胸のあちこちに聴診器を当てている。
「アンドロメダなのか。機械音もしない」
「オヤジギャグが言えるようじゃ、大丈夫だな」
「ちょっと貸してくれ、せっかくあるんだからな」
 稲作は、アルコール綿をつまみ取ると、ポケットからナイフを取りだし消毒し、自分の手首を切ってジルの口に含ませた。
「!?――何をする!」
「見ろ」
 ジルの傷が、見る見るうちに癒えていく。
 医師はよろけながら、机の引き出しから薬を出した。
「薬は効かねえ」
「私のだ。気付け薬」
「俺たちだけの秘密だったんだが、すまねえ。……そんな訳で、しばらくここに置いてやってくれ。あんなにみんなに見られちゃ、すぐに治るわけにはいかねぇからな」
「どんな訳だ」
「よろしくお願いします」
 起き上がったジルは、いつもと同じ涼しい顔で言った。 
《明日につづきます》
 

 今日の写真は「ハクサンイチゲ」(2005.08.05富山県で撮影)
 花も草丈も大きく美しい花です。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/08/09

動転

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《昨日のつづきです》
「人工呼吸の経験は?」
「無え!」
 彼は、ジルの頭をそらせ、下あごを引き下げ口を開けさせた。彼は――智紘が世話になった篠原医師だ。〔月の光〕の近くで開業している。普段着だから気付かなかった。
 動転している。
「気道を確保した。いいか、そのまま鼻を摘んでゆっくり3秒間息を吹き込め。合図をしたら繰り返すのだ」
 言われた通りにするしか術がない。
「もう一度」
 一度息を吹き込んで、医師が胸を5回押す。脈拍の確認。 
 単調な作業。戻れ、戻れ、戻れ、戻れ……。
「3分……。救急車はまだか」
 救急車!?
 その一言で、俺は、我に返った。真剣に、一心不乱に、蘇生術を施していたのだ。
「起きろ!!」
 俺は、ジルの肩を掴んで揺すった。
「諦めるな!」
「目を開けろ!!」
 俺は医師の言葉を無視して、ジルの肩を掴んで揺すり続けた。
「乱暴するな!」
『――もっと……キス……』
 ジルは、俺だけに伝えてきた。
 畜生!
「目を開けろ!救急車で連れて行かれるぞ!」
 ジルは、大きな青い目を開いた。
「おお!戻った!じっとして、すぐに救急車が来るからね」
「私は大丈夫です。にゃうたろうは?」
「猫?いないぞ」
「無事だったようですね」
 ジルは、平気な顔をして起き上がり、辺りを見回している。頭から血が流れ落ちる。身体も服もボロボロだ。
 普通だったら即死状態。
 普通の人間だったら……。
「動いちゃ駄目だ!」
「先生、あんたのところに連れて行ってもいいか?」
「うちの設備じゃ手に負えない」
「大丈夫なんだ」
 稲作は、ジルを抱き上げると走り出した。
《明日につづきます》 

 
 今日の写真は「タテヤマリンドウ」(2005.08.05富山県で撮影)
 ハルリンドウの高山型。ある程度標高がある湿原で、普通に見ることが出来ます。なぜか、ここ立山のタテヤマリンドウは、限りなく白に近い色をしています。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/08/08

スローモーション

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「いいねぇ。僕もさわってみたい」
 僕は、ジルが野良猫にゃうたろうののどを撫でるのを、羨ましく眺めながら言った。にゃうたろうとは、まだ、鼻ET(彼の鼻先と僕の指先の触れ合い)しか出来ないのだ。
「じっとしているように頼んであげましょうか」
「それじゃ駄目なんだ。自分の意志で僕に懐いてくれないと」
「そうですか。……そろそろ稲作が帰ってくる時間です。たまには迎えに行ってみます。行きましょう、にゃうたろう」
「にゃう」
 にゃうたろうは、ジルの前を先導するように歩いていく。
 ジルは不思議な青年だ。彼の心の中には稲作のことしかないのだ。それを煩わしがらない稲作もまた不思議だ。

 見た事柄が、スローモーションに見える時がある。
 それは、自分の身に迫った危険を回避しようとする時、あまりに衝撃的な出来事を目の当たりにした時だ。
「稲作!」
 声に振り返った時だった。
 ジルの身体がスローモーションのように宙を舞っている。
 4車線、車通りの多い幹線道路の向こう側。
 跳ね飛ばしたトラックは猛スピードで走り去った。
 見ていた人々が彼に駆け寄る。
「大変だ!息してない!」
「脈もない!」
 稲作が向こう側に着いた時、心得のある人が蘇生術を始めていた。
「俺の友だちです――」
「何をボーッとしてる!早く手伝いなさい!」
《明日につづきます》 


 立山旅行。1日目は軽い散策、2日目は一の越から雄山に登りました。一番のお目当ての、トウヤクリンドウはまだつぼみでした。がれていて僕にとっては登り辛い山でしたが、信仰の対象の山で、山頂でご年輩の方も夏休みの家族連れも多く、遠くから見ると蟻の行列のよう。ばてている自分が恥ずかしかったです。
 砂崩しのように人の上り下りでいつかは山頂が低くなってしまうのでは?(ありえない)なんて想像してしまうほどの賑わいでした。
 途中、これも初見もイワヒバリに出会えてまた感激。体はずっと大きいのにヒバリに似た声でさえずっていました。
 山頂では、宮司さんに拝んでいただきました。
 標高3003メートル、谷間を飛ぶチョウゲンボウを上から見下ろす不思議な風景でした。

 今日の写真は「タテヤマチングルマ」(2005.08.05富山県で撮影)
 種類は全く同じですが、ピンク色のチングルマをタテヤマチングルマと呼びます。せっかくの立山、やっと見つけたものは遊歩道から遠く、望遠で撮しました。
 ピンク色に見えますか?
 
【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/08/07

価値観

PICT00321
「どうしましょうか」
「どうしようったって……」
 昔の恋人の訃報を聞かされた絹さんに、かける言葉が見つからない。
「ごめんね、大丈夫だよ。彼女は幸せだったから――」
 俺たちは、生きていた年月が長い短いで、その人の幸不幸を判断しない。
 智紘が不幸だったと思いたくないから。
「――きっと、僕と一緒になっていたら彼女は幸せじゃなかったと思う」
「そんなこと、わからねぇじゃねぇか」
 もっと、幸せになっていたかも。
「住む世界の違いって、やっぱりあると思う」
「そうでしょうか。私はずっと好きな人の世界に合わせて生きてきました」
 ジルのような生き方もあるかも知れない。が、彼女はそんな風には生きられないだろうと、俺でも思う。

「稲さん、君、ステーキ好きでしょう?」
「何で?」
 稲作は犬みたいに、よだれを垂らしそうになりながら聞き返した。
「どんなステーキでも美味しいでしょう?」
「もちろん!」
「たとえ話なんだけれど、彼女は僕らが食べたことがないような高いステーキじゃないと美味しいと思わないと思うんだ。毎日が、彼女にとってまずい食べ物と、着心地の悪い服と、住みにくい住まいじゃ、幸せとは感じられないんじゃないかな。……それを越えられるほどの強いつながりが、僕らにはなかった」
 同じものを見て、同じように美しいと感じたり、同じ事を信じていたりしたら、越えられたのかも知れないけれど。


 昨日一昨日とお休みをいただき、ライチョウと高山植物に会うために、立山に行って来ました。
 扇沢から、トロリーバス、ケーブルカー、ロープウエイ、トロリーバスと乗り継いで、着いたところは残雪が残る別世界。
 山小屋というには食事も温泉も良い「雷鳥荘」さんに連泊し、高山の雰囲気を味わってきました。ただし部屋は相部屋で、初日は男女8人、2日目は4人。若い方からご年輩の方まで、幅広い年齢層の山男山女で、聞かせていただいた登山談は大変楽しいものでした。一組のご夫婦は、定年後、家にいる日の方が短いほど二人で日本全国の山を歩いているとのこと。夫婦で同じ趣味を持ち、元気で過ごせるのって素敵ですね。

 今日の写真は「ライチョウ」(2005.08.04富山県で撮影)
 なんと願いを込めて書いた予告通り、会えてしまいました。しかも、カメラで写せるほど近くでした。目の上の赤いアイシャドーも見えますね。ハトより少し大きいキジの仲間です。
 初日の夕方、小雨が振る中を宿を目指して歩いている時でした。初めは1羽の雌が、周りで人々がカメラで写していても平気で木の葉を食べていました。そのうちに4羽(2つがい)になって、グエッ、グエッ、と美声とは言えない声で鳴き交わしたり、追い掛け合ったり……。
 こんなに簡単に見られる物かと思っていたら、それが今回の旅、最初で最後の出会いでした。

【登場人物を少しずつ紹介します】
森本智紘……店に飾られた肖像画の主。
      22歳で早世した〔月の光〕常連で、稲作の親友。
      彼の亡くなり方がみんなの心に影を落としている。

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2005/08/04

心残り

PICT01011
《前回のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックしてください
 もしも、あの時、違う選択をしていたら――誰でもそう思う時がある。行動派の彼女のことだから、体験してみたかったのかも知れない。
 あれから半年、彼女が〔月の光〕を訪れることはなかった。
 稲作は、カレーライスにソースをかけて食べ、隣でジルがトマトジュースを飲んでいる。
 いつも通りの風景だ。

「いらっしゃいませ」
「ブレンドを」
 初めてのお客様。少し緊張して、コーヒーを差し出す。小心者だから。
「いつぞやは、美和子がお世話になりました。あれから、あれが、ここの話ばかりするものだから。……やっと来てみる気になりました」
 僕より少し年上に見えるこの男性は、彼女のご主人?
「?」
「家内は、ずっとあなたのことを気にしていたようなのです。あなたに酷いことをしてしまったと。……昔の経緯は知っています」
「安心して、いただけたようですね」
「ええ。心残り無く、彼女は逝きました」
 この後、医者であるご主人が、彼女を助けることが出来なかったという話を、僕は、上の空で聞いていた。
 あの時の彼女は、病人には見えなかった……。

「稲作、あの人には、これが見えていたのですね」
 奥の席で話を聞いていたジルが、稲作の胸元の空間を摘んでブラブラさせる仕草をしている。ジルの目には、彼の目の色と同じ青いペンダントが見えているのだろう。死が近いヤツか、生きていないヤツにしか見えない青いペンダントが。


 栂池の湿原に、全身が黒で羽根の付け根の背中だけ赤いトンボが飛んでいました。図鑑でもネットでも検索出来ず諦めかけ、何気なく「湿原に飛ぶカオジロトンボ」という項目を見てみたら、探していたトンボでした。湿原で見た時、顔には全く目がいきませんでした。日常のことでも、注意して見る部分によって違って見えてしまうということを、トンボに教えてもらったような気がします。

 今日の写真は「コバノトンボソウ」(2005.07.27長野県で撮影)
 小葉の蜻蛉草。低山帯、亜高山帯の湿地に生えます。小さい上に緑色の目立たないランの仲間です。名前の通りトンボが止まっているように見えますね。尾瀬、八幡平の湿原で群生しているのを見たことがありますが、登山道で見たのは初めてでした。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

☆お知らせ☆―明日明後日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―
                    ――ライチョウに会いに行ってきます。

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2005/08/03

もしも

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《前回のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックしてください
「いらっしゃいませ――!!」
 数日後。
 再び、美和子さんが来店した。ドレッシーな姿しか見たことがない彼女が、妙ちゃんと同じ、白いTシャツとブルージーンズにスニーカー。初めてこんな姿をしたのかも知れない。全てがおろしたてだ。ゴージャスだった巻き髪は、きっちり後ろで束ねられている。
「どうしたのですか?」
「お手伝いをさせて下さい」
 彼女は手に持っていたエプロンを掛けながら言った。
「あの、人に頼むほど忙しくないので……」
「気になさらないで」
 そういう事じゃない。

「絹さん、腹減ったー!何か食わせてくれ!」
「いらっしゃいませ」
 女声に驚いた稲作は、辺りを見回している。
「あんた」
「何度かお目に掛かりましたね。沢木さんのお友達?」
「そんなところだ。……絹さん、やっぱりいいや。俺帰らぁ」
 いつもだったら、説教されるこの状況なのに、稲作は何も言わずに帰っていった。
 後で、何か言われるだろう。

 夕方。
 結局、一日手伝わせてしまった。
 たぶん初めて働いたのだろう。楽しそうな彼女を見ていたら、時間はあっという間に過ぎていった。
「今日は1日ありがとうございました」
 僕は、彼女に日当を渡す。
「困ります」
「困るのはこちらです。あなたにタダで働いていただく理由がありません。今度は、そのお金でコーヒーを飲みに来て下さい」
「――もしも、あなたと結婚していたら、こんな風に暮らしていたのかしら」
「いいえ、あなたは普通のサラリーマンの奥さんでしたよ。あのまま、あの町で暮らしているでしょう。あなたと別れなければ、この町の人と会うことはなかった。さっきの彼とも。……僕は、幸せに暮らしています」
 あなたは?と彼女を見た。
「わたしもよ。だから、あなたのことが気になったの」
 今頃どうして?
《次回につづきます》


 今日の写真は「ムシトリスミレ」(2005.07.27長野県で撮影)
 虫取菫。亜高山から高山の湿ったところに生えます。
 見た目のせいでスミレと名付けられていますが、タヌキモ科の食虫植物。虫を捕るのは葉の部分、粘液が出ていて虫を捕らえます。日本にも、こういう植物があるのです。
 食虫植物は、怪人サラセニアン(仮面ライダー1号)を見た世代の僕にとって、ちょっと恐いような変な思い入れがあります。実際子供の頃、モウセンゴケやハエジゴクを育てていたことがありました。サラセニアやウツボカズラは高価で買えませんでしたっけ。
 
【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/08/02

不味い!

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《前回のつづきです》
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「さあ、妙ちゃん、ジルちゃん手伝ってね」
「え?ボクも?」
「男の人は、美味しい手料理に弱いのよ」
「コンビニのお総菜の方が美味しいよ」
「まあ。……じゃがいもむいてみて」
 妙がむいたじゃがいもは、食べるところの方が少ないほど、厚く皮をむいてある。しかもガタガタ。
「妙ちゃん、お料理したことあるの?」
「ある!」
 俺は、いつだったか〔月の光〕で妙が作った、焦げて茶色いおじやを思い出した。
「広木は、お煮染めとか肉じゃがが好きなのよ。味は濃いめね」
「私は作ったことがありません。マダム、教えていただけませんか」
「いいわよ。妙ちゃんも頑張らないと、ジルちゃんに負けちゃうわよ」
「うん!」

 なぜ、妙が料理を作ると、不味そうな色になるのだろう。
 稲作の前には、色つやの悪い肉じゃがと真っ黒な煮染めが並べられている。
 ソース味の肉じゃがと、正にしょう油のみで煮染めた煮染め。
「ごめんなさいね。味付けに自信があるって言うから、妙ちゃんに任せたんだけど……」
「これが、稲作の好みの料理ですか」
 ジルは、顔色一つ変えずに料理の味をみている。
「ジル、ちょっと違う。……マダム、何とかなりそうか?」
「難しそうね。妙ちゃん、まずは病院に行って治ったら、美味しい物を食べてみることから始めましょうか」
「ボク、何でも美味しいよ」
 麗華は、妙を味覚障害と判断したようだ。

 須藤美和子さんが帰った後、一人のお客様も見えない。
 なぜ、彼女は今頃になって僕の前に現れたのだろう。
 今が幸せではないのだろうか。
《次回につづきます》     


 昨日は、予告もなくお休みをしてすみませんでした。
 休耕田巡りは、一昨日(7/31)から、シーズン到来を告げる使者である、ムナグロを確認出来たました。

 今日の写真は「ベニバナイチゴ」(2005.07.27長野県で撮影)
 見た通り、紅色の花を咲かせる苺。亜高山から高山の湿気が多いところに生えます。今回は花の季節でしたが、数年前、実を口にする機会がありました。図鑑に「これほどまずい木イチゴは他にない」と書かれていたからです。どれほど不味いのか興味がありました。たしかに不味い。苦くて渋くて、飲み込むことが出来ませんでした。

【登場人物を少しずつ紹介します】
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/07/31

休耕田巡り

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 7月下旬になると、休耕田巡りのシーズンに入ります。
 前橋、伊勢崎、玉村には広い水田地帯があります。稲を植えることを休んでいる田んぼが休耕田です。そこは、草地になっていたり、水が張ってあったり、環境は様々です。
 そこを目指して、多くの種類のシギ、チドリの仲間がやって来ます。それを観察するのが休耕田巡りです。
 これからは、こちらの報告もしていきたいと思っています。
「ちょっと待った!」
 稲作が乱入。
「なに?」
「俺たちの出番がなかったじゃねぇか」
「あれ?そうだったけ」
 と、白を切る僕。
「さっきから、そでで待ってたのに」
「これは舞台なのか?……ごめん、今日は話を考えつかなかった」
 いつも、行き当たりばったりなのもので、ごめんなさい。
「こんな事、やっている間に考えろよ、まったく」
 

 今日の写真は「ミヤマホツツジ」(2005.07.28長野県で撮影)
 深山穂躑躅。深山の名の通りホツツジより標高が高いところに生えますが、同じところで見かけることも多いです。
 ホツツジとの見分け方は、めしべの向きです。ミヤマホツツジはゾウの鼻みたいにくるんと上を向いていますが、ホツツジは、真っ直ぐ。1㎝ほどで目立たない色の花ですが、よく見ると個性的な形をしていますね。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/07/30

大人の問題

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《前回のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックしてください
「で、あなたはどうしたいの?」
 麗華は、俺の話を理解した上で問い直してきた。
「どうって――」
「大人の問題に首を突っ込まない方がいいわ、子供は」
「誰が子供だ!」
「体だけは大きいけれど、中身は子供」
「後悔は、してほしくねぇんだ。俺みたいな」
「ただいま!」
 話の途中で、ジルと妙が帰ってきた。
「ジル凄いよ、どうしてこんなの売っているところを知っているの?」
 妙が袋から取りだした物には、乾燥ポルチーニと書かれている。
「稲作のために買いに行っています。お店の人に尋ねたら、置いてくれるようになりました」
「俺、そんなの食ったっけ?」
「作りがいのない人ね」
 麗華は呆れて言った。
「稲作は、全ての料理にしょう油をかけてたべます」
「だって、味がしねぇんだもの」
「そんなことをしていると、塩分取りすぎで早死にするわよ」
「早死にか……」

「また、伺ってもいいかしら?」
「お客様をお断りする理由はありません」
 彼女は嬉しそうな顔をした。この顔が見たくて、僕は彼女のわがままに付き合ったのだ。
 昔の話だ。
《次回につづきます》


 今日の写真は「シモツケソウ」(2005.07.28長野県で撮影)
 下野草と書きます。まだつぼみが多いこのくらいの咲き加減が、花火みたいでいいですね。この花が至る所に咲いて、天然のお花畑に彩りを添えていました。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/07/29

最後のチャンス

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《前回のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックしてください
 4人は、早々に帰ってしまった。
 いつもだったら、彼らが来た後、沼田さんたちが来てもいいのに……。二人きりは間が持たない。出来れば来てほしかった。
 後でわかったことだが、4人は、帰り際に店の看板を「準備中」にしていったのだ。
「沢木さん」
「はい」
「楽しいお客様が見えるのね」
「はあ」
 会話が弾むわけもなく、彼女は、お勧めのブレンドで良いというから、僕は黙ってコーヒーを淹れる作業に没頭した。済んでしまったらどうしよう。
「……おいしいわ」
「ありがとうございます」
「――捜したの」
「は?」
「あなたは、黙って居なくなってしまったから」
 あんな別れ方をした女性に、転居の知らせをしたりはしない。それどころか、ごく親しい人たちにしか連絡をしていない。同じ県内でも当時の知人と会うことはほとんど無かった。逃げ隠れしているつもりはないのだけれど。

「何を作ろうかしら……何!?これ」
 冷蔵庫の扉を開けた麗華は、声をあげた。
 ビールとトマトジュースしか入っていなかったからだろう。
「妙ちゃんジルちゃん、お買い物をしてきてちょうだい」
 麗華はさらさらとメモを書いて渡すと、二人を使いに出した。食材が揃わないことは保証してもいい。こんな田舎に彼女の望む物が売っているはずがない。
 稲作の事務所県住居に来ている。
「思っていたよりずっと綺麗に暮らしているわね。冷蔵庫の中は綺麗すぎだわ」
「ジルがうるさいんだ。賞味期限が1日でも過ぎると全部捨てちまうんだ」
「当たり前でしょ」
「腐ってなきゃ、大丈夫だ」
 麗華は呆れた顔をして、こちらを見た。
「広木」
 催促されて、話せる限りの事情を伝えた。
 相談するのなら、彼女が一番事情通だし、これが最後のチャンスだからだ。
《次回につづきます》


 昨日一昨日とお休みをいただき、スキー場で有名な栂池、八方尾根に行ってきました。夏はスキー用のリフトを利用出来、手軽に高山植物に会いに行ける素敵なお花畑です。泊めていただいたペンションのオーナーによると、八方尾根では咲いている花だけで150種類くらいあるとのこと。
 栂池では、オオシラビソの紫色の松ぼっくりが10年ぶりの実つきの良さだと教えていただきました。
 八方尾根では、リフトに乗ると足下すれすれに、シモツケソウのピンク、トリアシショウマの白、クガイソウ、タテヤマウツボグサの紫、の花たちが出迎えてくれました。

 今日の写真は「ハッポウタカネセンブリ」(2005.07.28長野県で撮影)
 今回の旅のメインスター。八方高嶺千振というだけあって、八方尾根の蛇紋岩地でしか会うことが出来ません。
 高さは10~20㎝ほど、花の大きさは3~4㎜と、急ぎ足で歩いていると気付かないかも知れません。近くでよく見ると、何とも言えない可愛らしい模様の花を付けています。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/07/26

台風前夜

PICT02091
《昨日のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックしてください
「いらっしゃいませ」
 開いたドアから、強烈な薔薇の香りが流れ込んできた。

「うわっ!マダムだ」
 香りの正体はもちろんマダム麗華。ジルまで一緒だ。
 女の戦い(?)が始まりそうで恐い。
「ジル、かっこいい」
 ジルは、珍しくネクタイを締め、スーツ姿。
 稲作のカレーを平らげた妙は、すっかり機嫌を直し、この状況を楽しむことにしたようだ。

「こんにちは。今日はマダムをお連れしました」
 いつも無感情のジルは、自分と稲作のこと以外は無関心だ。この面白い状況に興味を感じないらしい。
 反対に、マダムは興味津々な様子。いつものようなドレスじゃないところがインパクトにかけるが、白いフリルの付いたブラウスに、夏らしい薄い黒い生地のゆったりしたパンツ。水晶玉でも持たせれば、妖しい占い師みたいだ。
「あら、絹さん。こちらの方、紹介してくださらないの?」
 マダムは、絹さんと彼女のただならぬ雰囲気を敏感に察知した様子だ。やっぱり妖しい占い師みたいだ。
「いらっしゃいませ、麗華さん、こちらは」
「須藤美和子と申します」
 絹さんが驚かないところを見ると、まだ、彼女の結婚は破綻していないようだ。たしか、相手は地元の総合病院の御曹司と聞いた。
「よろしく」
 と、言った麗華がこっちを見た。ジルは、さっきからずっと見ているが……。
 直接対決は後回しにして、こちらで情報収集する作戦に切り替えたのか?
 二人が迫ってくる。これはこれで、かなり恐い。

「広木、いたのね」
「入った時から、匂いがしていました」
「え?俺、臭うか?妙」
 麗華が来たから、香水の香りしか感じない。
「知らないわよ、臭いんじゃないの?」
「……俺、臭いのかな……」
「そんな事はどうでもいいわ。あの二人、訳ありね。――私たちは邪魔だから、あなたの事務所に行きましょう」
《次回につづきます》


 夕べから風雨が強くなったり、不安定な天気が続いています。
 僕が住む前橋というところは、災害が少ない町です。台風も、来るか来るかとドキドキしてかまえていても、気付かぬ間に通り過ぎていて青空が見え始める、なんていうことが多いのです。
 子供の頃などは「台風が来そうだ」とニュースが流れると、近所のおじさんが雨戸を閉め、釘と材木でトントンと補強を始めたものでした。まるで、サザエさんのような世界ですね。
 こちらでは今夜最接近するようですが、通り道の皆さんも十分お気をつけ下さい。

 今日の写真は「イブキトラノオ」(2005.07.17栃木県で撮影)
 伊吹虎の尾と書きます。「白山」と同じく「伊吹山」が名前に付く植物は多いですね。両方とも訪れたことがありませんが、いつか行ってみたいです。
 この花は、ピンクが濃かったので思わず撮した1枚です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
麗華……クラブ〔Madam☆Rose〕のマダム。年齢不詳の超美形(♂)。
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

☆お知らせ☆―明日明後日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/07/25

前触れ

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《昨日のつづきです》
最初から見たい方はこちらをクリックしてください
「絹さん、今日はどこに連れて行ってくれるの?デート」
 カウンター席に行った妙は、目をパチパチさせて言った。
「あら、沢木さん、こういうご趣味に変わられたの?……坊や、お幾つ?」
「坊やじゃない!ボクは――」
「ボク?」
「……」

「にゃう~!悔しい!」
「っていうか、相手にされてねぇじゃねぇか。女とも思われてねえ」
 妙は何も言い返せずに戻ってきた。
「ちょうだいよ!」
 やっとありついた大盛りカレーを食べていた稲作から、食べかけのカレーを取り上げた妙は、頬張った。
「ソースなんかかけないでよ!しょっぱいじゃない!」
「俺の昼飯……」
「何よ!――あの女、ちょっとぐらい綺麗だからって!チョームカツク!」
 取り返そうと、そっと手を出した稲作は、引っかかれそうになって思わず手を引っ込めた。エサを取られそうになった子猫の行動だ。人間の女性と言うにはほど遠い。
 今日の昼飯は、あきらめか……。

「いらっしゃいませ」
 開いたドアから、強烈な薔薇の香りが流れ込んできた。
《明日につづきます》

  
 今日の写真は「バラ」(2005.07.17栃木県で撮影)
 この写真は、戦場ヶ原で出会ったバラの花です。ノイバラにしては花が大きくピンク色です。甘酸っぱい香りが強いこの花は、園芸品が逃げた物でしょうか。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/07/24

再会

PICT00141
《昨日のつづきです》
「ごめんください」
「いらっしゃいま……せ……」
 彼女だった。
 あの頃からブランド物が好きな人だった。今日も好みのブランドで固めているのだろう。シンプルで品がいいスタイルをしている。

「妙、奥に移動するぜ」
「なによ」
「今朝の女だ」
「ウソ、綺麗な人じゃない」
「綺麗かどうかは関係ねぇと思うが」

 稲作と妙ちゃんは、僕を置き去りにして奥の席に行ってしまった。
「こんな所にいらしたのね。連絡してくだされば、お祝いくらい差し上げたのに」
「すみません」
 
「何か絹さん弱腰じゃない?」
「どんな付き合い方していたか、目に浮かぶぜ」
「アッシー君とか?」
「相手は金持ちだから、しもべ扱いだろ」
「何か、腹が立ってきた。行って来る」
「どこに?」
「絹さんの彼女の振りをするんだ」
「お前が、勝てるわけねえだろ」
「ボクの方がずっと若いもん!」
「待てよ!」

「絹さん、今日はどこに連れて行ってくれるの?デート」
 奥の席からやって来た妙ちゃんは、目をパチパチさせて言った。
《明日につづきます》
 

 今日は「石焼きラーメン」を食べました。何だろうと気になっていたのです。
 熱く熱した石焼きビビンバの入れ物に、麺と具材を入れて、スープは別の入れ物に入れられて運ばれてきました。目の前でスープを注いでもらうと、ぶくぶくと凄い勢いで沸騰します。音と見た目のパフォーマンスは楽しかったし、野菜がたっぷりで美味しかったですよ。今度は、真冬の寒い時に食べたいです。

 今日の写真は「ニッコウキスゲ」(2005.07.18群馬県で撮影)
 写真は地蔵岳で出会ったニッコウキスゲです。背景に一昨日紹介した電波塔群が写っています。

【登場人物を少しずつ紹介します】
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/07/23

エーデルワイスの思い出

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《昨日のつづきです》
「絹さん、カレーまだか?」
 今日は映画「サウンド・オブ・ミュージック」のサウンドトラックをかけている。
 彼女と二人で、僕の部屋で見た、唯一のビデオ。
 何年ぶりになるだろう。彼女に再会したのは……。
 彼女は全く変わっていなかった。
「絹さん、カレー!」
 彼女には、だらしないジャージ姿にぼさぼさ頭の僕がわからなかったかも知れない。
 彼女は、僕らに会釈をしただけで帰ってしまった。
「――ごめん、何だっけ?」
「大丈夫か?」
「朝からずっと、ああだよ」
「あの女、あんたの知り合いなのか?」
「うん、結婚式挙げた人。君には話したことがあると思うけど――」
「ブーッ!」水を吹いたのは妙ちゃん。
「けっ、結婚!?絹さん結婚してたことあるの?バツイチ?」
「式を挙げただけで、籍を入れなかったから」
「誰かに略奪されたの?映画みたいに」
「来なかった。式場に」
「ウソ……」
 黙ってしまった妙ちゃんは、花嫁を略奪された男と、式場で来ない花嫁を呆然と待つ男、どっちが惨めか想像を巡らしているのだろう。
「……なんだ。ボク、絹さんはライバルなんだと思ってた」
 妙ちゃんが、僕を傷つけないようにと考えついた二の句。
「ライバル?」
「だって絹さん、ぜんぜん女っ気がないんだもん。稲作とジルに興味があるのかなって」
「ブーッ!」今度水を吹いたのは稲作。
「ゲホ、ゲホッ、そりゃ俺たちは長い付き合いだけど」
「僕は、君たちのことを、自分が持てなかった子供のような気持ちで見ているんだ。いや、責任ないから、孫の成長を見守るおじいちゃんのような気持ちかな」
「だから、ジジくせぇんだよ」

「ごめんください」
「いらっしゃいま……せ……」
《明日につづきます》


 今日の写真は「ウスユキソウ」(2005.07.18群馬県で撮影)
 初夏に咲きますが、白い綿毛が薄く積もった雪のように見えることから薄雪草と言う名前が付いています。アルプスのエーデルワイスはこの仲間です。
 写真は、昨日紹介した地蔵岳で出会ったウスユキソウです。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
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2005/07/22

不思議な光景

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「おはよう、水道借りてるぜ」
 稲作は裏庭で、汗でびっしょりの黒いTシャツを脱いで、頭から水をかぶっている。
 仕事の一部である犬の散歩帰りに、必ずここに寄っていくのだ。
 連れのグレート・デーンのチョビは、傍で大人しくお座りをして待っている。
「おはよう、ふぁ~あ」
 寝坊した。
 寝間着がわりのジャージを着て、寝癖が付いたままの頭を手櫛で整えながら、僕は稲作を迎えた。
 開店に間に合わない訳じゃないけれど、いつもだったら身支度は整えている。
「牛乳」
「はいはい」
「ガウーッ」
 チョビは、牛乳を注ごうとすると、自分の食器にさわるなと、歯を剥いて威嚇する。毎朝のように顔を合わせているのに、全く慣れる素振りを見せない。
 チョビは、注いだ牛乳をもの凄い勢いで飲んでいる。これが彼の楽しみなのだろうから、少しぐらい慣れてくれてもいいのに……。

「なんだ?何か見えるか?」
 頭がまだ、ほとんど起きていない。ぼんやりと稲作の若い身体を見ていた。
「羨ましいと思って」
「あんただって毎日走って、沼田道場で鍛えればまだ間に合うぜ」
 彼は、安心したように白い歯を見せて笑うと、そう言った。何に間に合うのだろう。
「じゃあな。また後で来る。行くぜ、チョビ!」
「ワン!」
「君、上半身裸で帰るのか」
「着替え忘れた。こんな時間は年寄りしか歩いてないから大丈夫だ」
 と言う彼の前に、年寄りと言うには若すぎる女性が立っていた。
 僕の知人。
 彼女の視線は、稲作の胸元に釘付だ。  
《明日につづきます》


 今日の写真は「地蔵岳山頂」(2005.07.18群馬県で撮影)
 この不思議な建造物群は電波塔。麓の町からもよく見え、赤城山の中の地蔵岳を目立たせています。かつてあった、売店とロープウエイは廃墟になってしまっています。
 そんな人工物の足下に山の花たちは咲いています。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/07/21

ウインナコーヒー

PICT01991
「いらっしゃいませ。何だ、じいさんか」
「何だとは何だ。絹さんはどうした?」
「ちょっと買い出しだ」
 濃緑色の作務衣を着たこの老人、黙って座っていれば上品そうに見える、稲作の拳法の師匠だ。
「帰るまで待とう」
「俺が淹れてやる。いつも見ているから出来るぜ」
「じゃ、いつものウインナコーヒーを」
「わかった」
「お前、いつまで正業に就かずにふらふらしている気だ」
「食うのには困ってねえ」
「お前にその気があれば――」
「あの道場じゃ、なお食えねえだろ」
「忠宣の仕事を手伝わないか」
「冗談だろ」
 吸血鬼ハンターなんて職業の方がよっぽど不安定だ。
「貿易商だ。あれでもそこそこの稼ぎをしている、青年実業家だぞ」
「あれが青年実業家?吸血鬼ハンターってのは?」
「趣味だ。条件を一つ、飲んでくれれば取りなすが」
 条件は、ジルを遠ざけることだろう。
「やめとくよ。あんたの息子だ、悪いヤツじゃないと思うが、俺とは合わない。……出来たぜ」

「ただいま。……!!稲さん、沼田さんに何出したんだ!?」
 二人は、モーニングサービスの残りのウインナーをつまみにコーヒーを飲んでいる。
「お帰り、やっぱりウインナコーヒーは、絹さんが淹れた方がこくがあって美味しいな」
 この二人、誰が何と言っても、師弟に間違いない。


 奥日光からの帰り道。車がやっとすれ違えるくらいの道にハザードランプを点けたパトカーが止まっていました。対向車が来ないことを確認してパトカーを抜くと、その前には、なんと、4本の足を上に向け、交通事故死した鹿がいました。二次事故を防ぐために警察の配慮だったのです。
 歩いている時も鹿を見ました。木は、冬場に皮を食べられないように、網で保護されていました。奥日光も鹿が増えているようですね。

 今日の写真は「ショウキラン」(2005.07.17栃木県で撮影)
 今年は会えないと思っていましたが、辛うじて出会えた一輪です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。
沼田さん……〔月の光〕の常連で、稲作の拳法の師匠。

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2005/07/20

蝶のように

P81801681
「昨日は麗華さんに泊めてもらったの?」
「?」
「薔薇の香りがしている」
「マジかよ」
 稲作は、自分の腕やTシャツの裾の匂いを嗅いでみる。鼻が慣れてしまっているのか、あまり匂いが気にならない。
「ジルちゃんは、まだ向こうか」
「ヤツに何か用か?」
「いや、新鮮なレバーが手に入ったから食べさせてあげようと思ったんだけど。……あの子、顔色良くないでしょう。きっと貧血だから。この前、焼き肉屋で美味しそうにレバー食べてたからね」
 返答に困る。顔色が良い吸血鬼なんて、聞いたことがない。
「新鮮なうちに、二人で食べちゃおうか」
「いらねぇ」
「え?体調でも悪いの?」
「何でだ」
「君が食べ物の誘いを断るなんて、体の具合が悪いとしか思えない」
「悪かったな。嫌いなんだ、食えない」
「!?……わはははは」
「何だよ」
「君に食べられない物があったなんて、ははははは」
「あんたにはないのかよ、好き嫌い」
「子供の頃は、食べられない物あったけどなぁ。ニンジンとか、ピーマンとか。気付かないうちに食べられるようになってた」
「どうしても食えない物を、食えるようになる方法はねえかなぁ」
「レバーだけなんでしょう?無理して食べられるようにならなくたって大丈夫じゃない?お肉とか好きなんだし」
「ああ」
 ジルの仲間になってしまえば、ヤツの食事も美味く感じられるようになるのかも知れない。
 葉っぱを食べていたイモ虫が花の蜜を吸う蝶になるように……。


 今日の写真は「アサギマダラ」(2003.08.18長野県で撮影)
 マダラチョウ科の美しい大型の蝶。少し標高の高いところに行くと、ふわふわと大きな羽ばたきで優雅に舞うアサギマダラに会います。渡りをするこの蝶は、春の北上,秋の南下を繰り返すのです。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/07/19

それぞれの食べ物

PICT00101
《昨日のつづきです》
「嬉しいわ。二人が揃うなんて久しぶりね」
 店が終わった明け方近く。
 稲作とジルは麗華のマンションに招かれた。
「すぐに何か作るから待っていてね」
 エプロンを掛けた麗華は、二人の前に飲み物を置きながら言った。綺麗なお姉さんとしか見えない。
 稲作の前にはウーロン茶、ジルの前には赤いジュースが置かれた。
「ジル、ブラッドオレンジジュースって、オレンジジュースと同じ味なのか?」
「地中海地域で栽培されている赤いオレンジの実を絞ったジュースです」
「一口くれ。さっき飲んでみたかったんだ」
「それは、私の食事です」
「!!」言い終わる前に飲んだ稲作。

「あら?ジルちゃん、広木は?」
「トイレから出てきません」


 昨日は赤城山の地蔵岳に登ってきました。コースタイム30分で山頂に着いてしまうので、気軽に行ける山です。
 一面のお花畑というわけには行きませんが、ニッコウキスゲ、ノハナショウブ、シモツケ、ハクサンフウロなどに会うことが出来ます。
 
 今日の写真は「シモツケマルハバチの幼虫」(2005.07.18群馬県で撮影)
 頂上に咲いていたシモツケの花を食べていました。頭からシッポへの暖色から寒色に変わっていくグラデーション、白い星が可愛くて、ついモデルになってもらいました。
 虫が苦手な方、ごめんなさい。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/07/18

両手に花

PICT02061
「お待ちしていました」
「来るなんて、言ったっけ?」
「私は、いつでもあなたを待っています」
「たまには違う言葉が言えねぇのかよ」
 ジルのバイト先に来ている。
 羨望と嫉妬の視線が、向けられているのがわかる。普段そんな目で見られたことがないから余計に感じるのだ。
 ここは、麗華の店〔Madam☆Rose〕。
 中世ヨーロッパ調の内装と家具調度、中で働く人間もみんな派手なドレスを着飾っている。しかも全員が女より綺麗な男だという倒錯した店だ。その中で、ジルと警備係だけが男装を許されている。
「お前、よくそんな格好してられるぜ」
 まるで、おとぎ話に出てくる王子さまそのものの衣装。
「マダムが昔着ていた服を借りています」
「そういう事じゃなくてさ」
「昔、こんな姿をしていたこともありました」
 違和感がないのは、そのせいか。
 この俺が、みんなの王子さまと親しそうに話しているのが、女性客たちは羨ましいのだろう。麗華の店には幅広い世代の男女が訪れる。不思議な店なのだ。
「サービスは、金払ってる客にしろ」
 この店で代金を請求されることはない。麗華とはそういう仲なのだ。
 ここで働いていたことがある。もちろん用心棒としてだけど。
 終電を逃した稲作は、麗華か、かつての同僚のところに泊めてもらおうとこの店にやってきたのだ。
「マダムには、好きに行動して良いと言われています」
 ジルが居るだけで、客が増えるらしい。

「広木、いらっしゃい、ずいぶんお久しぶりね。寂しかったわ。何にする?……セリオス、あなたにはブラッドオレンジのジュースよ」
 麗華がやってきた。彼女も、稲作が顔を出すと歓待してくれる。だから来辛いのだ。
 店の看板二人を益々羨望と嫉妬の視線で見られちまうじゃないか。
 それにしても、誰がセリオスだ、全く。


 今日はジルの職場風景でした。
 セリオスという名前は、僕がRPGをする時に必ず主人公に付けていた名前でした。
 むかしむかし、PC98を使っていた頃のこと。
 弟が何枚かのFDを貸してくれました。初めてのRPG。ドラゴンスレイヤー英雄伝説(うろ覚えです)の主人公の名前がセリオスでした。
 初めてのRPGにはずいぶん熱中しました。ゲームの最後、一番強い敵キャラと対決直前にバグリました。そのゲームだけ、ラストシーンを見ていません。だから忘れられない名前なのです。
 もう何年もそういうゲームをしていません。書いていて懐かしくなりました。

 昨日は奥日光、戦場ヶ原を歩いてきました。赤沼、三本松の駐車場は満員。有料の湯滝の駐車場にやっと止めることが出来、そこから赤沼を目指して歩きました。

 今日の写真は「戦場ヶ原の風景」(2005.07.17栃木県で撮影)
 ホザキシモツケはやっと咲き始めたところでした。

【登場人物を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。
麗華……クラブ〔Madam☆Rose〕のマダム。年齢不詳の超美形(♂)。

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2005/07/17

ちょっとそこまで

 おはようございます。
 今日はちょっと出掛けてきます。
 また、素敵なお花を紹介出来るように、しっかり観察してきますね。

「土産を忘れるなよ」
「キーホルダー?」
 な、訳がない。

それでは、行ってきます。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/07/16

迷惑〇〇

PICT01691
「うほっ、すげぇ、何だこりゃ」
 機械が苦手な稲作は、僕のパソコンをさわったことがない。
 今日は、妙ちゃんに貸しているから、後ろからのぞき見ているのだ。
「妙ちゃん、何のサイト見ているの?」
「〔月の光〕だよりだよ」
 え!?稲さんが喜ぶようなもの、載せていないはずだけど。


 昨日、初めて迷惑トラックバックを受けました。
 今までは、内容があまり関係なくても、興味を持ってトラックバックをしていただいたということで、削除をしたことはありませんでした。
 が、一目でそれとわかるブログ名。恐る恐る訪ねてみると、凄い写真がいっぱい!!(喜ぶな!)。消しますよ、とコメントを書くところもわからなかったので、削除させていただきました。
 もし、見てしまった方がいたらごめんなさい。
 今後も、僕が不快と感じたトラックバックは削除させていただきますので、皆さん安心していらして下さい。

 それにしても、トラックバックは初めてでしたが、迷惑メールは毎日嫌になるほど送られてきますね。
 若い男の子などは、嫌な気分になるのではないかと心配になってしまいます。
 
 今日の写真は「アヤメ」(2005.07.11長野県で撮影)
 池の平湿原はアヤメが花盛りでした。 

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/07/15

PICT01651
「今日は若い者はいないのかい?」
「いらっしゃいませ、沼田さん。みんな仕事に出ているのですよ」
「いつものをもらおうか。……1つ、聞いてもいいかな」
 沼田さんのいつものは‘ウインナコーヒー’。
「はい?」
「広木とジルのことなんだが」
「ふたりはうらやましいくらい仲が良いですね。ジルちゃんは稲さんを信じ切っているし、稲さんはジルちゃんを裏切るようなことは決してしないでしょう。……心配なのは、稲さんが、ジルちゃんに智紘君を重ねていることでしょうか」
「智紘か」
「二度と同じ思いをしたくないのでしょう」
 僕らは、店に飾られている肖像画を見た。


 先日、スーパーにところてんを買いに行きました。
 1件目、あるはずの場所に見あたりません。2件目で見つけてレジに並ぶと、
「今流行っているんですよね」
 と、レジの女性。
「ところてんがですか?」
 だから品数が少なかったのです。あまり暑くもないのに?
 僕は、糖尿病でダイエット中の父へのお土産のつもりで探したのですが、本当に寒天ダイエットが流行っているのですね。
 いつだったか、ココアを買おうと売り場に行ったら、あるべき場所にずらりと板チョコが並んでいたことがありました。あれはダイエットというより健康にいいという理由の流行だったと思いますが。
 群馬県民としては、ダイエットにはこんにゃくもお勧めです。煮ても大丈夫だし、歯ごたえもあります。夏は刺身こんにゃくも良し。
 でも、何だか、冷たく冷やしたところてんに、酢醤油をかけて七味をふって、チュルチュルッと食べたくなってしまいました。

 今日の写真は「グンバイヅル」(2005.07.11長野県で撮影)
 軍配蔓と書きます。花をよく見て下さい。ゴマノハグサ科クワガタソウ属のこの花は、野原で見かけるオオイヌノフグリに似ていませんか。この花も中部地方の山地でしか見られない花です。

【登場人物を少しずつ紹介します】
森本智紘……店に飾られた肖像画の主。
      22歳で早世した〔月の光〕常連で、稲作の親友。
      彼の亡くなり方がみんなの心に影を落としている。

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2005/07/14

追い詰められるふたり

PICT01721
《前回のつづきです》
「来るな!ジル!」
「こんにちは、みなさん」
 忠宣とジルの目が合った。
「初めまして」
「やあ」
「これは――」
 ジルは、テーブルに並べられた忠宣の道具に目を奪われている。
 バレる!?
「凄いだろう?」
「素敵なアンティークですね。特にこれ、触ってもいいですか?」
 忠宣は、どうぞ、という手つきをした。
 銀の十字架を手にするジル。
 うわっ、バレ……な……い。
 一瞬目を閉じてしまった稲作は、静かなジルの声で片目を開けた。
「見事な銀細工ですね。妙ちゃん、見せてもらいましたか?」
「アンティークなの?鑑定団に出したら高い値段が出るかな」
「おお、わしもあの番組大好きだ」
「あたしもだよ。安い値段が出ると、気持ちがいいねぇ。ワハハハハ」
「稲作、どうしたのですか。そんなに汗をかいて」
「汗じゃねえ、水を掛けられたんだ」
「何で人狼じゃないんだろう」
「しつこいぞ!」

 その夜。
 稲作の事務所兼住居でくつろぐ二人。
「トマトジュース買ってあるぜ。……さっきは、どうなることかと思ったぜ」
 稲作は缶ビールのプルトップを開けながら言った。
「何がですか。今はジュースはいりません」
「うさんくさいヤツだが、道具は本物だった」
「彼は本物のハンターです」
「何で平気なんだ?お前」
「私はキリスト教徒ではありませんから。私の起源を説明出来る賢者がいたら、私はその方に帰依してもいい。……稲作、隣に座っても良いですか」
「ああ、いいぜ」
 稲作がいるソファに座り直したジルは、彼にそっと身体を寄せた。

 その夜Ⅱ。
 沼田道場の一室。
「どうだ?忠宣」
「あいつかい?不合格だよ、パパ」
「聖水をかけられた時の芝居は、なかなかだったと思うがな」
「あんな堅い芝居じゃなぁ」
「お前の後継者は、無理か」
「無理だね、あいつは優しすぎるよ。あの吸血鬼を殺せないだろう?」
「あの子を狩るのか?」
「大人しくしている者を狩りはしないさ。……もしも、あいつを仲間に引き入れるようなことがあったら」
「連絡するよ、お前に」


 今日の写真は「シャジクソウ」(2005.07.11長野県で撮影)
 一見レンゲに見える車軸草は、北海道、長野県、群馬県、宮城県でしか見ることが出来ないそうです。
 
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2005/07/13

親心

PICT01811
《前回のつづきです》
「アマゾンのアジトか?」
 沼田さんは、一瞬、忠宣さんを見た。
「吸血鬼のアジトだよ~」
「吸血コウモリ?」
「バンパイアだよ、お嬢ちゃん。世の中にはお嬢ちゃんの知らないことがたくさんあるんだ」
 忠宣さんは、パスタをズルズルすすりながら答えた。
「いいものを見せてあげよう」
 彼は、年季が入ったリュックから古びた袋を取り出すと、中身をテーブルに並べ始めた。
「聖水、十字架、ニンニク、銀の弾丸、銃は日本に持ち込めないんだ……おじさんはバンパイアハンターなんだよ」
「ウッソ~。信じられない」
 変なおじさんの言うことを、冗談としか思えない様子の妙ちゃん。

 一人、離れて座っていた稲作が忠宣の言葉に驚いて飛んで行くと、
 ビシャッ!
 顔に水を掛けられた。聖水と言って並べた小瓶の中身だ。
「ウウッ!!」
 胸を押さえて苦しがる稲作。
「なんてなる訳ねぇだろ!!――何すんだ!」
 ノッてしまった自分が悲しい……。
「すまない。犬みたいな顔してるから人狼かと思った。効き目がないところを見ると人間かな?」
 ニヤニヤしながらあやまる忠宣。
「何が聖水だ! カルキ臭い!水道水じゃねぇか!」
「あれ?勘が鈍ったかな?そんな匂いが判るところを見ると、やっぱり人狼だったかな?」
 忠宣はニンニクを、稲作の鼻先に突き付けた。
「止めろ!!――じいさん!いったい何なんだよ、こいつ!」
「お前たち、初対面だったっけ?わしの自慢の息子だ。世界平和のために日夜働いているのだ」
 あきれ果てた稲作は、お千代ちゃんとお梅ちゃんに目で助けを求めた。
「まあまあ、子供なんてものは、元気で人に迷惑さえかけないでいてくれれば、親は満足なものなんだよ、稲作」
 自分にも当てはまる慰めの言葉。……でも、忠宣は子供じゃなくて、オヤジじゃないか。
「パパ、今度はロシアに行ってシベリヤを食べようと思ってるんだ。今度は涼しいところがいいや」
「おお、そうかそうか」
 沼田のじいさんは目を細めてうなづいている。

「こんにちは。今日は賑やかですね」
「いらっしゃいませ、ジルちゃん」


 今日の写真は「ハクサンチドリ」(2005.07.11長野県で撮影)
 白山千鳥と書きます。別名はシラネチドリ。撮影場所は池の平湿原です。木道から見渡すと、ぽつりぽつりと見られる豪華なランです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/07/12

アマゾンのアジト

PICT01471
《前回のつづきです》
 外に出ていた全員が店に戻ってきた。
「アマゾンはどうだった。アジトは見つけたか?」
「見つからなかったよ、パパ」
「さあ、何でも好きなものを注文しなさい」
「うん。じゃあね、森のキノコのパスタと、マルガリータと、デザートはプリンアラモード、飲み物はアイスコーヒーと」
「コーラか?」
「駄目だよ、パパ。コーラは骨が溶けるから」
「そんなものは迷信だぞ、忠宣」
「相変わらずだね、忠宣ちゃん。お嫁さんはまだかい?」
 と、お千代ちゃん。
「私なんかそんなに食べたら大変だよ、太っちゃって。ワハハハハ」
 お梅ちゃんは豊かな胸とお腹を揺らして笑った。
 沼田さんの息子、黒ずくめの男忠宣さんと、お千代ちゃん、お梅ちゃんは旧知の仲のようだ。忠宣さんのギャグマンガ並みの変貌ぶりに、全く驚いた様子がない。

「ねえ稲作、あの二人、親子なの?」
「性格がそっくりだ。鼻が赤いところも」
 沼田さんたちと離れた席に着いた稲作と妙ちゃん。
「アマゾンのアジトって何だろうね」
 妙ちゃんは、みんなの会話に耳がダンボになっている様子。
「知るか」
「気にならないの?」
「なるか」
「何落ち込んでるのよ」
「落ち込みもするぜ。あの二人が俺の師匠と兄弟子だなんて」
 
「稲作、妙ちゃん、こっちにおいで。忠宣ちゃんが1年ぶりに無事に帰ってきたんだ。一緒にお祝いをしよう。好きなものを頼んで良いよ」
「ほんと?」
 妙ちゃんは喜んで合流。
「あの、アマゾンのアジトって何ですか?」


 昨日はお休みをいただき、またも長野県に行って来ました。
 その花に会うために長野に行くのは3年目です。どこにあるともわからないまま、背丈ほどあるササで、道が消えかけた遊歩道を歩きました。
 しばらく歩くと、地面に凄い数のアリ。前を行くPさんの白っぽいズボンにも何十匹ものアリが這い上がっている!自分のズボンにもです。
 映画「黒い絨毯」を思い出してしまいました。南米アマゾン川流域が舞台の、人食いアリと農園開拓者の死闘とロマンスを描いたのお話。1954年制作、チャールトン・ヘストン主演の古い映画です。
 そんな思いをしながら、今年もまた駄目かと諦めかけた時、ようやく見つけることが出来ました。

 今日の写真は「ツキヌキソウ」(2005.07.11長野県で撮影)
 突抜草と書きます。くっついた葉の真ん中を茎が突き抜いているように見えるから、付けられた名前です。地味な花ですが、その形見たさに探し続けた花なのです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/07/10

黒ずくめの男

PICT00551
「ねえ、稲作、どっか連れてってよ」
「日帰り温泉でも行って来い」
「ケチ」
 日曜日。
 いつも暇な探偵と探偵助手は、今日も暇そうだ。

 ドアが開く。
「いらっしゃいませ」
 入ってきたのは全身黒ずくめの肉感的な男。僕と同年代だろうか。彼は、黒革のズボンをはいて、タンクトップを着ている。常連ではないが、時々顔を見せてくれるお客様だ。
 稲作も黒ずくめだが、彼は色が落ちかけたジーンズとTシャツ。