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2007/09/25

月見酒

Hanaiguti3
「あっ、もう摘んじゃったの」
 積み上げた月見団子の一番上のお団子がない。
「んが?――作りたてがうめぇんだもの」
 ま、いいか。どうせ食べるのだから。
 お団子にすすき、栗に葡萄に柿にさつまいも……。
 今日は中秋の名月。喫茶店〔月の光〕もお月見。
「今日はいいお月見になるね」
 昼に風が吹いていたせいか、夜空はすっかり晴れている。
「ああ、綺麗な月が出てる。地酒をもらったんだ。秋の夜長の一品を作るから飲もうぜ」
「?」
 稲作は、下げてきたレジ袋を持って厨房に入っていった。

「材料を用意してきたから、早いだろ?」
 と、言いながら彼が運んできたのは、刻み葱を浮かべた豆腐ときのこの味噌汁。
 冷や酒で乾杯してから、きのこ汁をいただく。
 ナメコのようなとろみと独特の泥臭い風味が口の中に広がった。 
「美味しい。ナメコ?」
「さっき採ってきたハナイグチとナラブサだ。小さい方がナラブサ、歯触りがシャキシャキしてるだろ」
「うん、これも美味しい」
 たまには二人で月見酒も良い。

【つぶやき】
 23,24日でタカの渡を見に行ってきました。
 23日お昼頃現地に到着。1時間もしないうちに凄い雨が降り始めました。400人近かった見学者のほとんどが帰りましたが、諦めきれずに雨宿りをしていたら雨が止み、帰りは傘を差さずに済みました。見られたのは、サシバとハチクマが数羽。
 24日は午前中いっぱい深い霧でほとんど飛んでくれませんでした。2日間で30羽見られませんでした。ちなみに、今日は1000羽以上飛んだようです。
 午前中、霧が酷かったので急遽植物&キノコ観察モードになりました。1月前だったら、マツムシソウ、クガイソウ、ヨツバヒヨドリの花が見られたでしょう。キノコは、採取禁止なので採れませんでしたが、かなりの量のハナイグチとベニテングタケ、名前の見当が付かない多くのキノコが見られました。
 帰りに寄った道の駅で「ジゴボウ」と書かれたキノコが1パック500円で売られていました。長野ではハナイグチ=ジゴボウなのですね。
 
 今日の写真は「ハナイグチ」(2007.09.24長野県で撮影)
 いくつもの地方名を持つ、愛されているキノコです。

Benitenngutake3
 今日2枚目の写真は「ベニテングタケ」(2007.09.24長野県で撮影)
 見た目は愛らしいですが、毒キノコなので食べないように。白樺林に赤いキノコ、おとぎの世界みたいですね。

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2007/09/21

まだ若かった頃

Nekonosita1
「珍しいッスねぇ」
 と、半次こと広瀬欧彦。
「なあに?」
「この曲」
 喫茶店〔月の光〕では、大抵ボーカルのないクラシックか軽音楽を流しているが、今日は違う。
「小田和正?」
 応えたのはチョコレートパフェを食べながら、プリントに何かを書き込んでいる妙ちゃん。
「知ってるの?」
「大好き。月9や朝ドラの主題歌歌ってるよね。この曲、声が可愛いね」
「オフコース時代の曲だから。……嬉しいねぇ、こんなに若いファンがいるなんて」
「男の人のファンの方が珍しくない?」
「そ、そうかなぁ」
 最近はそんなことはないと思うけれど。
「どっちにしても、絹さんらしい眠くなりそうな歌ですねぇ」
 あくびを噛み殺しながら言う半次。まだ、疲れが抜けないのか。
「私には新鮮に聞こえる」
「思い出すなぁ、この曲が流行ったのは僕が高校生の頃」
 あの頃、何をしていたのか。勉強と淡い恋愛と――。

「きっと校則きちっと守って7・3分けだったんだろうなぁ」
 後ろから、聞き慣れた低い声。
「稲さん」
「こいつは早いお帰りで」

【つぶやき】
「エッ、エッ」
 という遠慮がちな鳴き声が、来たよ、のあいさつのキジトラ模様の猫‘みみげ’。
 居間の引き戸を開けると、再び「エッ、エッ」(訳:撫でて撫でて!ミルクちょうだい!)
 網戸に両前足をかけ、肉球見せ攻撃。肉球好きとしては我慢出来ません。
 が、彼女の視線は部屋の中から、網戸の上の方へ。その目つきは、美味しそうなスイーツを見せられた女の子のように、うっとり。
 !!
 彼女が見ていたのは、枯れ草色の小さなコカマキリ。
 目の前でカマキリが食べられるところを見たくない。
 こんな時、我が家では、
「ミミ、こっちにおいで、牛乳あげるよ」
 と、台所の出入り口に呼び寄せ、気を逸らせ、Pさんが外に出てカマキリを安全な場所に逃がす、という連係プレーが行われます。

 今日の写真は「ネコノシタ」(2007.08.26神奈川県で撮影)
 砂浜でよく見かけるキク科の植物です。
 名前の由来は葉を触ってみて下さい。猫に舐められたようなザラザラした感触。で、猫の舌です。

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2007/09/13

理想的な寝室

Hototogisu1
「何なんだよ、ここは」
「何でしょう?」
「隠し部屋なんて気味が悪い。拷問部屋か何かか?」
 暗くて狭いこの空間にいることは、稲作にとってそれに近い。
「まぁ、想像力が豊だこと。ここは現代の日本よ。……日本ではあまり普及していないけれど、海外では当たり前のように準備している所もあるわ」
「準備?何の?」
「核戦争」
「これって、核シェルターか」
「ええ、隣の部屋に発電機や貯蔵庫があるけれど、使わなかったみたい。ベッドもジルちゃんが自分で持ち込んだのよ」

 古城の深窓とはいかないから、今の日本では理想的な寝室だ。
 ノストラダムスの予言は外れたけれど、北斗の拳の199X年も過ぎてしまったけれど、明日、核ボタンが押されないとは限らない。もし、核戦争が起こって、俺たちが滅んでいたとしても、彼がいれば……。
 稲作は、瓦礫の中に独り起き立ったジルの姿を想像した。

「もういいでしょ。あなただけは、ここに通して良いと言われているの。私ももうこの部屋には来ないつもりよ」
 ずいぶん用心深い。長い間眠りにつくのだから当然なのだが、稲作の部屋で寝た事は、かなりの我慢があったに違いない。誘拐(泥棒)され掛けるほど危険な寝室だったのだから。
「さぁ、上に戻ってお茶の続きをしましょう。美味しいケーキがあるのよ。あなたの好きなおせんべいも」

【つぶやき】
 朝晩ずいぶん涼しくなりましたね。虫の音もうるさいくらいになりました。
 それにしても、昨日の安倍首相、突然の辞任には驚かされました。誰が後継になるとしても、私たちが安心して暮らせるように力を尽くしてくれる事を期待したいです。
 
 今日の写真は「ホトトギス」(2007.08.25山梨県県で撮影)
 花の形と模様が独特のホトトギスは園芸品としても馴染みがありますね。このホトトギス、草丈が小さいので同定に自信がありません。

Tamagawahototogisu1
 今2枚目日の写真は「タマガワホトトギス」(2007.08.10長野県で撮影)
 こちらは黄色いホトトギスです。

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2007/09/10

隠された部屋

Kusabotann1
「付いてきて」
 麗華は、奥から2番目のワイン棚に触った。
 スイッチがあったのか、棚は静に移動した。
 空間が出来た場所に隠し扉は、無い。
「こっちよ」
 麗華が、壁に着いていた棚の側面に触ると、下の方から音がした。
 棚があった床に、真っ黒な長方形が現れ、どんどん大きくなっていく。
 真っ暗な穴は、人が通れるほどの大きさになると音が止んだ。
「ここで必要なのよ、これ。ここから下は電気が通っていないの」

 コンクリート打ちっ放しの狭い階段を下りて行く。
「何で蝋燭なんだよ、懐中電灯だっていいじゃねぇか」
 稲作は、蝋燭の灯りで踊る自分たちの陰に怯えていた。
「趣味よ。この方が気分が高揚するでしょ」
「するか!」
 怖がっているせいだろうか、階段は、やけに長い。

「これは……」
 ついた先には金属製の重厚な扉。
 麗華が重そうに開けた扉の向こう側も漆黒の闇。
 彼女は慣れた様子で、何ヶ所かの燭台に火を灯した。目が慣れてくると、ぼんやりと中の様子が見えてきた。
 階段と同様コンクリート打ちっ放しの10畳ほどの四角い空間。
 真ん中に、ぽつりと通販で売っているパイプベッドが置かれていて、ジルが眠っている。置かれているのが棺じゃなくて良かった。
 ジルはいつもと変わりない寝顔だ。
 そっと金色の髪に触れてみる。

【つぶやき】
 去年からこのブログをご覧になっている方にはわかると思います。
 何度も写真を載せていた4匹の仔猫たち、デカ、クロ、チビ、ミミゲのその後です。
 デカは、一番先に姿を現さなくなってしまいました。どこかで男を磨いているのでしょうか。
 チビも、デカの後すぐに来なくなってしまいましたが、最近それらしい女の子が遊びに来ます。目元に幼い頃の面影があるような気がするのです。
 クロは、ミミゲと一緒に大きくなるまで遊びに来ていましたが、ここ数ヶ月姿を見せなくなっていました。が、昨日、一回り大きな身体になって顔を見せました。以前のようにミミゲと仲良く寄り添っています。
 ミミゲだけは、ずっと来続けています。が、彼女にも色々ありました。痩せて毛が抜け落ちて、どうしたのかと思っていたら、たった1回だけ2匹の仔猫を連れてきました。でも、翌日から連れてこなくなって、鳴きながら捜し回っていました。可愛い仔猫たちでしたから、もらわれていったのかも知れません。 

Kusabotann2
 今日の写真は「クサボタン」(2007.09.02群馬県で撮影)
 今の季節、山道を車で走っていると出会えます。小さくて目立ちませんが、良く見ると、くるんと巻いた空色の花は可愛いですね。

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2007/09/07

ワインセラー

Mizutonnbo2
「少しは大人になったのね」
「?」
「前のあなただったら、お茶なんか飲まずに捜し回ったでしょ?」
「するか」
 それだけ麗華を信頼しているのだ。
 それに、
‘私が眠るところに立ち会ってくれなくて結構です。どうせ、来るなと言ったって私が眠っているところを見に来るのでしょうから’
 などと言われているから、あまりせっかちに行動出来ない。お喋りな麗華が目覚めたジルに何を言うかわからない。
 そう、来るなと言われてないから、様子を見に来たのだ。

「あなたって本当に分かり易いのよねぇ」
「何が?」
「ソワソワして落ち着きがない。……しょうがないわね、ついていらっしゃい」
 麗華は飾ってあった年代物らしい手持ちの燭台に灯を灯しながら言った。

「何ビクビクしているの?」
 キョロキョロと辺りを見回す稲作に麗華が言った。声がやけに響く。
「何でもねぇ」
 稲作は、暗くて密閉された所が嫌いだ。恐怖症に近いかも……。

 階段を下りると地下はワインセラーになっていた。
「素敵なコレクションでしょう。これも全部譲り受けたのよ」
 素敵かどうかわからないが、凄い量のワインが収納されている。
「持って行かなかったのか」
「旅に出てしまったのよ。世界のどこかに気の向くままに。彼が日本に戻ってきた時は、あなたを会わせたいわ」
 世の中には、稲作などには想像もつかない大金持ちもいる。
「それ、必要あったのか?」
 稲作は、麗華が持っている蝋燭を見ていった。ワインセラーの中は温度調節されていて電気も点く。 
 
【つぶやき】
 台風の風雨は酷かったですね。みなさんは大丈夫でしたか。
 今年も休耕田のシギチ観察をしていますので、興味がおありでしたらHPをご覧下さい

Mizutonnbo1
 今日の写真は「ミズトンボ」(2007.08.25神奈川県で撮影)
 わっ!耳が大きな宇宙人!!みたいな花を咲かせるミズトンボ。日当たりの良い湿地に生えるランの仲間です。

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