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2007/08/30

薔薇屋敷

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 やっぱりここか。
 稲作は、古い洋館の前に立っていた。手に持っているのは、住所をメモした紙切れ。
『TAKAKURA』古びた煉瓦造りの門に、まだ新しい表札が取り付けられている。
 曲がり角から、この洋館が目に入った時、嫌な予感がしたのだ。
 こういう建物で育った者は、こういう場所に安らぎを感じるのだろうか。庭の雰囲気が違うのは、前オーナーの趣味か。初夏の咲き残りなのか、秋の咲き始めなのか、たくさんの薔薇の木が、1,2輪ずつ花を付けている。見たことがあるような草も茫々と茂っている。
 閑静な住宅街に建っている古びた洋館は、東京都心とは思えないほど静な緑に包まれている。

「あんたらしい住まいだな」
 内装は、彼女の店ほど煌びやかではない。これも前オーナーの趣味か。
「素敵でしょ」
 ハーブティーを出しながら、この館の新しい主、クラブ〔Madam☆Rose〕のマダム麗華、こと、高倉京介は言った。どう見ても、年齢不詳の美しい女性にしか見えない。
 店の常連だった帰国するイギリス人から、格安で買い取ったのだそうだ。格安といっても、その日暮らしに近い稲作なんかには考えられない値段なのだろう。
「不味い……けど、懐かしい。庭に茂ってたやつか」
 見たことがある草だと思った。
「レモンバームのお茶よ。飲んだことがあるの?」
「智紘(ちひろ)んちで」
「そう……。ここだったら、光(ひかる)が帰りやすそうだし。智紘も来てくれるかしら」
 麗華は死者を呼び寄せる気なのか。
「変な儀式にでもはまってんじゃねぇだろうな」
 妖しい占い師みたいな風貌の彼女が、妖しい魔術に凝っていると言っても驚きはしない。
「もう、冗談も通じないんだから。……ジルちゃんが気に入ってくれたからよ」

【つぶやき】
今年もシギ・チドリの観察を始めています。内陸の休耕田には珍しいキリアイが1羽見られました。ネットで調べてみると、今年はキリアイがたくさん渡ってきているようで、各地で見られているようです。

 今日の写真は「レンゲショウマ」(2007.08.22群馬県で撮影)
山の中で、蓮の花を吊したような花を咲かせます。

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 今日2枚目の写真は「案山子?」(2007.08.30群馬県で撮影)
稲穂が出始めるとあちこちに立てられます。が、黄昏時などは、スズメより人の方が驚かされます。 

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2007/08/15

チョビとハナコ

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「ハナコか」
 ライトバンから出てきたのは、以前チョビとお見合いしたグレートデーン・ハールクインのハナコ――だけじゃない。ドアの中から白地に黒の斑模様の足が、1本2本3本4本5本6本……。ハナコと子犬たちは飛び出してきて、チョビに駆け寄った。
 全部で6匹の子犬は、みんなでチョビにじゃれついている。
「おはようございます。ここに来ればチョビに会えると思ったから」
 と、ハナコの飼い主、山田有紀ちゃん。
「いつの間に」
「知らなかったの?チョビは良いパパでしょ?」
 チョビは子犬たちとじゃれ合っている。
「ああ」
「これは凄いね。撫でてもいい?」
「ウウッ」
 子犬を触ろうとする絹さんを威嚇するチョビ。
 絹さんは手を引っ込める。
「お前の子なんか盗るわけねぇだろ」
 しゃがんだ稲作に6匹の子犬が突進し、尻餅を付いた。
「うわっ、やめ――」
 子犬といっても身体が大きい彼らに、稲作は負けそうだ。身体中舐められた上、おしっこまで掛けられている。
「うらやましいねぇ、チョビは君なら安心なんだね」
 チョビとハナコは子供達を稲作にまかせて、身体を寄せ合って久しぶりの再会を喜んでいるようだ。
「先を越されちゃったね、稲さん」


【つぶやき】
今日は62回目の終戦記念日です。
 戦争を知らない私たちは、戦争の愚かさや悲惨さを、テレビでも新聞でも何でも良いから、見て学ばなくてはいけません。両親や祖父母に体験を聞ければ、もっと身近に感じることが出来るでしょう。
桃の味は、HPを開設した頃、私の父の思いでを元に書いた作品です。良かったらご覧になって下さい。
 
 8月6日~8月10日。栂池→乗鞍岳→小蓮華山→白馬岳→鑓ヶ岳→鑓温泉→猿倉のコースで白馬に行ってきました。
 天候に恵まれ雨具を着ることもなく、山小屋宿泊も良い体験になりました。私よりずっと年輩の方々が、元気で歩いているのに、日頃の運動不足も思い知りました。
 お花以外では、シーズンになると組み立て式の宿泊施設を建てて営業する、秘湯鑓温泉の夜の露天風呂は星が降るようでした。
 
見られた花の一部をHPに載せましたので、良かったらご覧になってみて下さい

〔確認出来た花たち〕ハナニガナ・シロバナニガナ・ヤマハハコ・ゴマナ・オタカラコウ・フキユキノシタ・ウサギギク・ミヤマアズマギク・シロウマタンポポ・タカネヤハズハハコ・クロトウヒレン・カンチコウゾリナ・ミヤマコウゾリナ・タカネヨモギ・ミヤマオトコヨモギ・ヒトツバヨモギ・ミヤマアキノキリンソウ・ウスユキソウ・タカネニガナ・マルバダケブキ・オニアザミ・イワギキョウ・チシマギキョウ・トウヤクリンドウ・ミヤマリンドウ・タテヤマリンドウ・ミヤマアケボノソウ・タカネリンドウ・ツルリンドウ・オニシオガマ・ヨツバシオガマ・エゾシオガマ・タカネシオガマ・ミヤマシオガマ(実)・クチバシシオガマ・イブキジャコウソウ・ウルップソウ・テングクワガタ・ミヤマクワガタ・ヒメクワガタ・イワツメクサ・タカネツメクサ・ホソバツメクサ・クモマミミナグサ・タカネナデシコ・シナノナデシコ・アラシグサ・クロクモソウ・ミヤマダイモンジソウ・シコタンソウ・イワオウギ・オヤマノエンドウ(実)・タイツリオウギ・シロウマオウギ・オオレイジンソウ・ヒメイチゲ(実)・モミジカラマツ・ハクサンイチゲ・シナノキンバイ・ミヤマキンポウゲ・トリカブト・ミツバオウレン・ミヤマオダマキ・カラマツソウ・ミヤマカラマツ・ヒメカラマツ(実)・サラシナショウマ・ミヤマツボスミレ・ウスバスミレ・クモマスミレ・キバナノコマノツメ・クロバナロウゲ・オニシモツケ・タカネバラ・ミヤマキンバイ・ミヤマダイコンソウ・コガネイチゴ・ベニバナイチゴ・タテヤマキンバイ・チングルマ・ウラジロナナカマド・ハゴロモグサ・ノウゴウイチゴ(実)・チョウノスケソウ・ゴヨウイチゴ(実)・シモツケソウ・ミヤマホツツジ・アカモノ・シラタマノキ・クロマメノキ・コケモモ・イワヒゲ・ジムカデ・ミネズオウ・ツガザクラ・アオノツガザクラ・オオツガザクラ・イワウメ(実)・ウラシマツツジ(葉)・ハクサンシャクナゲ・オオイタドリ・ウラジロタデ・イブキトラノオ・ムカゴトラノオ・サンカヨウ(実)・キヌガサソウ・シラネアオイ(実)・カワミドリ・ヒメシャジン・ミヤマコゴメグサ・コマクサ・コイワカガミ・リンネソウ・ゴゼンタチバナ・ハクサンコザクラ・ツマトリソウ・イワアカバナ・ムシトリスミレ・ヒメウメバチソウ・コウメバチソウ・ハクサンフウロ・イワベンケイ・ヤマガラシ・オオバミゾホオズキ・オトギリソウ・モウセンゴケ・オオヒョウタンボク・ハリブキ(実)・ムラサキツリバナ・オガラバナ・ズダヤクシュ・クロバナヒキオコシ・タテヤマウツボグサ・ソバナ・ミヤマムラサキ・ヨツバムグラ・キヌタソウ・ミソガワソウ・ヤグルマソウ・ハナチダケサシ・ワタスゲ(実)・ヨブスマソウ・ツリガネニンジン・クガイソウ・ヤマルリトラノオ・ヤグルマソウ・シロウマアサツキ・エゾアジサイ・タマガワホトトギス・ツルアリドオシ・ヤマホタルブクロ・ハクサンオミナエシ・ナツノタムラソウ・ショウジョウバカマ(実)・ユキザサ(実)・オオバタケシマラン(実)・タケシマラン(実)・タカネシュロソウ・イワショウブ・クルマユリ・クロユリ・コバイケイソウ・ヒメイワショウブ・チシマゼキショウ・マイヅルソウ・ノギラン・ネバリノギラン・キンコウカ・ムラサキタカネアオヤギソウ・ツバメオモト(実)・ヤマブキショウマ・コバノトンボソウ・フタバラン・キソチドリ・テガタチドリ・ホソバノキソチドリ・ハクサンチドリ・ヒオウギアヤメ・イワイチョウ・シラネニンジン・ミヤマシシウド・ミヤマセンキュウ・ミヤマウイキョウ・ミヤマゼンコ・オオカサモチ〔計185種〕

 今日の写真は「ウルップソウ」(2007.08.08長野県で撮影)

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2007/08/04

一人と一匹

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「おはよう、稲さん。半次くんは?」
 いつも通り、チョビとやって来た稲作。昨日の様子だと今日も一緒だと思ったのに。
「今日は留守番。日頃の不摂生のせいで、あの程度のことで動けなくなっちまったんだ。ま、じっくり鍛えてやるさ」
「壊さない程度にしてやってくれよ。君と彼は身体の出来が違うんだから」
 誰だって、彼のような野生児と一緒にされてはもたない。
「ヤツは俺より若いんだぜ。チョビなんか、もっと爺さんだ」
 ジャブジャブ音を立ててミルクを飲んでいたグレートデーンのチョビは、一瞬飲むのを止め、悪かったな、という目つきで稲作を見る。息がぴったり合った一人と一匹だ。
 と、チョビの落ち着きが無くなり、尻尾を振って、道路の方に行きたがる。
「どした?」

 早朝の喫茶店〔月の光〕の駐車場に、ライトバンが入って来た。
「ワホッ!」
 嬉しそうなチョビ。
 ドアが開き、白地に黒の斑模様の前足が見えた。


【つぶやき】
 毎日足を運んで下さっている皆さん、更新が出来なくてすみません。時々書けなくなることがあるのです。パソコンを開いても、つい他のことをしてしまって、どうしても書けないことがあるのです。ごめんなさい。

 阿久悠さんの追悼番組を見ました。流れる曲のほとんどを知っていました。
 あの時代は、子供も大人も関係ない流行歌があったことを懐かしく思いました。子供だった頃聞いた大人の歌を、大人になった今、もう一度じっくり聞いてみたくなりました。
 
 今日の写真は「タテヤマウツボグサ」(2007.07.29群馬県で撮影)
 見た気がする大きな花を付けるウツボグサです。
 ウツボは、魚のウツボではなく、矢を納めて射手の腰や背につける細長い筒。

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