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2007/07/20

ワケあり

Isimotisou1
 稲作はこの生活に満足している。将来のための蓄えは……必要ない。
 だが、半次はまだ若い。
 それに――。
「おまえこそ、どうして正業に就かない?」
「あっしも旦那と一緒で」
「向いてない?まともに仕事したことがあるのか?」
「いいえ。型にはまるのが嫌なんで」
「そんなこと言ってると、今に後悔するぜ」
「――」
 腰を揉んでいる指先に、一瞬、筋肉の緊張が伝わってきた。こういう時、相手の気持ちも伝わってくることがある。――無理をしている。
 彼の時代劇のような言葉遣い。育ちの良さを誤魔化しているのだ。立ち居振る舞いにはジルに通じる品の良さがある。
「寝たのか?」
 寝たふりをしている半次こと広瀬欧彦に声を掛けてみた。
 いつか話したくなったら聞いてやる。
 俺の周りには、ワケありのヤツばかりが集まってくる。


【つぶやき】
 長野県内の遊歩道で観察を終えて、駐車場に向かうところでした。音はほとんどしないのに大型の打ち上げ花火のような振動が二回、木々に残っていた水滴が雨のように降ってきました。
 自衛隊の演習か?
 と、思った時、足下が揺れ出しました。しゃがみ込みたくなるような揺れ、駐車場の車も激しく横揺れしていました。車に戻ってラジオを付けて新潟中越沖地震を知りました。
 被災された方々に心からお見舞い申し上げます。  


 今日の写真は「イシモチソウ」(2007.07.01千葉県で撮影)
 葉に小石がくっつくほどだから石持草だそうです。が、小さな草ですから、小さな砂くらいしかくっつかないかも知れませんね。
 モウセンゴケの仲間ですが、花が大きく見た気がします。

Oziroasinagazoumusi1
 今日2枚目の写真は「オジロアシナガゾウムシ」(2007.07.01千葉県で撮影)
 葛に付くパンダ模様のゾウムシです。アゲハの幼虫のように、鳥の糞に擬態しているのでしょうか。

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2007/07/10

向き不向き

Syoukirann2
「旦那」
「なんだ」
「どうしてこんな稼業をしていなさるんで」
 腰を揉まれながら半次が言った。
 稼業――探偵事務所と看板が挙がっているものの、何でもやる便利屋をしないと立ち行かない。最近は元働いていた便利屋の親方に、仕事を回してもらって糊口を凌いでいる。だから、主に肉体労働系だ。
「あ?」
「旦那でしたら、もう少しマシな仕事が出来るんじゃないかと思いやして」
「マシな仕事ってのはどういう仕事だと思う?」
「楽して儲かるような」
「サラリーマンで営業ってヤツをやってたことがある」
「本当ですかい?」
「ああ。似合わねぇだろ?」
「旦那のスーツ姿なんて、傘張り浪人が裃を着るみてぇで想像が付きやせん」
 相変わらずおかしな例えだ。
「そうだろ、だから辞めたんだ。――人には向き不向きってもんがある。組織の一部ってのは俺には向いていないのさ」
「一匹狼っすか」
「そんなにカッコイイもんじゃねぇさ」


【つぶやき】
 県内にある百名山の1つ、皇海山の登山口まで行ってきました(登らないところが情けないです)。道は全て狭い砂利道で、落石がゴロゴロしている悪路でした。
 オオバアサガラが花盛りの登山口付近を歩いていると、シマヘビを踏みそうになりました。
 しばらく道を走っていると、ヤマドリ(♀)が現れ、慌てて崖の上に飛び去っていきました。
 また、しばらくすると、ガードレールの所に2つの大きな黒い影。
 母子熊!
 ガードレールの側に静に車を着け、窓越しに谷側をのぞいてみると、目が合いました。向こう側からもこちらの様子をうかがっていたのでしょう。襟元の白い月の輪が可愛い!手を伸ばすと届きそうな近さでした。
 軽とはいえ自動車に乗っているから、安心して観察出来たのです。歩きで出会うと恐いから、熊避けの鈴を持ちましょうね。特に母熊は恐いそうです。
 母子は、崖側で実っているクマイチゴを食べに出てきていたのでしょうか。
 興奮が冷めきらない最後に車の前を横切ったのは、薄茶色の夏毛になっている野ウサギでした。
 1種類でも出会えると嬉しいのに、サファリパークを走っているみたいに次々と野生動物に出会えた幸運な1日でした。
 ところで、「皇海山」って読めますか?

 今日の写真は「ショウキラン」(2007.07.08群馬県で撮影)
 名前は、鍾馗様のかぶっている帽子に形が似ているから付けられました。葉緑素のない腐生植物です。
 今の季節、華やかなお花は少ないのですが、ジメジメを好む変わった花に出会えます。

Kumaitigo2
 今日2枚目の写真は「クマイチゴ」(2007.07.08群馬県で撮影)
 色が濃くて種が大きい木苺です。モミジイチゴと違って水分が少なく、ラズベリーに似た香りがあります。

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2007/07/07

有難味

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「どうしたの?」
 いつも通り、チョビにミルクを飲ませて、顔を洗った稲作は、河原の方を気にしている。
「さっきまで付いて来てたんだだけどなぁ」
「?」
「半次」
「一緒だったの?」
「あっ来た」
「――旦那ぁ~」
「大丈夫?半次君」
「駄目っす」
「水飲んで」
 汗だくの半次にコップ1杯の水を差し出す。
「すんません」
「お前、ウオーミングアップでそんなにバテてちゃ、仕事になんねえぞ。土方は無理だな」

 その夜。
「すんません、旦那」
 ヘトヘトになって帰って来た半次の腰を揉んでいる。
 田植機が使えない狭いところの田植えを手伝ったらしいが、この有様。そのうえ、使えないから明日は寄越すなと断られてしまった。
「米の有難味がわかったろう」


【つぶやき】
 今日は七夕。残念ですが星は見えません。
 子供の頃は街の七夕祭りに連れて行ってもらい、各店の趣向を凝らした飾り付けを見て回るのが楽しみでした。
 商店街は寂れる一方です。今でもあの頃と同じ規模でやれているのでしょうか。そういう私も何年もお祭りに行っていません。
 
 今日の写真は「タシロラン」(2007.06.29群馬県で撮影)
 田代は発見者の名前です。キノコと間違えそうですがランの仲間です。花をよく見ると蘭の花に見えませんか?葉緑素のない腐生植物です。

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