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2007/03/02

ライバル

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「絹さん」
 突然声を掛けられて、飛び上がりそうになる。
「いらっしゃいませ、ジルちゃん」
 静か過ぎるジルが、入って来たことに気が付かなかった。
「稲作は」
「今朝、チョビと一緒に来たよ」
「様子は」
「いつも通りだったけど、何か?」
「いいえ、それならいいのです」
「昨日は麗華さんの所じゃなかったっけ?」
「一番の列車で帰ってきました」
 何かあったのか。いつもの席に座る彼に、熱いハイビスカスティーを差し出す。 
「ありがとうございます。……今朝のニュースか新聞を見ませんでしたか」
「見たよ。何か載ってた?」
 窓の外に1羽のオナガが飛んできた。見分けは付かないけれど、ぴょん太だろう。彼は動物と話せるらしいのだ。
「開けてもいいですか」
 彼は、しばらくぴょん太と話した後、〔月の光〕を出て行った。
 新聞を読み直してみよう。


 一番にここに来てみるべきだった。
 大小、二人の人影がアパートの一室を見上げている。大きい方は稲作。
「稲作」
「ジル、帰って来たのか。……外見は大したことねぇのにな」
「あなたは」
「学校サボった悪ガキだ――俺のライバル」
 稲作は、少年の頭を大きな掌で乱暴に撫でながら言った。
「ライバル?」
 少年は不思議そうに聞き返す。
「俺も美羽にチョコもらったんだ。本命はお前だったけどな」
「ありがとう、しか言えなかった。もっとちゃんと話しておけば良かった」
 少年は泣き出しそうなのをこらえて言う。
「気持ちは伝わったと思うぜ。あいつ、嬉しそうだったから」
 火事。下階の人の火の不始末で、美羽の一家は巻き添えを食ったのだ。

*今回のお話、最初から読みたい方はこちらをクリックしてください。HPにまとめてあります*
 
 今日の写真は「シラタマカズラ」(2006.12.31鹿児島県で撮影)
 和歌山、四国、九州で見られます。
 赤、瑠璃、と、きたので白のシラタマカズラにしてみました。

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コメント

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投稿: Kylie | 2014/01/22 10:40

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