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2007/01/31

ストーカー

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「そこに置くのか?」
「いけませんか」
 ジルは香りが強い水仙の花を応接のテーブルに飾った。夜は稲作の寝室になる部屋だ。
「慣れるからいいか」
「出掛ける前に書き込みをチェックしていきます」
 ノートパソコンを開けながら言う。今日は麗華の店に出勤らしい。気紛れな彼は、何日とか何曜日とか出勤日が決まっていない。気が向いた時と腹が減った時に出掛けるのだ。それで済んでしまうところがうらやましい。
「だいぶん書き込みが減ってきました」
 美羽の悪口を書き立てている掲示板を見ながら言う。
「飽きたのか、別の標的が出来たんだろう」
「でも」
「ん?」
「あなたのことはまだ書かれています。ストーカーと」
「見てるヤツいるんだな、美羽の彼氏だったりして。今の子供はませてるからなぁ。……めんどくさきゃ、そりゃ放っといていいぜ、ホントのことだから」
「ホントの事って――」
「ちょっと出て来る。お前、気を付けて行って来いよ」

 話したら援助交際で見守ったらストーカー。全く。
 友達に手を振りながら美羽が塾から出てきた。
 そっと隠れる。この俺が目立たないように尾行するというのは無理な相談なのだ。
 家に無事に着くまで。
 無駄をしているとは思いたくない。
 美羽はしばらく薄暗い路地を歩いた後、大通りに出て横断歩道で止まった。幹線道路を横切るいつも通りのルートだ。
「パパー!パパー!!」
 美羽は、向こう側に大きな声で呼びかける。
 気付いた相手はこちらを向いて手を振った。会社帰りの父親だ。……こんな当たり前の幸せが、どうして続かない。何か方法があるはずだ。
 信号が青に変わると美羽は手を振りながら走り出した。
 これで今日の役目は終わり――って、ウソだろ!!

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 奄美大島3日目は、金作原原生林へ。入り口は舗装されていますが、途中から未舗装のガタガタ道。枯れ枝などが道に伸びていて車を傷つけることがあるため、レンタカー業者によっては金作原に行かないように釘をさされる悪路の先は、大きなシダが茂る恐竜が出てきそうな森でした。夕方まで島で過ごして帰路に就きました。
 こちらでは色々な植物に会えましたから、しばらくの間紹介していきますね。
 
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 今日の写真は「原生林とヒカゲヘゴ」(2006.12.31,2007.01.01鹿児島県で撮影)
 ヒカゲヘゴを見ると亜熱帯に来たという実感が湧きます。これがシダで、ワラビやゼンマイと同じ仲間だなんて思えませんね。
 幹の模様は葉が落ちた跡です。

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2007/01/25

ナルシス

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「こんにちは」
「いらっしゃいませ、ジルちゃん。どうしたの?それ」
「お千代さんにいただきました。お庭にたくさん咲いたのですって」
 ジルは小さな花を咲かせた水仙を1束持っている。
「良い香りだね」
 手にした日本水仙の花束に顔を近付けるジル。ナルキッソス――ドキドキするほど美しい。
「何だ?さっきまでお千代ちゃんの所にいたのに、俺にはくれなかったぜ」  
 いつもの席で稲作は、大盛りカレーにウスターソースをジャブジャブかけて食べながら言った。
「稲作もいかがですか」
 ジルはいそいそと稲作の傍に行き、花束を向けた。
「うわっ、臭っせぇ」
 彼は強い芳香を全て「臭い」と表現する。
「そんなことを言うから、花をいただけないのです」
「お千代ちゃんの前では言ってねぇぜ」
「稲さんに水仙は似合わないよ」
「悪かったな」 

「何か挿す物を貸していただけませんか」
「そうだね、帰るまで水に挿しておく方がいい」
「絹さん」
「何?」
 カウンター越しにジルが囁く。
「私はナルシストではありません。私が好きな人は稲作です」
 さっき声に出したっけ?少女趣味の想像を聞かれて顔が熱くなる。
「ギリシャ神話は少女趣味ではありませんよ、絹さん」

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 奄美大島2日目は自然観察の森に。この旅のメイン、ルリカケスに会いに行きました。
 会えましたよ、ルリカケスとカラスバトに。ルリカケスは、鳴き声はよく聞こえるのになかなか姿を見ることが出来なくて、見られた時は感動でした。カラスバトは色が濃いタイプのカワラバトに似ていました。
 この日の宿泊に問題勃発。予約を入れておいたはずの宿に忘れられていたのです。ですが、さすがはのんびりとした南の島、近所の民宿に連絡を取ってくれて、宿泊出来ることになりました。
 とりあえず寝るところは確保、紹介された宿に向かうと、ご主人が急な客に、部屋に布団を運んでくれているところでした。
 急な宿泊だから食事は期待出来ないだろうと思いながら食堂に行くと、先ほどのご主人が写真の姿で颯爽と登場。華麗なナイフさばきでステーキや魚介を切り分けて見せてくれる、鉄板焼きをご馳走になりました。ナイフさばきの理由は、アメリカのレストランでシェフをしていたのだそうです。
 翌朝は朝食の他に、三献(さんごん)をいただきました。奄美の元日料理で、鶏肉と春雨のお吸い物、刺身二切れにショウガを添えた一皿とお雑煮です。
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 前夜は暗くてわからなかったお宿の場所は目の前が海岸。夏は部屋から水着で飛び出せるでしょう。英語対応もばっちりな大和村の「民宿さんごビーチ」さんです。

 今日の写真は「ヤッコソウ」(2006.12.30鹿児島県で撮影)
ツブラジイやスダジイの根に寄生する1年生の寄生植物です。
名前は、奴が練り歩く姿に例えたのだそうです。
一度見てみたかった植物の1つです。巨大な花ラフレシアに近い仲間なのだそうです。

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2007/01/19

来客

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「それで?」
 広木探偵事務所の応接に珍しく客が来ている。彼女は初めて足を踏み入れる探偵社というところに緊張しているらしい。
 稲作は彼女と会ったことがあるが、彼女は覚えていないようだ。スーパーのレジ係と客じゃ覚えてなくてもしょうがない。
 向かい合っているのは、美羽の母‘川嶋美貴’ 彼女は覚悟を決めたように口を開いた。
「私の美羽に何をしたの」
「何って?」
「ネットに――」
「よかった。見たのか掲示板っていうやつ。えげつない書き込み、だいぶ減っただろ?毎日友達が、管理人っていうやつに消すように頼んでくれてんだ。――もちろん書かれていることは事実無根だ」
 母親は、美羽の身辺をちゃんと見てやっているようだ。
「じゃ、何で」
「美羽と会って話したことはある。それを見たバカがあることないこと書き立てたんだろう。あの娘、気にしないといっているが、まだ子供だ。あんたが気にかけてやってくれれば心強いよ」
「言われなくてもわかってるわ」
「あんまり遅くまで塾なんかにやるなよ。今の世の中はこんな田舎だって何が起こるかわかんねぇんだから。なるべく傍にいてやれよ」
 残り少ない時間を一緒にいてやれと言うことが、どうしても出来なかった。

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 奄美大島1日目は、空港周辺のさとうきび畑を車でウロウロ。
 目的は?……ミフウズラ探しをしました。今回も会うことは出来ず、またいつの日かのお楽しみになってしまいました。
 北の端の奄美空港から南の端の瀬戸内町へ。
 お世話になった宿は民宿‘ゆらりとざわわ’さん。客は1日に1組だけ。希望でナイトツアーをしていただけるという宿でした。
 ご主人がリホームされたという部屋の天井には椰子の葉が飾られていて南国ムードたっぷり。露天風呂、五右衛門風呂も手作り!その日は曇っていて見られませんでしたが、夏の夜の星空は素晴らしいそうです。
 夕食は、ゴーヤチャンプルー、豚の角煮、取れたての魚の刺身、焼き魚など。料理文化は沖縄に近いのでしょうか、大変美味しくいただきました。
 近くの林道を車で案内していただき、道路を横断する僅かな時間でしたが、アマミノクロウサギに会うことが出来、木の上で休むリュウキュウコノハズクにも会えました。 

 今日の写真は「ウスベニニガナ」(2006.12.31鹿児島県で撮影)
 畑や道ばたに咲いていました。これも群馬では見たことがない花です。
 ネットで調べていたら、英名はCupid's shaving brush(キューピッドのひげそりブラシ)というのだそうです。長さ1㎝ほどの小さなひげそりブラシです。でも、キューピットってお肌つるつるそうですけどねぇ。

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2007/01/16

バードウォッチング

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「ねえ、絹さん、絹さんには悪いんだけど、ボクにはよくわかんない」
 冷たい風に吹かれて頬と鼻の頭を赤く染めた妙ちゃんが聞いた。首をすくめて手はポケットの中。
 地味な服装に、双眼鏡、三脚に付けられたフィールドスコープ。この姿をして歩いていると、よくそういう目で見られる。今では、少しだけ世の中に受け入れられているバードウォッチング。
 僕は暇があると店の裏を流れる川に来て、こうして野鳥を見る。
「気持ちが和むんだ」
「見るだけで?」
「そうとしか言いようが無いなぁ。――あっ、カワセミ」
 慌ててスコープで青い小鳥を追い、レンズに入れた。小鳥は川に張り出した小枝に留まり、小魚を探している。
「見てみる?」
「うん」
 カワセミは狙いを定めて川に飛び込むと、ウグイを捕まえて同じ枝に戻った。くちばしで器用に持ち替え、魚を頭から飲み込むと飛び去った。青く輝く宝石のような小鳥はバードウォッチャーのアイドルだ。
「見られた?」
「凄い!綺麗!」
 最高の場面を見た妙ちゃんの目も輝いている。
「でしょ?」
 たまにしか見られない、こういう姿が見たくてバードウォッチングは止められない。
 他に何かいないかと双眼鏡で探していると、
「また見せてもらってもいい?」
 と、妙ちゃん。
「もちろんだ」
「じゃ、ボク帰るね」
 背中を丸めて帰っていく妙ちゃん。
 何か話したいことがあったのかも知れない。
 何度か誘ったことがあるけれど、彼女がスコープをのぞいたのは初めてだった。

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 今日午後三時から明日の午後三時まで、「ココログ」はメンテナンスに入ります。
 コメントの書き込みも出来なくなりますが、ご了承下さい。

 今日の写真は「リュウキュウコスミレ」(2006.12.31鹿児島県で撮影)
 ノジスミレの南方系の変種です。温かい奄美大島では、畑や道ばたなど色々なところで咲いていました。

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 今日2枚目の写真は「鶏飯」(2006.12.30鹿児島県で撮影)
 ‘けいはん’と読む奄美大島の名物料理です。鶏のささみ、シイタケを甘辛く煮た物、錦糸卵、パパイアの漬け物、刻み葱、海苔、蜜柑の皮を乾燥させた香辛料をご飯に乗せ、鶏の出汁をかけていただきます。
 観光に訪れた人は必ず食べるのではないでしょうか。

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2007/01/12

もう少しの間だけ

「いらっしゃいませ、皆さん」
 どうも書けなくなってしまって、今、最初のお話を読み返してみています。下手くそだけど直し方もわからない、何であんなに長い話を書くことが出来たのだろう、という書く気だけは満々だった頃のお話。読み返しているとちょっとやる気が湧いてきます。
 読み返しているのは、僕らが初めて生まれ出たお話「みちくさ」です。
 もう少しの間、お待ち下さいね。

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2007/01/06

それぞれの正月

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――美羽――
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、ありがとう!」
 お年玉をたくさんもらった美羽は田舎の祖父の家に遊びに来ている。
 明日は両親に、スキーに連れて行ってもらうのだ。

――半次――
「あら、ぼっちゃま、お見えになるのでしたら連絡をして下されば良かったのに。お節の用意が何にもしてありません。お豆ときんぴらごぼうしかありません」
「いいんだ。お峰さんに会いに来たんだから」
「嬉しゅうございます」
 お峰は、半次が中学生の頃から住み込みで広瀬家で働いている。70近いはずだが元気な家政婦だ。
 年末年始、両親は国外で過ごす。今年はどこに行っているのか、勘当状態の半次こと広瀬欧彦は知らない。
「やっぱり、お峰さんのきんぴらは美味いな」
 幼い頃から忙しすぎる母親の代わりに家事をしているお峰の手料理は、彼にとってお袋の味なのだ。
「ぼっちゃま、戻ってきて下さい。きちんと謝れば――」
「ごめんよ、お峰さん」

――稲作とジルと妙――
「急にみんなで押し掛けてすまなかった」
「いいさ、お正月は大勢の方が賑やかでいい」
 実家にジルと妙を連れて来ている。
 ジルには帰る実家はなく、妙は訳ありで北海道の実家に帰ろうとしない。だから、二人を連れて来たのだ。
 新年の挨拶を終えて、田舎のお節料理をご馳走になっている3人。ジルと妙を交互に見ている稲作の父耕助、母早苗、弟耕作。
「前に一度会ってるだろ?」
 と、稲作。
「ボクは初めてなんだ」
 と、妙。
「そうだっけ?……さっき智紘の従妹だと紹介したが、ほんとにそっくりだろ?」

――僕――
「いらっしゃいませ、今年もやっと店を開けました。今年もよろしくお願いします」

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 今日の写真は「シロノセンダングサ」(2006.12.31鹿児島県で撮影)
 厄介なひっつき虫、センダングサの花も、温暖な地ではこんなに華やかな花を咲かせます。

Puroperaki
 今日2枚目の写真は「プロペラ機」(2006.12.30鹿児島県で撮影)
 鹿児島から奄美大島まではこの飛行機で移動しました。何便もある飛行機の中で、私たちが乗ったのは36人乗りのプロペラ機でした。

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2007/01/02

明けましておめでとうございます

 新年明けましておめでとうございます。

 今日の早朝、というより真夜中に、奄美大島から帰って来ました。また、島で撮した写真を紹介しながら、のんびりと行かせていただこうと思います。

 今年も、喫茶店〔月の光〕をよろしくお願い致します。

 そうそう、〔月の光〕は読んで下さっている皆さんにも、書き込んでいただけるように、名前・メールアドレスを書かなくてもコメント出来るようになっています。気軽に遊びに来て下さいね。

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