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2006/11/28

上を向いて歩こう

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 上を向いて歩こう、涙がこぼれないように……。
 歌の文句のように涙が溢れてくる。空っ風が冷た過ぎるせいだ。

 人は、ちょっとした事で魔物が落ちることがある。
 あの娘は飛び降りようとしていた。
 声掛けは上手くいったのに。
 なぜだ――。


「お帰りなさい」
 アパートに帰るとジルが出迎えてくれた。こんな夜は、独りじゃないことが有り難い。
「東京行ったのかと思った」
 新宿の麗華の店に出勤したのだと思ったのだ。
「あなたが心配だから」
「もう大丈夫だぜ」
「そうでもないようですね」
 ジルはさっきの出来事を見通している。
「観るな」
「なぜ、関わろうとするのです。あなたが傷付くだけなのに」
「……寿命が決まっているとしても、終わるまでの間を悔いの無いようにしてやることは出来るかも知れないじゃねぇか」
「あなたが関わることで、良くない方へ傾くこともあります」
 そう転ぶこともある、か。
「俺の助けが必要なら、向こうから来るさ」
「そうですね。……稲作、今日は早くお休みなさい。久しぶりの仕事で疲れたはずです」

*今回のお話、最初から読みたい方はこちらをクリックしてください。HPにまとめてあります*


 また今年も、宮城県の伊豆沼・蕪栗沼に行って来ました。
 冬になると、多くの白鳥や雁が渡って来るラムサール条約登録湿地です。今年で6回目のこの旅行の目的は、雁の飛び立ちを見ることと、珍しい雁に会うことです。
 初日は、海鳥ウオッチング。2日目は夜明けの雁の飛び立ちを見に行きました。肩に霜が降りるような寒さの中、雁が飛び立つ時を待ちます。今年は、轟音が轟くようないっせいの飛び立を見ることは出来ませんでした。ちょっと残念。
 飛び立ちを見た後は、田んぼに降りた数百、数千のマガンの中から、間違って来てしまった変わった種類を探しました。雁を脅かさないように、遠くからフィールドスコープで見ます。今年は、シジュウカラガンとカリガネを見ることが出来ました。
 伊豆沼に行き始めて6回目で、初めてカリガネをきちんと見分けることが出来ました。カリガネはマガンとそっくりな一回り小さな雁です。一緒にいると大きさはほとんど一緒。見分けのポイントは、目の回りに黄色いリングがあること、くちばしが少し短いこと、おでこが少し出っ張っていることなのです。だから、見分けがつくようになるとカリガネは幼そうな可愛らしい顔に見えるのです。

*ラムサール条約は、水鳥の保護と湿地的環境の保全を目的として、1971年にイランのカスピ海沿岸のラムサールで関係各国が集まって採択された条約。


 今日の写真は「雁の飛び立ち」(2006.11.26宮城県で撮影)
 夜明け近く、ねぐらで過ごしていたガン達がいっせいに田んぼを目指して飛び立ちます。

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 今日2枚目の写真は「はらこめし」(2006.11.25宮城県で撮影)
 初日のお昼です。去年、亘理町の鳥の海に行ったら至る所に「はらこめし」ののぼりを見ました。
 写真は、今年は食べてみようと、店の外で焼かれている浜焼きの匂いと‘はらこめし注文の人はお代わり自由’の大鍋で沸かされているあら汁に惹かれて、入ったお店のはらこめしです。
 はらこめしは焼いた鮭とイクラの混ぜご飯。あら汁は鮭のあらと野菜の入った塩味のお汁で、漬け物、海苔の酢の物、鯖の味噌煮付きで¥800でした。お安いと思いませんか?奥さん。

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2006/11/24

何が出来るか

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 〔月の光〕の裏には大きな川が流れ、橋が架かっている。
 少女は橋を渡って塾に向かうようだ。
 うーっ、寒い。今夜は空っ風が身に凍みる。
 橋の上、車道はひっきりなしに車が通っているが、薄暗く風が吹き荒ぶ歩道を一人歩き、真っ暗な川面を眺めると吸い込まれたくなりそうだ。
 少女は足を止め、暗い川面を覗き込んでいる。
 彼女も同じ思いに駆られているのか。
 思わず駆け寄ると、振り返った少女は言った。
「飛び降りたりしないよ。なに後付けてるのよ、ストーカー!」
「そっか。それだけ元気があれば、大丈夫だな」
 もちろん、気付く距離で付けていた。恐怖感を抱かせない程度の距離だ。
「行かなくっちゃ。お店でパスタなんか食べたから遅くなっちゃった」
 少女は携帯の明るい画面をみて時間を確認しながら言った。 
「美味かったか?」
「まあまあね」
「また来いよ」
「気が向いたら」
 気のせいか。
 こんなに小さな子供が、たった一人で茶店なんかで食べていたから、余計な気を回してしまった。
「お前、塾楽しいか?」
「楽しいよ」
「そっか。お前――」
 稲作は、胸のボタンを外していた。無意識だった。
「――お前じゃない、美羽よ。……青くて綺麗なペンダントね!」
 知って何が出来る。
「ミウ――どんな字を書く」
「美しい羽」
「良い名前だ。……美羽、何か困ったことがあったらここに連絡よこせ。俺は広木稲作」
 ジルがプリンターで作ってくれた名刺を差し出す。
「おじちゃん、変な名前」
 美羽はコロコロ笑うと、向こう岸に向かって駆けて行った。
「おい、転ぶなよ!」

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 昨日は午後から県内の庚申山公園に行って来ました。公園では何かイベントをやっていたようで大勢の人で賑わっていましたが、私達は山頂(といっても189メートルですが)を目指すハイキングコースを歩いたため、静かな時間を過ごす事が出来ました。
 山頂には3階建ての展望台がありました。3階から見ると、真横に松ぼっくりがたくさん実った松の木があり、たくさんのメジロや、ヤマガラ、ヒガラ、シジュウカラ、コゲラ、ゴジュウカラが目線の高さで見られました。
 今年はなぜか、ここのような標高が低いところでもゴジュウカラが見られます。山にエサが少ないのでしょうか。
 他にはオオタカ、アカゲラ、ツグミ、ジョウビタキ、カワラヒワ、エナガ、カワセミ、カルガモ、マガモが見られました。 
 
 今日の写真は「エノキタケ」(2006.11.23群馬県で撮影)
 日曜日に撮したエノキタケを、また観察してきました。幼菌だった株は、柄が黒っぽくなり、エノキタケらしい特徴が出ていました。 

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 今日2枚目の写真は「エノキタケ」(2006.11.19群馬県で撮影)
 上の写真と同じ株です。幼菌はこんな様子でした。

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2006/11/22

花嫁の父

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「っていうか、おじちゃん達やパパみたいな人と結婚しないように自分を磨くの」
「お袋さんに教わったのか」
 子供が言う言葉とは思えない。
「そうよ、じゃぁね、おじちゃん」
 女の子は手を振って店を出ていく。言葉と動作がアンバランスだ。

「可哀想だねぇ、一人で夕飯なんて」
 少女を見送りながら、呟く絹さん。
「あっしも夕飯は一人でした。鍵っ子でしたからねぇ。……あの娘から見るとあっしも‘おじちゃん’なんですかねぇ」
 溜め息を付く半次。
「――」
「どうなすったんで、ダンナ?‘おじちゃん’って言われたのがショックでしたか?」
 稲作は10代の頃から30過ぎに見られていたのだ。子供におじちゃんと呼ばれたからって傷付きはしない。
「俺はあの娘くらいの頃は、もうこっちにいて従兄弟の家に居候してた。夕飯は二人の従兄弟と争奪戦しながら賑やかに食ったもんだ」
「ラグビーやってた従兄弟でしょ?育ち盛りの男の子3人の食欲って凄そうだね」
「後れをとると食いっぱぐれる」
「羨ましいような、羨ましくないような、ですね」
「――俺たちは結婚対象にはなんねぇのか」
「ダンナ、今度はロリコンに目覚めたんですかい?」
「あるか。あんなちび助が俺たちを駄目だと言ってんだぞ。ってことはだ、年頃の娘にはもっとそう思われるってことだろう?お前、俺のところで働くより、ちゃんとした企業で働いた方がいいな。頑張ってくれ」
「らしくないことを言うね、稲さん」
 と、絹さん。
「妙の相手は、あいつを幸せに出来るやつじゃねぇと認められねぇからな」
 俺はいい。誰も幸せにすることは出来ないのだから。
「花嫁の父みたい」
「何とでも言ってくれ」


「絹さんご馳走さん。俺も帰えらぁ」
「ダンナぁ?……急にどうしたんでしょうねぇ」
 稲作を見送りながら言う半次。
「気になったのかなぁ?あの娘のこと」


 今日の写真は「ベニバナボロギク」(2006.11.19群馬県で撮影)
 紅花襤褸菊と書きます。
 空き地や荒れ地などに咲くアフリカ原産の帰化植物です。

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2006/11/21

夕飯もカレー

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「あれぇ?ダンナ、夕飯もカレーで?」
「飽きるまで食う」
 さっきアパートで、晩飯の準備を始めたジルにも同じ事を言って呆れられた。
 夜6時の喫茶店〔月の光〕。
 いつもの席、珍しく半次と二人きりだ。
「何でそんなもん食ってんだ?」
 彼はチョコレートパフェを食べている。
「今度ここに来た時は、これを食べるようにと、妙ちゃんに言われたもんで」
「見てる前で食わなきゃ意味ねぇだろ」
「言われてみりゃそうだ。でも、うまいっすよ絹さん」
 と、カウンターに向かって言っている。現代の若い者だから、本当に甘い物が好きなのかも知れないが、相変わらず愛想が良い男だ。その愛想の良さが年寄り受けしているのか。
「今日、お千代ちゃんの家に行ったらガッカリされたぜ。‘なーんだ、稲作帰って来ちゃったのかい’だとさ。どうやってばあさんの心を掴んだ?」
 時間決め、主に力仕事の家事手伝いも稲作の事務所の大事な収入源。始めた頃はなかなか年寄りと馴染めなかったっけ。
「みなさんと趣味が合いまして。♪お~と~こだったぁら、ひとつに掛ける~♪とかね」
 半次はチャーミングな笑顔でウインクした。彼は時代劇オタクだった。
「お前、手先は起用だし、家の仕事案外向いてるのかもな。続ける気はねぇか?俺、営業努力するから」
「そうですねぇ。パチンコやって暇潰すよりはいいかなぁ。今日は大負けしたし」
「ギャンブルは止めとけ」
「へぇ」
 半次は悪いやつじゃない。真面目に働けばきちんとした生活が出来る男だ。
 そうしてくれれば――。
「真面目に働いてくれれば、妙とのことを応援出来るんだがなぁ」
「ほんとですかい!?ダンナ!」

 ガタンと椅子の音がしたと思ったら、奥の席に小さな女の子。
「ご馳走様でした」
 誰も居ないと思っていたら、他の客が居たのだ。
「お嬢ちゃん、一人で食いに来たのか?」
「入ってみたかったの」
「家でお袋さんが待ってんじゃねぇのか?」
「いつもはコンビニのお弁当」
「作ってくんないのか?」
「ママは働いているから帰りが遅いの。待ってると塾に送れちゃうから」
「大変なんだな」
「うん、おじちゃん達みたいにならないように勉強がんばるね」
「――」
 返す言葉が見つからない男3人。


 先日、ハタケシメジが売られなくなったと嘆いたら、近所のスーパーに置かれれるようになりました。しかも他の定番キノコと同じ場所に。みのもんたさんの御陰か、鍋の季節になったからか。どちらにしてもハタケシメジ好きとしては嬉しい限りです。
 昨日は金目鯛の切り身にハタケシメジ、エリンギ、シイタケ、葱を乗せ、ゆずコショウ風味のホイル蒸しをしました。簡単に出来るのに、開けるのが楽しみな美味しい料理になりますね。

 今日の写真は「エノキタケ」(2006.11.19群馬県で撮影)
 冬はエノキタケの季節です。
 鍋に入れる白くて細長いシャキシャキした歯触りのエノキタケの野生の姿です。少し垂れ下がっているような裏側のヒダ、黒っぽいビロードのような柄が特徴です。
 香りは市販のエノキと同じ甘い匂いがします。味は、少ししかなかったので採取しませんでした。

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2006/11/18

やっぱりカレー

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「ちわ~す」
「稲さん!お帰りなさい!仕事、終わったの?」
 久しぶりの喫茶店〔月の光〕。
「ああ。大盛りカレーライスくれ。ずっと食いたかったんだ」
 麗華の依頼で東京に行っていたことになっている。
 人が良い絹さんをだましたのは心苦しいが、心配を掛けないためだから許されるだろう。カレーが食べたかったのは本当だ。ベッドの中で、どうやったら居ることがバレずに手に入れ、食べることが出来るか考えたくらいだ。何度かジルに頼もうと思ったが、我慢したのだ。
「嬉しいね、ずっと食べたかっただなんて。――仕事、大変だったんだね」
「?」
「何だか、病み上がりみたいに見えるから」
 げっ!以外と鋭い。
「慣れねぇデスクワークだったんだ。身体、鈍っちまったぜ」
 マジで鈍った。戻すのは大変だろう。……まずは走り込みからだ。
 あの晩、忠宣に蹴られたのをピークに痛みは治まり、こうして動き回るのに支障が無くなった。いつまでも寝ている訳にもいかないから、思い切って起き出してきたのだ。

「絹さん、今日のランチ――!!稲作、いつ帰って来たの!!」
「だんな~!」
 入って来たのは妙と半次。仲良くやってくれていたようだ。
「さっきだ。二人には世話になったな」
「何言ってんのよ。麗華さんの依頼なんだから、報酬たくさんもらったでしょ?きっと特別手当もらえるよ。良かったね!半ちゃん」
「へぇ」
 ‘半ちゃん’なんて、思った以上に仲良くなってるのか?二人のことは後で考えるとして。……金はジルに借りるしかないか。

「こんにちは――」
 入って来たジルは、こちらを見て、稲作にだけ言葉を送ってきた。相談せずに起きてきてしまったのだ。
『あなったって人は』
『すまん』
「稲作、仕事は早めに終わったのですね」
「あ、ああ、そうなんだ」
「稲作、相変わらず尻に敷かれてるってカンジ」
 
「さあ、お待たせしました。久しぶりのカレーライスをどうぞ」

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 毒キノコ騒動はこれにておしまい。
 次は何が起こるのか、書いている僕にも解りません。

 今日の写真は「ヒヨドリジョウゴ」(2006.11.12群馬県で撮影)
 鵯上戸と書きます。ヒヨドリが好んで食べそうだから付けられた名前だそうです。
 赤、黄色、緑と綺麗だったので撮してみました。

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2006/11/14

ハンター失格

Imgp31901「客が居たから食えなかったんだ」
「いらっしゃい、忠宣さん」
「元気そうだな」
「お陰様で」
「じゃ、帰る」
「もういいのか?」
「顔を見ればいいんだ」

 忠宣はずっと待っていたのにジルの顔を見ただけで帰っていった。
「なんなんだ?あいつ」
「少しの間でも一緒にいたくないのです。私達は天敵ですから」
「天敵ねぇ」
 ハブとマングースが噛み合う場面が思い浮かんだ。
「――彼に跡を継げと?」
「ああ」
「私は構いません。……そうしていただけると、安心です」
 出会った時、狂った仲間が彼の目の前で退治されたのだ。ジルは、いつか自分もなるのではないか、その時は稲作に、と思っているようだ。
「嫌だね」
「仕方ありません」
「お前、疲れてんじゃねえか?眠いとか」
 いつもより元気がないように見える。
「いいえ」
「じゃ、腹減ってんのか?」
「いいえ。ですが、私は我慢をしました」
「?」
「飲むか?」
 俺は、手首を差し出した。
 昌子、和哉との経緯を知らない稲作だが、ジルは稲作のために我慢をしてくれたのだろう。
「甘えても良いですか」
「いいぜ」
 ジルは手首に優しく噛み付く。痛くはない。
 こんな俺が、ハンターになれるはずがない。

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 ここのところ猫たちのことを書いていませんでした。
 ‘でか’と‘ちび’は卒業以来姿を見せません。どこかで元気に生きていてくれていることを願っています。‘くろ’と‘みみげ’は相変わらず毎日ミルクをねだりに来ます。そうそう、今月に入って触ることが出来るようになりました。最初はカチカチになって警戒していましたが、今では耳の後ろを指で掻いてやると喜んでゴロゴロ喉を鳴らすようになりました。身体を触ってみたところ、蚤は湧いていないようです。けっこう肥っているし。どこかで飼われているのでしょうか。未だに謎なのです。

 今日の写真は「アワコガネギク」(2006.1.12群馬県で撮影)
 泡黄金菊と書きます。小さな黄金色の花が密集して咲く様子を泡に例えてものだそうです。遠目はヤクシソウに似て見えるほど小さな菊の花です。

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2006/11/10

そういう愛情

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 稲作のアパート。
「おい、寝たのか?」
「起きてる」
 忠宣に見られながら眠れる訳がない。痛いし(女子高生か?俺)。
「ところでお前、どこが悪いんだ?」
「頭」
「そんなことはわかってる。言えないような病気じゃあるまい?」
 絶対に言えない。言ったら最後、沼田のじいさんからお千代ちゃん、お梅ちゃん、絹さんまで筒抜けになる。ジルの秘密は誰にも言わないが、こういう話は平気でするだろう。
「移んねぇから心配すんな。もうすぐ治る」
 もうそろそろ治ってもいいはずなのだ。
「教えてくんないのかぁ、面白そうなのになぁ。……遅いじゃないか、お前の可愛い娘ちゃん」
「違う言い方出来ねぇのか。あいつは男だ」
「俺には女に見えるけどなぁ。――おまえ、前に言ったこと考えてみたか」
「何か言われたっけ?」
「忘れた振りして。わかってるんだろ?」
 それは、忠宣の跡を継ぐこと、ハンターになること。
「――」
「お前が生きている間、やつを見守り、次の世代に渡す。何かが起こった時はお前の手で始末をつけてやる。……そういう愛情もあるだろう」

「ただいま帰りました。稲作、また夕飯を食べていませんね」
 忠宣が居ることに気付いているはずのジルが帰って来た。

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忠宣登場のお話は、―追い詰められるふたり―をどうぞ。

『いらっしゃいませ』
 喫茶店〔月の光〕マスターの絹(けん)です。
 一昨日、「思いっきりテレビ」で、「ハタケシメジ」の効果について放送されていましたね。嬉しくて見てしまいました。みじん切りにして炒めて食べると、脂肪を排泄する効果が高まるということでした。気になる方はお試しを。
 嬉しかった理由は、ハタケシメジの知名度が上がってもっと売られることを期待したからです。スーパーに並べられなくなって、生協でも売られなくなって、名前が悪いからかしら、とガッカリしていたのです。生協では「丹波しめじ」という名前で売られていました。こちらの方が商品名としては高級感がありますね。
 健康効果も嬉しいですが、このキノコ、安くて美味しいのですよ。手持ちの図鑑には「ホンシメジに風味も決して引けをとらない」と書かれています。ぜひ、ハタケシメジの炊き込みご飯で、ブナシメジの炊き込みご飯との違いを味わってみて下さい。
 ハタケシメジもブナシメジやエリンギのように定番として店頭に並ぶようになってくれると嬉しいですね。

 今日の写真は「キッコウハグマ」(2006.11.05群馬県で撮影)
 亀甲白熊と書きます。亀甲は、5角形の葉の形から(写っていなくてごめんなさい)。白熊は、白いヤクの尾の毛を束ねて柄を付けた道具、払子(ほっす)や装飾具と書かれています。言われてみればキッコウハグマの花は、小さな払子のようですね。
 花を咲かせずに種になってしまう閉鎖花が多く、寒いこの季節に小さな花に出会えると、たいへん嬉しいものです。
 花を良く見ると3個の花が集まって出来ている事がわかります。

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2006/11/08

似合いの関係

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「出世や名誉が幸せなら、手助け出来ないこともないんだけどね」
 そういうものは、本人の野望と回りのバックアップがあれば掴めないこともない。
「一番興味がないことでしょう」
「美味い物もたまに食べるから美味いんだって」
「稲作に、もう一度チャンスを与えてくれませんか」
 このホテルでの出来事を言っているのか?
「……あれが、あたしたちの運命だったような気がする」
 思い返すと、あたし達はいつもいつも間が悪かった。
 きっと、そういう巡り合わせなんだ。

「珍しい取り合わせだな」
 和哉!?
「何であんたが?」
「食事をしてはいけないか?」
「あんたなんかが来るところじゃないだろう。ここは暴力団お断りの店じゃないのかい?」
「ふん。失礼なことを言うな。……昌子、こいつ今度はお前のオモチャになったのか」
「私はオモチャではありません。彼女に失礼なことを言うと許しません」
 ジルの瞳が青く輝く。
「ジル、相手にするな」
 和哉は、ジルを睨み付けながら、テーブルの上のワイングラスを掴むと握りつぶした。
 グラスは割れ、彼の手のひらを傷つけた。残っていた赤ワインと一緒に血が滴る。
「何をしてる!ガキの喧嘩じゃあるまいし、いい加減にしな!!」
「そうですよ。傷が酷いようでしたら病院へ」
 ジルは平気な顔をして自分のハンカチを手渡した。

「昌子さん、せっかくの時間を台無しにしてしまって、申し訳ありませんでした」
「あんたのせいじゃないさ。すごすごと帰ってった和哉、形無しだったねぇ。それだけだって十分楽しめたよ」
 帰り道。食事は途中で中断になったが、ジルのことを頼もしく思えた。智紘とは違う。
「稲作に会ってやっていただけませんか」
「やめとくよ。情けない姿を見られたくないだろうし。今日の話は聞かなかったことにする」
 今まで通りの付き合い方が、あたし達には似合っているのだ。

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『いらっしゃいませ』
 喫茶店〔月の光〕マスターの絹(けん)です。
 行動を起こした君へ。
 文部科学大臣に手紙を送るなんて、素晴らしい勇気です。
 その勇気を生きることに向けてください。恨んでいるならその力を、今は生きることに向けて。
 あなたが死んでしまっても、悲しむのは家族だけ。月日が経てば虐めた人も世の中の人達も、あなたのことなんか忘れてしまうのですよ。
 嵐が過ぎてしまえば違う世界が見えるはず。
 気持ちが落ち着いたら、本を読み、多くの人と出会って視野を広げて下さい。
 何年か経った時、生きていて良かったと思える日が必ず来ます。だから早まらないで下さい。


 今日の写真は「遊水池の月」(2006.11.05栃木県で撮影)
 群馬県、栃木県、埼玉県の境界線に広がる渡良瀬遊水池の芦原に昇った月です。
 このくらいの時間になると、ねぐらの芦原に帰ってくるハイイロチュウヒに会うことが出来ます。この日はほんの一瞬だけ見ることが出来ました。
 この写真は横写しですが、縦に撮しながら
「何か思い出さない?」 
 私達が同時に思ったのは、花札の「月に薄」。

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 今日2枚目の写真は「ヒラタケ」(2006.11.05群馬県で撮影)
 昔、「しめじ」の名前で売っていて、「ぶなしめじ」が登場したら、本名の「ヒラタケ」で売られるようになりました。
 傘が大きく状態が良いものが、登山道のすぐ脇で枯れているエゴノキに生えていました。
 状態が良いものだけを採って来て、みそ汁とすき焼きに入れて食べました。食感は栽培品と同じでしたが、他の天然キノコと同様、香りが強く感じました。

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2006/11/06

幸せとは

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「一度、あんたと差しで話してみたかった」
 昌子はジルに言った。
「?」
「あんたとあいつはどう見たって釣り合いが取れないじゃないか。何であいつなんかと一緒にいるのか不思議で仕方ないんだ。差し支えなかったら聞かせてくんないかい?」
「稲作とは、私の生まれ故郷で出会いました。私は村人から迫害を受けていて――」
 助けられて、一緒に旅をして、忘れられなくて彼を追い掛けてきたのだという。
 やっぱり恋愛絡みか。
「好きなのか?」
「はい」
 ジルは、注がれた赤ワインを愛おしそうに眺めた。ワイングラスに稲作を思い浮かべているのだろうか。うっとりとした表情で赤い液体を口に含む。
 なんて綺麗な男だろう。
 見とれていた昌子に彼は言う。
「誤解しないで下さい。あなた方が思う‘愛している’という感情とは違うのです。私は、ただ彼の傍にいたいのです。ですが、あなたが目障りだというのでしたら私は去ります」
 酷く寂しそうな声。
「お待ちよ。あんたのライバルになるのかと思っただけさ。違うんだったらいいんだ。……聞いていると思うけど、あたしはあいつが幸せになるのを見届けなきゃなんないんだ。だから、あんたと居ることがあいつにとっての幸せだったら、あたしが身を引く」
「智紘との約束。……稲作も彼と同じ約束をしているようです。あなたの幸せを見届けると」
「――だから、あいつの幸せを壊すやつは、あんたでも許さないってことさ」
「彼にとって幸せとは何でしょう」

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『いらっしゃいませ』
 喫茶店〔月の光〕マスターの絹(けん)です。
 しばらく間を空けてしまって済みません。
 昨日、県内の低山の藪の中で、「ケ、ケ、コ、コ、コ」というけたたましい鳥の鳴き声が聞こえました。声の太さから中型の鳥のようですが、姿が見えません。双眼鏡で良く見ると、地上にキジトラの猫がいました。キジトラ模様は枯れ草の上では同化して見えにくいものですね。獲物を狙う猫をしばらく見ていると、バサバサッと飛び立ったのは数羽のコジュケイでした。よく耳にするコジュケイの鳴き声は、あの有名な「チョットコイ、チョットコイ」ですが、警戒音はずいぶん違うものですね。


 今日の写真は「ムキタケ」(2005.09.24群馬県で撮影)
 このキノコも今の季節に出ます。ムキタケの特徴は、桃やトマトのように表面の皮が薄く剥けることです。
 つるんとしたぬめりとキノコらしい香りがする美味しいキノコです。お吸い物がお勧め。

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 今日2枚目の写真は「ツキヨタケ」(2006.10.0群馬県で撮影)
 夜、キノコの裏側が青緑色に光る神秘的なキノコです。
 1枚目の写真のムキタケやヒラタケと間違えて食べる人が多く、食中毒が多い毒キノコです。嘔吐、下痢の症状が出て、死亡例もあるので気を付けましょう。

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2006/11/01

ディナーⅡ

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「来て下さってありがとうございます」
「一度あんたと2人で話してみたかった」
「今日は、お部屋の用意はしていませんからご安心を」
 たぶん冗談のつもりなのだろう言葉を、彼は笑いもせずに言った。この間の経緯を知っているようだ。
「してあったって断るさ」
 ここは、この間稲作と食事をしたホテルのレストラン。
 今日の昌子は残業帰り、きっちりとしたグレーのビジネス仕様のスーツを着ている。
 向かい合って座っているのは、稲作と一緒に住んでいるという、智紘にそっくりな顔をした金髪碧眼の外国人ジル。そっくりなのに、これほど綺麗に見えるなんて。生きている人間とは思えないほどだ。まるで、完全に作られたアンティーク・ビスクドールのよう。
 吸い込まれそうな青い瞳がこちらを見ている。
 何を企んでいるのか、彼から食事に誘って来たのだ。
「うふふ。そんなに警戒しないで下さい。何も企んでいません」
 料理が運ばれてくると、彼は見たことがないほど優雅で美しい仕草で食事を始めた。犬食いの稲作と同じ人間とは思えない。
「何か?」
 見とれてしまった。
「いや、何でもない。あんた、良い所のお坊ちゃんなんだねぇ。……ところで、話って言うのはなんだい?」
「稲作の誤解を解きに来ました」
「誤解?」
「あの日以来、稲作は寝込んでいます。そのうえ、可哀想なほど落ち込んでいるのです。彼は性病ではありません。もちろん仮病でもありません」
 ジルは、食事をしながら平気な顔をして言う。
「嘘ならもっとマシな嘘をつくだろ。で、まだ寝込んでるなんて、どういう事だ?」
 稲作は気が弱い男だが、精神的なショックで寝込むほど弱くはないだろう。
「――マジか?」
 信じられないような理由はキノコ中毒。――あいつは本物の馬鹿だ。
「信じていただけますか」
「あまりにバカバカしくて、冗談とも思えないね」
「ありがとうございます」

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『いらっしゃいませ』
 喫茶店〔月の光〕マスターの絹(けん)です。
 悲しくて仕方ありません。
 虐めにあっている子供達。お願いですから、自殺しようなんて考えないで下さい。
 新聞やテレビのニュースを見て、あなたの大切な人を、どれだけ悲しませる事になるのかを想像して下さい。学校なんか行かなくていいから、1年や2年休んでもいいから死なないで下さい。
 先生達も同じです。自殺などという楽で無責任な道を選んで子供達に見せないで、みっともなくたっていい、先生なんて辞めてもいいから、生きて子供達の手本になって下さい。
 あなたが死んでしまったら、残されたあなたの大切な人の時間は止まり、何年も何年も後悔し、嘆き悲しみながら老いていくのです。あなたの大切な人にそんな思いをさせないで下さい。

 今日の写真は「クリタケ」(2006.10.28群馬県で撮影)
 見るからに美味しそうですね。今頃の季節、秋が深まった頃に出始めるキノコです。
 たまに地元のスーパーで売られていることもあります。
 写真のキノコは油で炒めて食べました。

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 今日2枚目の写真は「ニガクリタケ」(2003.11.16群馬県で撮影)
 山を歩いていると一番よく見かける毒キノコです。木道などに生えていて硫黄のような黄色をしています。
 今日1枚目の写真クリタケと間違えて食べてしまうことがあるそうです。比較のために載せてみました。こうして見ると、あまり似ていないと思うのですが、いかがですか?命に関わるほどの猛毒キノコですからご注意を。

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