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2006/08/07

終わり良ければ

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「私をここから連れだして」
「どういうことだ」
「部屋からでれない」
「かんきんでも されているのか」
「恐いの」
「なにが」
「外の世界」
「なんで」
「みんな大嫌い」
「おれは どうすればいい」
「私に勇気を下さい」
「どうすれば」
「私を裏切らないと約束して」
「おれは おまえのことをしらない」
「私をずっと見ていて」
「ばかいうな しごとがある」
「夜だけで良いから」
 こんな風にメールのやり取りをして、受けた依頼だった。
 醜形恐怖の浩一と同じなのだろうか。だから、俺は‘アマデラス’と名乗った彼女の顔を見ていなかった。
 それが今、こうして対面している。
 色白、長い黒髪の美少女だった。
「あのぅ、そのお団子食べていいですか?わたしわぁ、いらないんですけどぉ、この子がどうしても食べたいって言うんですぅ」
「どの子?」
 彼女が下を向くと、頭のてっぺんがムクムクと動き出した。
 頭のてっぺんは横一文字に赤く裂け、開いた口から出た赤く長い舌がべろりとくちびるを舐め回した。髪の毛はザワザワと動き出し手の形になり、器用に机の上のみたらし団子の串をつまみ上げ、頭に割れた口に運ぶ――。

「うわーっ!!」
「稲作、起きてください」
「――んが?」
 ジルの言うことを聞いておとなしく病院に戻っていた。
「うなされていました」
 うなされもする。寝過ぎると眠りが浅くなるから夢ばかり見る。

「おはよう。稲作!夕べ抜け出したんだって?どうしてそうなのよ、心配かけることばっかして」
「そうですよダンナ。もういい歳なんだから、あんまり無理はいけやせん」
 妙と半次も昨日の事故を知っていた。
「昨日、全然目を覚まさないから心配したんだから」
 2人も来ていたのか。
「稲さん、昨日の検査結果聞いた?」
 今度は絹さん。
「聞いたよ」
「どうだった」
「別に」
「恥ずかしくて言えないそうですから、私が代わりに」
「やめろよ、ジル」
「熱中症を起こしたのは過労と栄養失調も遠因だから、退院しても無理をせずに静養するようにとのことです」
「藪医者め、ただの交通事故だろうが」
「事故の原因です」
「いやだぁ恥ずかしい、栄養失調だなんて。ボクが美味しい物作ってあげるね」
「うらやましいですねぇ、ダンナ」
「じゃあ妙、半次に作ってやれよ」
「なんでよ!」
 妙の手料理じゃ高血圧になるか餓死だ。  

「あのぅ、ちょっといいですかぁ」
 色白、長い黒髪の美少女。
「お前、アマデラス?」
 彼女は嬉しそうな顔をすると頭を下げた。
 頭のてっぺんに口は……ない。
「ごめんなさい。あんなにずっと見てくれるとは思わなかったの」
「受けた仕事だからな」 
「家の外に出るのが恐かったのは本当よ」
「出て来たじゃねぇか」
「夕べのことをあなたに謝りたくて」
「そうか。ま、取り敢えず良かったな」
「今日はお詫びとお見舞いに来ました。費用の方はまた改めて」
「払う気あるのか」
「はい」
「良かったじゃない、稲作」
「海に行けますぜ、ダンナ」
「君も良かったら一緒に行かない?」
 話はどんどん盛り上がっていく。
 終わり良ければ全て良し、か。
 彼女が持ってきた手みやげは、もちろんみたらし団子だった。

 話が長くなってしまったので、今回のお話「ネット依頼」を日々のエピソードに入れました。よかったらご覧になってみて下さい。

☆お知らせ―明日から約1週間、 喫茶店〔月の光〕は夏期休業させていただきます☆
 ちょっと旅行に行ってきます。
 お休み明けは、〔月の光〕一行の海水浴風景から始まる予定です。


 今日の写真は「ソクズ」(2006.08.07群馬県で撮影)
 別名・クサニワトコのスイカズラ科の植物です。白い花には蜜がなく、所々にある黄色い部分に蜜が詰まっているそうです。

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コメント

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投稿: Chloe | 2014/02/18 19:57

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投稿: Olivia | 2014/02/21 02:16

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