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2006/07/31

とんぼ返り

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 妙ちゃんは、半次を引っ張ってデパートに出掛けていった。普段の服装を見ても、僕や稲作より半次の方が水着選びのセンスは良さそうだ。まさか彼が冗談で言っていたような、目のやり場に困るような過激なデザインは選ばないだろうなぁ。
 電話が鳴った。
「はい、喫茶店〔月の光〕です。――何ですって?」

「マダム。私は帰らなければならないようです」
 携帯電話を閉じたジルが言った。
「え?久しぶりに来たのに?」
 麗華のマンション。
「稲作が事故を起こしたそうです」
「何ですって!?どうしましょう」
 見た目は女性の麗華は、心は男性だというが、普通の男性の稲作や絹さんよりは心が弱い。
「命に別状はないそうです」
 それは今朝も確認済みだ。稲作に青いペンダントは見えなかった。
「行かなくっちゃ」
「大丈夫です。私が戻ります。マダムはお店に行って下さい。後で電話しますから」
「……わかったわ、お願いね。……ジルちゃん、帰る前に食事をしなさい」
 いつもは仕事が終わった後に頂いているのだ。
 台所に急ぐ麗華。彼女の方が冷静のようだ。
「ありがとうございます」
 渇いているはずなのに忘れるなんて、気が動転しているのだろうか。彼が無事なことはわかっているのに。

「忘れてはダメよ、大切なことだわ」
 麗華が赤い液体を満たしたクリスタルグラスを持って戻ってきた。


 予告もなく何日もお休みをしてしまい、すみませんでした。
 書けませんでした。
 書くことは決まっているのに、パソコンを立ち上げてワープロソフトを開いても書けませんでした。ブログを始めて1年半以上、こんなに長く書けなかったのは初めてです。素人が楽しみでしていることでも、こういうことってあるのですね。
 毎日見に来て下さった皆さん、心配をおかけして申し訳ありませんでした。

 伯母が亡くなってしまいました。去年の末に伯父を亡くし、気落ちしていたからかも知れません。白内障の手術をして、残りの人生を伯父の分まで元気で頑張ろうとしていた矢先のことでした。
 今となっては、向こうの世界で二人仲良く穏やかに暮らしていると思うしかありません。

 今日の写真は「ハクサンフウロ」(2006.07.22群馬県で撮影)
 白山風露です。夏山の草原に揺れるハクサンフウロは美しいのです。

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 今日2枚目の写真は「モウセンゴケ」(2006.07.22群馬県で撮影)
 毛氈苔です。湿原だけにあるイメージのモウセンゴケですが、登山道のじめっとした所でもよく見かけます。

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2006/07/25

白と黒

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「ダンナ、何か鼻赤いッスよ」
「ほんとだ!沼田のおじいさんみたい!さすが師弟だね」
 と、すかさず反応して、からかう妙。
「日に焼けたんだ。曇ってたから帽子忘れたら天気良くなったからな」
「外の仕事だったの?」
「○○さん家の草むしり」
 夏の重要な収入源だ。
「ダンナも日に焼けるんですねぇ。そんなに黒いのに」
「悪かったな」
「ってぇことは、腹とか背中とか真っ白だったりするんじゃ?」
「だから恥ずかしくて水着着られないとか?」
 首から上と腕だけ黒かったら確かに恥ずかしいが。
「そんな風に見えるか?」
「――」誰もそこには触れない。
「――エッヘン、妙ちゃんは脱いでも色白でしょうねぇ。海に行ったら見られるな、えへへ」
「いやあねぇ、半次さんったら」
「ビキニを希望しヤス。出来れば紐パン」
「えっち!」
「そうやってずっとジャレてろ。……絹さんご馳走さん」

 前橋の西には田園地帯が広がっている。
 その農家の1件に、稲作が高校時代から世話になっている婆さんがいる。
 草刈りなどの農作業を手伝う代わりに、野菜や米をもらったりしているのだ。
 やっぱり田んぼはいい。
 若い稲、緑の絨毯の間、真っ直ぐ走る農道をバイクで走るのは気持ちが良い。

 海か。
 海水浴だのスキーだのに連れて行ってやったことなかったなぁ。
 あの件が早く片づいたら考えてみるか。
 妙の水着姿が見たい訳じゃねぇけど、悪い虫が寄ってくると困るし。

 急がないと、約束の時間に遅れる。
 あれ?
 ブレーキが利かない!?――。

 話が長くなってしまったので、今回のお話「ネット依頼」を日々のエピソードに入れました。よかったらご覧になってみて下さい。


 あまりに毎日ジメジメしているせいでしょうか、庭にキノコの卵を見付けました。2年前に見付けた卵の正体はツマミタケ(本館キノコの国に写真があります)でしたが、今回はちょっと形が違うようです。生えてきたら写真を載せますので、乞うご期待。

 今日の写真は「赤いひょうたん」(2006.07.22群馬県で撮影)
 スイカズラ属の実はこんな風にひょうたん型になる物があります。
 実からでは判断が付けられないのですが、コウグイスカグラの実ではないかと思います。

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 今日2枚目の写真は「サドルの上」(2006.07.19群馬県で撮影)
 器用に座っているのは‘ちび’です。

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2006/07/23

夏の計画

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 ジルが稲作の背中に手を掛け、歩みを促した。
 ボクを置いて行かないで!
 振り返ってよ!
 二人の背中が闇に紛れて消えたところで、妙は目が覚めた。
 怖い夢じゃないのに。
 嫌な夢だった……。

「ねえ、いいじゃない。連れてってよ」
「んが?冗談じゃねぇ。水着なんかどっかいっちまったし」
「新しいの買えばいいじゃない」
「そんな暇ねぇし」
 お昼時の喫茶店〔月の光〕。
 相変わらずウスターソースをかけた大盛りのカレーライスを頬張る稲作に、妙ちゃんがおねだりをしている。 
「丁度いいところに来てたな、半次、お前が連れてってやれ」
「え~」
「久しぶりに登場させてもらったと思ったら、何でそうなるんで?ダンナ」
 半次、こと広瀬欧彦はジルの友達(=しもべ)だ。ジルや俺の意向に逆らうことは絶対にしない、安全な妙のお守りだろう。彼が正業に就いて妙を幸せに出来るのなら、安全じゃなくなっても構わないが。
「海なんて、ずいぶん行ってないな。たまにはいいんじゃない?」
 と、マスターの絹さん。
「何でわざわざそんな遠くに行かなきゃなんねぇんだ。赤城か榛名に涼みに行く方がずっといい」
「ダンナ、まさか泳げないんじゃ?」
「んな訳ねぇだろ」
「ですよねぇ。ダンナ運動神経良さそうだもの」
「妙ちゃん、計画立てちゃえばきっとダンナも来るっていいますよ。絹さんも乗りますよね」
「車出すよ」
 と、絹さん。
「ね」
「俺はずっと仕事だ。午後は田んぼの草刈りを頼まれてる」
「今日行こうっていうんじゃないんですから」
 この夏は、泊まり掛けは駄目なのだ。

 話が長くなってしまったので、今回のお話「ネット依頼」を日々のエピソードに入れました。よかったらご覧になってみて下さい。

 
今、『群馬昆虫の森』のライブカメラが熱いです。
 樹液の出る木に24時間カメラが設置されていて、集まる虫たちを観察することが出来ます。
 さっき(夕方5時過ぎ)に見ていたら、オスのカブトムシ2匹とメス1匹、カナブンがいました。一組のカップルが出来、うらやましそうに傍観する小柄なオス。そこに大きいオスが飛んできてカップルのオスを振り落とし彼女を横取り。用が済んだ大きなオスは他のオスやカップルだったメスまでも振り落とし、エサ場を独り占めしています(ジャイアンだな、こいつ)。
 今日の私のように運が良いと、こんな様子が観察出来ますよ。

 今日の写真は「ニコウキスゲ」(2006.07.22群馬県で撮影)
 図鑑にはゼンテイカ(禅庭花)という名前で載っていますが、別名のニッコウキスゲ(日光黄菅)の方が有名です。

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 今日2枚目の写真は「体格差」(2006.07.21群馬県で撮影)
 ‘みみげ’と‘でか’です。性格と共に、体格の違いもはっきりしてきました。

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2006/07/22

共有する夢

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 浩一と亜弥を家に送り、チョビを戻して〔月の光〕に戻った。
 ジルは、新宿にバイトに出掛けていった。亜弥がいる間、独りにしておくのは可哀想だからと休んでいたのだ。毎日のようにマダム・麗華から電話が来ていたから、行く気になったのだろう。
「お帰りなさい」
 とマスターの絹さん。
「悪かったな、朝早くから店開けさせて」
「ううん。あんなので大丈夫だった?」
「喜んでたぜ。また来ることがあるかも知れねぇが、その時は頼む」
「うん」
「どう思った?浩一のこと」
「普通の子だったから安心したよ」
「だから怖かった」
「?」
「最近のニュースに出てくるやつらはみんな良い子だ」
「そうだね」
「幸せに育ちすぎて、我慢の限界点が低いんじゃねぇかな。夢も見ねぇし……他人のことはいえねぇけど」
「稲さんは夢はないの?」
「俺は……誰かの夢に付き合うのも悪くないと思っている」
「そういう生き方もあるなぁ。歴史を見ても、事を為し遂げた人達の周りには必ず夢を共有する理解者がいるものね。そういう人に出会えるといいね」
「……そうだな」
 出会っている。
 ジルに。
 人間から見れば越えてはいけない一線だろう。
 明るい未来ではなく永遠に続く闇の世界。
 それでも俺は付いて行きたい。
「どうしたの?眠い?奥の部屋で休んでいいよ」
「今日はいい。珍しく仕事が入ってるんだ、稼がなきゃ」

 話が長くなってしまったので、今回のお話「ネット依頼」を日々のエピソードに入れました。よかったらご覧になってみて下さい。


 ‘風味堂’が気になります。
 ドラマを見ていませんが‘PS羅生門’の主題歌が流れた時に、「あ、あの歌声だ」と思いました。名前を見て、やっぱりって。水ようかんが美味しい和菓子屋さんみたいな名前だから覚えていました。横文字だったら覚えていなかったかも知れません。
 去年、見た昼ドラで聞き慣れていた歌声だったのです。
 私みたいな鈍感な者が気になるっていうことは、彼らは大ヒットするかも知れませんね。

 今日の写真は「トキソウ」(2006.07.03群馬県で撮影)
 高原の湿原に咲く小さな鴇色の蘭です。

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 今日2枚目の写真は「サワラン」(2006.07.03群馬県で撮影)
 沢蘭、別名はアサヒランです。1枚目の写真、トキソウと同じ湿原で撮しました。
 色の濃さと花の開き具合が違いますね。
 この湿原では、たくさんのトキソウの中に混ざって、ぽつりぽつりとサワランが咲いていました。

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2006/07/20

選ぶ道

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「どうだ?早起きして散歩も悪くねぇだろ?」
 浩一は頷いた。
 いつもはここでは食べない朝飯を二人で食べている。
 朝6時の喫茶店〔月の光〕。
 ジルは外で犬たちと遊び、絹さんは店の仕込みを始めている。
「ちったぁ日に焼けて、俺みたいに男らしくなんねぇとな」
「あんまりなりたくないな」
「悪かったな」
 これまでの交流で、軽口をたたき合えるくらいの仲にはなっていた。浩一の見た目は、俺よりよっぽどましだという事を理解したようだ。
 自分自身や親に当たり散らす前に、選ぶ道は幾らでもあると話してきたつもりだ。ほとんどが俺自身の失敗談に近い体験談だったりするが、その話の中から自分なりに考えるところが見つかったのかも知れない。
 今朝の浩一はスッキリした顔をしていた。人は、心の中や生活態度が顔に表れるものだ。
 今の浩一は、誰が見ても好青年に見える。
「稲作さん、お願いがあるんです」
「んが?」
「僕は、あなたみたいに外国を放浪しようという勇気はないけど、親の薦めに乗ってみようと思います」
 彼の決断は転校。両親に勧められた全寮制の高校に行く事にしたのだという。 
「で、お願いって?」
「亜弥の散歩をお願いしたいのです。世話は母がしてくれると言ってくれました」
「もちろんOKだ」

「稲作、嬉しいのでしょう」
 浩一が亜弥を連れて帰った後。
「何が?」
 まあ、色々な意味で嬉しいが。
「お散歩を続けられること。亜弥ちゃんも喜んでいました」
「ほんとか?ところでお前――」
「浩一君には、私の印象が残らないように暗示を掛けておきました」
 道理でジルの事を訊かれなかった訳だ。

 話が長くなってしまったので、今回のお話「ネット依頼」を日々のエピソードに入れました。よかったらご覧になってみて下さい。
 稲作自身の失敗談に近い体験談は、リンクしている本館「みけのみちくさ」をご覧下さい。笑えるかも知れません。


 今日の写真は「ウスノキ」(2006.07.03群馬県で撮影)
 臼の木は実の形からだそうです。可愛い形をしていると思いませんか?

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 今日2枚目の写真は「くろ」(2006.07.16群馬県で撮影)
 すぐに逃げてしまうのでなかなか写真が撮れません。でも、一番大きい声で牛乳をねだるのです。
 昨日は、母猫が大きなドブネズミを2匹も持ってきました。仔猫たちは食べないし、遊びません。
 処分する身にもなってくれ~。

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2006/07/16

散歩

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 毎日通って話をし、ようやく散歩に出る事を承知させた。
 グレート・デーンのチョビは、さきにジルが散歩に連れて行っている。浩一が良いと言ったら合流するつもりだ。
 約束通り、浩一は家の前で待っていた。
「亜弥、ご主人様だ。行って良いぞ」
 紐を放すと、パグ犬の亜弥ちゃんはコロコロと浩一を目掛けて走って行った。

「亜弥!亜弥!亜弥!」
 しゃがんだ浩一に飛びついた亜弥ちゃんは、べろべろに彼の顔をなめ回している。
「さあ、行くぜ」
 浩一に紐の持ち手を持たせると、亜弥ちゃんは胸を張って彼を先導し始めた。犬に散歩されている人のようだ。
「少し走ってやれ」
 
「どうだ?亜弥は健康になっただろ?体が締まったし体力が付いたぜ」
 追い付いた稲作は言った。
「はい、さっき触ってわかりました。生き生きしてるし。ありがとうございました」
 浩一は、ちゃんとした口も利けるようになったようだ。
「いつも、あいつと一緒に走らせてるんだ」
 顎でしゃくった方にジルとチョビがいる。亜弥ちゃんは、嬉しそうに彼らに走り寄る。
 
 しばらく走っていい汗をかいた後、〔月の光〕に連れて行く。
 店を開けていてくれた絹さんが、朝食の用意をしてくれていた。


 話が長くなってしまったので、今回のお話「ネット依頼」を日々のエピソードに入れました。よかったらご覧になってみて下さい。

☆お知らせ―明日 喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます☆


 今日の写真は「ノハナショウブ」(2006.07.15群馬県で撮影)
 野花菖蒲。湿地や湿り気のある草原に生えます。見分けのポイントは花びらの黄色い斑紋です。

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 今日2枚目の写真は「ハンモッグ気分」(2006.07.16群馬県で撮影)
 自転車のメッシュの前カゴは、風通しが良くて気持ちが良いのでしょう。熟睡中で近付いても起きませんでした。モデルは、一番体が大きい男の子‘でか’くんです。

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2006/07/15

労働の後

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 二人で3時間掛けて浩一の部屋を人間が住める空間にした。
「どうだ、気持ちが良いだろ?……次だ」
 洗面所でひげを剃らせた。家の中の移動は大丈夫らしい(当たり前。トイレや風呂に入らないはずがない)。
「髪は、そのうち床屋に行け。それまではその格好で良い」
 掃除前に髪を輪ゴムで束ねさせた。
「鏡をちゃんと見ろ。俺の顔と見比べて見ろ。お前、可愛い顔してるじゃねぇか、無精ひげはまだ似合わねぇ」

 部屋に戻ると、母親が手土産のシュークリームと紅茶を持って来た。彼女は部屋に足を踏み入れない。一緒にどうだ、という誘いを断って部屋を出ていく。
「お前、お袋さんに暴力ふるったりしてねぇだろうな」
「怪我はさせてない」
「そんな事してみろ、弱い者虐めは大嫌ぇだ」
 稲作は拳を上げてみせる。
「あのままだったら、させてたかも」
「変わる気になったんだから良いさ。……シュークリーム食ってみろ、甘いモンが大好きだった友達のお勧めなんだ」
「彼女?」
「ばか、男だ」
「だったって?」
「死んだ」
「ごめん……」
「昔の話だ。……どうだ?」
 浩一は幸せそうな顔をして頬張っている。
「うまい!こんなにうまいの初めてだ」
「だろうな。労働の後の甘い物だから」
 浩一は、動物としての基本を思い出す必要がある。


 話が長くなってしまったので、今回のお話「ネット依頼」を日々のエピソードに入れました。よかったらご覧になってみて下さい。


 今日の写真は「サイハイラン」(2006.07.02長野県で撮影)
 花が采配に似ている事から采配蘭と名付けられました。写真のように群生していると豪華に見えます。

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 今日2枚目の写真は「肥料の上」(2006.07.12群馬県で撮影)
 この子は一番からだが小さい‘ちび’です。

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2006/07/14

生活環境

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 8畳の部屋のはずが、二人向かい合って座るのがやっとの空間しかない。
 これでも浩一は、俺を招き入れるために散らかした物を退かしたらしい。
 周りに、コンビニ弁当のからやスナック菓子の袋、清涼飲料水のペットが押し退けられている。部屋の空気がよどんで悪臭がしている。
「やあ、よく入れてくれたな」
 浩一は目を伏せてこちらを見ない。髪は伸ばし邦題、一丁前にうっすらと無精ひげを生やしている。
 が、思った通り人並みの面立ちだ。身だしなみや心の持ちようで人並み以上になれるだろう。
「どうだ?」
 こっちを見ない浩一は小さな声で言った。
「何が?」
「俺、変じゃない?」
「どこが?」
「顔……」
「お前、メールでさんざんな事言うからどんなかと思ってドキドキしながらやって来たんだぜ。言うほどの事じゃねぇじゃねぇか」
「……慰めはいい」
「お前、ほんとはわかってんだろ?」
「……」
「ふられるまで、気にした事なかっただろ?」
「……」
「彼女は顔と言ったけど、嫌われたのは顔のせいじゃないって事」
「……」
「わかってんだろ?こんな部屋に隠って、拗ねてたってどうにも何ねぇって事。……俺を切っ掛けにしろ。ここから出るための」
 浩一は小さくうなずいた。
「まずは生活環境の改善、部屋の掃除からだ」


 話が長くなってしまったので、今回のお話「ネット依頼」を日々のエピソードに入れました。よかったらご覧になってみて下さい。


 庭木の剪定をしました。
 腕、首、顔に虫除けスプレーをかけて万全の態勢、と思ったら、1カ所スプレーをかけなかった所を刺されました。
 どこだと思います?
 耳です。
 耳無しほういち……。

 今日の写真は「ウリノキ」(2006.07.03群馬県で撮影)
 ウリノキ科ウリノキ属の木です。このくるんと巻いた花が可愛くて、見付けると嬉しくなってしまいます。

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 今日2枚目の写真は「自転車カゴの中」(2006.07.08群馬県で撮影)
 何匹かで入って遊んでいました。シャッターチャンス!と外に出ると、みんな一目散に退散。逃げ遅れたのは、やはり‘みみげ’。

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2006/07/11

醜形恐怖

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「いらっしゃいませ、広木くん」
 赤頭巾ちゃんでも出てきそうなメルヘンチックな洋菓子店。
 丸顔で微笑みを絶やさない、いかにも洋菓子店の女主人は、この俺のことを‘広木くん’と呼ぶ。高校の頃から出入りしているから、彼女にとってはいつまでの広木くんのままなのだろう。俺も歳をとったけれど、彼女も目尻に小じわができ、一回り肥っている。
「ここん家は、シュークリームも美味いのか?」
 プリンについては智紘のお墨付きだが、他の物が美味いのかどうかわからない。甘い洋菓子が嫌いだから食べてみても美味いかどうかわからないのだ。
「美味しいわよ。……智紘君もよく買いに来てくれたわ」
 自分の作った物を不味いという職人はいないだろう。彼女はパティシエというより洋菓子職人と呼ぶ方が似合う。
「カスタードクリーム、ホイップクリーム、ダブル、コーヒークリームがあるけれど、どれにする?」
「全部2個ずつくれ」

 そうしてやって来たのは、浩一の部屋の前。
 毎日メールを続けて、やっと会えるところまでこぎ着けたのだ。
 彼の好物のシュークリームを持って。
「浩一、約束通り会いに来たぜ」
 午後3時ジャスト。電波時計が3時を示すと同時に声を掛けた。
 そこまで神経質になることはないだろうって?
 何事も最初が肝心なのだ。
 ドアが小さく開き、青白い手が手招きした。
 初めて会った時はドアの隙間から片目しか見えなかった。
 あの時は彼の悩みを知らなかった。
 浩一は(たぶん小さな)悩みを抱えてこの部屋にこもっている。
 周りの全ての人々が、彼のことを醜いと思っていると思い込んでいるのだ。


 何だか稲作は‘おいでよ どうぶつの森’の住人ゴリラのダンベルくんに、語っている事までそっくりです。登場する動物は人によって違うでしょうから、わからないかも知れませんね。それとも似たようなキャラが必ずいるのかな?
 〔月の光〕の理想は、博物館内の、鳩のマスターがいる喫茶店のような店でしたが、今ではカレー屋のようになってしまいました。

 すみません、お休みの予告をせずにサボってしまいました。
 その上、ココログのメンテナンスで(7/11 14:00-7/13 14:00)お休みになります。
 ずっと調子が悪い状態が続いていますが、よくなる事を期待したいと思います。

 今日の写真は「クモキリソウ」(2006.07.03群馬県で撮影)
 雲切草と書きます。林や神社などの薄暗いところに生えます。緑色で目立ちませんが、ラン科の植物です。同じクモキリソウ属にジガバチソウ、スズムシソウなど、虫の名前が付くものがあります。スズムシソウを見てみたいです。

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 今日2枚目の写真は「みみげ」(2006.07.06群馬県で撮影)
 仔猫たちはそれぞれ個性が出てきました。みんなに呼び名を付けました。
 ちび……一番小柄で活発な、たぶん女の子。大きな目がチャームポイント。
 でか……一番大柄で好奇心が旺盛。昨日は屋根から降りられなくて鳴いていました。
 くろ……一番臆病ですぐに逃げてしまいます。他のこと比べて黒っぽいから。
 みみげ…今日のモデルです。他のこと比べると毛が長いのです。特に耳の毛が。
     一番おっとりとした性格で最後まで逃げません。一番生き残れないタイプかも知れません。
 全くセンス無しの呼び名ですね。

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2006/07/06

時給800円~

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「どういう仕事なのよ」
「どういうったって……」
 説明しようがない。
 ここは昼の喫茶店〔月の光〕。
 稲作は、いつも通りに大盛りのカレーライスを掻き込んでいる。カルボナーラを食べ終えた妙が、デザートのチョコレートパフェをつつきながら昨日の説明をしろとせまっているのだ。そりゃ、仲間はずれにしたのは悪かったけど。
「見たまんまだ。夜の11時にあの家の前に行って立つ」
「で?」
「窓を見る」
「で?」
「それだけで時給800円、悪くねぇだろ?」
「変だよ、絶対変!それに安すぎない?深夜割り増しとかない訳?」
「ガキからそんなに取れるか」
「じゃタダにすれば?」
「背に腹は替えられねぇ」
 あの娘はHPに、時給800円~と書いていたのを見て依頼してきたのだ。そこに安心を感じて。
‘ずっと私を見守って。眠るのが怖い’
 これが、依頼の内容だ。


 今日の写真は「ツルコケモモ」(2006.07.03群馬県で撮影)
 蔓苔桃と書きます。湿原に咲く小さなツツジ科の花です。
 水苔に這うように生えているので、写真を撮すのも一苦労です。木道に腹這いになって下に手を伸ばし、液晶画面をのぞけないので、勘でパチリ。何とか移った1枚です。反った花びらが可愛いでしょう?
 食べられる赤い実は日本のクランベリーです。

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 今日2枚目の写真は「みんなで昼寝」(2006.07.06群馬県で撮影)
 今日は曇りのせいか、こんな所で気持ちよさそうです。

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2006/07/05

夜の雨

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 妙ちゃんは素直にジルの隣に座った。割り込まれた亜弥ちゃんは不満そうに席を譲る。
「そんなに固くならないで」
 ジルは優しく妙ちゃんの髪を撫でる。女性の扱いには慣れている。
 まずは……。
 こちらを向いて目を閉じた妙ちゃんは、くちびるを突きだしている。
 このせいで、稲作は――。
 ジルは、妙ちゃんの頬を両手でそっと押さえて額にくちびるを押し当てた。
 子供に手を出す訳には行かない。
「にゃう~!なんでジルまで!」
「うふふ。妙ちゃん、もう帰った方がいいです。……もうすぐ雨が降り始めますから、家まで送ります」

「ハーックション、ちきしょう!雨が降って来やがった」
 見上げている窓には、まだ灯りが点いている。いつも消えるのは午前1時過ぎ。
 こんな事が、彼女のためのなるのかわからない。ただ、何か良い方向に向かう切っ掛けになってくれればと思うばかりだ。
 今の若いやつらの考えていることが解らない。取り返しがつかないことを平気でやってしまうことが怖い。
 少しでも自分の所に信号を送ってきた少女の助けになれるのなら……。
「稲作」
「どうした?」
「傘を持って出なかったでしょう」
 ジルが傘と暖かい缶コーヒーを持ってきてくれた。


 今日の写真は「ハクサンタイゲキ」(2006.07.03群馬県で撮影)
 白山大戟と書きます。別名ミヤマノウルシ・オゼヌマタイゲキ。最初にオゼヌマタイゲキで覚えたため、そちらの名前の方が馴染みがあります。

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 今日2枚目の写真も「ハクサンタイゲキ」(2006.07.03群馬県で撮影)
 群生していると黄色いお花畑に見えます。

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2006/07/04

貴重な存在

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 詳しいことは教えてくれない……などと言うことはない。聞かなくても彼の考えていることなどは解る。それを妙ちゃんに話したところで理解されないだろう。
「ねえ、ジル……」
 彼女は、精一杯色気を出してジルを見詰めた。
 考えている事が解るのは、稲作に限った事ではない。
 妙ちゃんが何を考えているかも。
「本当にいいのですか」
「ジルなら、優しくしてくれそうだから」
 なぜ、焦る必要がある。彼女は、まだ十分に若い。
「妙ちゃん、傷の手当てと恋愛感情は別です」
 彼女は、‘気がなければ傷なんか舐めないよなぁ’などと考えている。
「あなたがどうしてもと言うのでしたら、私は構いませんが、そういうことは一番大切な人に」
「どうして?なんでそんな古くさいこと言うの?」
「心の問題です。古い新しいなどは関係ありません」
 妙ちゃんの年齢で未だに乙女とは貴重な存在。大切にして欲しい。
「ボクじゃなくて……私のこと嫌い?」
「大切ですよ。さあ、こちらにいらっしゃい」


 本当は昨日書かなければいけなかったのですが、昨日も出掛けてしまい、もう1日休んでしまいました。ごめんなさいね。
 土日は長野・山梨方面へ。昨日は県内、朝4時起きをして、春と同じ場所に野鳥のメッシュ調査に行きました。半分の4キロ歩いたところ、高原のキャンプ場で野鳥の声を聞きながらの朝食はちょっと贅沢な気分を味わえました。10時には調査も済んで、県内の湿原を訪れました。歩き続けた3日間でした。

 今日の写真は「ニョホウチドリ」(2006.07.01山梨県で撮影)
 女峰千鳥。日光の女峰山にちなんだ名前です。女峰というと甘くて美味しい栃木のイチゴを思い浮かべてしまいますね。
 ハクサンチドリに似ていますが、花の形に丸みがあります。

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