« 2006年4月 | トップページ | 2006年6月 »

2006/05/31

初メール

Imgp13971
「ボス、大変です」
 ここは「広木稲作探偵事務所」という名の、仕事内容はほとんど便利屋の稲作の事務所。
「んが?」
 いつも言ってるけど、誰がボスだっちゅ~の(懐かしい)。
「も~う、鼻毛なんて抜いてないでよ!メールが来てる」
 あのホームページは稲作が選んだデザインで、ジルに作ってもらった。妙には不評だったが、まあまあの出来だと思う。
 訪問者もたいした人数はなく、たまに掲示板にくだらない書き込みがあるていどだったはずだ。
「どうせ、迷惑メールだろ」
「それなら毎日消してるよ。稲作には見せられないようなヤツ。写真付きのもあるんだから」
「どんな写真だ?」 
 俺に見せられないって?
「いいの、気にしないで。……このメールは違うみたいなんだ」


 すみません、続きは明日までに考えます。

 今日の写真は「カキツバタ」(2006.05.30群馬県で撮影)
 いずれが菖蒲(あやめ)杜若(かきつばた)の、カキツバタです。
 この写真は公園の植裁だと思います。野外では、いずれがカキツバタかノハナショウブかで、出会うことが少ないカキツバタだとちょっと嬉しかったりします。2つの見分けは、斑紋が白いか黄色いかです。

Imgp14571
 今日の2枚目の写真は「母子猫」(2006.05.30群馬県で撮影)
 昨日のブログに登場した暴れん坊たちです。臆病な1匹は隠れてしまいました。
 全くなついていませんが、さわれるひとときがあります。あげた牛乳を飲むのに夢中になっているとき、上からそっとなでても逃げません。

| | コメント (17) | トラックバック (0)

2006/05/30

小さな野生

Imgp13892
「はぁーっ」
「また、溜め息なんかついてんのか?」
 いつも極楽とんぼの絹さんが窓の外を見て、溜め息をついている。
「何でもないんだけれど……」
「暇だからか?」
 駐車場の空き待ちをするほど、バラ園は込んでいるのに、そんなに離れていないこの店には閑古鳥が鳴いている。大通りに面していないから、観光客にはわかりづらいのだろう。
「ちがうよ、暇はいつものことじゃないか。――あれ見てよ」
 窓の外を見ると、4つの小さな影が駆けずり回っている。
「すげぇ、もうあんなに走り回ってるのか」
 あの、子猫たちだ。
「元気なのは嬉しいんだけど」
「懐かねぇか」
「それはあきらめたの。庭がねぇ……」
 よく見ると、やっと芽生えたハーブや草花が踏みにじられ、母猫が与えたのだろう鳥の羽が散乱している。
 興奮した1匹がじゃれ回しているのは、ハツカネズミの死骸……。


 今日の写真は「カジイチゴ」(2006.05.30群馬県で撮影)
 梶苺の実が実りました。以前、花が咲いた時のお約束通り写真を載せます。
 小さなイクラみたいなオレンジ色のつぶつぶです。日本の果物らしく、ほんのりと甘く香りも淡いので、ジャムにして食べるより、このまま生食がお勧めです。ケーキに飾り付けるのも可愛いかも知れませんね。
このカジイチゴは、関東地方以西の太平洋側に自生しています。そっくりな食味のモミジイチゴ、ナガバモミジイチゴも、山野で出会えますから見付けたら食べてみて下さい。

Imgp13901
 今日の写真は「カジイチゴ」(2006.05.30群馬県で撮影)
 今日の2枚目は収穫したカジイチゴの実です。
 我が家ではプレーンヨーグルトに甘味代わりに入れて、ほんのりとした甘さを楽しんでいます。

| | コメント (19) | トラックバック (0)

2006/05/29

想い出の場所

Imgp13351
「妙は?」
「沼田さんの道場見学に行ったよ。ジルちゃん大丈夫?」
 奥の部屋から稲作が一人で出てきた。
「ああ、ヤツはあんな風だけど、以外と丈夫だからな」
「そうだねぇ、案外、君より丈夫なのかも知れないね」
「君は無鉄砲な分、怪我や病気をしやすいから」
「悪かったな」
 彼は、見た目は兎も角、中身は年相応の若者なのだ。いや、ちょっとだけ我慢強いのだと思う。抱えた問題を誰にも相談せずに一人で解決しようとしている。
「ばら園はどうだった?」
「ちょうど見頃だったぜ」
「僕も明日の朝行ってみる。……コーヒー淹れようか」
「ああ、頼む」
 彼の心がここにない。カウンターの上に手を組んで、顎を乗せ、遠くを見ている。
 想い出の場所で、忘れられない人を思うことは悪いことじゃない。


 今日の写真は「ホンシメジ」(2006.05.27撮影)
 本占地と書きます。一度で良いから生えている姿を見てみたかったのです。念願叶って見せていただく幸運に恵まれました。占地の名の通りたくさん収穫出来ました。
 もちろん味も堪能させていただきました。「香りマツタケ、味シメジ」といわれるシメジは、このホンシメジのこと。

 昨日一昨日、雨降り覚悟だったはずが行動中は降られることもなく、夢のような一時を過ごさせていただきました。所々に群生しているホンシメジの写真を撮し、ここにあるはずだという松の下の枯れ葉を退かすとショウロという丸いきのこが出てきました。
 昼間は「オ、アオ、アオー!」というオジサンみたいな鳴き声のアオバト、夜は「キョッ、キョッ、キョッ、キョッ、キョッ……」というヨタカの鳴き声をBGMに、収穫したキノコを炊き込みご飯、パスタ、うどんなどにしてもらい、美味しく頂きました。

Imgp13401
 今日の写真は「ホンシメジ」(2006.05.27撮影)
 今日の2枚目はホンシメジの幼菌です。ぷっくりお腹が可愛いですね。ホンシメジはこのぷっくりした部分を大黒様のお腹に見立ててダイコクシメジの別名があります。

| | コメント (25) | トラックバック (0)

2006/05/26

約束

Imgp11081
「絹さん、ちょっと奥の部屋を借りるぜ」
「どうしたの?」

「濡れタオル借りてきた」
「すみません」
「ほら、飲め」
 腕を差し出しても、ジルは噛み付かない。
「いいえ、いりません。もう大丈夫です」
 妙は、沼田のじいさんに捕まり(っていうか、じいさんが気を利かせて引き留めてくれたのだ)二人で絹さんの休憩室を借りている。
「あんまり無理をするものじゃねぇ。昼間は家の中にいろ」
「……あなたと一緒にいたいのです」
「お前が先に消えたら、一緒にいられねぇだろ。気を付けろ」
「嬉しい。あなたに心配してもらえるなんて」
「馬鹿言ってんじゃねぇ」
 ただ隣で心配して見ているだけなんて嫌なんだ。智紘の時みたいに。
「約束します。あなたより先に消えたりしないことを」
 約束は、破られるためにある。

「ジルちゃん貧血だって?大丈夫?……冷たいジュース飲んで」
 絹さんがブラッドオレンジ・ジュースを持って入って来た。
「ありがとうございます。もう気分が良くなりました」

《お知らせ》
明日 喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます。
〔月の光〕リンクを左枠に作りました。
みけのみちくさ―メインのH.Pです。花の写真や小説をおいています。
日々のエピソード―ブログで書いたお話を読みやすいように並べかえました。
登場人物―〔月の光〕だよりの登場人物紹介です。


 庭に遊びに来る子猫たちは、日に日に足腰が丈夫になっていきます。ゼンマイを巻きすぎてしまったオモチャのように尻尾を立ててピョコピョコ走り回っています。
 今日は、母猫がドバトを捕って与えていました。鳩には気の毒ですが、これも野生。あの小さな身体で鳩を捕るなんて、母は強いですね。

 今日の写真は「キンラン」(2006.05.12群馬県で撮影)
 今日からいつもの野草に戻ります。
 金蘭です。この花も目立って綺麗なので盗掘されやすいのです。何時も見に行くこの場所は下草が綺麗に刈られた後に伸びてきていて目立つこと。業者に見つからないことを祈りながら撮影場所を後にしました。

| | コメント (54) | トラックバック (0)

2006/05/25

ウインナ・ワルツ

Imgp13021
「なんか、暑くなってきちゃったね。日焼け止め塗ってくればよかった」
 妙は、一応バラの花を見て回っているフリをしている。
「お前さぁ、女のくせに花には興味がねぇのかよ。腹一杯になったら、もう用はねぇんだろ」
「そんなことないもん。バラ綺麗だね、ジル」
「……はい」
「どうした?」
「日差しが――」
 ジルは眩しそうに、手をかざして太陽を見上げた。ここが俺の知っている(といってもTVや何かで見たものだけど)吸血鬼と違うところだ。昼日中太陽の下にいるなんて。
「帽子かぶってくればよかったね。5月は紫外線強いんだから、ジルとボクは気を付けなくっちゃ。誰かさんみたいに、ぜ~んぶ吸収して真っ黒くろすけな人とはお肌の出来が違うんだからね」
「悪かったな」
 確かに稲作は、日が当たれば当たるほど黒くなるし、去年の日焼けが褪めないうちに日焼けのシーズンが来る。日焼けの連鎖で一年中色黒だ。
「ジル、大丈夫か?……絹さん所で休ませてもらおう」
 ばら園から喫茶店〔月の光〕はそう遠くない。
「貧血?あんまり食べないからだよ」
「ほら――」
 しゃがんで背中を向ける。負ぶってやろう。
「大丈夫です。……恥ずかしい」
「恥ずかしいことはねぇだろ、具合が悪いんだから」
「そうだよ、そうだよ」
「妙ちゃんだって、恥ずかしがっていたではないですか」 
 
「ちわ~す」
「いらっしゃいませ」
 結局ジルは背負われることを拒み、3人でゆっくりと〔月の光〕に戻った。涼しいところで休ませれば回復するだろう。それでダメなら飲ませてやれば。 
「おお、みんな一緒かい?」
 沼田のじいさんが来ている。
「お待たせしました、ウインナコーヒーです」
 珍しく、店内にクラシックが流れている。
 美しく青きドナウ。


 昨日、ブログをUPしようと思ったら、何回やり直しても「記事を書いてからでないと、ブログを確認できません。まずは記事を書いてください。」というメッセージが出ました。
 これを最後に諦めようと、最後にUPを試みたのが8時23分。
 今日確かめたら、ココログからのこんなお知らせがありました。
『トップページに意図しないメッセージが表示される障害が発生していました。
2006年5月24日(水) 18:50-5月24日(水)20:20の間、記事を投稿するとブログのトップページが「記事を書いてからでないと、ブログを確認できません。まずは記事を書いてください。」というブログを新規作成したときのデフォルトページになってしまうことがある問題が発生していました。』
 障害が直って3分後にUP出来ていたのですねぇ。

 今日の写真は「バラ(ヨハン・シュトラウス)」(2006.05.23群馬県で撮影)
 今日もばら園の風景なのでバラの花にしました。こんな名前を持つバラの花もありました。題名とのこじつけが、ちょっと苦しいですね。

Imgp13101
 今日2枚目の写真は「バラ(フリージア)」(2006.05.23群馬県で撮影)
 目が覚めるような黄色いバラです。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2006/05/24

想い出の味

Imgp13181
「稲作~!ジル!買えたよ~」
 大きな袋を下げた妙が手を振りながら走ってきた。
 花より団子の妙は、薔薇よりパン。彼女が下げてきた大きな袋の中身は昼飯用のパンだ。見物は後でと素早く3人分のベンチを確保した。まだ昼になっていない。
「はい、これ稲作に頼まれたヤツ、切ってない食パン1斤。……と、ジルは何でも良いって言ってたからハムとゆで卵のサンドね。ボクはフィッシュバーガーとアップルパイとチョココロネと餡ドーナツと――」
 妙は嬉しそうに買ってきたパンを並べている。好きなだけ買って良いと言って使いに出したのだから仕方がない。
 公園近くの小さなパン屋。
 智紘のお気に入りだった店。

「ジルってさぁ、小食だよね」
 缶コーヒーを飲みながら、5つ買ったうちの3つめに取りかかっている妙。
「そうでしょうか」
 いつも人の食べ物は身にならないと言っているジルは、さっきハムとゆで卵のサンドの半分を妙に気付かれないようにそっと俺によこした。
「それに引き替え、稲作はどうよ」
「何が?」
 稲作は、丸ごと1斤の食パンを千切りながら食べる。いつもの食べ方だ。
「それ全部食べるわけ?」
「昔は食えたんだけどなぁ、無理みたいだ。年取ったなぁ、俺」
「普通の人間に近付いただけのような気もするけど。……何の味も付いていない食パン、よく飽きないよね、一口ちょうだい」
「どうだ?」
「美味しい!特に耳が。このパンどっかで食べたことある」
「〔月の光〕のトーストだ」


 今日の写真は「バラ(モナ・リザ)」(2006.05.23群馬県で撮影)
 昨日に続いてバラ園の風景なので、写真も薔薇にしました。
 お話の中のパン屋さんは実在します。敷島公園ばら園を知っている人でしたら、ああ、あのお店だな、と思われるかも知れません。実在しない喫茶店〔月の光〕がそのお店から食パンを仕入れているというのも面白いでしょう。
 私が子供の頃は、朝のトーストといえば、近所の商店で買ってきた、シールを集めるとお皿がもらえる大手製パン業者の食パンでした。
 小さなパン屋さんで買った食パンを食べたとき、耳が美味しい食パンを知りました。

Imgp13121
 今日2枚目の写真は「バラ(ダイアナ・プリンセス・オブ・ウエールズ)」(2006.05.23群馬県で撮影)
 mixiの方で薔薇の香りについてのお話が出たので、調べてみました。
 私が嗅いで違いが解るような気がするのは、いかにも薔薇らしい甘い香り、酸味を感じる爽やか系の香り、お話に登場する紅茶に似た香りですが、本当は6つのタイプに分けられるのだそうです。
ダマスク・クラシック系(甘さが強く、華やかな香り)
ダマスク・モダン系(ダマスク・クラシックの芳香がより洗練され、情熱的になったもの)
ティー系(紅茶に似た香り)
フルーティー系(果物の香り。ダマスク・クラシックとティーの成分が混じる香り)
ブルー系(青バラのバラに特有で、ダマスク・モダンとティーがまざった香り)
スパイシー系(ダマスク・クラシックにスパイスのクローブがまじったような香り)
 分かりますか?

| | コメント (214) | トラックバック (0)

2006/05/23

紅茶の香り

Imgp13051
「あっ」
「どうした?」
「棘に刺されました」
 ジルの指先の小さな赤い点は、見る見る大きく半球になり、ぽろりとこぼれ落ちた。
「ばかだな、気を付けなきゃ、だめだんべぇ」
 稲作は、ポケットから清潔なハンカチを取り出すと彼の指先を拭った。
 既視感――ではなく、同じ事をした。19歳の時だ。
「大丈夫です。すぐに傷はふさがります。……それよりこれ、紅茶の香りがします。あなたが探していた薔薇」
 さっきから、ジルは綺麗に咲いた花を見付けては顔を近付けていた。
 淡いオレンジ色の薔薇。顔を近付けると、確かにその花は甘い紅茶の匂いがした。
 智紘が好きだった香りだ。
「俺のために?」
「大勢の人がいて、恥ずかしくて出来なかったのでしょう。だから」
 だから代わりに探してくれたのか。
 金髪碧眼の美しいジルだったら、薔薇の匂いを嗅いで回っても様にも絵にもなるだろう。
 俺が同じ事をやったら、花が汚れると思われてしまうかも。
「うふふ、そんなことはありませんが、あまり似合いません」
「わかってる」
 こんなにここが込んでいるのは‘ばら園まつり’が始まっているからだ。しかも、祭り終了後2年近く改装工事のために閉園になるというから余計込んでいるのだろう。
「2年なんて、アッという間です」
「そうだな」
 様子が全く変わってしまうのだろう。
 智紘との想い出の場所が、また1つ消える。

「稲作~!ジル!買えたよ~」
 大きな袋を下げた妙が手を振りながら走ってきた。


 今日の写真は「バラ(恋心)」(2006.05.23群馬県で撮影)
 今日は野草ではなく、前橋市敷島公園バラ園のバラです。
 5月20日~6月4日まで‘ばら園まつり’が開催されています。2008年春まで改修工事が行われるためしばらく閉園になるそうです。改修工事後に移植しないバラの木を、抽選のうえ市民に無料で配布してもらえるそうです。5月29日までの申し込みだそうですので、欲しい方は訪れてみてはいかがでしょう。って、前橋在住の人でこのブログを読んでいる人いるかしら。

Imgp12981
 今日2枚目の写真は「バラ(プリンセス・アイコ)」(2006.05.23群馬県で撮影)
 バラを見る楽しみは、その姿と香りを楽しむことの他に、名札を見ることにもありますね。この他に、プリンセス・ミチコ、ダイアナ・プリンセス・オブ・ウエールズ、モナ・リザ、ヨハン・シュトラウスなど見ていて飽きません。

| | コメント (37) | トラックバック (1)

2006/05/22

H.Pづくり

Imgp12721
「お帰りなさい」
 喫茶店〔月の光〕。
 マスターの絹さん、ジル、妙に声を揃えて出迎えられた。
「稲さん、凄いね」
「なにが?」
「あれ、君が当てたんだって」
 ジルと妙が持ち込んだノートパソコンを指さして、興奮気味に言う絹さん。
「ああ」
「僕なんか、いつも大当たりでもしょう油1本なのに」
 くじ運悪そうだものな。
「稲作、ちょっと見て下さい」
 ジルが指し示したパソコンの画面には、装飾されたうちの事務所の名前が書かれている。
 広木探偵事務所。
「トップ画面だけですが、いくつか候補を作ってみました」
「そんなこと出来るのか、お前」
「今は使いやすいソフトがあるのです。あなたにだって出来ますよ、その気になれば。……これは――」
 最初のデザインは薔薇の花があしらわれた極彩色。
「マダムの趣味だな」
「わかりますか」
「悪いが却下だ」
 何の依頼を受ける気だ。
「次はこちら」
 美少女アニメキャラみたいのが「いらっしゃいませ~」と言っている。
「これはボクのお勧めだよ」
「やっぱりな」
 次は、真っ黒の画面に赤い文字。ジルの趣味だろう。
「あなたのイメージに合わせてみました」
 俺じゃないだろう。
「殺人依頼が来そうだな」
「そうでしょうか」
 最後は当たり障りのない平凡さ、絹さんのお勧めだろう。
 この中でどれを選べと言われれば……。


Imgp12851
 今日2枚目の写真は、先週さわってみたいといっていた子猫たちです。ホームセンターで買った花苗を入れてきた箱に入り込んでいました。ここまで近寄るのが精一杯で、もっと、と思ったら「ハーッ!」といって逃げてしまいました。
 それでも可愛いですねぇ、子猫って。

 今日の写真は「コアツモリソウ」(2006.05.21栃木県で撮影)
 小敦盛草。高さ10㎝ほどで葉の下に花が咲くために目立ちません。

| | コメント (53) | トラックバック (0)

2006/05/20

ソリティア

Imgp11421
「同じ物しか着ないって、1着しか持ってないってことないよね」
「あるか」
「Tシャツ、ジーンズ、靴下、5枚ずつ、みんな黒です」
 言わなくてもいいことを言うジル。
「みんなデザイン微妙に違うだろ。着る物に興味がねぇだけだ」
「なぜ、カレーライスばかり食べるのです」
「〔月の光〕のカレーが好きなんだ。パン屋もカレーパンも好きだぜ」
「――たまには自己投資して下さい。せっかく頂いたのですから。開けますよ」
「勝手にしろ」
 ジルと妙は説明書を見ながら、楽しそうにパソコンを動かしている。
 俺だけ仲間はずれ。
「おい、なんか飲むか?」
「オレンジジュース!」
「私はトマトジュースを」
「稲作、さわりたいんでしょ?使い方覚えた方がいいよ、楽しいんだから」
「簡単に壊れたりしませんから、怖がらなくても大丈夫です」
 
 その夜。
「稲作、そろそろ寝ないと明日に差し支えますよ」
「ああ、もう少しだけ」
「マウス使いに慣れるには一番だと教えましたが……」
 妙には昼休みのオヤジみたいだと笑われたけど。
 どうしてなかなか揃わないんだろう。
 ソリティア。

《お知らせ》
 明日 喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます。
〔月の光〕リンクを左枠に作りました。
みけのみちくさ―メインのH.Pです。花の写真や小説をおいています。
日々のエピソード―ブログで書いたお話を読みやすいように並べかえました。
登場人物―〔月の光〕だよりの登場人物紹介です。

 今日は暑くなりましたね。と、思ったら、予報通りの雷雨。近くに雷が落ちたと見えて、しばらく電気が消えました。
 今は、真夏の夕立の後のように涼しくなっています。

 今日の写真は「ミヤマウグイスカグラ」(2006.05.15長野県で撮影)
 深山鴬神楽と書きます。ウグイスカグラ、ヤマウグイスカグラとの違いは花の基部の腺毛の多さです。

| | コメント (20) | トラックバック (0)

2006/05/19

くじ運

Imgp107311
「補助券5枚で1回引けるからね」と〔月の光〕でもらっていた補助券で商店街の福引きを引いた。
「おめでとうございます!!1等賞です!」
 派手に鐘を鳴らされて、受け取った大きな箱は、最新型ノートパソコン。俺には無用のモノだ。普段くじ運なんか良くないのにこんなモノのために運を使ってしまった。特賞の旅行か2等の食い物の方が良かったのに……。
 どこが一番高く買い取ってくれるだろうか。
 事務所に戻って考えていると、ジルと妙がやって来た。
「すごい!稲作とうとう買ったんだ!」
 テーブルの上の箱を見て喜ぶ妙。
「使ってみる気になったのですね」
 と、ジル。
「福引きで当たったんだ」
「いいな、ボクなんかティッシュしか当たらなかったんだから。開けないの?」
「売る」
 機械は携帯だけで手一杯だ。
「えーっ、売っちゃうの、もったいない」
「良い機会です。私がホームページを作りましょう」
「なんの?」
「この事務所。仕事の依頼を増やすのです。あなたがもう少し人間らしい生活を送れるように」
「ちょっと待て。俺の暮らしが人間らしくねぇだと?」
「はい」
「どこが?」
「衣食住、住以外は普通の人間と違います。同じ物しか着ないし、同じものばかり食べています」
「好きでしていることだ」
「普通の人間は飽きるのです」

《お知らせ》
〔月の光〕リンクを左枠に作りました。
みけのみちくさ―メインのH.Pです。花の写真や小説をおいています。
日々のエピソード―ブログで書いたお話を読みやすいように並べかえました。
登場人物―〔月の光〕だよりの登場人物紹介です。


 迷惑メールが日に100件近く来ます。半分以上は振り分けられますが、残りは確認して振り分けなければなりません。最近は写真付きのメールがありますね。若い娘のオッ○イ写真。筆者のオバサンにとっては温泉などで見慣れているものですが、分身の独男、絹などには目の毒でしょうねぇ。

 今日の写真は「チチブシロガネソウ」2006.05.07群馬県で撮影)
 秩父白銀草と書きます。石灰岩地や蛇紋岩地に生えます。車を走らせていて、思いがけない道の斜面で出会いました。

| | コメント (50) | トラックバック (0)

2006/05/18

さわりたい

Imgp098711
「何、溜め息なんかついてんだ?」
 いつも極楽とんぼの絹さんが窓の外を見て、溜め息をついている。
「何でもない」
「老後でも心配なのか」
「まだ、昨日の続き?……老後はなるようにしかならないから、今から考えたって仕方ない」
 絹さんの視線は、窓の外に向けられたまま。表の窓だったらいい女でも歩いているのかとも思うが、彼が見ているのは裏の窓。植木や鳥の餌台くらいしか見あたらない。
「何見てんだ?」
「あれ」
 地面の上を小さなものがうろちょろしている。
 1匹、2匹、3匹……。やっと歩き出したような小さな子猫だ。しかも全部キジトラで地面と同じ色。
「さわりたいんだけど、外に出て行くと隠れちゃうの」
「野良か」
「ご近所の飼い猫だと思うんだけど」
「抱いて寝たいんだな。独り寝の寂しい夜に」
「ひどい、意地悪だな……当たってるけど。――ご注文は?」
 中年の親父がすねて見せても可愛くはない。
「アメリカン」

「こんにちは」
 ジルがやってきた。
「!?」
「店の前で友達になりました。入れてはいけませんよね」
 ジルの手のひらに2匹、金髪巻き毛の上に1匹。さっきの子猫がおとなしく乗っかっている。

《お知らせ》
〔月の光〕リンクを左枠に作りました。
みけのみちくさ―メインのH.Pです。花の写真や小説をおいています。
日々のエピソード―ブログで書いたお話を読みやすいように並べかえました。
登場人物―〔月の光〕だよりの登場人物紹介です。


 キジトラ模様の小柄の猫が、毎日のように遊びに来ていました。最初はオスの子猫と思い込み、‘にゃうぼう’と呼んでミルクをあげていました。数日前、お乳を飲まれたあとがあることに気付きました。女の子の上にお母さん、なのに‘にゃうぼう’。
 ちょっと期待していたら、連れてきました。4匹のキジトラ子猫です。2匹は彼女と同じ薄い色のキジトラ、2匹は少し毛が長くて濃い色です。
 戸を開けると隠れてしまうので、もちろんさわることは出来ません。さわりたい。

 今日の写真は「シロガネソウ」(2006.05.06山梨県で撮影)
 白銀草と書きます。白い花びらに見える部分がガクで、黄色いおしべに見える部分が花びらです。

| | コメント (65) | トラックバック (0)

2006/05/17

職業選択の自由

Imgp11621
「仕事をするって、穴を埋めるようなものなんだって」
「穴?」
「この間読んだ本に書いてあって‘なるほど’と思った」
「穴が空いていたら誰かが埋めなきゃなんねぇし、誰が埋めても同じってか?」
「そう、それ読んでちょっと気が楽になった。僕はどうしても将来なりたい職業‘夢’っていうのがなかったから、何の抵抗もなくサラリーマンになった。当時の世の中も学校を卒業したら就職するのが当たり前だった」
「俺も半年リーマンやったぜ」
「君、スーツ姿をやっと見慣れたら辞めちゃうんだもの。あれ、まだとってある?」
「ああ、また着ることになるかどうかはわかんねぇが、もったいねぇから」
「もったいないか。……君らしいね」
「変装に使えるかも知れねぇし」
 背広は、稲作にとって変装の道具になってしまった。
 僕は、あの頃のことを思い出していた。
 あの事件がなければ、今頃彼はまだスーツ姿、いや、故郷に帰って農業をしているかも知れない。
「自分に合った仕事を探すためにフリーター続けて、気が付いたらどこにも雇ってもらえない歳になってたって……」
「よく聞く話だ。俺だって、廃業して今からサラリーマンになれったってなかなか雇ってもらえねぇだろうし、使う方も使い辛いだろうな」
「僕なんか年齢的にもっと難しい」
「俺たちは恵まれているのかもな。収入は少ないけど、嫌いじゃねぇ仕事に就いてる」
「そうだねぇ」

《お知らせ》
〔月の光〕リンクを左枠に作りました。
みけのみちくさ―メインのH.Pです。花の写真や小説をおいています。
日々のエピソード―ブログで書いたお話を読みやすいように並べかえました。
登場人物―〔月の光〕だよりの登場人物紹介です。


 15日は長野県に出掛けました。最初に行った所は標高が高過ぎ、春が訪れたばかり。カラマツの葉がやっと出始めたところでした。花はまだでしたが、ルリビタキを間近で見ることが出来、それはそれで大満足。
 次ぎに行った場所は、去年の6月に見付けた葉の正体を確かめるため。Pさんの予想通り見付けた葉はヒメスミレサイシンでした。帰り道、道路のり面の金網の下にも、たくさんのヒメスミレサイシンを見ました。

 今日の写真は「ヒメスミレサイシン」(2006.05.15長野県で撮影)
 姫菫細辛。本州中部を縦に走るフォッサ・マグナの周辺で見られる、フォッサ・マグナ要素の植物といわれています。
 先日載せたシコクスミレとよく似ていますが、花が咲き出したときの葉の巻き具合が違います。萼片の付属体と呼ばれるガクの根本を見比べると、違いがはっきりわかります。

| | コメント (43) | トラックバック (0)

2006/05/14

山菜

Imgp102611
「ちわ~す。絹さん、土産だ」
 稲作は汚れたレジ袋を下げて来た。後ろからジル。
「いらっしゃいませ、稲さん、ジルちゃん。実家に帰って来たの?」
「これのためにな」
 と、言って袋を持ち上げる。彼が照れ隠しにどんな理由を付けたとしても、たまには帰って元気な顔を見せるのはいいことだ。
「私も一緒にお邪魔してきました」
「お袋が連れて来いってうるせぇんだ。それに、お前、温泉好きだしな」
「はい」
 ジルも、いつもより元気そうに見える。
「コゴミ、ワラビ、タラノメ、コシアブラ、と、去年あんたが食い損ねたニリンソウだ。これはトリカブトが混じってねぇから大丈夫だ。お浸しにして食ってみな、そう特徴のある味じゃねぇけど」
 トリカブトの若葉とニリンソウの葉はよく似ている。
 去年、僕が摘んだニリンソウにトリカブトが混ざっていた。稲作に指摘されていなければ新聞を賑わし、今頃は僕の一周忌かも。
「天ぷらにしよう。君たちも食べる?」
「俺たちは食ってきた。それから、これはいつものお袋のぬか漬けだ」
 これが、喫茶店〔月の光〕の日常。
【登場人物紹介】はこちらへ。
☆お知らせ―明日 喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます☆


 山菜つながりの雑談です。
 先日、植物観察の帰り際、山道で、お父さん、お母さん、小学生の女の子に会いました。稲作のようにふくらんだレジ袋を下げていたので、山菜取りだとわかりました。
 お昼を過ぎていたので、途中の蕎麦屋に停まって中に入ると、偶然にあの家族連れもいました。
 蕎麦屋はとてもローカルな感じで、レジ近くに、おにぎりや漬け物、山菜が並べられ、値札が付いていました。コゴミ(クサソテツ)、ウド、下ごしらえ済みのワラビなどです。
 小学生の女の子がもじもじしながら、山菜の前を歩き、お店の中を見ています。気付いたおばちゃんがどうしたのか尋ねると、自分たちが採ってきた山菜とお店に並んでいるものが違うので見て欲しいと頼んだ様子。彼女は遠慮がちに2本の山菜を持ってきて尋ねました。一方はコゴミですが、もう一つは食べられないものだと言われていました。
 あの家族、家に帰った後どうしたでしょう。お店で聞かなかったら、コゴミやワラビとして食べてしまったのでしょうか。シダ類は毒はないでしょうけれど、美味しくないでしょうね。お父さんの権威が失われていないか心配でした。
 山に入るのなら、自分が採ろうとしている山菜のきちんとした情報を覚えておくことと、野生動物に遭わないための備えも必要です。熊やスズメバチは以外と近くにいるのです。

 今日の写真は「東海型ヒメミヤマスミレ」(2006.05.05山梨県で撮影)
 東海型姫深山菫。昨日のシコクスミレと同じ場所に咲いていました。小さくて目立たないスミレでしたが、今まで見てきたものと何かが違うと思いながら撮しました。後で調べて名前がわかりました。
 東海型があるのなら?
 そう、同じヒメミヤマスミレの名前を持つものに、横倉型ヒメミヤマスミレという花があります。高知県の横倉山の名を取って名付けられたそうです。こちらのスミレには、まだ会ったことがありません。

| | コメント (19) | トラックバック (0)

2006/05/13

狼の子

Imgp100111
「何か飲みますか」
「いらねぇ、コーヒーの飲み過ぎで腹がガポガポだ」
 ジルと二人でアパートに戻ってきている。
「なんだかなぁ」
「どうしました」
「なんでもねぇ」
「あなたがそのように見えるからです」
 ジルは俺の目をしばらく見詰めてから言った。全てを見通す視線。思ったことを読んだのだろう。
「俺ってそんなに頼りなさそうか?」
「群れからはぐれた狼の子のようです。……だから、母性の強い女性はあなたが心配なのです」
「んなこと言われてもなぁ。どうすりゃいいんだ?」
 稲作は195㎝の大きな身体と、みんなが怖がる顔を持っているはずなのだ。
「その目がいけないのです」
 この小さな目は生まれ持ったものだ。
「大きさではありません。あなたの心がそのまま映るその瞳が、私もみんなも好きなのです。……そんなに不安がらないで」
 誉められているのか、哀れまれているのか解らないジルの言葉。
 子犬扱いの狼男は、吸血鬼には勝てないのだ。
【登場人物紹介】はこちらへ。

 すみません。昨日は予告もなくサボりました。
 実家に、カスピ海ヨーグルトの種を持って行ったり、キンランに会いに行ったりでUPのタイミングを逃してしまいました。キンランの写真は近いうちに紹介します。


 今日の写真は「シコクスミレ」(2006.05.05山梨県で撮影)
 四国菫。埼玉県以西のブナ林に生えます。今回の旅の一番の目的でした。2年前訪れたときは季節が2週間ほど早く、やっと咲き始めたばかりだったのです。今年は遅めにずらしたつもりでしたが、冬が寒かったせいでしょうか、それほど多くは咲いていませんでした。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2006/05/11

元カノ

Imgp10911
 ファミレスで3時間粘った後。
「あいつら、歩くの速いな」
 奈津子はジルと腕を組んで歩いている。「ヒロインになった気分よ」と言いながら。
 妙はすっかり奈津子が気に入ったようで、彼女の後に付いて行った。
「わたしたちに気を遣ったんだよ、きっと」
「何の?」
「積もる話でもあるんじゃないかって」
「あるか?」
「別にないよね」
「おい、春菜、赤ん坊は大丈夫なのか?」
 春菜には、まだ小さい赤ん坊がいる。千尋という名の女の子だ。
「お義母さんがみてくれているの。たまには息抜きしてきなさいって」
「良い身分だな」
「まあね。……ねぇ、稲作」
 春菜は急に真顔になる。
「んが?」
「大丈夫だよね」
「なにが?」
「稲作が、だよ」
「相変わらず貧乏だけど、何とかやってるぜ」
「そうじゃなくて、ジルと妙のこと」
「たまたま二人が智紘に似てるだけだ。……お前、おねえと同じ事言うんだな」
「昌子さんと仲直りしたの?」
「喧嘩してた訳じゃねぇさ。仕事回してもらってる」
「昌子さんが付いていれば安心だよね」
 春菜は、呟くように言った。
【登場人物紹介】はこちらへ。


 ホームページを更新しました。今月21日で丸3年を迎えます。
 ブログで紹介しきれなかった野草や昆虫などの写真と僕らが登場する小説(?)を載せています。よろしかったらご覧になってみて下さい。
 左枠リンクの中の『みけのみちくさ 〔月の光〕だより本館』から行けますので、よかったらのぞいて見て下さい。

 今日の写真は「レンプクソウ」(2006.05.07群馬県で撮影)
 連福草と書きます。ゴリンバナの別名の通り5㎜ほどの小さな花が5個、くす玉のように咲いています。地味で目立ちませんが、この季節に会いたい花の1つです。

| | コメント (70) | トラックバック (0)

2006/05/10

お代わり自由

Imgp09441
「皆さんこんにちは。ご一緒してもよろしいですか」
「ジル!」
 と、妙。
 春菜と奈津子の目は彼に釘付だ。
「狼男さんの知り合いなの?」
「ああ、まあな」
「ルームメイトです。稲作のアパートでお世話になっています」
「一緒に住んでるの?」
 と、驚いた様子の春菜。
「智紘に似ていますか?」
 春菜の目にもジルは智紘似に見えているようだ。
「うん、髪と目の色が違う智紘みたい」
「そうですか」
 よく居場所がわかったとは、あえて聞かない。映画館を出た後、ぴょん太が頭上を飛んでいたからだ。
「狼男さん凄い、こんなハンサムさんと一緒に住んでるなんて。彼女も若くて可愛いし。前言撤回、見直しちゃった」
 妙は可愛いと言われて照れている。
「映画は面白かったですか?」
「うん!」
「あなたは?」
「見てねぇ」
「ずっと目つぶってたもんね」
「聞こえたでしょう」
「英語なんかわかんねぇし」
「1つ聞いてもよろしいでしょうか。なぜ、稲作は狼男?映画の登場人物と似ているのですか。だったら私も見てみようかと」
「え?違う違う」
「春菜ちゃんが彼とつき合い始めた頃にね、狼男みたいにワイルドで恐いって聞いたから、心配で内緒で映画館に付いて行ったの。そしたら――」
「今日みたいに怖がった?」
「そうそう。可笑しくって可笑しくって」
「何の映画だったの」
「ゾンビ大集合」
「私も見ました。可笑しい映画でしたよね」
 女達の話は尽きない。
 何杯コーヒーのお代わりをする気だろう。
【登場人物紹介】はこちらへ。


 今日の写真は「ミドリタチツボスミレ」(2006.05.05山梨県で撮影)
 緑立坪菫。タチツボスミレの先祖帰りといわれています。
 タチツボスミレは、地域や環境で色や形が様々ですが、ここまでの変わったものは初めて見ました。

| | コメント (23) | トラックバック (0)

2006/05/09

2倍のドキドキ

Imgp10381
 にゃう~。どういうことよ!
 稲作と二人で映画館に来ている。
 映画は終わり、エンドロールが流れているというのに、隣の大男は自分のひざを掴んだまま下を向いている。ずっとだ。
「もう終わったんだけど」
「まだだ、次回の予告があるかもしんねぇ」
「稲作、ぜんぜん変わってないね。進歩ないなぁ」
 彼の隣の見知らぬ女の人が声を掛けた。
「え?」
 驚いて目を開けた稲作。
 声を掛けた女の人の隣に座る人もVサインをして言った。
「お久しぶり~、狼男さん!」

 映画館を出て、稲作は女3人と近くのファミレスに入った。
「楽しかったね。映画館の入り口で稲作見かけて、そっと後つけて。いつ気付くかと思ってドキドキしちゃった。映画のドキドキと合わせて2倍のドキドキ、お得だったね」
「狼男さん、あの時と全く同じなんだもん。可笑しくて可笑しくて……」
 ホラー映画を見ながら可笑しがっていた女達。2倍でお得なんて、主婦らしい感覚だ。
「あのぅ、お二人と稲作はどんなお知り合いなんですか?」
 二人と稲作の関係がわからない妙は、遠慮がちに声を掛けた。一応年上の女性には気を遣うようだ。
「どんなお知り合いったって――」
 説明に困った様子の稲作。
「元カノ」
「と、その友達」
「!?」
 稲作の隣に座っていたのは田中春菜……付き合っていた頃は若林春菜。なのに隣にいたことに気付かなかったなんて。
「心配しないで、今は人妻だから。私、田中春菜」
「友人の青木奈津子」
「先輩じゃなかったっけ?」
 と、稲作。
「二人とも会社辞めたし、それでもこうして腐れ縁で繋がってるから友達」
「先輩さんも結婚?」
 彼女はまたVサインをして笑った。
「稲作、紹介紹介!」
 春菜は、妙が気になるようだ。彼女も智紘を知っている。
「水沢妙です」
「智紘の従妹」
「だからそっくりなんだ」
【登場人物紹介】はこちらへ。
 
 春菜と先輩は、HPの「Indian summer」からの再登場です。以前紹介したので「ああ、あのお話の時の」と思って下さる方もいるでしょう。


Imgp10421
 今日の写真は「ミヤマカタバミ」(2006.05.06山梨県で撮影)
 深山傍食。葉の裏側に毛が密生しています。
 5月2日のオオヤマカタバミの葉と見比べてみて下さい。葉の形の違いがわかりますか。
 ミヤマカタバミも群生していると美しいですね。

| | コメント (15) | トラックバック (0)

2006/05/08

狼男VSヴァンパイア

Imgp09671
「稲作、稲作、午後暇だよねぇ」
「あ?――忙しい」
 いつもの通り、〔月の光〕でカレーライスの大盛りをかき込んでいる。
「ウソ、予定何も入ってないよ」
 妙は、頼んでもいないし、頼むほどでもないスケジュール管理をしてくれている。
「やること探す」
「ねえ、映画見に行こうよ!見たいのがあるの」
 嫌な予感がする。
「そんな金があったら、もう少しマシなもん食う」
 カラになったカレー皿をスプーンで叩いてみせる。
「好きで食べてるくせに!」
「何が見たいの?」
 と、カウンターの向こうのマスター絹さん。
「Underworld Evolution!絹さん一緒に行ってくれる?」
「外映?どんなお話?」
 今時、外映はないだろう。
「狼男とヴァンパイアが戦う話なんだって――」
 俺は飲みかけた水を吹き出しそうになった。
 女ってやつは、なぜホラーが好きなのだろう。
「――稲作とジルの戦いみたいで面白そうじゃない?」
 冗談じゃねぇ。
「僕、ホラーは苦手なんだ。ここって近くに家がない一軒家でしょう、夜中にそういうのが訪ねてくる夢を見そうでねぇ」
 と、絹さん。すでに訪ねてきていることに気付いていないとは、さすがは極楽とんぼだ。
「もう、意気地なし!ジルは行ってくれるよね」
「私ですか」
 ちょっと困ってみせるジル。
 当の本人のバンパイアに、人間が勝手に想像して作ったSFXを見せようというのか。目眩がしそうだ。
「ジルも恐いの?」
「は、はい」
 あいまいに笑って誤魔化している。
「にゃう~。か弱い乙女がひとりで映画なんて可哀想だと思わないの!」
 結局、この中でホラーが一番苦手だと断言出来る俺が付いていくことになる。
【登場人物紹介】はこちらへ。


 ゴールデンウィーク後半は富士山周辺に花を探しに行きました。
 群馬、埼玉、山梨と、長さ6.6㎞の雁坂トンネルを通っての高速道路を使わない旅でした。連日大渋滞ニュースを聞いていたからです。

 今日の写真は「ホタルカズラ」(2006.05.05山梨県で撮影)
 蛍蔓と書くムラサキ科の花です。鮮やかな青紫色の花の直径は1.5~1.8センチと大きく、車を走らせていても目に飛び込んできます。
 日本全土で見られますが、森林伐採や土地造成など環境悪化のために、見付けると嬉しい花の一つになってしまいました。

| | コメント (15) | トラックバック (0)

2006/05/04

水道タンク

Imgp09211
「稲さん、ジルちゃん、さあ、行こう!」
 喫茶店〔月の光〕は、せっかくカレーライスを食いに来てやったのに休み。マスターの絹さんは、張り切ってどこかに出掛けようとしている。
「何処へ行くのですか?」
「お花見」
「お花見ですか」
 ジルの顔が、パッと輝く。
「何処へ行く?沼田より上か青森にでもいかねぇと咲いてねぇぜ」
「桜じゃないよ。ツツジ」
「ツツジですか。去年行った水道タンク?」
「当たり!たった3日の期間限定だから、行っておかないとね」
 水道タンクとは敷島浄水場のこと。敷地内に370本のツツジが植えられていて、5月3日~5日の3日間だけ、花見のために一般開放されるのだ。
「妙ちゃんももうすぐ来るよ」
「めんどくせぇなぁ」
「焼きまんじゅうが売っているかも知れません」
「行く、行く!」
 花よりまんじゅう。
【登場人物紹介】はこちらへ。
 左枠のリンク『〔月の光〕だより 日々のエピソード』に、最近までのブログで書いてきた続き物のお話を読みやすいように並べ直しました。良かったらご覧下さい。
☆お知らせ―金・土・日と喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます☆


 昨日はメッシュ調査に同行して、赤城山標高900㍍のキャンプ場までの道を往復8㎞、野鳥を見、声を聞き、花の咲き具合を確かめながら、のんびりと歩いてきました。
 今回よく見られたのはオオルリです。よくさえずり、雄同士なわばり争いでおいかけっこする様子が見られました。他に、キビタキの美しい黄色を堪能出来ましたし、道路上を跳ねるアカハラを何度も見ました。声はオオルリ・キビタキの他にウグイス・ヤブサメ・センダイムシクイ・ツツドリなどがひっきりなしに鳴いていました。
 その他確認種は、コガラ・エナガ・ホオジロ・ヒガラ・ヒヨドリ・ハシブトガラス・ヤマガラ・メジロ・コゲラ・ミソサザイ・アオジ・カケス・キジバト・コマドリ・イカル・ゴジュウカラ・シジュウカラ・ヤマドリ(ドラミング)。
 花は、まだ春が訪れたばかりですが、アオイスミレ・タチツボスミレ・フモトスミレ・アカネスミレ・マルバスミレ・エイザンスミレ・ヒゴスミレ・アケボノスミレ・ニオイタチツボスミレ・ヒナスミレ・ニョイスミレ・ヒトリシズカ・フデリンドウ・ヒゲネワチガイソウ・ツルネコノメが見られました。

*メッシュ調査・地図を網目(メッシュ)状に区切り、春・初夏・冬に野鳥の姿や声を確認・報告する、野鳥の会から委託された調査。

 今日の写真は「サクラスミレ」(2006.05.03群馬県で撮影)
 桜菫。名前は色からではなく、花びらに桜の花びらのような凹みがある物が見られるからだそうです。花が大きくて美しいのでスミレの女王と呼ばれています。

| | コメント (20) | トラックバック (0)

2006/05/02

輝いていた頃

Imgp08691
「♪黒百合は魔物だよ、花の香りがしみついて、結んだ二人ははなれない――」
 帰り道。お千代ちゃんに教わった歌を口ずさむジル。
「おい、ジル。言っておくけどあの花を摘むなよ。俺はもらっても迷惑だし、抜いたら絹さんガッカリするぞ」
「わかっています。今日のお千代さん、生き生きしていました」
「若い頃のいい想い出だったんだろうな」
「一番輝いていた頃のお千代さんに逢ってみたかった」
「ああ見えて、案外いい女だったかも」
「うらやましいです」
「あ?」
「そういう時代が私にはありません。ずっと同じ」
 そうか、ジルの見た目はずっと若いまま。
 心の中は?
 俺の、輝いていた時代はいつだったろう。
「初めて逢った時、あなたは19歳の少年でした」
「覚えているのか?あの時の俺を」
「はい」
 二人で過ごしたのはそんなに長い間じゃなかった。
 俺は夢の中の出来事だと思い込んでいた。
「今まで出会ったヤツ全員のことを?」
「特別な人だけです。……♪黒百合は毒の花、アイヌの神のタブーだよ、やがてはあたしも死ぬんだよ――」
【登場人物紹介】はこちらへ。
☆お知らせ―明日 喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます☆


 日曜日、シギ・チドリ観察に、谷津干潟に行ってきました。
 一番多かったのがお腹が海苔を貼り付けたように黒いハマシギ。赤褐色の夏羽に衣替えしたオオソリハシシギ、トウネン。他には、チュウシャクシギ、キョウジョシギ、キアシシギ、セイタカシギ、オバシギ、ダイゼン、ムナグロ、メダイチドリ、シロチドリ。
 オオメダイチドリが来ているという情報を得て出掛けたのですが、残念ながら見ることが出来ませんでした。
 他の種類では、カルガモ、ヒドリガモ、コガモ、バン、ムクドリ、ダイサギ、アオサギ、コアジサシ。もっといたはずですが、メインがシギチだったもので抜けていると思います。
 ゴールデンウィーク真っ只中で、道路が大変込んでいました。

Imgp08721
 今日の写真は「オオヤマカタバミ」(2006.04.29群馬県で撮影)
 大山傍食と書きます。林道を歩いていると、1枚目の写真のような幻想的な姿で呼び止められました。初めはミヤマカタバミだと思いましたが、Pさんにオオヤマカタバミだと教えられました。
 帰って図鑑を見ると、山地林内にまれに生える多年草とあります。あまり多くない花のようです。
 違いは葉の形。山でミヤマカタバミやコミヤマカタバミを見慣れている人なら判るでしょう。図鑑の説明によると、葉の先端が極端な切形になる、とあります。
 いかがですか?

| | コメント (20) | トラックバック (0)

2006/05/01

青春の匂い

Imgp08471
「絹さん、何してるんだい?」
 急に声を掛けられて飛び上がりそうになった。
 店の脇にある花壇。しゃがんで草をむしり終え、あることをしようとしていたところだった。
「何ビックリしてるんだい」
 早朝の気功教室3人組のひとり、お千代さんだ。教室を終えて帰る途中らしい。
「いや、ちょっと。……おはようございます」
 僕は、やっと咲いたクロユリの香りを確かめようとしていたのだ。
 一昨年、中央アルプスで初めて野生種を見た。柵の向こうの保護地に咲いていたため、近付いて見ることが出来なかった。
 去年、球根を売っているのを見付け植えてみた。
 やっと、それが花を咲かせたのだ。
 恋の花はどんな香りがするのだろう。
 2年越しの思いが叶う。
「♪黒百合は恋の花、愛する人に捧げれば、二人はいつかは結びつく――」
 口ずさむお千代さん。
「本当ですか?」
 今度はジルだ。チョビと稲作も一緒。
「おおチョビ、元気そうだね」
「ワン!」
 強面グレート・デーンのチョビは、年輩の女性には愛想がいい。
「ジルちゃん、私が娘の頃に流行った歌だよ。春樹さんに恋したもんさ」
「春樹だと?お千代ちゃんの旦那か?」
 と、稲作。
「君の名はの主人公。あんたと違っていい男だったんだよ、佐田啓二」
 お千代さんは昔を思いだし、うっとりとして言った。
「へーえ」
 稲作は、彼女の想い出に反論しない。
「♪黒百合は魔物だよ、花の香りがしみついて、結んだ二人ははなれない――どんな香りがするんだろうね」
「どうぞ」
 僕は、黒百合の花との最初の接吻の名誉を、お千代さんに捧げた。
「!?」
 黙ってしまったお千代さんの次ぎに香りを嗅いでみる。
「!?」
 香りとはいえない。
「洗い忘れた雑巾みたいだねぇ」
 ぼそりとつぶやくお千代さん。
 続いたジルは、
「稲作の靴下の匂いに似ています」
「そんな訳ねぇだろ。……どれどれ――」
「どうですか?」
「――剣道部の防具とボクシング部のグローブの匂いだ。それが我慢出来なくて、入部を断ったっけ」
【登場人物紹介】はこちらへ。


 作中、お千代さんが歌ったのは、映画「君の名は」で織井茂子さんが歌った「黒百合の歌」です。子供の頃、両親と懐かしのメロディーを見ていて、子供ながらに織井茂子さんの声量に魅了されたことを思い出します。
 黒百合の匂いの話は本当で、私とPさんとの間で交わされたものを、〔月の光〕の皆さんに再現してもらいました。
 
 今日の写真は「クロユリ」(2006.04.29群馬県で撮影)
 黒百合。北海道と、本州の高山で見ることが出来ます。
 野生に逢ったのは一度、中央アルプスでした。写真は我が家の植裁で、去年立山の売店で赤い箱で売られていた球根を育てたものです。

| | コメント (41) | トラックバック (0)

« 2006年4月 | トップページ | 2006年6月 »