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2006/04/29

抑止力

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「マダム、今日は泊めていただけますか」
「もちろんいいわよ。嬉しいわ」
 ここは麗華の店〔Madam☆Rose〕。
 店内は中世ヨーロッパ貴族の館のような内装。ホステスは皆豪華なドレスで女装した美青年。ジルとガードマンだけが男装を許されている。
 集う客達は盛装したものから会社帰りのスーツ姿まで様々だ。ノーマルからアブノーマルまで、自分の居所を見付けてそれぞれの場所に落ち着いて夜の一時を楽しんでいる。
 ここでのジルの立場は別格で、可愛がられてもねたまれるようなことは決してない。長年生き抜いてきた彼の処世術によるものだが、誰もその事に気付いていない。だから来たい時にだけ来るという、気まま過ぎるアルバイトを許されているのだ。

「ジルちゃん、お腹空いているでしょう」
 食餌は麗華のマンションで摂る事に決まっていた。なぜだか稲作には食餌しているところを見られたくないのだ。
 手に入れるのも都会の喧噪に紛れて夜な夜な美女を襲う……のではなく、信頼出来る医師に輸血用の血液を安定供給してもらっている。だから、今のジルは渇くことはない。
 麗華はクリスタルグラスに食餌を用意してくれる。高価な品だがジル専用。彼女が、他の食器と一緒に洗うことはない。
「ありがとうございます」
「私は赤ワインを頂くわ」
 誰かに見られても、二人でワインを飲んでいるようにしか見えないだろう。
「マダム、忠宣さんと付き合うのですか」
「どうしたの?急に」
「私のためでしたら無理をしないで。……いつの時代も、誰かしらが必ず私を監視しているのです」
「あなたのためじゃなくってよ。彼は私の知らない世界をたくさん知っているの。ボーイフレンドとして魅力的だわ」
「心配しないで。彼らがいるから、私は安心して存在していられるのです」
【登場人物紹介】はこちらへ。
☆お知らせ―明日 喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます☆
 ゴールデンウィークに入りました。出掛けることがあるので、更新が不定期になってしまう事があるかも知れません。
 左枠のリンク『〔月の光〕だより 日々のエピソード』に、最近までのブログで書いてきた続き物のお話を読みやすいように並べ直しました。良かったらご覧下さい。


 今日の写真は「コオニタビラコ」(2006.04.23群馬県で撮影)
 春の七草の1つホトケノザこと、小鬼田平子です。3月15日に七草セットで栽培したものを載せましたが、こちらは田んぼに生えている自然の姿です。
 一見タンポポですが、花の大きさは1㎝ほど。ミニチュアタンポポのような可愛い姿ですね。

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2006/04/28

天敵

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「今度うちの店にいらして下さいね。私なんかより若くて綺麗な娘が大勢いるわよ」
「必ず伺います。しかし、あなたより魅力的な人がいるとは思えませんが」
「お上手だこと」
 麗華行き付けのレストランで、忠宣と向かい合っている。
 東京に来た時にはぜひ食事を、と言う約束を果たしている。お嫁さんは無理だけど恋人ならOK。水商売で生きる者の社交辞令だ。
 貿易商というより冒険家か探検家のような風貌の忠宣。黙っていれば彫りが深いハンサム。麗華の周りにはいないタイプだ。
「気になりますか?俺が何をするのかが」
「?」
「あまり深入りしない方がいい。人の弱みに付け入るのが奴らの手段です」
「何のお話かしら?」
「知らない振りをするのですね。それもまたいいでしょう」
「例えれば、ショッカーには仮面ライダー、ヤプール人にはウルトラマンAのようなものです。♪お前は俺を信じなさい」
 忠宣は鼻歌交じりだ。
「は?」
「いや、ちょっと違うかな。ゴメスにはリトラ、ゴジラにはモスラのようなものの方がしっくりいきますね」
 麗華は、こめかみを押さえた。忠宣の言っている意味が全く解らない。が、ジルのことを言っているのだということは解る。
「――何かが起こった時のために、俺たちがいるのです。俺たちの代で何も起こらなければ、また次の世代に引き継ぐまでです」
【登場人物紹介】はこちらへ。

 子供の頃、リアルタイムでウルトラマンAを見た私。ヤプール人のお爺さんが歌う、♪お前は俺を信じなさい♪という歌が恐くて恐くて。
 後になって、あの歌はクレージーキャッツが歌っていた歌だと知り、あの恐怖心は何だったの?って思いましたっけ。
 こんな話、わかる人いないでしょうねぇ。


 今日の写真は「スミレサイシン」(2006.04.23群馬県で撮影)
 菫細辛と書きます。まだ咲き始めたばかり。葉が開ききっていませんね。林の下、足を踏み入れられないほど咲いていました。

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2006/04/27

叶わぬ恋

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「どうしたの、溜め息なんかついて」
「何でもありません」
 ここは喫茶店〔月の光〕。
 ジルは溜め息なんかついていなかった。なぜなら、元々息をしていない彼に溜め息がつけるはずがなく、元気がない様子が溜め息をついたように、僕には見えたのだ。僕は彼の正体を知らないのだから(ややっこしい設定である)。
「恋でもしてるのかな?……はい、ハイビスカスティー」
「ありがとうございます。恋、私にも出来るでしょうか」
 ジルは、真っ赤なハーブティーをうっとりと眺めながら言った。
「もちろん、若いんだもの。もうしてるんじゃない?」
「稲作……」
「困ったねぇ。稲さんは男の子とはねぇ」
「彼のことが、心配で仕方ありません」
「本当に好きなんだ、稲さんのこと」
 叶わぬ恋は苦しいものだろう。

 その夜。
「いらっしゃいませ、稲さん。ジルちゃん、さっきまでいたんだよ」
「そっか、仕事に行ったか。……何か食わしてくれ、お茶漬け出来るか?」
「ねえ、稲さん。どうするつもり?ジルちゃんとのこと」 
 お茶漬けを出しながら聞いてみる。
「あ?どうするって、部屋貸してやってるだけだしなぁ、いや、借りてもらって部屋代が助かってる」
「それだけ?あの子の気持ちはどうするの」
「心配すんなよ、あいつ、どこで働いてると思ってるんだ。新宿だぜ。そのうちいい女見付けて男になるさ」
「恋愛はそう簡単なものじゃないと思う」
「――わかってるんだ……どうすればいいかも」
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 今日の写真は「ヒメニラ」(2006.04.23群馬県で撮影)
 こうして大写しで見るとチューリップのようですね。
実物の花の大きさはマッチ棒の先くらい。茎は針のような小さな花です。
最初は存在に気付きませんでした。
どうして気付いたのかって?
匂いです。
葉を踏んだためにニラの匂いがしたのです。

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2006/04/26

夜の風景

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「私は構いません」
「?」
「心配はいりません。これまで、そういう関係を持ったこともあります」
「へ?」
 ベッドの上。ジルが俺の上に乗りかかってきている。
「待て、ちょっと待て!俺にはそういう趣味はねえ!!」
「あなたには私が男性に見えますが、女性に見える人もいます」
「俺だけじゃねえだろ!みんなも男に見えてるじゃねえか!」
「暗示。あなたに合わせました」
「心配はいりません。私の繁殖行動はあなた方とは違いますから。ハーフなんか生まれません」
「うわーっ!やめてく――ぅっぷ!」
 ジルのくちびるが俺の言葉をさえぎった。
 冷たく、柔らかい。
 って、夢じゃない。
 正夢!!
「――ぅわっ!頼むから、やめてくれ!」
 稲作は懇願した。
 夜。
 ジルの方が力が強くなる。押さえつけられたら身動きが取れない。
「なぜ?あなたの願望では?」
「見たよ!確かに夢を見た。すまん!悪かった!!」
「怖がらないで。私の愛を受け入れて」
「違う、そんなん愛じゃねえ!」
「?――稲作、私が嫌いですか。私は、あなたの特別になりたい……」
 しゅんとしたジルは、押さえつけるのを止め、俺は慌てて飛び起きた。
「ったく、好き嫌いとそれとは別だろ。……俺は〔月の光〕に出入りしている連中が好きだけど、誰ともそんなことはしてねえぞ。こっちに来い」
 稲作は、あまりに悄気てしまったジルを隣に座らせ、自分にだって解っていない愛について語ってみた。
「良くはわかんねぇけど、押し付けは愛とはいわねぇと思う。愛っていうのは相手の気持ちを一番に考えるもんだろうと思う」
「与えないと、みんな去ってしまいます」
 これまでのジルは、いいように利用されてきたのだろうか。
「与えるなんて、思い上がりだぜ。時には相手の幸せを考えて、見守ることも身を引くこともしなきゃならない」
「私は消えた方がいいですか。あなたの幸せのために」
「ばか、信用しろよ。俺はお前を信じてる」
 ジルは、肩に頭を預けてきた。この程度が、俺たちには丁度いい。
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 今日の写真は「ハナネコノ」(2006.04.23群馬県で撮影)
 花猫の目。小さいけれど、赤いおしべが目立つネコノメソウです。水辺に生えるのだと思っていたら、これは林の中でした。

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2006/04/25

朝の風景

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「私は構いません」
「?」
「心配はいりません。これまで、そういう関係を持ったこともあります」
「へ?」
 ベッドの上。ジルが俺の上に乗りかかってきている。
「待て、ちょっと待て!俺にはそういう趣味はねえ!!」
「あなたには私が男性に見えますが、女性に見える人もいます」
「俺だけじゃねえだろ!みんなも男に見えてるじゃねえか!」
「暗示。あなたに合わせました」
「心配はいりません。私の繁殖行動はあなた方とは違いますから。ハーフなんか生まれません」

「うわーっ!やめてくれ~っ!!」
 飛び起きたらジルはいない。エプロン姿でキッチンから飛んできた。
 朝。
 コーヒーと卵焼きの匂いがしている。
「どうしました?悪い夢を見たのですね、可哀想に」
 夢?
「さあ、落ち着いて。何か飲みますか。それとも、目覚めのキスでも?」
「何言ってんだ」
「あなたの望みは、私の望みでもあります」
「?」
 寝起きで頭がぜんぜん回らない、何言ってんだ?暗示で夢を見せられた?
「だって、稲作……」
 ジルの視線が、俺の下半身に。
 !?
 見るな!俺だって若くて健康な男なのだ。
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 失礼しました。精一杯のシモネタです。


 今日の写真は「キクザキイチゲ」(2006.04.23群馬県で撮影)
 昨日のアズマイチゲと同じく白い花もありますが、濃い青色を見付けるとつい写真を撮ってしまいます。葉の形を見比べると違いが分かりますね。
 どこかで見付けたら、香りを確かめてみて下さい。甘い香りがしますよ。

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2006/04/24

護ってやりたい

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 妙とS君を送った帰り道。
 稲作とジルは、夜道をアパートに向かって歩いている。
「稲作」
「何だ?」
「マダムは、なぜ忠宣さんと一緒に行ってしまったのでしょうか」
「気が合ったんだろ。妖怪は妖怪同士」
「そうでしょうか。……彼がハンターだから――」
「だからって、幾らマダムだってどうすることも出来ねぇだろ。お前が気にすることじゃねぇさ」
「はい」
「ほら」
 稲作は、右手を差し出した。
「?」
「踊れ」
「またですか」
「満月じゃねぇけど今日は月は出てるぜ」
 いつかのように、ジルは優雅に踊り出した。

 俺なんかより、ずっと長く生きているのに目の前のジルが儚く見える。
 いつの時代も、ハンター達に運命を握られているからなのか。
 夜気を浴びた彼が、美しすぎるからなのか。
 護ってやりたい。
 俺が傍にいる間は……。
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 昨日は北の方が天気が良いということで、県内北部に行って来ました。
 先週、福島県はソメイヨシノが満開でした。昨日の沼田も満開。
 南北、標高で季節が行ったり来たり。まだまだ、春の花の季節は続きます。

 今日の写真は「アズマイチゲ」(2006.04.23群馬県で撮影)
 東一華と書きます。天気が悪いと閉じてしまうので、状態の良い花をずっと探していました。今年は時期を逃したかとあきらめていましたが、移動途中の車の中から見付け、写真を撮りました。

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2006/04/21

似合いのカップル?

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「ぜひ、俺の嫁になって下さい」
 真顔で言う忠宣。
「それは無理よ。まだあなたとは会ったばかりだわ」
 戸惑っているように見える麗華。
「費やした時間など関係ありません。……性別も」
「!?……あの、ここではなんですから外へ出ませんか。お酒はお強いのでしょう」
「どこへでもお共します」
 二人は〔月の光〕を出て、夜の街に消えていった。

「なんだなぁ。とりあえず、良かったなぁ、S君」
 一人取り残されたS君に声を掛ける稲作。
 S君は放心状態だ。
「凄いものを見た……って感じ?」
 と、妙ちゃん。
「本気なんだか、冗談なんだか――」
 と、稲作。
 ジルは黙ったままだ。
 みんな、緊張の糸が切れてしまったみたい。
「僕には麗華さん、より女らしく見えたけど。……コーヒー淹れようか。デザート食べる?」
「うん!」
 元気がいいのは妙ちゃんだけ。 
「案外、似合いのカップルなのかもしれないねぇ」
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 今日の写真は「シハイスミレ」(2006.04.15福島県で撮影)
 紫背菫、葉の裏側(背)が紫色の菫です。昨日のアカフタチツボスミレかタチツボスミレか?と同じく、こちらもシハイスミレかマキノスミレか?判断が難しいのですが、シハイスミレとしました。
 スミレは変種や雑種が多いのです。そこがスミレ観察の面白いところでもあります。

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2006/04/20

運命の人

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「――ご主人様の命令に逆らえなくなるマジック・マッシュルームなんか入れてないから」
 と、〔月の光〕のドアが勢いよく開いた。
「わははははは、心配するな、少年!アマゾンの奥地に棲む珍獣エロパパの主食、世界最強のマジック・マッシュルーム・マタンゴなど、ほんの1欠けらしか入れていない!」
 その声は。
 でたな、妖怪2号!!
 入ってきたのは全身黒ずくめの肉感的。黒革のズボンをはいて、タンクトップを着た絹さんと同年代の男。
 見つめ合う麗華と彼……。二人の間には普通の人間には考えられない電波がバチバチと通い合った。
「理想のご婦人だ。今まで独り身でいたかいがあった」
「何て素敵な殿方」
「沼田忠宣と申します」
「沼田道場の方?」
「ご存じですか。道場主は父です」
 いつもは‘パパ’と呼んでいるくせに。
「――あそこでイヌ面をしている広木の兄弟子。生業は貿易商、時々吸血鬼ハンターをしています」
 誰がイヌ面だ!自分は赤鼻のくせに。
「まあ、素敵!私は麗華」
「兄貴、さすがは目が高い。麗華さんはその美貌の上、家事全般は完璧にこなすぜ」
 稲作は、忠宣のことを兄貴などと呼んだ事はない。面白いから、麗華にからかわれるのを楽しむ事にした。
「まあ、恥ずかしいわ」
「あなたは、運命の人だ」
「?」
「ぜひ、俺の嫁になって下さい」
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忠宣さん登場の去年のブログ「追い詰められるふたり」はこちらへ。

 昨日、近所の古墳に花の様子を見に行きました。アマナやエイザンスミレの開花を確認するためです。エイザンスミレは見つからず、アマナはつぼみがありませんでした。スミレとニオイタチツボスミレは咲き始め、ヒゴスミレは盛りを過ぎたところでした。
 ヒゴスミレを探して、笹藪をごそごそ歩き、散歩の親子連れを脅かしてしまいました。こういう時、女性は有利ですね。双眼鏡を下げカメラを持つ姿は男性だったらかなり不審に思われてしまう事でしょう。

 今日の写真は「アカフタチツボスミレ」(2006.04.16福島県で撮影)
 このタチツボスミレを‘赤斑入り’と呼んでいいでしょうか。品種レベルですから、タチツボスミレとほとんど違いがないのです。
 見付けた場所の花の色は濃く、ニオイタチツボスミレと見間違えるほどでした。

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2006/04/19

ブラック・モレル

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 〔月の光〕のドアには【準備中】の札が掛かっている。灯りが漏れているし、窓辺に回って中をのぞき見てみると……。
 !!
 にゃう~っ!
 麗華さんと美少年が楽しそうに食事をしているではないか。
 どういうことよ!
 好奇心に火が点いた妙ちゃん。そうっと店に入って暇そうにしている稲作を手招きした。
「どういうことよ!あの子は?」
「見てわかんねぇんきゃ。いい雰囲気だんべぇ?新しい餌食だ。……可哀想になぁ」
 確かに餌食という言葉がピッタリだ。今にも食べられてしまいそう。
「おかげで僕らは助かったんだ」
 そういえば、去年は絹さんと麗華さんだったような。
「マダムはそんな酷い事はしませんよ。弱い子羊には」

「――S君、私もあなたの応援をするわ」
「え?」
「だから、夢に向かって頑張ってね」
「はい!」
「お願いがあるの」
「?」
「作品が出版されたらサイン本を頂戴ね。麗華さんへって書いて」
「はい、頑張ります」
 麗華さんは、S君の勧誘をあきらめて応援に回るようだ。彼女の誘惑に打ち勝つなんて、S君はなかなかの根性の持ち主だ。
「あまり食べないのね。……大丈夫よ、これはブラック・モレル。とても美味しいキノコなの。ご主人様の命令に逆らえなくなるマジック・マッシュルームなんかじゃないから」
 応援すると言いつつ、怯えさせて楽しむ麗華さん。
 と、〔月の光〕のドアが勢いよく開いた。
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 昨日のコメントでmidoさんにトガリアミガサタケ=ブラック・モレルと教えていただき、早速今日の題名に使わせていただきました。


 今日の写真は「ハルトラノオ」(2006.04.16福島県で撮影)
 春虎の尾と書く、小さなタデ科の植物です。
 毎年早春に出会っていたのに地味な印象しかありませんでした。つぼみや終わりかけの時期しか見ていなかったのですね。白い花に赤いおしべが綺麗でしょう。今回の出会いでハルトラノオを見直しました。

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2006/04/18

モリーユ再び

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「さすがは妖怪、呼ぶ前に匂いを嗅ぎ付けてきたな」
「まあ!」
 麗華さんの目は、稲作が下げてきた汚れたレジ袋をに釘付だ。
 ‘妖怪’と呼ばれた事に何の反応も示さないのは、稲作の戯れ言に慣れているのか、本当の事だから気にならないのか。後者だったら恐すぎる。僕はジルが吸血鬼だという事を知らないが、彼が存在するのなら、妖怪だっているかも知れない。
「素敵!やっぱりモリーユだわ!もう出てるのね、上物ばかり」
 彼女はレジ袋を開いて中の確認をしながら言った。
 モリーユはアミガサタケのフランス名。
「当たり前だ。それにしても凄い嗅覚だな」
「たまたまよ。……さあ、広木、絹さん私たちのために美味しくお料理して頂戴ね。ジルちゃんは材料調達をお願い」
 私たちという時、彼女の手がS君の肩に置かれた。
 助かった。
「はい」と、僕とジル。
「俺が採ってきたのに……」と、稲作。
「さあ、S君、美味しいお料理が出来るまで、どこかへ連れて行って下さるわよね」
 もらわれていく子犬のように悲しげな表情を残し、S君は麗華さんに連れて行かれた。

 暫しの脱力の後。
「……さあ、始めようか」
 スケープゴートに選ばれなかった僕らは、哀れなS君のために心の中でお祈りをしながら作業に取りかかった。
【登場人物紹介】はこちらへ。
 去年のブログ「モリーユ」はこちらへ。


 今日の写真は「トガリアミガサタケ」(2006.04.15福島県で撮影)
 写真を撮すからまだ採らないで!と念を押してから、撮した1枚です。
 何でもない道ばたに生えている編み笠茸は、日本でも少し認識されだしましたね。
 ヨーロッパでは高級食材なのですって。

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2006/04/17

マダム麗華

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「いらっしゃいませ、麗華さん!!」
 彼女がやってくると、つい声がはずんでしまう。身体にぴったりと合った一流ブランド、オーダーメードの深紅のロングドレスとピンヒール。田舎町では見られないようなゴージャスな装いだ。
「絹さん、お元気そうね。まぁ」
 麗華さんの興味が奥に席に移った。
 彼は、一番目立たない席で、大学ノートに一心不乱に何か書き込んでいる。いつもの姿だ。
「S君、お久しぶりね。また一段と私好みに――」
「あっ、マダム……」
 S君は、頬を赤く染めて会釈をした。薔薇の香水で気付いていたはずだが、彼女に見つからないようにうつむいていたのだ。
 なぜなら、
「S君、学校は楽しくて?」
「はい!」
 間髪を入れずに元気に答え居るS君。
「つまらなくなったら、いつでもいらしてね。あなたなら、大歓迎よ」
 以前から目を付けられているのだ。〔Madam☆Rose〕で働かないかって。
 真面目な学生の彼にとって、麗華の誘惑は強烈だろう。申し出を受ければ人生が180度変わるだろうから。

「ちわ~す。おっ!マダムが居るな」
 稲作とジルがやって来た。
 稲作にからかわれるのはわかっているが、助かった、という顔をするS君。
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 土曜日曜で、福島県に行って来ました。前橋→小山→水戸→福島と北へ向かうごとに散っていた桜が見頃になっていき、福島は満開状態でした。

 今日の写真は「イワウチワ」(2006.04.15福島県で撮影)
 岩団扇は岩地に咲き、葉が団扇に似ている事から。林の下に一面に咲く様子は大変美しいです。

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2006/04/14

ラーメン大好き○○さん!

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「絹さんと話してると辛気くさくていけねぇ」
 〔月の光〕から戻ってアパートでくつろぐ二人。
「シンキクサイ?」
「じれったくて、イライラするってことだ」
「お腹が空いているのでは?あなたはそういう傾向にあります」
「いわれてみれば腹減ったな」
「何か作りましょう。フレンチトーストとホットケーキ、どちらが良いですか」
「バター臭いものばっかりだな」
「そうでしょうか」
「鍋にお湯を沸かしてくれ。カップ2杯半だ」
「?」
 言われた通りきっちりと量って火にかけるジル。
「沸いたか?このタイミングが大事なんだ」
 冷蔵庫から卵を1つ取りだし、慎重に鍋に割り落とす稲作。
「黄身を壊したら台無しだ」
 稲作は、袋からしょうゆ味のインスタントラーメンを取り出し、鍋に投入している。
「5個入り198円。俺たち貧乏人の味方だ」
 稲作は、鍋から離れずに、麺のほぐれ具合を慎重に確かめている。
「それは、それほどデリケートな食べ物なのですか」
「そうだ。……よし!」
 フィニッシュ。火を止め、粉末スープを卵を壊さないように混ぜ、そのままソファへ。
 ジルはどんぶりを持ったまま、稲作の隣に立っている。
「冷めるし、洗い物が増えるから使わねぇ」
 稲作は鍋の取っ手を持ってラーメンをすすり始めた。
「おかしいです」
「これが正しい食い方だ。見ろ、この半熟卵の黄身のうめぇこと」
 何とも言えない幸せそうな顔をしてラーメンを食べる稲作を、ジルは不思議そうに見ている。
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 すみません。堅苦しい事を書き過ぎたので、今日はお馬鹿な一幕を。
 インスタントラーメンって、有名店のラーメンとは別の食べ物として、美味しいと思うのは私だけでしょうか。


 今日の写真は「カキドオシ」(2006.04.09群馬県で撮影)
 花の後の茎が蔓のように延び垣根も通す事から垣通し。
 図鑑には子供の癇を取る薬に使った事から癇取草ともいうと書かれています。糖尿病の父がカキドオシ茶を飲んでいました。当時は「ほんとに効くの?」と思って見ていましたが、調べてみると、こうありました。
『血中のコレステロール値や中性脂肪値を下げる、ダイエットにも効果。
カキドオシには利尿作用があり、古代中国医学では「淋を通じる」作用があるといわれる。「淋」とは、腎臓や膀胱の病気により尿がでにくい状態をいう。
血糖値を下げる作用が著しく強いことが、富山大学薬学部から発表された。また、そのエキスには副作用がまったく無いということも分かった。』
 インターネットって便利ですね。
 味は、枯れ草にお湯を注いだような癖のない味でした。

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2006/04/13

ジルの事情

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「あまり考えすぎると、身動き出来なくなる事もあります。……私は、誰かの人生を変えてしまうかも知れませんが、その人の事情は考えません」
「恋愛の話?あまり一方的に行動すると、ストーカーと呼ばれちゃうよ」
 美しすぎるストーカーは恐すぎる。
「私は、その人を信じています」
 ジルの瞳が、稲作を見詰めている。
【登場人物紹介】はこちらへ。

 すみません、今日はお話が思い付きませんでした。


 今日の写真は「ニョイスミレ」(2006.04.13群馬県で撮影)
 如意菫と書きます。家の庭にも咲き始めました。一見スミレとは思えないほど小さな花を咲かせます。

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2006/04/12

悲しみの想像

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「チラついちゃったんだ。年取った両親や兄弟の顔、大きな原因のはずの彼女の顔がね。親兄弟が悲しんでいるのを想像するのも辛かったし、一度は結婚まで考えた人が、僕のせいで不幸になるのはやだった」
 絹さんは、コーヒーのお代わりを注ぎながら言った。
「そんなタマじゃないだろう、って言いたいところだが、あの人、最後にあんたの事を気にしてたもんな」
「あの時死んでしまっていたら、その事に気付く事はなかった」
「こうして俺たちが会う事もなかった」
「そうだね。……まだ、結末を迎えていないけれど生きていて良かったと思っている。歳をとると余計にそう思うのかも知れない。同年代で健康を害している人も、彼女のように亡くなってしまった人もいる」
「そうだなぁ、若くったって明日生きてるかなんてわかんねぇもんな」
「どうして、簡単に自殺したり、人の命を奪ったり、出来るんだろうね。自分の肉親や、相手の家族の悲しみを想像出来ないのだろうか。……僕はやっぱり臆病者なのかなぁ」
「あまり考えすぎると、身動き出来なくなる事もあります」
 ジルにはジルの事情があるのだ。
【登場人物紹介】はこちらへ。
僕と彼女のお話は、去年のブログで書いた「価値観」をご覧下さい。


 今日の写真は「カジイチゴ」(2006.04.10群馬県で撮影)
 梶苺。葉がクワ科のカジノキに似ている事から名前が付けられました。
 本来の自生地は関東地方以西、太平洋側の海岸や沿海の山地ですが、写真のカジイチゴは家の庭で撮したものです。「木イチゴ」の商品名で売られていて、カジイチゴと承知の上で買ったのです。洋もののラズベリーは香りが強すぎるので、こちらにしました。去年は、食べきれないほどなりましたが今年はどうでしょうか。

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2006/04/11

経験

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「人生なんて、何処でどう転ぶかわかんねぇからな」
「?」
「前にも話したかも知れねぇけど、ガキの頃の俺はいつか何かしでかすだろうって言われてたんだ」
「覚えてる。この町に遊びに来て、智紘君に出会った事で乱暴じゃなくなったんだよね」
「あの頃は力加減がわからなくて、人に怪我させた事もあったんだ。ここでじいさんに出会って拳法習って、こいつの使い方を教わった」
 稲作は、拳を小さく上げて見せた。
「使い方って?」
「使わない方法かな。下手に使うと人殺しになるってことを叩き込まれた。……今の若い奴らは痛みを知らな過ぎるのさ。殴られたり殴ったりの身体の痛みも、いろんな経験をして覚える心の痛みも」
 稲作には、僕などには思いも寄らないしがらみがある。僕らにとってのそれは、目に見えない家の事情だったり、病気だったり、能力の限界だったりするのだが。
「僕はこんなだから、子供の頃、殴ったり殴られたりっていう経験はない」
「お袋さんにも?」
「もちろん」
「信じらんねぇ。俺なんか玄能で殴られた事があるぜ。頭じゃなかったから、今、生きてる」
 玄能(げんのう)は大きな金槌の事だ。
「身体の痛みの経験はなくても、心の方は経験豊富だよ」
「そうだよなぁ、あんた、自殺しようとしたんだもんな」
「自殺?」
 黙って聞いていたジルの瞳が輝く。
「よしてよ、昔の話だ」
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 我が家の庭にもやっとタチツボスミレ、ニョイスミレが咲き始めました。ドウダンツツジも咲き始めましたが、やはり今年も満天星のようには咲いてくれませんでした。原因は日当たりか、肥料不足か、老木のせいでしょうか。

 今日の写真は「ヤマエンゴサク」(2006.04.09群馬県で撮影)
 山延胡索と書きます。前に紹介したキケマンと花の形が似ていませんか。同じケシ科・キケマン属です。

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2006/04/10

どうすれば?

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「君はどう思う?」
 昼飯を食べ終えて、コーヒーをすする稲作に、絹さんが訊ねてきた。
 どう思うったって……。
 どの年代にもキレやすいヤツが増えているように思う。確かに一番分別盛りの絹さんの年代が凶悪事件を起こすニュースは多い。
「あんたにその心配はねぇと思うがなぁ」
「わからないよ。犯人の周りの人たちの印象は、普通の人っていうことが多いんだから」
「あんたは普通の人の代名詞みたいだもんな」
「もう」
「絹さん、心配はいりません。その時は私が助けてあげます」
 二人の会話を聞いていたジルが言う。
「君が?どんな風に?」
「その時が来たら教えてあげます」
 親切なのかわからない申し出に、絹さんはあいまいに微笑んでいる。
「ま、絹さん、そんな事にならねぇように十分気を付ける事だな」
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 昨日県内の名所、二千階段に行ってきました。子王山(550メートル)を丸太で作った階段を歩き、「かあちゃん茶屋」から「みはらし茶屋」までが2000段あるのだそうです。
 去年は全てを歩きましたが今年は麓のみでした。
【出会えた花たち】
ニリンソウ・ミヤマキケマン・ノジスミレ・マルバスミレ・コスミレ・カキドオシ・カテンソウ・アカネスミレ・タチツボスミレ・モミジイチゴ・ヤマブキ・ヤマエンゴサク

 今日の写真は「ヒナスミレ」(2006.04.09群馬県で撮影)
 雛菫です。ほんのりとしたピンク色が写っているでしょうか。大好きな菫の1つです。
 二千階段からの帰り道。車で走っていると、斜面一面にスミレ。タチツボスミレの空色ではありません。ピンクだ!ヒナかも知れない!!と、駐車出来そうな場所に車を止めて見に行くと、ヒナスミレの群落。こういう場所に出会えた時、植物ウオッチングの喜びを感じるのです。

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2006/04/07

出発

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「今日は行かないの?家庭教師」
「行くかよ、もうお役ご免さ」
 喫茶店〔月の光〕。相変わらず暇な店だ。
「あれぇ、でもお迎えが来たみたいだよ」
 窓の外を花梨が通った。
 しばらくして、
「いらっしゃいませ、花梨ちゃん」
「どした?もう行かねぇって言ったろう」
「イチゴパフェ食べに来たんだもん。勉強なんて、学校だけで十分よ」
「行く気になったのか?」
「3年生になれるんだって」
「そっか」
「ジルさんと妙さんは?」
「妙は東京。ジルもだ、仕事で」
「何だ、つまんない」
「俺たちで我慢しろ」
「……おじさん2人じゃな」
「悪かったな」
「聞こえちゃった?」
「花梨」
「?」
「ガンバレよ」
「はい」
 花梨は、稲作の目を真っ直ぐ見据えて答えた。
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☆お知らせ―明日・明後日 喫茶店〔月の光〕はお休みさせていただきます☆


 翡翠さんのブログで紹介されていた「成分分析」で分析した僕たちの結果です。

広木稲作の成分解析結果 :

広木稲作の71%は勇気で出来ています。
広木稲作の22%は魔法で出来ています。
広木稲作の6%は見栄で出来ています。
広木稲作の1%は宇宙の意思で出来ています。

ジルベールの成分解析結果 :

ジルベールの61%は赤い何かで出来ています。
ジルベールの28%は汗と涙(化合物)で出来ています。
ジルベールの8%は不思議で出来ています。
ジルベールの1%は勇気で出来ています。
ジルベールの1%は毒電波で出来ています。
ジルベールの1%は信念で出来ています。

絹の成分解析結果 :

絹の95%は成功の鍵で出来ています。
絹の5%は知識で出来ています。

 いかがでしょう。
 僕以外はいい線いっていませんか。

 今日の写真は「ハヤザキヒョウタンボク」(2006.04.05群馬県で撮影)
 早咲き瓢箪木と書きます。瓢箪木の由来は写真のように2つ並んだ花が実になると、並んだ2つの赤い実が瓢箪のように見えるからです。
 葉が出る前に咲く花は、一見、盛りが終わり色あせたロウバイみたいで目立ちません。
 宮城、群馬、埼玉、山梨、長野で見られる、日本固有種です。

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2006/04/06

花見Ⅱ

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「こんにちは」
「花梨ちゃん、いらっしゃい。お民さんも、ようこそ」
 と、ジル。
「奥様は、坊ちゃまの所にお残りになると言われて」
 お民ちゃんが応える。
「みんなで病院に行ったのか?」
 と、稲作。
「うん。心配しないで、ママはここに来たくないんじゃないの。二人で行っていらっしゃいって」
「そっか」
 稲作は、ムクは何もしなかったのか。と言う言葉を飲み込んだ。
「稲作、あそこに」
 ジルが、満開の桜の木の下を指さす。もちろん見えない。
「消したんじゃ――」
「大人しく見守るそうです」
「なあに?」
 二人のやり取りに不思議そうな顔をする花梨。
「なんでもねぇ。兄ちゃんはどうだ」
 花梨は首を横に振る。
「そっか。……仕方ねぇ、なるようになるのを待つんだな。お袋さんと二人で」
 今度は首を縦に振る花梨。
「元気を出して。もう、部屋の中の物が勝手に動く事はありませんから」
「はい」

「よく来たね、花梨ちゃん。おばあちゃんが作ったお寿司、口に合うかねぇ」
 予め事情を話しておいた、お梅ちゃんが太巻き寿司を詰めた重箱を持ってきた。
「花梨ちゃん、お梅さんのお寿司は美味しいのですよ」
「私も少し、お料理を用意してきました」
 お民ちゃんの包みは洋風のオードブル。
「わっ、凄い!これってキャビア?」
 食べる気満々の妙ちゃん。 
 去年より賑やかなお花見の時間はゆっくりと過ぎていく。
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 今日は1年ほど前にこのブログにも書いた大学病院に、半年ぶりの診察に行ってきました。結局、1月ほど続いた血尿は、何回かの検査を受けただけで何処も治療することなく治ってしまいました。
 1年前、掛かり付けの病院で紹介状を書いてもらい、頭の中が真っ白なまま、色々な機械で検査をされて……。もしあの時、悪い結果が出ていたら今頃は居ないかも知れません。運が良かったのです。身体の中の事は解りませんものね。
 今日はこの一年の怠惰な生活を、ちょっと反省です。

 今日の写真は「ハマダイコン」(2006.04.02神奈川県で撮影)
 浜大根。海辺に住んでいる人にとっては、珍しくないでしょう。でも私は、この花を見ると「ああ、海に来たんだなぁ。遠くに来たんだなぁ」という気持ちにさせてもらえる花なのです。オオアラセイトウ(花大根)の花と比べると、白と淡い紫のグラデーションの優しい雰囲気のある花です。

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2006/04/05

花見Ⅰ

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「ねぇ絹さん、どうして4月4日にはお餅がないのですか?」
「?」
 ?マークの顔をして首を傾げる絹さんに代わって、稲作が応える。
「まだ言ってるのか」
「マダムが4月4日は、私たちの日だと教えてくれたのです」
「私たちだと?お前もその仲間に入ってるのか?」
「そのようです」
 真顔で話すジルの様子が可笑しいのだろう、絹さんの肩が小刻みに揺れている。
「笑うなよ、絹さん。ジルはマジで訊いてるぜ」
 麗華は、3月3日ひな祭りと、5月5日端午の節句の間の4月4日は、男と女の中間だからオカマの日だとからかったのだろう。ジルは桜餅と柏餅が好きなのだ。味など解らないから、見た目で好き嫌いを判断している。
「お餅ねぇ。麗華さんをイメージすると、塩漬けの葉の代わりに真っ赤な薔薇の花びら、餡はバターを利かせた洋菓子風黄身餡がいいよね。お餅の色は何色がいいんだろう」
「言ってろ、バカバカしい。……あーあ、腹減ったなぁ」
 この、のんびりした会話。何をしているのかというと、何もしていないのだ。
 早めに公園に来て、ビニールシートを敷いて花見の場所取りをしている。稲作はごろりと横になり、絹さんは自分が作ってきたサンドイッチや唐揚げを並べ、ジルは飲み物の準備をしている。後から妙と気功3人衆、沼田のじいさん、お千代ちゃん、お梅ちゃんが弁当を持ってやって来るのだ。花梨と母親とお民ちゃんにも声を掛けた。

「みんな、お待たせ~!」
 妙ちゃんたちがやってきた。
「シーッ、静に。眠りました」
「あれぇ?食いしん坊のくせに寝ちゃうなんて――」
 妙ちゃんの頭上にピカッと電球が輝いた。何かイタズラを思い付いたらしい。
「来る途中で買ってきたんだ」
 開いた包みの中には熱々の焼きまんじゅう。
 1本取り出すと、そっと稲作の鼻先に近付けた。
 パクッ!
 目も開けないうちに食い付く稲作。
「凄い!」
「魚だったら一発で釣られたな」
「本能で生きてるんだね」
「――悪かったな。うめぇや、これ」
 稲作は、半分眠りながら口だけ動かしている。
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 2日目は雨模様のため、油壺マリンパークへ。自然観察好きにとって、水族館で魚を見る事にも退屈をしません。アシカとイルカのショーも可愛かったし十分楽しめました。
 パークの直ぐ下の海岸で、初見のキケマンを見て、磯遊びをしました。アメフラシ、イソギンチャク、小さなウニなど普段見られない小動物達にも大満足。
 2枚目のこの写真は、泊まった民宿の夕食です。山の人間の私は、新鮮な魚の美味しさに感激でした。どれを食べても嫌な生臭さが無く、美味しく頂きました。

 今日の写真は「キケマン」(2006.04.02神奈川県で撮影)
 黄華鬘と書きます。華鬘は仏殿の欄間などの装飾具の事。
 今日の写真は、背景も狙ってみました。山人の私は、黄色いケマンと言えばミヤマキケマンです。初めて見たキケマンに「やけに大きいなぁ」と思いながら写真を撮り、Pさん(久々登場)に見てもらうと、キケマンだと教わりました。
 図鑑には、関東地方以西の海岸や低地に生える越年草とあります。
 見た事が無い訳です。群馬県は海が無い上に関東地方と言っても、関東地方以西とある場合は見られない物もあるのです。

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2006/04/04

4月4日

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 ……美味そうな匂いがしている。
「広木、やっとその気になってくれたのね。嬉しいわ」
 場所は、なぜか麗華の倒錯した店、クラブ〔Madam☆Rose〕。
 いつも通り、ドレスで着飾った綺麗な男たちと、中世ヨーロッパ貴族の城のような華やかな内装だ。
 ダンスパーティーでもやっているのか。みんな正面のホールに出てペアを組んでいる。
 いつもより賑やかだ。
「来てくれたって事は、そうだと思って良いのね!」
 やけに嬉しそうな麗華。
「?」
 目前の人の波が、「モーゼの十戒」の海のように割れ、一番奥にスポットライトが当たった。
 光に輝く金髪巻き毛。金銀に彩られた派手な衣装。――ジル。
「ようこそ、秘密の花園へ」
「なあ、何のパーティーやってんだ?」
「今日は4月4日。私たちのお祭りです。……さあ、誓いの接吻を」
「ギャーッ!」

「稲作、稲作、しっかりして下さい」
「――地獄に堕ちたのかと思ったぜ」
「悪い夢を見たのですね」
 あの後。
 ジルは、俺には見えない犬の霊と無言で対峙し、二人の間に閃光が走ったように見えたのだ。
 その後の記憶がない。
 ここは稲作の事務所兼住居。いつもの寝床、ソファベッドの上だ。
 美味そうな匂いがしている……。
「ヤツは?」
「もう暴れる事はありません」
「消したのか?」
「私の命令には逆らわせません。初めから私に任せてくれれば、こんな痛い目に遭わずにすんだのです」
「すまん、犬とは思わなかったんだ。……花梨は?」
「妙ちゃんが送っていってくれました」
「そうか。これから、どうするかだな」
「しばらくは休んで下さい。篠原先生のところに連れて行ったり大変だったのですよ」
「すまなかった」
「さあ、食べて下さい。私ばかり頂いては申し訳ありませんから……マダムに教えていただいたレバーの揚げ物です」
 気絶している間に飲んだのか。ジルのヤツ、いつもより元気そうだ。
 今日は禁酒、夕飯を食べ終えて一息ついた時にジルに聞かれた。
「ねぇ、稲作」
「?」
「どうして4月4日にはお餅がないのですか」 
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 土曜日の午後は、場所を移して都内の公園へ。こちらには珍しいカイコバイモに会いに。小さい花ですが数輪見付ける事が出来ました。遠かったので写真は撮れませんでした。
 池の周りの5,6人のバードウォッチャーが。何か珍しい鳥が来ているのか訪ねてみたらカワセミが現れるとの事。カメものんびり甲羅干しをしていました。
 天気が穏やかで大勢の花見客が芝生でお弁当を広げていました。
 続きは明日。
【出会えた花たち】
アマナ・ニリンソウ・イチリンソウ・カタクリ・ユキザサ・シュンラン・シロバナエンレイソウ・カイコバイモ・セントウソウ

 今日の写真は「ヨゴレネコノメ」(2006.04.01東京都で撮影)
 汚れ猫の目です。イワボタンの変種。地味なネコノメソウですが、この季節、会いたい花の1つです。

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2006/04/03

正体

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「稲作大丈夫かなぁ」
 いちごパフェを食べ終えて、チョコレートパフェを食べ始めながら言う妙ちゃん。
「どこに行ったの?」
「あなたの家ですよ、花梨ちゃん。悪魔払いに出掛けました」
「悪魔?悪魔じゃないわ……きっと」
「悪魔というのは言葉の綾です。何者かは、あなた自身に憑いてきていません」
「ムクのような気がするの」
「ムク?」
「私が生まれた時に死んだ犬。……パパが言っていたわ。花梨の事はムクが護ってくれるって」

「良いと言うまで開けるなと言われたんだけど、ちょっと前から静になっちゃったんだよ」
「お民さん、避難していて下さい」
「大丈夫かい?」
「はい」
 花梨の部屋の前。
 稲作は、慣れているから心配いらないと言っていたが、犬の霊との話し合いは無理のはず。
 殺されてはいないはずだが――。
「稲作」
 ドアを開けると、Tシャツを破かれて半裸状態の稲作が茫然自失で座り込んでいた。
「――これからだ。やっと大人しくなったんだ。……お前、嬉しそうな顔しないんだな」
「出来ません。……傷を見せて」
「死にはしないさ。まだ見えねぇよ」
 彼は、胸の青く輝くペンダントをさわる仕草をした。本当にまだ見えていないようだ。
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 昨日、一昨日は早春の花に会うために東京都、神奈川県に泊まり掛けの旅をしてきました。
 一昨日は東京の山沿い。午前中に訪ねた場所には、植物観察の人が大勢いた事にびっくり。毎年のように行く場所ですが、あれほど人がいた事がありませんでした。雑誌か何かにで紹介されたのか、デジカメの普及で自然観察人口が増えたのでしょうか。
 午後以降の紹介はまた明日。
【出会えた花たち】
ニリンソウ・アオイスミレ・ユリワサビ・アズマイチゲ・アブラチャン・キクザキイチゲ・ハナネコノメ・コチャルメルソウ・ヨゴレネコノメ・ツルネコノメ・カントウミヤマカタバミ・セントウソウ・ナガバノスミレサイシン・ヒメウズ(蕾)・ナツトウダイ・ミミガタテンナンショウ・カテンソウ・ヤマエンゴサク・タチツボスミレ・ヤマルリソウ・ヒカゲスミレ・カキドオシ・ミヤマキケマン

 今日の写真は「ナガバノスミレサイシン」(2006.04.01東京都で撮影)
 長葉の菫細辛と書きます。太平洋側の雪の少ない地域に分布します。

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