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2006/03/16

密室

IMGP02701
 やりすぎたか。
 花梨の目尻から涙がひとすじ流れた。
 この状況で声を上げないなんて、大した根性だ。
 稲作は彼女の手を放し、起き上がった。
 と、その次の瞬間、花梨の表情が変わった。
 これまで見たことがない恐怖に歪んだ顔。
 !?
 ガコーン!!
 目から火花が――。

 数分。いや、数秒の間のことだろう。
 稲作は床に寝ていた。
 最初に目に入ったのは花梨のひざ。彼女に揺すられて気が付いたのだ。
「痛ぇ、何なんだよ、これ」
 頭を探ると後頭部がぬるりとする。切れたか。
 起き上がると、床に血が滴る。
 椅子が、飛んでもない格好で床に転がっている。頭に当たったのはこれか。
「心配すんな、頭の怪我は大袈裟に血が流れるんだ。お前のせいじゃねぇから。……タオル、あるか?」
 芝居を忘れてタオルを取りに行く花梨。

「邪なことを考えるからです」
 またそれを言う。
「考えたんじゃねぇ、一芝居うってみたんだ」
「考えが浅いからそういうことになるのです」
 事務所に戻った稲作は、ソファ兼ベッドでうつぶせになっている。あの後、篠原医院に駆け込んで手当をしてもらったのだ。7針縫われた。
 ジルが、氷嚢を作って頭に乗せてくれた。
「すまん」
「もったいない。私も付いていけば良かった」
「あの場で血なんか飲んでみろ、花梨の心は本当にどっかに行っちまうぜ。……ちょっとだけ解った気がするぜ。あの部屋は密室だったんだ。俺が鍵を掛けたから」
【登場人物紹介】はこちらへ。


 今日の写真は「ノジスミレ」(2006.03.16群馬県で撮影)
 野路菫と書きます。スミレと比べると花も葉も美しさに欠け、野路という言葉が付くことが似合っているように思います。この写真は特に、寒さを絶えてやっと咲いた花ですか尚更貧弱です。身の回りで見付けた、今年最初のスミレです。
 スミレの季節になると、道路に這いつくばって匂いを嗅いだり、写真を撮ったり、妖しい行動をとってしまいます。

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コメント

スミレって本当に撮るのが大変ですよねぇ…
私も、かなり妖しい姿勢で見入ってしまってます

投稿: 翡翠 | 2006/03/17 11:28

いらっしゃいませ、翡翠さん。

山道なら大丈夫ですが、道ばたは恥ずかしいですよね。
でも、ついやってしまいます。

投稿: | 2006/03/17 14:43

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