空っ風と共に
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ドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
「30分寝かせて、絹さん」
吹き荒ぶ空っ風と一緒に入ってきた彼女は、そう言って稲作達の指定席に座ると、テーブルに突っ伏して眠ってしまった。顔がよく見えなくて誰だか思い出せないけれど、彼女は僕の名前を知っている。
酷く痩せた女の子だ。流行っているのか、自分でジョキジョキ切ったような短髪をして、破れたジーンズと大きすぎるようなクリーム色のセーターを着ている。この季節にしては薄着だ。毛布を掛けながら、そっと彼女の顔を見てみる。ノーメイクで幼く見えるけれど、妙ちゃんくらいの年頃か。やはり彼女に見覚えがない。
他にお客様はいない、穏やかな午後。
「ちわ~す」
いつものように賑やかにやってきた稲作を、僕は立てた人差し指で口を押さえて出迎えた「しーっ」
「なんだ?」つられて小さな声で聞く彼。
「誰だか思い出せないんだけど、僕を知っているんだ、彼女」
僕は眠っている彼女を指さした。
「後10分経ったら起こす約束なの」
稲作は、どれどれ、という風に彼女をのぞき込む。
「カトンボみてえになっちまったな」
「え?」
それは子供の頃からの僕のあだ名。言われるのが恥ずかしかったあだ名、カトンボの正式名はガガンボ。夏に時々家の中に入ってくる、長い足がすぐに取れてしまう大きな蚊みたいな虫だ。
「呼ばれてたのか?あんたの事じゃねえぜ。ピッタリだけど。……今何時だ?」
「3時20分だけど」
「そうか……」
「知ってる人?」
「絹さんも知ってる娘だ」
カウンター席に着いた稲作は言った。
「起きれば思い出すかも知れねぇぜ」
稲作は彼女が目を覚ますまで僕に教えてくれないらしい。意地悪ではなく、その間に何か考えようというつもりのようだ。
僕は大人しく待つことにした。
彼は、彼女にとって一番の‘何か’を考えてくれるから。
夕べ、山村美紗物語を見ました。
2時間ドラマ好きには、山村美紗さんの狩谷警部、西村京太郎さんの十津川警部は欠かせない存在ですよね。両警部とも、TV局によって違う俳優さんが演じていて、それを見比べるのも楽しいし、特に山村さんの作品は事件が起こる世界が派手で、探偵役が美人、アッシー君が船越栄一郎さんと、とても親しみがあるお二人の作品ですが、不思議と小説は読んだことがありません。
今日の写真は「スミレサイシン」(2003.05.10群馬県で撮影)
菫細辛と書きます。なぜ、スミレの後ろにサイシンが付くのだろう。この疑問が植物観察に興味を持った最初でした。
地下茎をとろろのように摺り下ろして食べる地方があるそうです。スミレサイシンの仲間は、距(花の後ろの部分)が丸いのも特徴の一つです。
撮影地は三国峠。日本海側の植生も見られる所です。なぜこんな事を言うかというと、群馬県はどちらかというと太平洋側の植物が多く、見られるスミレサイシンはナガバノスミレサイシンが多いのです。
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