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2005/12/28

夢と現実

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 店に戻った妙は、いい気分で酒を飲み酔い潰れてしまった。無防備なのは信頼されている証拠だろう。
 閉店後、俺たちは麗華のマンションに転がり込み、妙を麗華に託して屋上に出た。麗華は俺とジルの事情を知っている。
「妙には幸せになってもらわなきゃなんねぇからな」
「あなたは妙ちゃんを幸せに出来ないのですか。私がいるから――」
「違う、お前は関係ない。その日暮らしの俺にはその資格が無いのさ。妙は智紘の従妹だ。ヤツの分まで幸せに長生きしてもらわなきゃ困るんだ」
「人の幸せは好きな人と共にいることと思います」
「理想だな。だから俺と妙は無理なんだ。お前は見抜いているだろう」
「昌子さん」
「言うな。人間には叶わない思いっていうのもあるんだ。世の中、思い通りにならないことの方が多いんだぜ。子供の頃見た夢が叶うヤツなんてほとんどいないんだから。そこをどういう風に自分の心と折り合いをつけるかだな。今の日本には、その折り合いがなかなか付けられずに、親の脛をかじってまで夢を追い続けるヤツもいる。そんな根性じゃ叶う夢も叶わなくなるぜ」
「あなたはどんな夢を見たのですか」
「宇宙飛行士」
「――」
 子供の頃のこの夢を言うと大抵のヤツは黙る。大きすぎる夢は諦めもつけやすい。現実的な夢は家業の農家を継ぐことだったが、俺は、それさえも出来ずにこんな暮らしをしている。
「宇宙は飛べなかったが、時空を飛び回ってお前と出会った。宇宙飛行士よりずっとエキサイティングな経験だぜ」
「私の夢は叶いました。それは稲作、あなたと再び会えたこと」
「小さな夢だな」
「私は奇跡だと思います」
「……クリスマスか……。映画だったらキリストは宿敵だろ?」
「私には信じる神はありません。……私が信じているのは、あなただけ」
 参るよなぁ、そんなことを言われたんじゃ裏切ることなんか出来やしない。
「あなたの傍に行ってもいいですか」
「ああ、いいぜ」
 こんな現実があってもいい。


 このブログ、1月15日で1年になります。事の始まりは、ブログにHPの行動記を移行出来ないかというものでした。ココログに登録してみたものの、日記形式が行動記には合わず、そのまま放置状態に。
 もったいないから本編中で、僕(絹)が言った「暇だからHPでも作りたい」という言葉を受けて、この〔月の光〕だよりが生まれました。本編とは違う僕ら登場人物の何気ない日常生活。
 この超テキトー企画、こんなに続くとは思いませんでした。今年も色々変化したように、来年も形が変わっていくことと思います。
 そんな喫茶店〔月の光〕ですが、来年もよろしくお願い致します。 

 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「キスミレ」(2005.04.24大分県で撮影)
黄菫と書きます。別名・イチゲキスミレ。葉が小さい割に花が大きい、といっても庭のパンジーよりはずっと小さい花です。山梨県以西の局地的な分布のため、群馬県から会いに行くのは大変です。背景を見て下さい。野焼きで焼け野原になった高原をキスミレの群落が黄色に染めます。炭で真っ黒になりながら撮したこの1枚は今年のお気に入りなのです。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

 今年の喫茶店〔月の光〕は今日で仕事納めになります。
 ちょっと出掛けてきます。
 年明けに、面白い報告が出来ると思います。

 それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい。

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2005/12/27

初めてのチュー?

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「失礼します」
「な~んだ。仕事ってここの事だったんだ。だったら一緒に来れば良かったのに。ジルにすんごく美味しいディナーご馳走になったんだよ、このドレスも買ってもらったの」
「悪かったな、ジル」
「当たり前のことをしただけです。ところで、こちらでは私の名はセリオス」
「そうだったっけ、おかしな名前を付けられたもんだ」
「私は気に入っていますが」
「そうだよ、とっても格好いい。王子様みたい。稲作は名前無いの?」
「あるか。用心棒Bだ」
 あと7分。
「変な名前」
「妙、ちょっと話があるんだけど。マダム、席を外していいか?」
「いいわよ」
 と、麗華。
「来い!」
「ちょっと!何よ!!」
 クラブ〔Madam☆Rose〕は雑居ビルの1階。ここで働いていた時、休憩時間によく行った場所がある。ビルの屋上。星のない空を眺めながら煙草を吹かしたっけ。
「遅いぞ」
「しょうがないじゃない、ハイヒールなんて久しぶりなんだから!」
「ちょっといいか」
「キャーッ!何すんの!」
 この間お姫様だっこを嫌がっていたから、肩に担いだ。ドレスの裾が狭くて背負えないからだ。沼田のじいさん風に言うと、美女を誘拐する悪漢のよう。
 間に合うか。

「悪かったな」
「悪いわよ!」
「これ、渡したくて」
 妙は嬉しそうに見える。手渡した小さな包みを素直に開けた。
 小さな青い石は、ジルがプレゼントしたドレスより安価だろう。
「ありがとう。これとお揃いだね」
 耳のピアスに触れながら言う。
「つけて」
 そんな事したことがない。もたもたしていると、妙は、目を閉じてくちびるを突きだしてきた。
 キス?
 幼稚園児の初めてのチューみたいだ。
 ペンダントをつけ終えた稲作は、彼女の頬を両手で包むと、そっと額にくちびるを当てた。
 妙は不満そうに目を開ける。
「にゃう~!何でおでこなの?」
「晩飯にコテコテにんにくラーメンの大盛りと餃子食って、歯磨いてねぇんだ」
「どうしてそう言うロマンの欠けらも無い事言うわけ?」 
 妙は呆れて、笑いながら言った。


 最近猫たちが冷たいのです。毎日牛乳をねだりに来ていた彼らは、ここのところ来たり来なかったり。
 にゃうごろうと名付けたロシアンブルーは、もうずいぶん顔を見ていません。
 斑猫にゃうたろうと、チャトこと大きな体のチャトラ猫は「一応生きてますよ」と姿を見せるだけで、あげた牛乳も飲まずに行ってしまいます。
 どうやら、彼らにも恋の季節がやって来ているようです。

 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「アケボノスミレ」(2005.04.23大分県で撮影)
 曙菫と書きます。この曙も昨日の有明と共に夜明けの空を表す言葉です。

 曙……夜明けの空が明るんできた時。夜がほのぼのと明け始める頃。
 有明…月がまだありながら、夜が明けてくる頃。また、その月。(広辞苑)

 日本語は美しいですね。その美しい言葉をもらった菫は、花びらが厚く鮮やかなピンク色。花が咲く時、葉は未だ丸まっていることが多いのです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/12/26

後10分

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「珍しいじゃないか。イブだというのに誘う女も誘ってくれる女もいないのか」
「お互い様だぜ」
「俺は麗華一筋さ」
 麗華の店、クラブ〔Madam☆Rose〕に来ている。
 客として居座るつもりもなかったが、華やかな店の雰囲気に合わない俺は麗華に頼まれごとをした。書き入れ時のこの時期は、正体を無くす酔っぱらいも増える。だからこうして昔の相棒青田と二人、サングラスにダークスーツ姿で店の隅っこに立っている。用心棒というわけだ。
「あいつ限界だな。速やかに退出願おうか」
 度を超えた酔っぱらいが隣の席に迷惑をかけ始めている。
「久しぶりに、俺が行こう」

「これって同伴っていうの?」
「うちのお店にはそう言う制度はないのよ」
「何ですか?ドウハンって」
「おなじみのお客様に夕ご飯をご馳走になって、一緒にお店に来ていただくの。そうするとあなたのお店での成績がアップするのよ。そういうお店もあるの」
「ボク達は違うね。奢ってもらったのボクだもの」
「まあ、お嬢ちゃんかと思ったらお仲間?」
 と言ったのは、マダム麗華のとなりに座っていた綺麗なお姉さん。ジュリアと自己紹介していた。
「お仲間?」
「ジュリア、からかっちゃダメよ。妙ちゃんは正真正銘の女の子」
「妙ちゃんは知りませんでしたか?ここで働いている人は全員男の子です。……稲作はなぜこちらに来ないのでしょう」
「仕事を頼んだから。後で来るように言うわ」
「え!?いるの?稲作」
「お店に入った時から匂いがしていました」
 匂いって……ここは甘いお酒と煙草の匂いしかしない。ジルの言う匂いは気配のようなものだろうか。

「大丈夫か?」
「世話ねぇよ」
 酔っぱらいの一人や二人どうということはない。
「何だそりゃ?聞かねえ言葉だな」
「方言なのか、これ?大したことはねぇって事だ」
「ふうん。……今日も後10分だな」
「イブって24日中じゃないとダメなのか?」
「さあな」
「ちょっと外していいか、青田さん」

 
 今日の前橋は空っ風がビュービュー吹き荒んでいます。
 昨日、最後のholy nightが聴きたいと書きました。夜にTVを点けると、歌の大辞テンという番組に、杉山清貴さんがゲストに。思いがけなく最後のholy nightを聴くことが出来ました。みんな忘れてしまったのかと思っていたから、冬の歌、昭和の名曲TOP20に入っていたことが嬉しいです。

 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「アリアケスミレ」(2005.04.05群馬県で撮影) 
 有明菫と書きます。花の色が有明の空のように変化に富むことから付けられました。写真の花は白に紫のスジが入っているだけですが、もう少しピンク色の花を見たことがあります。
 初めて見つけた時、あまりの嬉しさに道路に這いつくばって写真を撮っていたら、知り合いに声を掛けられて恥ずかしい思いをしましたっけ。
 写真の撮影場所は近所のアパートの駐車場。昨日のスミレのお話のようにコンクリートの隙間から生えていますね。

【登場人物を少しずつ紹介します】
麗華……クラブ〔Madam☆Rose〕のマダム。年齢不詳の超美形(♂)。

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2005/12/25

クリスマス・イブ

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「妙ちゃん、プリンセスみたいです」
「ドレスだけはね」
 ジルが見立ててくれた白いドレスはシンプルだけど品が良い。
「自信を持って下さい。あなたは美しい。私もあなたに合わせてみました」
 美容室でメイクをしてもらっている間にジルも白いスーツに着替えて来た。美容師達がざわついている。誰の目も惹き付けるほどジルは綺麗。
「さあ姫、お手をどうぞ」

「ウソみたい!イブにどうしてこんなに素敵なお店のこんなに良い席が取れるの?予約してたんじゃないよね」
「ふふふ、マダムにお願いしたのです。気に入っていただけましたか」
 高級そうなフレンチレストラン。窓の外は夜景がキラキラ輝いている。
 ジルは気持ちが良いほめ言葉を言ってくれるが、下心が全くない。心が無いというか、ロボットに言われているようなのだ。稲作にもこうなのか。
「私は誰にも恋愛感情を持ちません」

「稲さん、良いの?」
「何が?」
「今日渡さないと、意味が無くなっちゃうんじゃないのかなぁって思ったものだから」
 妙ちゃんとジルがいる時から、時々胸のポケットを押さえる仕草をしている。
「何買ったの?」
「……誕生日の時とお揃いのペンダント」
 稲作は素直に話した。サファイアのペンダント。
「行って来る!どうせ最後は麗華の店だろうから」

 稲作を送り出すと一人きりになった。
 クリスマス・イブのこの時間に、町外れの喫茶店に来る客はいない。待ち合わせとして何組か使ってくれたようだけれど。
 今年も独り。
 雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう……今年はホワイトクリスマスの所が多そうだ。
 ゆきへ、を間違えて、ゆきえ、と打ったら、有希枝と変換されてしまった。
 変なことを思い出す。
 兄は夜更け過ぎに雪江に変わるだろう(山下達郎クリスマス・イブの曲にのせて)……男らしい兄のカップを持つ手の小指が立っていたっけ。あれはボキャブラ天国だったか。
 急に、最後のholy nightが聴きたくなった。
 レコードプレーヤーは何年も使っていない。変え針もないか。

 昔のことばかり思い出している中年男のクリスマス。
 寂しそうに見えるかも知れないが、ここ数年では最も明るく楽しいイブなのだ。
 稲作は元気を取り戻し、この町に戻ってきてくれたし、妙ちゃんもジルもいるのだから。


 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「スミレ」(2005.04.25群馬県で撮影) 
 スミレにはスミレという名前を持つ菫があります。すっと伸びた茎、濃い紫色の花、凛とした姿をしていますね。
 歌詞ではありませんが、アスファルトの割れ目、コンクリートの隙間で咲く姿を見かける強い花でもあります。
 ちなみに、スミレの中にワカシュウスミレ(若衆菫)という名を持つ品種があります。側弁の基部に毛が生えていないのだそうです。若いから髭が生えていないということのようです。菫を見かけたら花の中を覗いて見て下さい。側弁の基部とは、めしべ両脇の花びらの根本のことです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/12/24

恋人ごっこ

「きれいだね」
「はい」
 クリスマス・イブの都会は色とりどりの光で満ちあふれている。
「ふふふ」
「何よ」
「妙ちゃんは、稲作と夜景をみたかったのですね」
「やぁねぇ、そんなことないもん」
 妙は待っていたのだ。待てど暮らせど稲作からのクリスマス・イブの誘いはなく、あんまりだからジルと一緒に来てしまった。ジルは優しいけれど稲作一筋。
 クリスマス・イブ。こんなに綺麗な男の子と本当の恋人同士だったらどんなに素敵だろう。
 考えたら恋敵なんだよなぁ、ボクたち。
「妙ちゃん、もう少し傍に来て。せっかくですから他の人たちと同じようにしてみませんか」
 見せかけだけなんて。
「つまりませんか。あなたに似合う洋服に着替えて、一夜限りの恋人ごっこをしてみませんか」


 一晩経ったら気持ちが少し落ち着きました。従妹の所へは両親と一緒にお参りに行く約束しています。

 ここは絹さんではなく、筆者モードになってしまいます。主人の仕事上、一人でクリスマス・イブを過ごすことが多いのです。今日も独り。ケーキとご馳走は明日です。
 去年もそうでした。何とも暗いことに去年のイブは、ジルが初めて登場したお話を書き上げたのでした。まだ彼に名前は無く、再会の約束をしたところで終わりのお話は、間違われた男〔中世ヨーロッパ編〕です。短編ですから興味のある方はご覧になってみて下さい。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/12/23

……

「どした?」
「なんでもない」
「そうか」
 喫茶店〔月の光〕。いつの通りの時間が流れている。


 もう2年も経ってしまっているのです。
 2年前、どうして何も出来なかったのでしょう。
 会いに行けば良かった。
 結果が変わらなかったとしても、会いに行くべきでした。

 あなたは読書家でいつも本を読んでいましたね。幸せとは言えない家庭環境でしたが、あなたはいつも笑顔でした。幼い頃の想い出しかないけれど。
 独りで寂しかったでしょう。

 1つ年下の従妹の訃報を知りました。
 今更泣いても仕方がありません。
 でも、涙が流れてしょうがないのです。

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2005/12/22

珍道中

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「そんなに気になるのなら、付いていけば良かったのに」
「あんた気にならねぇのか?」
 ここは二人を送り出した後の〔月の光〕。
「ちょっとだけ。妙ちゃん、麗華さんのところに泊めてもらうって言ってたし大丈夫だよ」
「それも気になるんだよなぁ」
 ジルと二人旅だなんて、考えただけでも気が遠くなりそうだ。
 言って置くけれど決してジルのことを嫌いな訳じゃない。あの吸い込まれそうな瞳の色に弱いだけ。

「楽しそうですね」
「だって、東京まで新幹線使ったことないんだもん、新鮮」
 ここは、新幹線の車中。
「早く着きますから。……なぜ、お弁当を買ったのですか?一時間もかかりませんが」
「大丈夫、10分で食べられるから。新幹線のお弁当食べたかったんだもん。……ジルが缶コーヒー飲んでるの初めて見た。トマトジュース売ってなかった?」
「缶は中身の色が見えませんから、何を飲んでも同じです」
「へんなの。――ねえねえ、ジルって凄くハンサムじゃない?」
「そうでしょうか」
「そうだよ、街歩いててスカウトとかされたことないの?」
「ありません」
「みんな見る目がないなぁ」
 簡単なこと。それらしい人間に声を掛けられた後、振り返ったとき、鼻の下を伸ばして歯を前に出してみせればいい。慌てた相手は必ず人違いだと言う。
 

 朝から風が強く、雪が降りそうな空の色でした。午後は予報通り、吹雪みたいになってしまいました。みたいって変ですね。ここ前橋は北関東の太平洋側、寒そうですが、雪は滅多に降りません。だから、本物の吹雪を経験したことがないのです。と、書いているうちに薄日が差してきました。今日はずいぶん不安定な天気です。

 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「ニョイスミレ」(2005.04.20新潟県で撮影)
 如意菫と書きます。別名ツボスミレ。
 昨日のタチツボスミレと比べると、小さくてスミレとは思えないほどです。
 庭に小さな白い花が群生していたら、雑草だと抜かずに花の顔を見てあげて下さい。それは小さなスミレの顔をした花かも知れません。

【登場人物を少しずつ紹介します】
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/12/21

ブライス

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「いらっしゃいませ、妙ちゃん。あれ?」
 大きなカバンを持っている。昨日の説教が効いたのか。
「帰るのか?」
 ランチを食べている稲作が訊いた。となりにジルもいる。
「東京」
「学校?」
 妙は休学してこの田舎町に入り浸っている。
「違うよ。洋服買うの」
「洋服?いつもジーパンとTシャツじゃねぇか。ユニクロかしまむらで十分だろ」
 妙ちゃんは、ぷっと頬をふくらせた。
「ボクのじゃないもん、この娘のだもん。まだ、クリスマス・イルミネーション見に行ってないし……」
「?」
 妙ちゃんがカバンの中から取りだしたのは、
「お人形?」
「可愛いでしょ」
 頭と目が異様に大きい人形。
 頭の後ろの紐を引くたびにピンク・ブルー・グリーン・オレンジと目の色が変わる。
 ちょっと恐い。

「止せよ、ジル」
 反応しそうなジルに、稲作は釘をさした。こんな所で前みたいに目の色をクルクル変えられんじゃたまったもんじゃない。言い訳出来ない。
「後であなただけに」
「見せなくていい!」
「何?一緒に行ってくれるの?稲作」
「俺は仕事だ」
「やっぱりなぁ。じゃ、ジルこれから出勤でしょ、一緒に行こうよ」
「はい」
 俺が一緒に行った方が良かったかも。


 ブログを回っていると、頭と目が大きい人形の写真を見ます。何年か前、テレビコマーシャルで印象的だった目の色が変わる人形。皆さんのブログで名前を知りました。『ブライス』というのですね。ファッションが素敵で、皆さんが夢中になるのがわかるような気がします。リカちゃん世代としてもね。
 
 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「タチツボスミレ」(2004.04.05群馬県で撮影)
 一番身近な野生スミレでしょう。川の土手で、野原で、空色の花を一面に咲かせているのを見たことがありませんか。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/12/20

あなたに会えて良かった

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「トマトか?ブラッドオレンジか?」
 アパートに戻った俺は、冷蔵庫から自分のビールを出しながらジルに聞いた。
「トマトジュースを。――ニンジンはダメです。色がオレンジ色ですから」
 何となくニンジンジュースじゃダメかなぁ、と思ったのだ。
「思った事わかっちまったか?」
「はい、見えました。……特に強く思ったことは見えてしまいます」
「何か見えたのか?」
「さっき、妙ちゃんと話していた時のことです。聞いてもいいですか?」
「ああ」
 ジルに隠すことは何もない。
「思い出してください。その時のことを」
 ジルは青い瞳で俺の目を見詰めた。
 助かるのは、わざわざ話さなくてもいいということ。彼は、あの時俺が見て感じたことを、どう受け取るだろう。
「あなたが生きていて良かった。またあなたに会えて良かった」
 それ以外のことをジルは何も言わなかった。


 上記の記憶は、稲作と妙ちゃんが初めて逢った時のお話です。
 興味がある方はHP『みちくさ―月に還る―』の7~11をご覧下さい。
 左枠のリンク『みけのみちくさ』創作の喫茶店〔月の光〕の中にあります。
 
 先日、夕暮れ時に車を走らせていると、突然体中に反射テープを付け、手に赤く光る棒を持った二人の人に飛び出され、車を止められました。てっきりお巡りさんで、何か交通違反をしてしまったのだと思いました。彼らは、こちらに向けフラッシュを焚いて写真を撮すと、そのまま行っていいよ、の合図。その後、何の連絡もなく、あの出来事は謎のままです。何だったのでしょう。
 
 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「ヒゴスミレ」(2004.04.12群馬県で撮影)
 肥後菫と書きます。園芸で植えている庭を時々見かけますね。
 葉が細かく裂け、ほぼ完全に5列しています。花は白でエイザンスミレよりスッキリした印象。香りは、エイザンスミレに似て甘いのです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/12/19

因縁

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「ただいま!」
 妙ちゃんに稲作が肩を貸しながら帰って来た。
「お帰りなさい、大丈夫だった?」
「うん、軽い捻挫だって。みんな大げさなんだもん、恥ずかしいったらありゃしない」
 妙ちゃんは、ほんとに恥ずかしそうにしている。
「そんなことないよ。この年末に来て悪くしたら大変だからね」
「言うことがオヤジ臭いな」
と、稲作。
「しょうがない、オヤジなんだから」
「絹さんはお若いですよ」
 ジルの慰めは、かえって傷付く。

「妙ちゃん、この冬は帰るんでしょう?北海道」
 僕は、ホットココアを出しながらさりげなく聞いた。夏も帰省していないのだ。
「ヤダよ、寒いもん」
「寒いって、ずっと住んでたんじゃないか。俺は寒いの好きだぜ」
「じゃ、付いてきてくれる?」
「……金ねえし」
 旅費があっても行けないことを、わかっていて言う妙ちゃん。
「私が用意しましょうか?」
「そういうことでもねぇんだ。……だが、俺が行けばお前達が仲直り出来るのなら、行ってもいいぜ。俺は、昔のことは忘れたから」
「……」
 妙ちゃんは黙ってしまった。
 妙の母親と稲作には、僕らの知らない因縁がある。


 今日の雑談は、僕のことについてです。
 今まで何度か書きましたが、最近はタグふれんずから来て下さる方も多いのでまた書いてみます。
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。
と、時々人物紹介をしています。
 絹は、(けん)と読んで下さい。
 けんさん、という名前にしたくて、色々漢字を当てはめてみました。
 健さん…硬派なイメージ
 堅さん…固くて濃そう
 拳さん…ワイルド系?
 賢さん…賢くはないし
 謙さん…斬九郎の旦那、好きでした。ご結婚おめでとうございます
 他にも色々考えましたが結局は「正絹製(しょうけんせい)ネクタイ」などと使われている絹の文字を使うことにしました。絹は地元の名産品であり柔らかいイメージと性別不詳な感じがいいかと思ったのです。
 って言うことで、喫茶店〔月の光〕のマスター絹は本体が女なので女々しいのです。
 書いているのは、普通の主婦なので気軽に遊んでいって下さいね。
 
 このブログ、かれこれ1年続いています。
 これまで書いてきた続き物になったお話を読みやすいように並べ直してみました。
 左枠のリンク『〔月の光〕だより 日々のエピソード』から行けますから、良かったらのぞいてみてください。

 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「エイザンスミレ」(2005.05.05群馬県で撮影)
 叡山菫。このスミレも比較的早い時期、里山の斜面などに咲きます。写真のような薄いピンクを帯びている花が多く、葉はギザギザになっています。どこかで見掛けたら匂いを嗅いでみてください。甘く優しい香りがしますよ。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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2005/12/16

ふたりの秘密

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「うふふ、稲作があなたを愛おしむ気持ちが解ります。可愛い人」
「ちょっと待って。可愛いって――」
 僕は40をとっくに過ぎているんだ、息子のような年齢のジルに可愛いと言われるなんて。
 燃えるような金色の髪、輝く青い瞳のジルが、両手を広げて抱き付いて来た。
 ひょぇ~!
 何でこの子はこんなに冷たい頬をしているのだろう……。
 首筋に触れる柔らかいくちびるも冷たい――。 

「お帰りなさい。妙ちゃんは?」
「病院。ばあさんたちで混んでいるから置いてきた。後で迎えに行く。――絹さんは?何で準備中の札が下がってる?」
「奥の部屋で休んでいます」
「何した!!」
「私は何も――」
「――そう、何もされてない。何でもないから、大丈夫だよ」
 情けないことに、ジルに抱き付かれた僕はまたしても気が遠くなり、この間のようにたぬき寝入り(気絶)をしてしまったらしい。でも、そう長い間ではなかったようだ。‘何した!!’という稲作の大声で目が覚めた。
「大丈夫だよじゃねえだろ、また篠原先生呼ばせる気か」
 稲作が両手を広げて駆け寄ってきた。流行なのか?
「逃げるな!」
「抱き付かれるのかと思った」
「するか」
 僕の両肩に手を置いた稲作は、顔だの首だのじろじろ見ている。
「いただいていません。私がいただくのは、あなただけ」
 と、後ろからジル。
「何を?」
「何でもねえよ。――ジル、何か酒持ってこい」
「はい」
「……ほら、気付けだ」
 渡されたカップの中身は、お菓子の香り付け用に置いてあるブランデー。
 ありがたい。人心地がついた。
 こうして僕は、いつまでもふたりの秘密に気付けずにいる。


 昨日は大掃除をやり始めたら、お話の続きが浮かばなくて書くことが出来ませんでした。
 ごめんなさい。
 お風呂のカビ取り剤は強力ですね。昨日一日嗅覚がダメでした。
 香りの判らないコーヒーは不味いですね。

 来シーズンに備えて春の花の復習をしていきましょう。
 今日の写真は「ヒナスミレ」(2004.04.04東京都で撮影)
 雛菫と書きます。名前の通り愛らしい薄桃色のスミレです。香りは感じませんが、スミレ好きの人にはヒナスミレ好きの人が多いのです。僕もその一人です。雨に濡れるヒナスミレ、可愛いでしょう?

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

☆お知らせ―明日・明後日 喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます☆

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2005/12/14

悪魔か小悪魔か

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 ただ、傍にいたいだけというのは、人恋しいだけなのだろうか。
 もしも、稲作と妙ちゃんが結婚するようなことになったら、ジルはどうするのだろう。
「心配はいりません。私は二人の邪魔はしませんから。……でも、稲作は妙ちゃんと結ばれない」
 考えていることを読まれてしまった。ジルの言う言葉は外れないような気がして仕方ない。稲作は妙ちゃんを選ばないのか。昌子さん?
「稲作は誰とも結婚しません。誰も悲しませたくないと考えていますから」
「ちょっと待って、どういう事?」
「あなたに言ってもわからないでしょう」
 以前、訪ねてきた稲作の弟がジルのことを悪魔だと言った。それを聞いた稲作は、冗談めかして彼の仕事に掛けて人の心を惑わす小悪魔だと笑った。冗談ではなかったのか。
「絹さん、私はそれほど強大な力を持っていません」
 少なくとも、稲作にとってはそれに近い存在のように思える。
 言葉に出さなくても会話が成り立ってしまう。
 恐い。
「絹さん、稲作はあなたのように怯えない」
 ジルの金色の髪が燃えるように、青い瞳が異様に、輝いている。


 タグふれんずを始めてから、色々なジャンルのブログにお邪魔する機会が増えました。
 女子高生や主婦の方の日記の割合が多いせいでしょうか、可愛らしいキャラクターに埋もれたブログが多くて、見ているだけでも楽しいものです。
 タグふれんずは小さな枠の中ですが、訪れた先のオーナーの飾り付けに、趣味や人柄が現れているようでそれだけでも楽しめます。

 また新しい写真を写せるまで、来シーズンに備えて春の花の復習をしていきます。
 今日の写真は「アオイスミレ」(2005.05.05群馬県で撮影)
 葵菫と書きます。別名・ヒナブキ。
 撮影地は標高が高かったため5月5日ですが、最も早い花期のスミレの一つです。花期が遅い他のスミレに会いに行くと、巨大化したアオイスミレの葉に会う事が多いのです。別名の通り毛深い葉は、小さなフキの葉のようです。
  
【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/12/13

ただ、傍にいたい

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「よく帰ってきたね、ジルちゃん」
「?」
 ジルがやってきたのは3週間ぶり。それまでは毎日のように顔を出していたから、本当に久しぶりだ。
「もう、こっちのことは忘れちゃったのかと思った。麗華さんの所の方が居心地が良かったんじゃない?」
 ジルは麗華の所で大事にされていたようだ。3週間前より元気そう。
「マダムは私を大切にしてくれます。でも、わたしが帰るところは稲作の所です」
「そうか。そんなに稲さんのこと好きなんだ」
「はい」
 ライバルは妙ちゃんか。稲作は男の子の愛情を受け入れられるのだろうか。
「いつものブラッドオレンジジュース飲む?」
「ありがとうございます。――絹さん、私は稲作を、妙ちゃんのように好きなのではありません。マダムのお店のお姉さん達が、彼氏を好きなのとも違います。……ただ、傍にいたいのです」
 ジルが言う、マダムのお店のお姉さん達とは、女装した青年達。彼らの恋愛対象は同性なのだ。
 中性的。そう、ジルは中性的なのだ。
 恋愛感情はないのだろうか。


 ストーブの前で小さなコオロギがひっくり返しになっていました。まだ脚が少し動いています。表に返してやるとカネタタキでした。
 カネタタキをご存じですか?身体の色が薄くて、黒いランドセルを背負ったような短い羽根で、チン、チン、チン、チンと鐘を叩くように鳴くコオロギです。聞いたことがありませんか?
 少しでも元気になることを期待して、薄切りキュウリに乗せてみましたがだめでした。寒くても外で最期を迎えさせてあげた方が幸せだったでしょうか。

 今日の写真は「ニホンカモシカの足跡」(2005.12.10群馬県で撮影)
 昨日の続き、ニホンカモシカの足跡です。
 偶蹄目ウシ科カモシカ属。偶蹄目だから足跡の蹄は2つですね。

【登場人物を少しずつ紹介します】
麗華……クラブ〔Madam☆Rose〕のマダム。年齢不詳の超美形(♂)。

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2005/12/12

カモシカのような

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「こんにちは」
「どうしたの!?」
 僕は、‘いらっしゃいませ’とか‘久しぶりだね’とか言う言葉をかけるのを忘れて慌てふためいた。
 ジルが、妙ちゃんを抱きかかえて入ってきたからだ。
 それも、お姫様だっこ。
 姿がとても様になっている。
「ジル下ろしてよ!!」
「暴れないで、妙ちゃん。絹さん、椅子を引いて下さい」
「どうしたの?」
「店の前で転んで足を挫いたのです」
「大丈夫だよ!ちょっとひねっただけなんだから!」
 妙ちゃんは顔を真っ赤にして言った。痛いより恥ずかしい方が先にたっているようだ。

「ちわ~す、絹さん腹減った!――どした!?何の騒ぎだ!!」
 妙ちゃんの靴と靴下を脱がせているところに、自分が一番騒がしい稲作も登場。
「捻挫かも知れません」
「見せろ!」
「ねぇ、お願いだから……。超恥ずかしいんだけど」
「何が!?」
 顔を見合わせた僕らは、妙ちゃんが恥ずかしがる理由に気付いた。若い娘が、医者でもない3人の男にじろじろ足を見られるのはちょっとね。
「それにしても、細っせぇ足だな」
 痩せすぎの妙ちゃんは足も骨張っている。
「カモシカのような脚だね」
「カモシカ?っていうよりキリンの脚みてぇだぜ。……どっちかっていうと、カモシカの脚はあんたみたいな脚なんだけどな」
 稲作は、僕の脚を見て言う。
 野生のカモシカの脚は太くて短い。断崖絶壁を駆け上る強靱な筋肉を持っているからだ。
 でも、‘カモシカのような脚’は、細くて美しい脚のほめ言葉なのだ。
 稲作は妙ちゃんにしゃがんだまま背中を向けた。
「妙、乗っかれ。篠原に連れてく」
「その方がいいかも知れないね」
 篠原とは、近所のお医者さん。
「嫌だよ!」
「私が抱いて連れて行きましょうか?」
 首を横に振った妙ちゃんは、嫌々ながら稲作に背負われて店を出ていった。
 
「何故でしょう」
「?」
「さっきの妙ちゃんは、じゃじゃ馬娘のように暴れました」
「日本の女の子は、あんな風に抱かれることに慣れていないから、恥ずかしかったんだよ、きっと。そうだ、言いそびれていた。ジルちゃん、お帰りなさい」


 一昨日は野鳥のメッシュ調査に行ってきました。あの、初夏に大騒ぎしたヤマビル発生地帯です。メッシュ調査は春、初夏、冬の3回行います。思い起こしてみると、春、スミレサイシンが咲く頃に行った時は、写真を撮るために膝をついても手を付いても、何の気配も感じなかったのでした。だから1か月後の、ヤマビル達の大歓迎に驚いてしまったのです。雪が積もっているほどですから冬眠しているに決まっているのに、最初のうちは足下が気になってしまって……。
 この季節の上、雪が積もっていましたから花には会えません。でも、雪の上には雪の上の楽しみもあるのですよ。足跡です。2本爪の大きな足跡はカモシカ、小さな2つの前足とハの字形の長い後ろ足の跡はウサギ、という風に。
 時には足跡の主に出会える幸運もあります。

 今日の写真は「ニホンカモシカ」(2005.12.10群馬県で撮影)
 日本羚羊と書きます。角が生えているから雄かと思ったら雌も生えるのですって。雌雄の見分けは難しいのだそうです。
 冬の野生動物は、身体に脂肪を蓄えていて美しいですね。カモシカは林道から10メートルほど入ったところにいて、僕らが通り過ぎるまで顔だけ向けてずっと警戒していました。出会った回数が一番多い野生動物です。
 
【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/12/09

クラムボン

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「何なのよ。……私が入り込む隙間なんて無いじゃない」
 稲作は上の空で送ってくれた。けど、部屋に一人でいる事が寂しくなって、結局ここに来てしまった。

 喫茶店〔月の光〕。
「いらっしゃいませ、妙ちゃん。どうしたの?」
「お腹空いちゃったから、また来ちゃった。なんか暖かいのちょうだい」
「遅いから、軽いものにしようね。シフォンケーキとカフェオレでどう?用意が出来るまでこれ食べてて」
「梨?」
「大きいでしょ、新高梨だよ。熟し過ぎてアルコール臭がし始めちゃった」
「美味しいよ」
「よかった」
 妙ちゃんは大きな1欠けをサクサク音をさせて食べている。
「……さっきねぇ、稲作の家に行ったんだ。そしたらジルが帰って来てて」
「帰って来たんだ。稲さん嬉しそうだったでしょ」
「だから居場所が無くて、帰って来ちゃった」
 僕は、そんなに遠慮しなくても、という言葉をなぜか飲み込んでしまった。 


 インターネットは便利ですね。
 調べたいことが打ち込むだけで直ぐにわかりますから。
 僕は、熟し過ぎて発酵しだした果物を食べるとこの言葉を思い出すのです。
 クラムボンはわらつたよ。
 小学校の時、教科書に載っていた宮沢賢治の短編です。
 カニの親子が出てくることと、最後の方の流れてきた梨が沈んでお酒になるというくだりしか覚えていないのですが、何故かこの言葉を思い出してしまうのです。
 調べてみたら、題名は「やまなし」でした。何十年ぶりに読みました。
 クラムボンという言葉には諸説あるそうです。
 僕は謎のままがいいなぁ。
 
 今日の写真は「ケンポナシ」(2005.12.04宮城県で撮影)
 玄圃梨と書きます。写真は今までと同じ宮城県、田んぼのあぜ道を歩いている時でした。前の晩に降った雪の上に落ちている実を見つけた仲間が教えてくれました。一度味わってみたかった木の実でした。見上げてみると、大きな大きな木です。葉は全て落ちて、写真のような実が枝に付いていました。
 落ちている実を言われた通りにかじってみると、甘くて少し発酵臭がしていました。一人の仲間が側に落ちていた棒で、届く所の枝を叩いて実を落としてくれました。かじってみると、発酵臭はなく、強い甘みと少しの渋みを感じました。梨の香りは判りませんでした。
 さっきから、実といっていますが、実際にかじったところは実ではありません。写真の丸い部分が実で、食べられるところは、折ってある緑色の部分。花の軸のところです。
 梨という名前が付いていますが、ケンポナシはクロウメモドキ科ケンポナシ属。梨はバラ科ナシ属です。

 今日の、私の幻燈はこれでおしまひであります。
 
【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

☆お知らせ☆―明日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/12/08

目覚め

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「キャーッ!……何なのよ!これ!!」
 ベッドには麗華が飾った青い薔薇に埋もれたジルがいる。
 万事休す。
 言い訳のしようがない。
 寂しいから実物大のフィギュアを置いてるなんて言えないし。
「これには訳が――」
「――稲作、お帰りなさい。妙ちゃん、いらっしゃい」
 起き上がったジルが言った。
 20日ぶりの目覚めだ。
「脅かさないでよ!死んでるのかと思ったじゃない!!」
「ごめんなさい、妙ちゃん。……稲作が帰るまで、仮眠をとっていました。……マダムに、こうするとよく眠れると花をいただいたものですから」
 ジルは、枕元にあった青い薔薇の花を摘んで言った。寝起きの割によく出来た言い訳だ。
「そ、そうか、お帰り。……よく帰ってきたな」
「ここは私の家ですから」
 ジルの青い瞳が俺を見詰めた。懐かしい青い光。
「そうだな」
「何よ!気持ち悪いわね、男同士で見つめ合って。――帰る!」
「あ?ああ、送っていくよ」

 妙を家まで送り届けて戻ると、身支度を整えたジルが居間のソファに座っていた。
「心配をおかけしました」
「心配なんかしてねぇよ」
「素直じゃありませんね」
「腹、減ってるだろう」
「いいえ――」
 俺はジルの口元に左腕を回して言った。
「今日は特別な日だぜ」 


 今日の写真は「オオハクチョウ」(2005.12.04宮城県で撮影)
 一緒に写っているのは上はホシハジロ、下はオナガガモです。ハクチョウは大きいですね。
 オオハクチョウとコハクチョウ、一緒にいればL(全長)が20㎝違うので判ります。
 判らない時はくちばしの付け根の黄色い模様を見て下さい。オオハクチョウは黄色が大きく、くちばしの先に向かって菱形に尖っています。コハクチョウは黄色い模様が丸く見えます。公園で飼われているくちばしの上に瘤があるのは、コブハクチョウです。
 なぜ寝姿の写真なのかって?
 この姿を見ると、肉まんを食べたくなってしまう人がいるもので、つい。
 肉まんに似てますか?

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/12/07

発覚

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「ねえ、稲作。最近苛ついてない?」
「ねえよ」
「怒ってない?」
「ねえよ!」
「おかしいよ、ねぇ絹さん」
 ここは喫茶店〔月の光〕。
 いつもの通り、のんびりとした時間が流れている。
「カルシウム、足りてないんじゃない?牛乳飲んでる?ホットミルク飲む?」
 僕は、稲作と妙ちゃんに出したディナーセットを片付けながら訊いてみた。二人ともお代わりもして気持ちいいぐらいの完食状態。稲作のイライラの原因は、何となく判る。ジルが帰って来ないからだろう。
「毎日1本飲んでるぜ」
「1本じゃ少ないよ」
 食後のコーヒーを出しながら訊く。
「そうなのか?1リットルじゃ少ないのか」
「1本って、1リットルパック1本なの?」
「そうだけど」
「飲み過ぎかも……」
「そうだね」
「俺、そろそろ帰らぁ」
「たまには飲みに連れてって」
「そのうちな」

「稲作!」
「帰れよ」
「ヤダー!事務所に忘れ物したんだもん」
 〔月の光〕からの帰り道。
 ここのところ構ってやらないから、妙のヤツ拗ねているのだ。

「忘れ物、持ったら帰れよ。送っていくから」
「やだもん、ビール飲む!」
 今日の妙は駄々っ子のようだ。上がり込んだ妙は冷蔵庫を開けて缶ビールを開けた。1本飲めば酔い潰れてしまうだろう。
「つまみ、これっきゃねぇんだけど」
「何、これ?」
 魚肉ソーセージとマグロのフレーク。
「嫌いか?」
「こんな缶詰食べたことな~い」
「美味いか?」
「ビミョ~」

 酔いが回った妙は、部屋の中をウロウロしだした。
「さあ、帰るぞ」
「泊まる!」
「ダメだ」
「何しても良いよ。トイレ……キャーッ!」
 走って部屋を飛び出した妙の叫び声が。
 ジルの部屋のドアが開いている。


 今日の写真は「ホシハジロ」(2005.12.04宮城県で撮影)
 星羽白と書きます。赤茶色の頭と赤い目が特徴です。昨日のキンクロハジロと同じくたくさんのオナガガモに混ざっていました。

【登場人物を少しずつ紹介します】
水沢妙……押し掛け探偵所員。智紘にそっくりな彼の従妹。
     年齢20代前半。肖像画の智紘と同じ姿をすることで
     心の均衡を保っている。

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2005/12/06

チョビとハナコ

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 辺りを見回した有紀は、ちょっとガッカリした様子だ。稲作とチョビしかいないから。
「ジルか?今日は仕事なんだ」
「そうですか」
「あいつらのためだから、しょうがねぇ俺だけで我慢してくれ」
「我慢だなんて」
 今日のチョビは落ち着いている。ハナコを気をかけながら歩調を合わせて歩いている。いつもの散歩だったら、もの凄い力で引っ張って走らずにはいられないのに。

「ハナコさん、今日も会ってくれてありがとう」
「いいえ私の方こそ、また会って下さってありがとうございます。先日は失礼しました。あなたのように大きな男性にお目に掛かったのは初めてだったものですから、どうしたらいいか解らなくて」
「俺の方こそ脅かして悪かった」
「あのぅ、これからも逢っていただけますか?色々教えていただきたいのです」
「ワホッ!?」

「何だか、チョビのヤツ、嬉しそうだな」
 お行儀良く前を歩く2匹はなかなかいい雰囲気だ。
「ハナちゃんもよ」
「上手く行くといいな」
 

 昨日の続きです。
 雁の飛び立ちを見た後いったん宿に戻り朝食。その後にすることは、田んぼを回って雁の観察です。
 ガンの種類は、ほとんどがマガン、少数のヒシクイ、オオヒシクイと、運が良ければカナダガン、カリガネ、コクガン(海沿いが多い)と、滅多に見られないハクガン、サカツラガンなどがいます。
 ほとんどがマガンの中から、宝物を見つけるように他に種類が混ざっていないか探すのです。彼らは警戒心が強いので脅かさないように遠くからフィールドスコープで探します。寝ているようでも何羽かが首を上げて見張っているのです。
 今回はサカツラガンが来ているという情報があり、見られることを楽しみにしていましたが、残念。見られたガンは、マガン、ヒシクイ、カナダガンでした。

 今日の写真は「キンクロハジロ」(2005.12.04宮城県で撮影)
 金黒羽白と書きます。目が金色(黄色)全体が黒、羽根が白、と見たままの名前です。チャームポイントは、頭の後ろの冠羽と呼ばれるチョンチョロリン。僕は、キンクロハジロ、タゲリ、オカメインコ、キバタンなどの冠羽を持つ鳥が好きなのです。
 カルガモがL61㎝のところキンクロハジロはL40㎝とだいぶん小柄です。もう一つ違うところは潜水が得意。あれっと思う間に潜り、ちょっと離れた水面から顔を出します。水底の甲殻類や昆虫、水草を食べるのだそうです。
 撮影地は伊豆沼。餌付けされていて驚くほどそばに寄ってきます。近所のコンビニで大量のかっぱえびせんが売られていたのがちょっと気になります。カモには塩分と油分が多いのではないかと。
 
【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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2005/12/05

リベンジなるか!?

PICT00251
「今日は大丈夫だろうな」
「ワホッ!」
 グレートデーンのチョビ、2度目のデート。今日は失敗は許されない。
「気合いが入ってるね、青いバンダナ、似合ってるよ、チョビ」
「ガルルルルルゥ」
 絹さんに、唸り声で答えるチョビ。
「そんなに愛想がねぇとハナコに嫌われるぜ」
「ジルちゃんが居ないけれど、大丈夫?」
「いくらチョビでも、後がねぇくらいの事はわかってるだろ」

「キャン、キャン!」
「フウ~ッ!!」
 ちょっと目を離している隙にけたたましい鳴き声。
 そこにはコロコロ肥って目つきが悪い野良猫に、ミルクを横取りされているチョビの姿が……。デート前なのに、鼻の横に3本のひっかき傷が出来ている。
「あの猫、‘にゃうごろう’って言うんだ。最近来始めたの。猫パンチ素早いんだよ」
「あんたも引っかかれたのか?」
「何回かね。……ねえ、ほんとは弱いんじゃないの?チョビって」
「あんたはあの猫以下でもあるって事だな」
 ジル>俺>にゃうごろう>チョビ>絹さんって訳だ。


 土日と宮城県の伊豆沼・蕪栗沼に行って来ました。
 冬になると、多くの白鳥や雁が渡って来るラムサール条約登録湿地です。今年で5回目のこの旅行、目的は雁の飛び立ちを見ることです。
 一泊して5時に起きて沼に向かい、ガン達を脅かさないように息を潜めて時が来るのを待ちます。
 鳥たちは飛び立つ合間を見計らっているように鳴き交わしています。
 切っ掛けは解りませんが、何千羽もの鳥たちが一度に飛び立つ瞬間があるのです。
 その時の水を飛び立つ音、羽音、鳴き声は、地響きのような重低音に包まれます。その体感が忘れられなくて、毎年ガンに会いに行ってしまうのです。
 続きは明日。

*ラムサール条約は、水鳥の保護と湿地的環境の保全を目的として、1971年にイランのカスピ海沿岸のラムサールで関係各国が集まって採択された条約。

 今日の写真は「雁の飛び立ち」(2005.12.04宮城県で撮影)
 夜明け近く、ねぐらで過ごしていたガン達がいっせいに田んぼを目指して飛び立ちます。
 写真では羽音と鳴き声の迫力が伝わらないのが残念です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
にゃうごろう……〔月の光〕にミルクをねだりに来る野良猫。
チョビ……稲作が仕事で散歩を請け負っているグレート・デーン。

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2005/12/02

等身大!?

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 ドアのノブが回った。カギが開いている。
 目が覚めたんだ!!
 いつもだったら玄関先で出迎えてくれるのだけど……。
 ジルの部屋から灯りが漏れている。
「ただいま!カギ締めておかねぇと物騒だぜ、ジル!」
 ベッドの横の人影が振り返った。
「誰だ!空き巣か!?」
 この家に金目の物は何もない。
 ベッドの掛け布団がめくられて、ジルが動かされている。
「これ以外は何もなかった。……へーえ、こいつジルって名が付いているのか」
 男は、ジルの頬をペタペタ叩いた。 
「何をする!」
「チェッ!せっかくいただいていこうと思ったのに」
「連れて行ってどうする気だ」
「これだけ精巧なフィギュア、出すところに出せば相当な高値が付く。ネットオークションで売りさばくのもいいな」
「何だ、そりゃ?」
「知らないとは言わせない。こんな田舎に筋金入りのマニアがいるとは嬉しいぜ。何でもっといい服を着せてやらないんだ?」
「このコソ泥!言ってることがぜんぜんわかんねぇんだよ!」
「50万で売ってくれ」
 ってことはもっと高い値段で売れるのだろう。
「お前馬鹿か?金がねぇから盗みに入ったんだろ?その前に警察に電話だ」
「見逃してくれ。まだ何も盗ってないんだから」
「そういう問題じゃねえだろ」
 もちろん警察を呼ぶつもりはない。二度としないように教え込むにはどうしたらいいか?身体に覚えてもらおうか?
「マズイものを見られちゃったなぁ。俺ってさぁ、硬派で通ってるんだ。通報をするなというのなら――」
 ジルの鏡台を手刀で叩き壊した。後で怒られるけど。
「見たことは誰にもいいませんから、どうか許してください」
 男は土下座をして懇願した。

 ちょっとだけ痛い思いをしてもらって男を許して帰した後、ジルを元の位置に戻しながらつぶやいた。
「こんなに騒がしくても目を覚まさないか」
 

 先日、自分のベッドに等身大の人形を寝かせている若者を見ました。それは、美少女アニメ顔のフィギュアと呼ばれる人形でした。
 ちょっと前まで僕の常識は‘フィギュア=スケート’でした。初めて聞いた時は違和感を覚えたものです。知らない間にホットドッグはアメリカンドッグになりました(古い!)。
 世の中変わっていくものですね。

 今日の写真は「オオイヌノフグリ」(2004.3.11群馬県で撮影)
 こちらが外来種の大犬の陰嚢です。こちらは、河原の土手や草原でよく見かけますね。
 青い小花の群生は春を告げてくれます。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

☆お知らせ☆―明日、明後日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/12/01

美しい鷹

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「お花見楽しかった?」
「まあな。弁当は美味かったし、風も吹かなかった」
「一緒に行けば良かったな。ねぇ、絹さん」
「そうだね」
 ここは〔月の光〕。マスターの絹さん、俺の助手だと言って聞かない妙がいる。
「仕事だったんだ」
「仮面ライダーショーやったんでしょ?子供達が大喜びだったって言ってたよ」
「そうだぜ。付いて来てたらショッカーその2だ」
「やあねぇ、ショッカーに連れ去られそうになる美女の役に決まってるじゃない。絹さんは、脅されて悪の道に走るマッドサイエンティストね」
「何だ?そりゃ」

「お待たせしました。……ジルちゃんまだ帰ってこないの?」
 一人の夕飯は寂しいからここにしている。洋食しかないけれど仕方ない。
 今日は辛いスパゲティー、ペペロンチーノの大盛り。
「ああ」
「麗華さんの家の方が居心地が良くなっちゃったんじゃない?」
「かもな」
 あれから2週間。俺の部屋で眠っているジルは起きる気配がない。


 今日は渡良瀬遊水池。
 夕暮れ間近になると、バードウォッチャーは鷹見台に集まってきます。
 鷹見台は渡良瀬川にかかる新赤麻橋を渡ったところの広場で、第2調節池全体を見渡すことができるため、望遠レンズが付いたカメラを構えてシャッターチャンスを待っているアマチュア野鳥写真家が多いのです。
 11/27の鷹見台はバードウォッチャーの他に、上空に大きな扇風機みたいなものを背負って飛んでいる人たちや、もっと高い上空、ヘリコプターから落下傘で降りてくる人たちで賑やかで、肝心の鷹が飛ぶ気配がありません。
 しばらくいて諦めて、コンビニでデザートとコーヒーを買ってもう一度、別の場所に行ってみました。広大な芦原の中で日が暮れ始めるまで車の中でささやかなティータイムを過ごしました。興味のない人には酔狂なこととうつるでしょうね。
 もうすぐ出るよ。という常連さんの言葉に励まされて待っていると、この日のメインスターが颯爽と現れました。
 V字形の飛型、全身明るいグレーで翼の先だけ黒い見間違いようのない美しい鷹、ハイイロチュウヒです。

 今日の写真は「イヌノフグリ」(2005.2.27栃木県で撮影)
 犬の陰嚢と書きます。春、日当たりが良い野原で出会う空色のオオイヌノフグリは外来種で、このイヌノフグリは元々日本にあった種類です。花の色はピンク色で、大きさはオオイヌノフグリの花びらより小さいくらい。咲いていても、気合いを入れて探さないと見つけられないかも知れません。
 名前の由来は、一緒に写っている実の形からの連想です。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
          大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
          僕らをもっと知りたい方はHPをご覧下さい。

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