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2005/10/29

サメとビスクドール

PICT00271
 不穏な空気を感じたジルは立ち上がり、和哉と向き合った。
 この対決、何て言ったらいいのだろう。
 美しいのだ。
 ただ見ているだけだったら……。
 金髪碧眼で見る者の理想の姿に見えるジルの美しさはご存じの通りだが、和哉もかなりのハンサムだ。酷薄な性格が顔に表れているクールな美貌の持ち主。
「広木はまだ戻らないのか」
 ジルから目をそらせた和哉は言った。和哉もジルのクリスタルガラスのような青い瞳を直視し続けることが出来ないようだ。僕は、アンティーク・ビスクドールが恐いという理由から、ジルの目を見詰めることが出来ない。
「ええ、まだなのですよ」
「いつものを頼む」
「ありがとうございます」
 彼のいつものオーダーはブルーマウンテンとその日お勧めのケーキ。今日はいい紅玉が手に入ったからアップルタルトだ。
 ジルは、何も言わずに和哉を見ている。
「おい」
 和哉は僕を呼び寄せ、耳元で言った。「あいつは何者だ」
「私は稲作の友だちです」
 和哉の声が聞こえたように答えるジル。
 黙って席に着いた和哉は、ジルから目を離したものの全身で彼を探っている。いつも命の危険にさらされている若き組長は、ジルに違和感を感じているのだろう。
 ジルは、時々和哉に目をやりながら、いつものように椅子から脚をブラブラさせて、ぴょん太の報告と稲作の帰りを待っている。

 柱時計の音さえも耳に付くような、耐え難い空気が〔月の光〕を満たしている。

「顔ぐらい覚えろ!!」
「若の言いつけだ!大人しくしろ!!」
「放せ!!痛てえだろ!」
 怒号と共に入ってきたのは、彼の部下2人に拘束された稲作。
「和哉!てめえ!!」
 またしても、胸に拳銃を突き付けられている!
「昌子はどうした」
 和哉は静に言った。静なのに恐い、恐すぎる。
 稲作は、和哉を無視して言った。
「ジル、手出しは無用だぜ!」


 今日の写真は「チチタケ(裏側)」(2005.10.22東京都で撮影)
 以前見てみたいと言っていたチチタケを見ることが出来ました。表は茶色、裏面を爪で傷つけてみました。乳のような白い汁が見えますか?
 去年、同じベニタケ科のシロハツの白い液を舐めさせてもらいました。その辛いこと、辛いこと。クッキーをもらって食べてもピリピリがなかなか治まりませんでした。
 今回、チチタケの汁も舐めてみました。ほんのり甘い味とちょっとの渋み。クッキーは必要ありませんでした。
 植物のチタケサシはこのキノコを茎に刺して持ち帰ることから名前が付いたそうです。植物に名前を使われるほど好まれているキノコなのですね。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

 最後までお付き合いいただきありがとうございました。 
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