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2005/10/12

メイド・ロボット

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 一は、夕べ夜泣きもせずに俺の隣で寝て、食卓についている。
 テーブルにはフレンチトースト、スクランブルエッグ、サラダ、ヨーグルト、果物。俺の前にはコーヒー、一には牛乳、ジルにはトマトジュースが置かれている。
「珍しいパンだな」
「‘クレーマー・クレーマー’を思いだしたものですから。一君には柔らかくて食べやすいかと思いました」
 古い映画か。
 ダスティン・ホフマンが息子にせがまれて作ったフレンチトーストは黒焦げだったが、ジルが作ったものは焼き加減も甘さも非の打ち所がない。
「オヤジ、すげーな」
「何がだ?」
「ロボット買ったのか。オフクロ、ブスだから」
 口が悪い子供だ。
「買ってねえ」
 一はジルを指さした。
「メイド・ロボット。昨日、絹さんの所のテレビでやってた」
「何だ?そりゃ」
「ニュースかワイドショーで、秋葉原の特集を放映したのでしょう。今一番注目されている場所ですから」
 でかい電気屋が出来たんだっけ。その上オタクも注目されている。
 一には、アニメかゲームのキャラクターとコスプレした娘の区別が付いていないようだ。
 言われてみればジルは、メイドカフェのウエイトレスみたいだ。ゴージャスな金髪碧眼、自分の想像力の中で一番の理想の姿に見えてしまうのだから。短いスカートとフリルの付いた真っ白なエプロンのメイド服を着せたら、きっと‘萌え~’って感じになるだろうな。
「鼻の下が伸びていますよ、ご主人様」
 げっ、妄想を読まれた。僕(しもべ)は、どちらかと言えば俺の方なのだ。
「やっぱりだ。ご主人様って言ったぞ」
「止せよ、ジル。子供に冗談は通じねぇぞ」

「どうしました、一君。お口に合いませんか?」
 一は、朝食になかなか手を付けようとしない。
「ご飯とみそ汁と納豆と梅干し――」
「あ?」
「――じゃねぇと、腹の足しになんねぇ」
「お前、肉体労働者か?……今日はジルが作ってくれたものを食え」
 ジルは気を悪くしているかと思ったら、珍しく笑っている。
「うふふ、あなたにそっくりですね。明日はあなたが腕を振るって下さい」
「好き嫌いしてると、俺みたいに大きくなれねぇぞ」
「食う!」
 一は、フレンチトーストにかじり付いた。
「いかがですか?」
「うめえ!」
 一は、俺にそっくりなガツガツした食べ方で、朝食と格闘している。
「一、もう少しゆっくり食え。よく噛んで。逃げやしねぇから」
「うん。……ジル、どうしてトマトジュースしか飲まねぇんだ?やっぱりロボットなのか?」
 顔を上げた一は言った。
「私はダイエット中なのですよ、一君」


 今日の写真は「イヌタデ」(2003.09.06群馬県で撮影)
 犬蓼と、書きます。別名アカマンマ。
 葉に辛みがないため、役に立たないから、犬蓼。
 役に立たない=犬が付く。植物にはそういう名前が多いのです。イヌヨモギ、イヌゴマ、イヌガラシ……イヌノフグリは違いますね。
 猫が付くものは、形や見た目に寄る物が多いですね。ネコノメソウ、ネコノシタ、ネコヤナギ。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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コメント

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投稿: Abigail | 2014/01/23 05:53

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