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2005/10/04

二人の関係

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「んが~……ん?」
 事務所。稲作は、ソファ兼ベッドの上で何度目かの目覚めを迎えた。
「目が覚めましたか」
「また見ていたのか。どうした!?その顔」
 ジルの綺麗な顔の左側、目の上から頬にかけて酷い傷がある。人間だったら大変だ。
「覚えていませんか。あなたが投げ飛ばしたのです」
「?」
「覚えていなければいいです。あなたをからかった罰が当たったのでしょう」
 俺がよく言うからジルまで使っている。罰が当たったなんて。
 起き上がった俺は、部屋の中を見回した。時計が壊れて床に散乱している。机の上にあった書類も、粉々になった花瓶も、灰皿も床の上。
「何があった?」
「あなたがしたことです。……よかった。今度暴れたら押さえきれる自信がありませんでした。もう陽が高い。今はあなたの方が力が強いですから」
 昼間のジルは力が人並みに落ちるのだ。
「陽が高い?今、何時だ?」
「11時47分です。お昼の」
「なんだと!?」
「チョビの散歩は、あなたが体調不良だと話して便利屋の親方に頼んでおきました」
「体調不良?」
「毒キノコを食べて暴れていると伝えた方がよかったですか」
「みんなは?」
「キノコを食べたのはあなただけでした。5本全部」
「ベニテングか?」
「だから篠原先生にも連れて行かなかったのです。あなたなら死にはしないから。……あんなに暴れるのなら連れて行けばよかった」
「すまなかった。本当に申し訳ない。……頭痛ぇ。……けど、腹減った」
 謝って、頭を上げ下げすると頭痛がする。
「でしょうね。全部吐いたし、お腹も下しましたから。お粥を温めてきます。今日は一日安静にしていたほうがいいでしょう。食べたらまた休んで下さい。私も少し休みます」
「待て!!」
 キッチンに行きかけたジルの背中がビクリと動いた。夕べ余程酷い目に遭わせたらしい。
「またですか!」
「こっちが先だぜ」
 俺は、ジルの後ろから首に左腕を回した。
「もう止めて下さい」
「飲めよ」
 ジルは不思議そうな顔をして俺を見た。いつも通りの青い瞳。
「いりません。明日、マダムの所でいただきますから」
「その顔で東京まで行くのか?」
「明日には少し戻るでしょう」
「夕べ何言ったか知らねぇが、これが俺の気持ちだ」
 ジルは、回した俺の手首に優しく噛み付いた。
 
 
 今日の写真は「チシオタケ」(2005.10.01群馬県で撮影)
 傷つけると暗赤色の液が出ます。確認のために裂いてみると手に液が。乾いても血のようでした。かぶれたりしませんが、食用も不可です。
 これは血潮茸ですが、一度見てみたいキノコに乳茸(チチタケ)というのがあり、こちらは傷つけると白い液が出ます。なぜ見たいのかというと、栃木県に行くと「チタケうどんあります」という看板を見かけることがあるからです。栃木の人の大好物が見てみたい、「チダケサシ」と植物にまで名前が使われるキノコを見てみたいのです。
 ちなみに、群馬県ではウラベニホテイシメジが人気ですが、食べたことはありません。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。
      誰にも言えない2つの秘密を、ジルと共有している。

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コメント

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投稿: Brooklyn | 2014/01/22 19:50

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