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2005/04/30

マウス・ツー・マウス

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 実は、体験したことがあります。息を吹き込む方と、吹き込まれる方、両方です。
 それは、JRC部活動の合同合宿でのこと。
 今では考えられないでしょうが、その時は生身で練習しました。訓練用の人形がなかったのか、少なかったのか、口にガーゼ1枚を乗せて練習しました。もちろん同性同士でです。
 吹き込む方はいいけれど、吹き込まれる方の感覚は、今でも忘れることが出来ません。
 1度人が使ったなま暖かい空気が、自分の肺を満たしていく感覚……。
 2度とあんな体験はしたくないものです。なぜなら今度する時は、訓練ではないからです。どちらの立場になるとしても危機的な状況でしょうから。


「君が一番心配だ。いつも無茶ばかりするから」
「あんたの前ではそんなことにはならねえようにする。考えただけで気色悪りい」
 自暴自棄。稲作を見ていると時々感じることがある。智紘が亡くなってから、特に。
「そういう事じゃないでしょう」
「心配すんな。俺ももう歳だからあんまり無理は出来ねぇよ」
「そう、心配はいりません。私が付いていますから」
 今日はジルも一緒に来店している。金髪碧眼の美青年だ。彼が、智紘の代わりに稲作の行動を制御してくれるというのか。
「君がそう言ってくれるのなら、安心だね」
「はい。そんなことになる前に、私が――」
「わかった、二人ともわかったから。これからは家で大人しくしているから」
「うそつき」
 二人、声を合わせて言ってしまった。


 今日の写真は「エヒメアヤメ」。草丈15㎝ほどの小さなアヤメです。
 別名が美しいのでご紹介しましょう。タレユエソウ。
「誰故にこんな可憐な花を開くのか」と賛美した古名だそうです。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
ジル……自称22歳、本当は1300歳の吸血鬼。
    金髪碧眼で、見た人の理想の姿に見える。
    仲間にする約束を、稲作と交わしている。

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2005/04/29

ききなし

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 近所の古墳で「チヨチヨビーッ!」っていう鳴き声が聞こえました。
 センダイムシクイの声です。


「‘ききなし’で言うと、焼酎一杯グイー、って言うんだ」
「ききなし?」
 今日は妙ちゃんと稲作が来店している。
 妙ちゃんは‘ききなし’に興味を持ったようだ。
「鳥の声を言葉に置き換えてみることだよ。ウグイスは、法、法華経、とかね」
「おもしろい」
「ちょっと来い、ちょっと来い、は?」
「コジュケイだね」
「一筆啓上仕り候、なんて鳴く鳥もいるよ。ホオジロだ」
 ききなしに、昔風の堅い言葉が多いのは、昔から親しまれていたからだろう。

 さっきから、外ではキジバトが、
「ゼ、ゼ、ポッポー、ゼ、ゼ、ポッポー」
と、鳴いている。
「なあ絹さん、カレーライスまだか?……俺にはあのキジバトの鳴き声が、腹、減ったー、腹、減ったーって聞こえてしようがねえんだけど」


 今日の写真は「ナガバノタチツボスミレ」です。群馬では見られない、見てみたかったスミレの1つ。タチツボスミレの空色より、少しピンクがかって見えましたが、生えていた場所のせいかもしれません。

【登場人物を少しずつ紹介します】
森本智紘……店に飾られた肖像画の主。
      22歳で早世した〔月の光〕常連で、稲作の親友。
      彼の亡くなり方がみんなの心に影を落としている。

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2005/04/28

超速戦士G-FIVE

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 どこのヒーロー?
 群馬のローカルヒーローなのです。
 去年の4月から環境保護の啓発運動に努めているのだそうです。

アカギレッド
出生地:群馬県赤城山麓
義理人情に厚い正義の戦士。商業と工業の維持発展を願う。

ハルナブルー
出生地:群馬県榛名山麓
閃光輝く稲妻のパワーを持つ力の戦士。農林水産業の維持発展を願う。

ミョウギイエロー
出生地:群馬県妙義山麓
かかあ天下の度胸と優しい心を持つ愛の戦士。教育と文化の維持発展を願う。

 休日祭日には色々なイベント会場に現れるようなので、どこかで会えるかも知れません。
 僕の冗談ではありませんよ。
 彼らの姿が見たい人は、超速戦士G-FIVEホームページをご覧下さい。

 実は、うちの店にもG-FIVEが……。


「いるのか?……俺じゃねえ。俺は、アカギレッドに変身しねえぞ!」
 何も言っていないのに慌てる稲作。
 アカギレッドのキャッチフレーズは「義理人情に厚い正義の戦士」。任侠映画みたいなところは稲作にピッタリだ。が、このキャッチフレーズは任侠映画から来ているのでは、もちろんない。
 群馬県民なら誰でも思い当たる「上毛かるた」からだろう。
 ら―雷と空っ風義理人情。
「安心したまえ、君じゃない」
「じゃ、あんたか?」
「ふふふ」僕は、笑いながら上着を脱いだ。
 稲作は、僕の傍から飛び退いた。
「?」
「変身するんじゃ?」
「暑くなってきたから、脱いだのだけれど」
 今日の前橋は真夏日に近い気温だ。
「まぎらわしいことするな!」
「もちろん、僕でもない」
「だろうとは思ったけど、ゼブラーマンみてえなこともあるかも」
 ゼブラーマンは去年公開された特撮ヒーロー映画。変身するのは冴えない中年男なのだ。

 赤城山からは、おねえ、こと「赤木昌子」
 榛名山からは、稲作の元彼女、「若林春菜」
 妙義は……。
「おまえか!!」
 稲作は、二人の会話にあきれ果てたようにフルーツパフェを頬張る妙ちゃんを指さした。
 そう、妙義山からは、「水沢妙」
 我がサイトのヒロイン達の名前は、上毛三山から付けたのだ。


 今日の写真は「シハイスミレ」。ピンクが濃い独特な色をしたスミレです。シハイは、紫背と書きます。葉の裏側が紫色なのです。
 写真を撮ろうと顔を近付けた時、たった1輪の花から甘い香りが届いてきました。芳香が強いスミレです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
広木稲作……当店のワイルド系担当。便利屋のような私立探偵。
      年齢20代半ば。190㎝の長身、色黒で猛犬顔。
      義理人情に厚い上州男児。

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2005/04/27

僕らの不思議

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 3ヶ月近く、僕はこの世界で喫茶店を開いています。でも、僕も稲さん達も本当は存在していない。何だか不思議な気分になってきます。
 いそうでいない人っていますよね。
 フーテンの寅さんなんて、演じた渥美清さんは亡くなってしまったけれど、どこかの縁日で、「結構毛だらけ猫灰だらけ――」なんて口上を言いながらテキ屋さんをしていそうだし、浅見光彦さんは、どこかの観光地で叶わぬ恋をしているかも知れない。
 僕らもそんな世界を生きているのです。


「何わけのわかんねぇこと、グダグダ言ってんだ?お茶、おかわり!」
 大盛りのカレーライスにウスターソースをたっぷりかけて、一気に平らげた稲作は言った。
「何でもない」
「意味もねえことを、くよくよ悩んでいると早死にするぜ。仕事があって、飯がうまけりゃそれでいいじゃねぇか」


 書くことが浮かばないと、こんな遊びも出来ますしね。これはこれでいいのかも知れません。
 今日の写真は「オキナグサ」。野生は、こんな風に草原に咲いているのです。

【登場人物を少しずつ紹介します】
僕(絹)……喫茶店〔月の光〕のマスター。年齢40代半ば。
      何度会っても思い出せないような無個性な人。
      気弱で自然観察好き。筆者の分身で、筆者よりお人好し。

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2005/04/26

満天星の夢敗れ……

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「ハーァ」
「どうしたの?ため息なんかついて」
「万策尽きたって感じなんだ」
 2本のドウダンツツジ。三年前は切らずに置いた。二年前は花が終わった直後に形を整える程度に刈り込んでみた。去年は思いっきり短く刈り込んだのだ。
 しかし……。今年も数輪が、ちらほらと咲いただけ。
「木は、大きくて立派なのにね」
「日当たりが悪いからかなぁ」
 そればかりはどうすることも出来ない。今年は肥料を多めに施してみようか。
「お昼どうしようかな」
「ちゃんと食べないとダメだよ、妙ちゃん」
 ここに来るお客様も、肥料が必要な子供達ばかり。みんなガリガリに痩せている。


 満天星躑躅と書くドウダンツツジ。公園などでは壺を逆さにしたような小さな白い花が、木が白く見えるほど咲いています。まさに、満天星のようですね。我が家のドウダンツツジは全く咲いてくれないのです。でも今年の冬は、葉が落ちた木の枝が、シジュウカラのちょうど良いレストランになって、ヒマワリの種を持ってきては、器用に枝と脚の間に種を挟んで食べる様子を見せてくれました。

 昨日の約束通り、今日は一面に咲いたサクラソウの写真を載せます。
 キスミレ、ヒメエンゴサクと一緒に、草原にたくさん咲いていました。

【登場人物(人物以外も)を少しずつ紹介します】
喫茶店〔月の光〕……どこかにあるかも知れない
             大きな川の畔に建つログハウス風の喫茶店。
             どこか、と言いつつモデル地は
             前橋市の敷島公園辺りのような……。

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2005/04/25

キスミレに逢いに

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「どこに行ってきたんだ?」
「九州にキスミレに逢いに行ってきたの」
 今日はいつものように稲作とジルが来店している。
「わざわざ?」
 と、言われても趣味なのだからしょうがない。
「野焼きの炭で真っ黒になりながら見てきたんだよ」
 ズボンやシャツはもちろん、手や顔、鼻の中まで真っ黒になってしまった。
「ご苦労なこったな」
「そうだ、君が好きな物もたくさん生えていたな」
「何?」
「ワラビ」
 地元の人はビニール袋を下げてワラビ採りをしていた。
「採ってこねえよな」
「もちろん」
「いいなぁ。俺ん家の方はまだだろうな」
「関サバと関アジをご馳走になったよ。こちらで食べる魚と違って全く生臭くなくて、美味しかった。もちろん、湯布院の温泉も堪能してきた」
「そっちのほうがいいなぁ」
 稲作は、やはり食い気。
「温泉もいいですが、このお花も綺麗ですね」
 さすがは、ジル――。が。
「パンジーとどこが違うのですか?」
 写真は大きそうに写っているが、花の直径は、1,5~2㎝。パンジーよりずっと小さい。


 大分県九重町。草原に一面に咲くキスミレに、いつか逢いたいと思っていたのです。
 こんなに早く、実現するとは思いませんでした。
 野焼きで真っ黒になった広い草原一面に、輝くように咲いていました。光を反射して、写真の色が飛んでしまうほどでした。
 ほかに、サクラソウ・オキナグサ・シハイスミレなども見ることが出来ました。これらの写真は、明日以降、紹介していきます。

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2005/04/22

時の流れに

「いらっしゃいませ。春菜ちゃん!?」
「絹さん、お久しぶり」
 彼女の腕には、生まれたばかりの赤ちゃんが抱かれていた。ピンクのベビー服に包まれている。
「可愛い、ちっちゃな手だね」
「抱いてみる?」
「小さすぎて恐い。壊してしまいそうだ」
 子供を育てた経験のない僕は、力加減がわからない。首が据わっていない赤ちゃんは恐くて抱けない。
「相変わらず、臆病なんだ」
「どうして?連絡くれなかったの」
 結婚式には参列させてもらった。その後しばらく疎遠になってしまっていたのだ。
 春菜は稲作の元彼女。僕は、二人の出逢いも、馴れ初めも、別れも見てきている。どちらか一方が悪かった訳じゃなかった。
「ごめんなさい」
「稲さんも、昌子さんも、喜んでくれるよ。こんなに可愛い子なんだもの、みんなにお祝いしてもらわなくちゃ」
「うん、わかってる」
「お名前は?」
「ちひろ」
「?」
「彼が、女の子だったら‘千尋’だって決めていて。私も賛成したわ。‘智紘’みたいな優しい子に育って欲しいから」
 彼女は、店に飾られている智紘の肖像画を見ながら言った。
「良い名前だね」
 日々は忙しなく過ぎていくのに、智紘と僕は時の流れに取り残されているようだ。たぶん稲作も……。

「私、そろそろ行くね」
「もうすぐ、稲さん来るよ」
「いいの。今日は、3番目のおじいちゃんに孫娘を見せに来たのだから」


 さて、今日の真実は、僕に子供を育てた経験がないということです。だから、彼らに遊んでもらっているのです。
 春菜ちゃんが言うように、早くに子供を待っていれば、孫がいても不思議じゃないなぁ。

 そうそう、忘れるところでした。
お知らせ―明日、明後日と喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/04/21

春眠

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 この写真、何だと思いますか?
 地上近くのプランターの上。背中に首を回し、顔をうずめて気持ちよさそうに眠っているのです。手のひらで、そっと包んで持ち上げてみたくなりませんか。
 起きると、黒いベレー帽をかぶり、背中と長い尾は青っぽいグレーのスマートな姿をしています。


 僕は窓を開けて、彼(彼女?)を起こした。
「眠るなら、木の枝か屋根の上にしなさい」
 言葉が通じたのではなく、驚いてバサバサ飛び立った彼(彼女?)は、屋根に止まると、また顔を背中にうずめた。
「なに?」
「オナガ」
「綺麗な鳥だね。初めて見た」
「そうか、北海道にはいないんだっけ」
 妙ちゃんは北海道で生まれ育っている。こちらに来て、オナガを目にする機会はあっただろうが、気にしなければそんなもの。
「起こすのは、可哀想だったんだけれど」
「あいつが来たら、食べられちゃうもんね」
 そう、オナガは、にゃうたろうがおねだりをして店の中をのぞき見る場所の、すぐ近くで眠っていたのだ。

「ふぁ~あ、眠ぃ」
 こちらのお客様も目を覚ました。
 チョビの散歩から戻って、めずらしくモーニングサービスを注文して、居眠りをしていた稲作。
「寝過ごして朝飯食ってる暇がなかったんだ。夜更かしした訳でもねぇのに、眠いんだよなぁ」
「春だからね。さあ、お待たせしました」
 今日のモーニングサービスは、コーヒー、トーストとハムエッグ。
 サービスにレモンたっぷりのレモネードを添えた。
「うわっ、酸っぺぇ」
 目が覚めたでしょ。


 「オナガ」についての補足をしておきましょう。
 オナガは、カラスの仲間の頭が良い野鳥です。「ギャーッ、ギャッ、ギャッ、ギャッ」と言う声で鳴きます。
 関東地方では普通に見られるのに、福井、岐阜、愛知以北の本州でしか見られないそうです。四国在住の友人がこちらに来たら、オナガが見られることを楽しみにしていました。

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2005/04/20

いつか、E・Tのように

 いつもは、サッと逃げてしまうか、ウーッと唸るか、引っ掻こうと前足が出るかなのです。
 人差し指を出すと、自分から鼻を付けてきました。
 指と指のふれあいではなく、指と鼻先のふれあい。
 野良猫にゃうたろう。
 彼の鼻は湿っていました。
 3年越しで初めての出来事です。


「あの、にゃうたろうが?嘘だ!」
 引っかかれたことが忘れられない妙ちゃん。
「ほんとなんだよ。1度だけのふれあいだったけど」
「手に魚の匂いでも付いてたんじゃねぇんきゃ?」
「だったらきっと、噛み付くよ。あいつのことだから」
 妙ちゃんは、上州弁丸出しの稲作に、自分が噛み付きそうに言い返す。
「その猫だったら、来ていますよ。……ほら、そこに」
 入ってきたジルが、指さした窓の外。野良猫にゃうたろうが、いつもの場所からじっと店の中をのぞいている。
「ミルクをあげてこようっと。いつか、膝に乗せてのどを撫でて、ゴロゴロ言わせるんだ」
「むりだね」と、妙ちゃん。
「絹さん、私が彼に頼んでみましょうか?」
 ジルは猫とも、昨日のチョビみたいに仲良くなれるのだろうか。 
 一瞬、ジルに頼んでみたい衝動に駆られた。
 けれど。
「ありがとう、ジルちゃん。でもね、自分の力で仲良くなりたいんだ」


 にゃうたろうにしてみれば、ちょっとした気紛れだったのでしょう。
 あの日以降、いつも通りの日々が続いています。

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2005/04/19

ニンテンドッグス

 宇多田ヒカルさんが出演している「ニンテンドッグス」。
 BGMが月の光、宇多田ヒカルさんの幸せそうなふくよかな姿、可愛い芝の子犬が気になるCMです。子犬育成シミュレーションゲームでしょうか。

 会社員だった頃、事務所と倉庫の往復で毎日1万歩以上歩いていました。そこで万歩計を付けてみたのです。ピカチューの万歩計。歩いた歩数をピカチューにプレゼントすると、どんどん親密になれるのです。最初は冷たかったのが、だんだんなついてくれるのが嬉しくて、歩く励みになりましたっけ。


「頼むから止めてくれよ」
「なにを?」
「おっさんがゲーム機を見ながらニヤニヤしているのは不気味だぜ」
「いいじゃない、趣味は人それぞれなんだから。でも、僕は買わないつもりだけど」
 白黒液晶のピカチューに、あんなにはまってしまったのだ。カラーの子犬だったら、どんなことになっちゃうかわからないもの。

 稲作に言われて容器にたっぷりのミルクを入れて、店の外へ出ている。今朝は、ジルも彼に付き合って一緒に散歩してきたようだ。
「やっぱり本物はいいぜ。なあ、チョビ!」
 さすがにチョビに店内に入ってもらう訳にはいかない。待ちかねたチョビは、もの凄い勢いでミルクを飲んでいる。稲作が本物は良いと言って撫でているチョビは、グレート・デーンという超が付くほどの大型犬。毎朝散歩をさせるのも、彼の仕事の1つだ。
 彼は、探偵事務所などを開いているが、やっていることは元の仕事の便利屋に近い。頼まれることは何でもして、日々を凌いでいる。
 長身、色黒で強面の彼とチョビが一緒に散歩していると、いまだに誰も彼らのそばに近寄らないらしい。
「本当に可愛いですね」 
 チョビは飼い主と稲作の言うことしか聞かない暴れ者だったはずなのに、ジルには目を細めて撫でられている。
 ジルは、金髪碧眼の美青年。犬にも彼の美しさがわかるのだろうか。
「チョビ、大人しくなったね」
「もうオヤジだからな。人間だったら絹さんくらいの歳じゃねえか?」
「触っても大丈夫かなぁ」
「ガルルルルルーッ!」
 僕が頭を撫でようとしたら、触るな!!と牙を剥いた。
「チョビ、そんなことをしてはいけないよ」
 チョビはぴたりと唸るのを止め、ジルの隣にお座りをした。
「凄いね、言葉がわかるみたい」
「ジルは、動物と話せるんだ。あんたを噛み殺せと言えば、喜んで従うぜ」
 想像したくない冗談だ。チョビの瞳が、キラリと殺気を帯びたように見えた。
「その気弱さが、動物になめられるんだぜ」

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2005/04/18

クマタカの威力

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 猛禽類を見る探鳥会に参加しました。
 メインスターの‘クマタカ’は、歩き出してすぐと、帰り際に見ることが出来ました。猛禽類は他に、ハヤブサ・ノスリ・トビを見ることが出来ました。
 探鳥地は倉淵村。ダムに沈むはずだった旧道を歩きました。新しい道やトンネルが作られていますが、クマタカ生息していることがわかり、計画が凍結されているそうです。
 クマタカの威力は凄いのです。


「詳しいことはわからないけれど、中止して差し支えないのなら、そのほうがいい。後から戻すことは難しいからね」
「ところでどうだった?」
 稲作が何を聞きたいのか、直ぐに判った。
「フサザクラはほとんど終わり、キブシは花盛りだった。ツノハシバミの花を教えてもらったんだ」
 ツノハシバミは日本のヘーゼルナッツ。小さな赤い雌花と細長く垂れ下がった雄花が面白い。大勢で歩くと、植物にもくわしい人がいるから、いっそう楽しい。
「じゃ、まだだな」
 これからは、山菜の季節。木の花の咲き具合で山菜の芽吹きの様子もわかるのだろう。確かにタラノキもまだ芽吹いていなかったし、ワラビやコゴミも生えていなかった。


 写真は昨日、探鳥会の後に逢いに行った‘ゲンジスミレ’です。葉の裏が紫色だから、紫式部→源氏物語という連想で名前が付けられたのですって。本州と四国の4カ所に隔離分布しているので、なかなか逢えないところも平安貴族みたいですね。僕のもう一つのポイントは、高貴な香りです。小さな花なのに、とても良い香りがします。

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2005/04/17

樽のいちご

「どう?」
「甘い!」
「でしょ?」
 美味しそうにいちごを食べている女の子を見ているのはいい。
 昔、そんなコマーシャルがあったっけ。
「なに?」
「気に入った?」
「どれ食べてもみんな甘い」
 植物観察の帰りに、いちご園で摘みたてのいちごを買ってきたのだ。
 鮮度が良いいちごは、甘くてみずみずしく香りも良い。
「今度いちご狩りに行こうか?食べ放題だよ」
「食べ放題!?」
 妙ちゃんより先に反応したのは、もちろん稲作。
「――そうか、その日は朝飯抜いて気合い入れなきゃ」
 彼を連れて行くと、いちご園に気の毒かも知れない。


 昨日、北橘村で満開の桜と菜の花を見た後、赤城村棚下不動尊雄滝へ。裏見滝になっていますが、何年か前の台風で岩が崩落したらしく、落石注意の看板があちらこちらにあります。
 滝までの石段の途中にタチツボスミレ・ヒナスミレ・アカネスミレ・マルバスミレ・ミヤマキケマン・クサノオウ・ヤマブキが咲いていました。
 滝上の岩には剥がれて落ちた跡があり、滝の裏には恐くていけませんでした。
 帰り道、同じく赤城村樽のいちご園に寄りました。
 去年、いちごを買って帰ったら、とっても甘くて美味しかったのです。
 今年のいちごも美味しかったですよ。

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2005/04/16

にゃうぞう

 わかりやす過ぎますね。現れた順番に名前を付けています。
 3番目に現れた雄猫は‘にゃうぞう’。
 彼は、長毛種が強く出たミックスの黒猫。顔があんまりつぶれていません。飼われているのか迷ってきたのか、初めて来た時は首輪を付けていました。誰かに外してもらったのでしょうか、今は首輪を付けていません。
 容姿と人懐っこい性格のせいで、彼はご近所でも可愛がられているようです。


 ガリガリッ、ガリッ……。
 夜更け。
 外から戸を、引っ掻く音。
「いらっしゃい」
 ‘にゃうぞう’は、しばらく撫でられた後、少しだけミルクを飲んで帰っていく。


 毎晩やってくる彼は、今日の無事を知らせに来てくれているようなのです。
 ‘にゃうじろう’が来なくなった寂しさを、なぐさめてくれているのかも知れません。

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2005/04/15

にゃうじろう

「ねえ、どうしてイチゴのパック集めているの?」
 イチゴを取りだした後のパックを洗ってふせる。毎日積み重ねているうちにずいぶん溜まってしまった。
「これは、彼のお気に入りだったんだ」
「誰?」
 毎晩訪ねてきて、イチゴのパックに注いだミルクを飲むと、お気に入りのクッションで2時間ほど丸くなって眠って帰っていく。上あごの犬歯が2本とも途中で折れていて、熟睡すると折れた歯の間から、だらしなく舌が出てしまう老猫。
「にゃうじろう」
「あいつの弟?見たこと無い」
 妙ちゃんが‘あいつ’と呼ぶのは、彼女が引っかかれたことがある野良猫‘にゃうたろう’。模様がよく似ているし、後から現れたから‘にゃうじろう’と名付けたけれど、彼の方がお年寄りだった。
「来るのは夜だから。……それに、もう1ヶ月も来ていない」
「おじいちゃんだから、ここを忘れちゃったのかもよ?もっと居心地のいい場所を見つけたのかも知れないし」
「そう思うことにしているんだけどね」
 僕は、いまだに彼のためのイチゴのパックを集め続け、彼専用のクッションを片づけることが出来ずにいる。


 来なくなる2日前から、なぜか態度がよそよそしかったのです。
 彼なりのお別れの挨拶だったのでしょうか。
 僕はあの時、気付くことが出来ませんでした。

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2005/04/14

スミレの香り

スミレの香り
 あれから9日。そろそろ見頃になっているはずだ。
「絹さん、なんかソワソワしてるな?」
「そんなことないよ」
「そうか?――ジル、帰ろうか」
「はい」
「待って――」
 稲作に‘やっぱりな’という顔をされたが、声を掛けたかった。
「――ジルちゃん、この間のスミレ、そろそろ見頃だと思うんだけど」
 ジルは、困ったように稲作を見る。彼は、稲作の言いなりなのだ。
「俺も行く。またなんか美味そうなもんが生えてるかも知れねぇし」

 予想通り、古墳のヒゴスミレはちょうど見頃を迎えていた。白いすっきりした顔立ちの花と、綺麗に切れ込んだ葉を持つ美しいスミレだ。
 山の中腹、笹藪の中だから、しゃがんで香りを楽しんでも見咎める人はいないだろう。
 スミレは高貴な香りがする。中でもヒゴスミレ、エイザンスミレは香りに甘さがある。

 白い、小さなスミレに顔を近付けるジル。見ているとドキドキしてしまう。
「鼻の下が伸びてるぜ」
 今日は一緒にそばにいる稲作が耳元で囁いた。
「冗談は止めてよ」
 僕は慌てて弛んだ表情を引き締めた。真実を突かれて、なおドキドキ。
「どう?」
「良い香りですね」
「ほんと?」
「オヤジ、喜ぶな。――うん、確かに良い匂いだ。山にはいっぱい咲いてるけど、こんな事したことねえもんな」

 先週見つけた場所のニオイタチツボスミレはまだ咲いていなかった。
 去年広場で一面に咲いていたスミレの場所を確かめに行くと、まだつぼみも見つからなかった。その代わり、ところどころにニオイタチツボスミレが咲いていた。去年は気付かなかったのに。
 この後、二人はなんの抵抗もなくしゃがみ込み、ニオイタチツボスミレに顔を寄せ、匂いを嗅いでいた。
 広場には散歩をしている人が大勢いるのに。
「確かに、こちらの方が清々しい香りがしますね」


 季節が、去年より10日ほど遅れているようです。
 スミレには、ただの「スミレ」というスミレもあるのですよ。葉も茎もすらりとした、すみれ色の花のスミレです。後1週間もしたら、あの広場で逢えるでしょう。

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2005/04/13

花散らしの雨

 もう寒くなることはないだろうと思っていました。
 この寒さが3日前だったら、こんなに早く桜が散ってしまうことはなかったでしょうに……。


「いらっしゃいませ。また降り出してしまいましたね」
 雨に追われて、若い女性が入ってきた。
 他に客はいないが、彼女はカウンター席に座った。
「よかったらどうぞ」
 乾いたタオルを差し出す。
「ありがとう。ブレンドを下さい」
 タオルを受け取った彼女は、メニューを見ると一番上のブレンドを注文。
 落ち込んでいるように見えるのは、雨に震えているせいかもしれない。けれど……。

「ちわ~す」
 店内の空気を一変させる大きな声。
「ラッキーだぜ、持てねぇほど熱いんだ」
 彼女の隣に座った稲作は、持ってきた包みを開け、中の経木を広げた。
 湯気が立ったみたらし団子。
「食うか?ネエちゃんも」
「お待たせしました」
 僕らが同時にコーヒーとお団子を差し出したのが可笑しかったのか、彼女はクスクス笑いだした。泣き笑いのようにも見える。
「――ありがとう。やっぱり、花より団子よね」


 去年の今頃、雨の高尾山に登りました。
 今日のように寒い日で、山頂近くで飛び込んだ「十一丁目茶屋」で食べた焼きたてのお団子とコーヒーのセットの暖かさが忘れられません。

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2005/04/12

木いちご

 一昨年、木いちごの苗を買いました。洋種のラズベリーは香りが強いので、ラズベリーではなく日本の木いちごが欲しかったのです。木いちごと書かれた苗には品種が書かれていませんでしたが、葉の形からカジイチゴだろうと思い、手に入れたのでした。カジイチゴは、関東以西の太平洋側沿岸に生える木いちごです。群馬の山にあるモミジイチゴより、葉がつややかで大きく木が太くたくましい感じがします。
 一年目はなんの変化もなく、二年目は根本から太い木が生えてきました。三年目にしてたくさんの花が咲き、伸びた地下茎からたくさんの新芽が伸びてきました。木いちご林になってしまいそうです。実を味わえる日が、今から楽しみです。


「木いちごね。わしは木いちごよりドドメだな」
 沼田さんは、いつものようにウインナコーヒーを飲みながら言った。
「ドドメですか。そういえば、最近見ませんね」
「なに、なに、ドドメって?」
「そうか、妙ちゃんは知らないよね。桑の実のことだよ」
 昔の前橋は養蚕が盛んで、僕が子供の頃はまわり中に桑畑があった。桑の実は熟すると濃い紫色になり、甘くて美味しいのだ。
「食べてみたな」
「山に行くと、野生のヤマグワがあるから、実がなる頃に行ってみようね」

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2005/04/11

スミレに逢いに

P41000541
 春になり、やっと会えるスミレには逢うと書きたいのです。
 昨日、時々桜のお花見渋滞に巻き込まれながら、藤岡市の蛇喰(じゃばみ)渓谷、二千階段に行ってきました。
 蛇喰渓谷脇の遊歩道では、アオイスミレ、コスミレ、エイザンスミレに逢えました。
 写真はここで逢ったエイザンスミレです。葉が切れ込んでいるエイザンスミレは甘い香がします。
 二千階段に着く前、民家のすぐ脇にニリンソウやアズマイチゲが咲いていました。うらやましい自然環境ですね。階段は石製かと思っていたら、杉丸太を使った登山道のような急階段でした。今シーズンの良い(けれど、ちょっと辛い)足慣らしになりました。
 ヒィヒィ言いながら階段を登る途中、ヒナスミレに出逢いました。雛菫の名にふさわしくピンク色の可愛いスミレです。下りの階段では、オトメスミレ(タチツボスミレの白花品)、アカネスミレ、クサイチゴ、モミジイチゴの花に逢いました。登りと下りではコースが違うので、違った景色が楽しめました。


「稲さん、ちょっと教えて欲しいんだけど」
「なんだ?」
 ランチを食べ終わった稲作にニリンソウの若葉が入った袋を手渡す。
「これって、どうやって食べるの?せっかくいただいたから、美味しく食べる方法を君に聞こうと思って」
「これ、くれたやつ、もう食っちまったかなぁ」
「昨日だから、たぶんね」
「あんたも食うのか?」
「うん」
「そうか。じゃ、葬式の準備をしなきゃ」
「?」
「これと、これと、これと、これ……もっと混じっているかも知れねえ」
 彼が取り出した葉は、僕には他の葉と同じに見える。
「何?」
「トリカブトだ」
「!?」
「本当に、これもらったのか?」
「っていうか、摘んで良いって言うから一緒に自分で摘んだんだけれど」
「そっか、じゃ、大丈夫だな。……わかんねえもんは食わねえに限る」
 稲作は、袋ごとゴミ箱に捨てた。


 これからの季節、山菜やきのこの食中毒事故が新聞に出始めます。
 春、ニリンソウとトリカブトは葉が小さいうちは見分けがつきにくく、「これ、きっとトリカブトだよね」などと言いながら散策することがあります。
 わからない物は食べてはいけない。自戒の念を込めた一幕でした。

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2005/04/10

夜桜

 昨日昼間のお花見をした僕たちは、今日は夜桜見物へ。
 前橋公園。
 幸の池という名前の池があります。この冬の改修工事で池の形が変わりました。
 鶴が舞う形。群馬県の形に生まれ変わりました。
 「上毛かるた」というかるたのせいなのですが、群馬県の人はみんな群馬県は鶴が舞う形だと信じているのです。
 他県の方はどう思われますか?
 え?どんな形だか思い出せない?
 群馬県ってどこにあるのかって?
 そんなものです。

 桜の季節に間に合うように改修工事を済ませた前橋公園は、市民にとって夜桜の名所。ライトアップされ、夜店もたくさん出ています。


「凄いですね」
 昨日の敷島公園とは違う密度の高さがある。今夜は3人で歩いている。
「ジル、焼きまんじゅう食うか?」
 既に稲作は、両手に焼きまんじゅうを持って歩いている。
「いりません」
「絹さんは?」
「後でいいよ。……ジルちゃん、綿菓子食べる?」
 ジルには、綿菓子が似合うような気がしたのだ。
「いりません。夜でも、みんな食べてばかりなんですね。――私も食べたくなってきました」
 月明かりとライトアップのせいだろうか。金髪碧眼のジルは、いつもより生き生きと輝いて見える。すれ違う人たちは、皆彼を見て振り返る。
「珍しいね、君がお腹空いたなんて。なんでもおごってあげるよ」
「ラッキー!」
「君じゃなくて、ジルちゃんが食べたい物を食べに行くんだからね」
 
 焼肉店。
 ジルはレバ刺とユッケを、稲作はホルモン焼きを食べている。
 それにしても、稲作の食べっぷりはいつ見ても気持ちがいい。

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2005/04/09

オオハム

 大きなハムではありません。漢字では“大波武”と書きます。名前の通り海鳥で、海岸からフィールドスコープで見ると、遙か彼方、波と陽炎に揺られてなかなか良く見ることが出来ない鳥です。
 そのオオハムが、海無し県の群馬に現れたというのです。さっそく現地の池に行ってみると、いました。バードウォッチャー達が。鳥より先に見ている人を捜すのがバードウォッチングの常道です。側に行って話を聞いてみると目の前に、水中から現れました。
 大きい!
 その上、海では考えられない近さです。
 大きさは、全長72㎝。カモの中では大きい方のカルガモが60.5㎝ですから大きさの違いがわかりますね。
 その上、潜水時間が長いのです。
「おーい、大丈夫か?」って声を掛けたくなるくらい。
 幸運にも僕たちは、こんな内陸で、じっくりオオハムを見ることが出来ました。


 今日は、昨日の強風が嘘みたいに穏やか。
 花見の時期は天気が不安定で、冷たい雨の中だったり、風でお弁当に砂が掛かってジャリジャリしたりのことが多いが、5分咲きの桜といい、今日は絶好の花見日和だ。
 早朝から場所取り担当の稲作が、遠くで手招きしている。
「どう?ジルちゃん」
「美しいです。――でも、なぜこんなに大勢の人がいるのでしょう」
 3月に川津桜を見た河川敷から、道を隔てたところに大きな公園がある。約2,700本の松、約300本のソメイヨシノ。
 それそれがレジャーシートを敷いて、思い思いのお弁当を広げている。
「これが日本のお花見だよ」
「誰もお花を見ていません」
「前に言っただろうが。花見は桜の木の下にムシロを敷いて、弁当食って騒ぐんだって」
 レジャーシートの上で胡座をかいていた稲作が待ちかねたように言った。
「稲作、お待たせ」
 後ろを歩いていた妙ちゃん、沼田さん、お千代ちゃん、お梅ちゃんも合流してお花見開始だ。
 僕の担当は、唐揚げ、卵焼き、赤いウインナーで作ったタコさん(誰のリクエストだ?)、サンドイッチ。お梅ちゃん達は煮物、おいなりさん、色々な具が入ったおにぎり。
 のんびりした気分になるお花見だ。
 ひとしきり食べ、飲み、談笑をし……。
「あー、食った食った。最後の1個――」
 稲作が口に運ぼうとした時、おいなりさんに桜の花びらがはらはらと落ちてきた。彼はジルを見てにこりと笑うと、そのままパクリと食べる。
「花見ってのは、目で見て、鼻で香りを楽しんで、たまにはこうして舌で味わうのさ」

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2005/04/08

野菜苗の季節

 この季節、楽しみにしている広告があります。JAの野菜苗販売の広告。
 ハンドルが取られるような強風の中を出掛けました。
 いつものことですが、僕と同じくこの日を待っている人が多くて、大勢の人たちで賑わっていました。僕のお目当てはサラダを彩るプチトマト、ナスターチューム、パセリです。


「俺も行く」
「野菜の苗を買いに行くんだよ」
「ああ、わかってる」
 仕事が暇なのか、稲作も付いて来るという。
 道すがら。桜並木の桜は、5分咲きくらい。
「見た目はほとんど満開だな」
「この風、今日でよかったよ。週末だったら全部散っちゃう」
「花見は明日だな」
「そうだね」

 広い売り場には、台車を使って大量に苗や肥料を買う人たちでいっぱいだ。
 僕は1~2本ずつの苗を買うのに、良さそうな苗をじっくり選ぶ。
「絹さん、これも」
「これも」
 稲作は僕の買い物カゴに自分で選んだ苗を入れていく。ママのお買い物について来た小学生か?君は。
「これ、どうするの?」
「〔月の光〕の庭に植えるんだ」
 彼が選んだ苗は、フキ、クサソテツ、アシタバ。フキやクサソテツは田舎に帰ればいくらでもあるだろう。
「実家が恋しくなった?」
「採りたてはうめえからな」照れながら言う彼。
 本当に実家が恋しかったのかも知れない。 

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2005/04/07

若武者

 昨日、前橋もやっと桜の開花宣言が出されました。いよいよ前橋にも本格的な植物観察のシーズン到来です。
 野外行動をする時、お弁当と共に買う飲み物。数年前まで、味が薄いスポーツドリンクだったりウーロン茶だったりしましたが、今は緑茶のペットボトルのことが多いのです。
 販売する方も力を入れているようで、各社から新製品が続々と出ていますね。今度お茶を買う時は、オダギリジョーさんがCMに出演している緑茶「若武者」、飲んでみなくっちゃ。彼の「新撰組!」斉藤一は格好良かったですものね。
 お弁当にはお茶。
 子供の頃、ペットボトル飲料などなかった昔、鉄道旅行といえば駅弁とビニール臭い味のお茶。
 覚えていますか?
 あのお茶が、これから旅行に行くんだ!というワクワク感を盛り上げてくれていたような気がします。だから旅先ではお茶に手が伸びてしまうのでしょうか。


「絹さん、お茶!」
 ランチを食べ終えた稲作は、必ずお茶のお代わりをする。
「はい、はい」
「やっぱりさ、お茶は急須で入れたやつの方がうめえよな」
 そう言われてみるとペットボトルの緑茶は、普段飲んでいる煎茶とは別物と割り切って飲んでいるかも……。

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2005/04/06

草餅

「絹さん、昨日のヨモギは?」
「冷蔵庫に入れてあるよ」
 草餅を作ると言われたのはいいけれど、材料が何もなかった。昨日材料を揃えたが、小豆と砂糖は稲作が持っていってしまった。ヨモギ・上新粉・白玉粉・重曹はここで待機。
 稲作が先生を連れてきてくれるというのだ。
「いらっしゃいませ」
 入ってきたのは、お梅ちゃん、お千代ちゃん、沼田さん。妙ちゃんとジルも来ているから、いつものメンバー勢揃いだ。
「稲作、約束のものを作ってきたよ」
 お梅ちゃんが持ってきたのは、重箱一杯のつやつやと光ったあんこ。
「一晩水で浸して、朝から練り上げたんだよ」
「うまそうだのぅ」
「縁側に七輪出して、ゆっくり煮たからね。さて、はじめようか」
 たっぷりのお湯に重曹を入れて、茹でたヨモギは綺麗な緑色。
「暫く水にさらして置くんだよ。その間にお餅を作ろう」
 上新粉に熱湯を入れてよくこね、水でこねた白玉粉と砂糖少しを加えてこねる。
「これを一度蒸すんだ」
 小さく丸めた餅を蒸し器で蒸している間に、水にさらして置いたヨモギを細かく切り、すり鉢ですりつぶす。
「ずいぶん手間がかかるものなんですね」
「だからうめえのさ」
 蒸し上がったお餅にすりつぶしたヨモギをあわせてこね、丸く伸ばしたお餅の中にあんこを入れて半分にとじれば、それは美しい草餅。
 出来上がったお餅が、美味しかったことは言うまでもない。


 今日は昨日の続き、草餅作りでした。
 さっき、麦畑を散歩してきました。ヒバリがさえずり、麦の緑、オオイヌノフグリの青、ホトケノザのピンク、タネツケバナの白が美しい、絵に描いたような春が来ています。

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2005/04/05

ヨモギの香り

P40500431「ジルちゃん、お散歩に行かない?」
 困ったように稲作を見るジル。稲作はニヤニヤしている。
「俺も行く」
 ジルは笑顔になる。
「珍しいね。君が付いてくるなんて」
「あんたを見るのが面白いからな」

 〔月の光〕に準備中の札を下げた僕らは、ぶらぶらと町を歩く。
「ジルちゃん、これがアリアケスミレだよ」
 白地の花びらに紫色の筋が入る。生える場所や個体によって微妙に紫の入り方が違う。有明の空のように花の色が変化に富むからアリアケスミレという名前なのだ。
 近所のアパートの駐車場に毎年咲く。
「匂いを嗅がないのですか?」
「これは香らないんだよ」

 僕らは近くの古墳に付いた。結構大きな前方後方墳だ。
「山?」
「昔の人のお墓なんだよ。ずっと昔からあるから、植物も昔からの物が見られるんだ」
 去年ここで、エイザンスミレ・ヒゴスミレ・ニオイタチツボスミレを見つけて驚いたのだ。
「ジルちゃん、残念だけどまだ咲いていないみたい」
 葉とつぼみを見つけたけれど、咲くまでにはまだ1週間くらいかかりそうだ。
「ジル!こっちに来い!手伝え」
 一人、付いてこなくなっていた稲作が下の方で呼んでいる。

 稲作はしゃがみ込んで、一生懸命何かを摘んでいる。
「どうだ?良い匂いだろ」
「草の匂いがします」
 ジルは渡された草の匂いを嗅いで言った。
 稲作がいる日当たりが良い斜面には、一面に白く柔らかな芽生えたばかりのヨモギ。
「今日はよもぎ餅だな」
 稲作は嬉しそうに言った。 


 写真は、近所のアパートの駐車場に咲いているアリアケスミレです。

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2005/04/04

決定的瞬間

P40200021 上空を旋回していた彼は、獲物に狙いを定めると、身体を縮めて急降下。
 飛び散るお弁当のおかず。
 この決定的瞬間をしっかり目撃してしまいました。
 急浮上した彼は、僕らの頭上を通り過ぎる時、わしづかみにしたお弁当のおかずを、
「やったぜ!」
 と、言う顔をして口に運んでいました。
 彼が狙ったおかずは、鶏の唐揚げか卵焼きか?
 彼の名前は「トビ」です。
 いくらカラスにいじめられるとはいえ、トビはカラスよりずっと体が大きい猛禽類です。襲われた2人の女性は、しばらくの間茫然自失。……後、何事もなかったように残りのお弁当を食べ、散らかされたおかずを拾い集めていました。
 場所は神奈川県の観音崎。
 ニュースでそういうトビがいるのを見たことがありましたが、目の前で見るのは初めてでした。 


「それはおかしいぜ」
「何が?」
「俺がトンビだったら、そんなリスクは犯さない。絹さんだって近くで弁当食ってたんだろ?」
「そうだけど」
「だったら狙うのはあんただ」
 稲作はランチを食べながら、僕に向かってわしづかみをする真似をした。
 トビというより、イヌワシみたい……。


 一昨日、昨日と、高尾山・三浦海岸を巡ってきました。
 写真は高尾山で出会った「ハナネコノメソウ」です。早春、清流の側に咲く小さな花。白い花びらに赤いおしべが可愛いのです。
 「行動記」は数日中にHPに載せられると思います。

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2005/04/02

埋もれるキジバト

 えさ台で食事を終えたキジバトは、地面に降りてお休みタイム。落ち葉を自分のまわりに集めて、ふくら雀みたいに体を膨らませて座り込み、気持ちよさそうです。アルプスの少女ハイジの干し草のベッドみたい。


「でもね、心配なんだよ」
「あいつだね」
 妙ちゃんは、毎日ミルクを飲みに来るノラネコ「にゃうたろう」に引っかかれたことをまだ忘れられないらしい。
「そうなんだ。時々狙っていることがあるんだ。キジバトって動きが鈍いから」
「鈍くさい所が、他人とは思えないってか?」と、稲作。
「悪かったね」


 〔月の光〕だよりは、ですます調の僕の日常と、常連のお客様が登場する会話文が主の文の、二重構成になっています。
 お店の風景はフィクションですが、野鳥や野草を見たり、お菓子を作ったりしている僕の行動は、筆者が実際にしていることなのです。
 街角で、妖しくしゃがんでスミレの匂いを嗅いでいる人がいたら、それは僕かも知れません。

 お知らせ―明日、喫茶店〔月の光〕は臨時休業させていただきます―

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2005/04/01

今日は何の日

「ハックション!!」
 急なくしゃみで手元が狂った。
 リンゴをむいていて、自分の指まで切ってしまった。深く切ったのか、血が止まらない。
「大丈夫ですか?」
「いらっしゃいませ、ジルちゃん。ちょっと待っていてね」
「絹さん、ちょっと――」
 カウンターの向こう側から、ジルが僕の手を取り、指を口に含んだ。
 ひんやりとした彼の唇。身体の力が抜けていく……。
「ごちそうさまでした」
「なに?」
「今まで黙っていましたが、私は吸血鬼」
 僕を見詰める彼の瞳が青く輝く。
「?」
「ジル、何やってるんだ!」
 入ってきて、僕らを見た稲作が大声を上げた。
「オヤジ!!指を切ったくらいで、貧血おこしてんじゃねえ!」
「え?」

「ジル、頼むよ。……いくら誰かにそそのかされたからって、だましていい奴とまずい奴がいることくらいわかるだろ」
 稲作は、僕の指を手当てしながら言った。
「すみません」
「今日は何月何日だ?絹さん」
「4月1日。……エイプリル・フール……だね」
 ジルがあまりに真顔で言うものだから、信じてしまうところだった。


 せっかっくだから、今日はエイプリル・フールネタでした。
 鈍い僕は、二人の秘密を永久に知ることはないでしょう。

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