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2005/02/28

想像力の欠如

P22700431 今年も会いに行きました。花好きの人たちは毎年、この花の開花の便りを待ちに待っています。一番早く咲く花、『節分草』です。
 この花は石灰質の土地を好むため、限られた場所にしか咲きません。
 いつもの自生地に行ってみると、団体の先客が来ていました。中高年、初老(というと僕も入ってしまいます。トリビアの泉で言われたのはショック!でもいいか、結構カッコイイ人たちも初老仲間でしたから)、定年退職後の趣味といった人たちが、高価な機材を手に写真を撮っていました。
 でも、ちょっと待って!
 あなたが撮しているモデルさんは素敵だけど、あなたの足下、腹這いになっているその下にも、モデルとしては不向きな子もまだ顔を出していない子もいることを忘れないで。

 排気ガスをまき散らしながら花に会いに行き、道を踏み歩く僕にも罪がないとは言いません。ただ、自然を愛する仲間として、最低限のルールは守っていただきたいのです。どんなに綺麗なモデルさんがいたとしても、遊歩道以外には足を踏み入れない、撮影は諦めて愛でるだけにするという簡単なことだけは。

「で、そのじいさま共に注意したのか?」
「出来なかった」
「それが、あんたの一番の罪だな」
 稲作の意見は正しい。
「わかっている。でも、どうしても声を掛けられなかった。気分を害されるだろうということは目に見えているし……」
 今シーズンの始まりは、小さな勇気が出せなかった。
 他に出会った花たちの写真は、http://homepage3.nifty.com/mikehachi/index.htmでどうぞ。

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2005/02/27

美味しく食べる

「私は、罪深いのです」
「何だ?宗教か?」
「これまで、ずっと人を傷つけて生きてきました」
 稲作には、ジルが何のことを言っているのか解っているようだ。
「傷つけるだけだったら、いいじゃねえか。傷は、いつか癒えるんだから。……俺たちは、命を奪わなければ生きていけねぇんだ」
「さあ、温かいコーヒーをどうぞ」
「ありがとう。あ、そうそう、お千代ちゃんがお嫁さんにもらったけど食いきんないからって、くれたんだ。食うか?」
 稲作が出したのは「フライドチキン」の箱。
 骨を持ってガツガツ食らい付いている姿は、原始人風。でも、とても美味しそうだ。
「俺に出来ることはさ、美味いと思って食ってやることだけだからな」

 スーパーに行くと、彼らが生きていたことを忘れてしまうほどに、綺麗に加工された食肉が並んでいます。
 僕は、家畜を屠って食肉にすることはないでしょう。命を奪うという辛い部分を全て他人任せにしてしまっているということを、時には考えなければいけないのです。

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2005/02/26

共同浴場

 今日は天気がいいからでしょうか、鳥たちは代わり番こに水浴びをしています。
 えさ台のすぐ側に、浅く水を溜めた水場を作ってあるのです。軽石製のそれの本来の使用目的は、盆栽の鉢なのだと思います。半日ほどすると水が抜けて溜まりっ放しになることがないところが気に入っています。
スズメは2,3羽で可愛く、ムクドリは1羽で豪快に水を飛ばしながら浴びています。水浴びをしたかと思ったら、飲んだり、時には糞を落としたり……。

「何か、クソもミソも一緒だな」
 稲作は、水場を見ながら、カレーライスにソースをかけて食べている。

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2005/02/25

エサ台のジャイアンはムクドリ

 大きさが同じくらいの鳥でも性格の強さが違います。
 ムクドリ>ヒヨドリ>ツグミ。
 この三種はリンゴが好物です。食べ物が競合するので、順番待ち状態になります。
 一番小柄に見えるムクドリが一番強いのです。彼らが来ると、他の鳥たちは逃げてしまいます。
 ムクドリの目を盗んでヒヨドリがやってきます。
 ツグミは、ドウダンツツジの枝に留まって、羽を広げて伸びをしたり、パタパタさせたりしながら、ひたすらえさ台が空くのを待っています。親が餌をくれるのを待ちきれないヒナ鳥みたいです。
 食べ方は、ヒヨドリが一番美味しそうに食べるみたい。時々上を向いて、「美味い、美味い」と言っているようです。

 稲作が、カウンター席に座って卵掛けご飯を掻き込んでいる。
 時々上を向きながら食べる姿は、ヒヨドリ?
「面白いね、君」
「だって、美味いんだもん」
 やっぱりヒヨドリ。

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2005/02/24

やさしさにさようなら

「ねえ、どんな曲?どんな曲?」
 妙ちゃんの追求は治まらない。
「オフコースをよく聞いた」
「オフコース?」
 僕は、CDをかけた。
 妙ちゃんは、チョコレートパフェを食べながら、CDに耳を傾けている。いつもより、ちょっとお行儀がいいみたい。
「ふーん、これで彼女はイチコロって訳ね。今度私もドライブに連れて行ってね」
 イチコロだったら、独りで喫茶店などしていない。

 僕が好きな曲は『ワインの匂い』『いくつもの星の下で』『やさしさにさようなら』など、負のイメージのある曲なのです。
――誰か他の人のために生きるの。私は傷付いて息も出来ないほど。

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2005/02/23

ユーミン

 リスナー世代のくせに、きちんと聞いたことがありませんでした。大ヒット曲は、その時代その時代で耳にしていたから、新鮮だけれど懐かしい曲たち。
 今、ユーミンがマイブームです。
『ソーダ水の中を貨物船が通る』
 詩が、キラキラしていて素敵です。

「ユーミン?」
「うん、たまには昔を懐かしむのもいいね」
「彼女と、車で聞いたりしたの?」
「ユーミンは、ない」
「へーえ、他の曲はあるんだ。どんな曲?どんな曲?」
 妙ちゃんは、僕の若かった頃に興味津々。
 誰にだって若い時があるんだよ、妙ちゃん。

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2005/02/22

シフォンケーキ

 シフォンケーキを作りました。
 お菓子作りのレシピ本は、言いたいことのニュアンスを読みとるのが難しいのです。
 卵黄と砂糖を白っぽくもったりするまで泡立てる。
 卵白と砂糖を角が立つまで泡立てる。
 たいがいの本にはこんな風に書いてあります。
 これ、わかりますか?
 TVの情報番組で紹介した作り方が、メモ書きしてありました。
 卵黄と砂糖はあまり白くなるまで泡立て過ぎない。
卵白と砂糖は角が少し寝る程度に泡立てる。
 本と全然違います。何かテキトーな感じ?
 今日はメモ書きを信じて作ってみました。
 出来は上々。今まで作った中で一番よく膨らみました。

「何だ?それ」
「シフォンケーキ」
 シフォンケーキ型は、真ん中に煙突のような空洞が空いている。焼けたケーキを逆さまにして、煙突の部分をジャムのビンに乗せて冷ましていたのだ。変な格好だが、そうしないとせっかく膨らんだデリケートなケーキは沈んでしまう。
「くれ」
「もう冷めたかな」
 型から外し切り分けて、ホイップクリームとメイプルシロップを添えてみた。
「どう?」
 試食してくれるのは、稲作、妙ちゃんとジル。
「甘い」
「美味しい!」
 稲作と妙ちゃんの味覚は、あまり当てにならない。本人達も自覚しているらしい。
 みんなの視線がジルに……。
「美味しいです」
 綺麗な人にそう言ってもらえるのは嬉しい。が、一番当てにならないのは彼だということを僕と妙ちゃんは知らないのだ。
「やったー!絹さん、ジルがそう言うならOKだよ。本場から来たんだから」

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2005/02/21

シザーハンズ

 シザーハンズ。
 また、ちょっと古い映画のお話をしましょう。ジョニー・ディップさんの出世作です。
 主人公のエドワードは、両手が巨大なハサミで出来た人造人間ですが、ホラーではありません。
 小高い丘の上の屋敷で老博士と二人きりで暮らしていたエドワードは、ハサミの手を人の手と同じ物に付け替えてもらう前に博士に死なれてしまい、その姿のまま一人、下界に降りていきます。
 汚れを知らないエドワードは、得意のハサミ技(庭木の剪定、奥様方やペットのヘアカット)で町の人気者になります。
 純粋無垢過ぎる彼は、世間との折り合いが付かなくなり、再び小高い丘の上の屋敷に戻って永遠の時間を過ごします……。
 映像の美しい幻想的なファンタジーです。

「限りある命なら、それも人生だけどな。永遠に独りは寂しいだろうな」
 カウンターに座る稲作は、呟いた。
 隣に座るジルは、少し彼に寄り添ったように見えた。
「心配するな。お前にそんな思いはさせねえから」
 叶わないとわかっていても、嬉しい言葉は、あると思う。

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2005/02/20

スタンド・バイ・ミー

 スタンド・バイ・ミー。
ヒル繋がりで思い出しました。
 何でって?
 映画の中で少年達が沼地を歩き、そこでヒルに刺されるシーンがあるのです。
 誰もが身に覚えがある、少年時代の小さな冒険物語。
 早世してしまったリバー・フェニックス君の寂しげな演技が素敵な、悪役好みの僕が好きな、キーファー・サザーランドさんが敵役として出演している映画でした。
 リバー・フェニックス君がもし生きていたら、どんな演技を見せてくれる俳優になっていたでしょう。キーファー・サザーランドさんは去年「24」という本当に24時間を掛けて進行する、大ヒットドラマに出演されていましたね。
 この映画の最大の魅力は主題歌です。ベン・E・キングさんの名曲です。

――darling,darling stand by me stand by me
「珍しいな。CDかけているなんて」
「たまにはね」
「darling,darling stand by me……素敵な歌詞ですね」
 ジルは、稲作を見詰めて言っている。
 最初に歌った時、darlingという歌詞は恋人だっただろう。
 映画の中では友達を指している。

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2005/02/19

吸血鬼

 私たちは暫しの眠りから覚めた。
 人の匂い。
 頭を持ち上げ、匂いのする方に向かう。
「エモノダ」
「獲物だ」
「えものだ」

「うわーっ!」
「何!?どうしたの?」
「首に、首に!」
 彼はパニックを起こしながら、襟のボタンを外している。
「見て、見て、何かが首にくっついた!」
 彼の首には、木の枝から落ちてきた黒っぽくぐにょぐにょしたモノが付いている。
「脅かさないでよ。ヒルじゃない」
「早く取ってくれ!」
 ヒルに刺されても痛みも痒みもないけれど、引っ張って取ると出血が止まらない厄介者だ。
「ちょっと待ってね」
 煙草の火を付けて脅すとか、塩を掛けるとか、自ら吸い付くのを止めてもらう方法が一番いいのだ。
 この時、ヒルたちが彼らの靴を這い上がり、すねの周りで食事にありついていることに気付かなかった。
 辺り一面で、ヒルたちが彼らの方に向かって頭をもたげていることに気付かなかった。

 夏山の風景。
 まだ遭遇したことがないが、最近増えているらしいのだ。
 鹿が、ヒルの繁殖地を広げているとか。
「見てみたいんだよね。自分が刺されるのは嫌だけど」
「悪趣味だな。俺は、田んぼのヒルなら見たことがあるぜ。黄色い線が入った、緑色のヤツ」
 山育ちの稲作も見たことがないなら仕方ないか。
 群馬の山は、寒いせいかあまりヒルがいないのだ。だから山に入る機会は多いのに、僕はまだ見たことがない。

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2005/02/18

バードケーキ

 バードケーキを作りました。
 小麦粉5:ラード2:砂糖1をよく混ぜてこね、お団子型に丸めて、冷蔵庫で冷やします。松ぼっくりにくっつけて、木の枝に吊してもいいのです。
 動物系の餌を好む小鳥たちには、人気のメニューです。

「稲さん、それバードケーキだからね」
「鶏肉入ってるのか?」
 食べないで、という前に、もう口に放り込んでいる。
「美味しい?」
「微妙だな。何か、生っぽい」
「そう、生なんだ。これから鳥のえさ台に置くの」
「食っちまったぜ」
「小麦粉生だけど、君なら大丈夫だよ、きっと。焼けば沖縄名物ちんすこう?なんて」
 ちんすこうの原材料にはラードが使われている。

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2005/02/17

トシちゃん25歳!

 「ポーの一族」と共に、当時読んでいた漫画が何冊か出てきました。
 読み返してみると、子供の頃は恋愛物を読んでいたのだと言う事が解ります。
 一条ゆかりさん、田渕由美子さんなどです。懐かしい。小学生でも、こういうものを読んでいたのですね。あの頃の気持ちは何処へ行ったのでしょう。

「これ、日本人か?凄い名前だな。……しかし、オヤジのくせに少女漫画とはねぇ」
 今度は稲作がページを捲って見ている。
「マカロニほうれん荘や進めパイレーツもあるよ。いいじゃないか、たまには昔を懐かしんだって」
 今、ちょうど僕らの世代がお父さんお母さん。女の子に『子』を付けるのが流行らなくなったのは、漫画の影響もあるのかしら。
 彼の名前はその反動だったりする。広木稲作。居ないだろうなぁ、稲作なんて名前の子。
〔2005.2.17〕

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2005/02/16

漢たちの春

 彼が店に来るようになって、3度目の春が来ました。
 初めて来た時、彼はまだ少年だったのだろうと思います。
 じっと外から店内を覗いているのです。あまりにハンサムだったので、ご近所の飼い猫に違いないと、彼を呼び寄せ、ミルクをあげました。模様はイリオモテヤマネコ模様+お腹と手足が白い、一番よく見かける模様です。
 頭を撫でようとすると、
「ハーッ!!」
 威嚇の声を上げます。
 怖がっているだけと思っているうちに3年の月日が過ぎてしまいました。
 毎年この時期、オス猫たちは恋のバトルに命を賭けます。
 秋にパンパンに太った体は、げっそり痩せ、体中傷だらけ。彼だけでなく、彼の喧嘩仲間たちもみんな同じです。
 去年の彼は、首から上の毛が全部抜けてハゲタカ状態。死んでしまうのではないかと思いました。
 今年の彼は、のど元、胸、左足を噛まれて毛が抜けてしまっています。びっこを引きながら、哀れそうにやって来ました。

「絹さん、猫が来てるよ」
「ミルク、あげてくれる?そこに彼の食器があるでしょう」
 今日は、妙ちゃんとジルが来ている。
 昨日ジルが持ってきてくれたプレーンのチョコレートで、ケーキを作ってみようということになったのだ。湯煎の手が離せなかったので、妙ちゃんに彼のミルクを頼んだ。
「にゃう~!何だ!こいつ!」
 妙ちゃんの叫び声。
 ジルが様子を見に行ってくれた。
「妙ちゃん、どうしました?」
「撫でようと思ったら、引っ掻いたんだ、こいつ」
「血が、出ていますよ」
 ジルは、妙ちゃんの傷つけられた指を口に含んだ。
 妙ちゃんは、ポーッとしている。
「ありがとう、ジル」
「いいえ。絹さんに傷絆創膏をいただきましょう」
「言っておかなくてごめんね、妙ちゃん。彼は野良猫だから、僕も触らせてもらったことが無いんだよ」
 ジルが、小さな声で‘ご馳走様でした’と呟いた声は、僕と妙ちゃんには聞こえなかった。

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2005/02/15

一夜明けて

 一夜明けて。

「ジルちゃん、いらっしゃい」
 彼は、大きな段ボール箱を抱えてきた。
「これを、どうぞ」
「すごい。全部君がもらったの?」
 箱の中身は、綺麗なチョコレートの包みの数々。
「はい。稲作に、持っていくように言われました。まだ、もう一箱あります」
「君、もてるんだねぇ」
 彼の容姿なら当然だろうが、こうして見せられるとため息しか出ない。
「稲作が、くれる物はもらうようにと言いました。駅から店までの道でいただいたポケットティッシュを上げると喜ぶのに、これはいらないと言われました」
 甘い物が苦手な稲作は、自分の分で手一杯なのだろう。
「これも、駅から店までの道でいただきました。お花やさんや知らない女の子達です。お店でみんなやお客様にいただいた物もあります」
 彼は歩いているだけで、目立ってしまうのだ。
「でも、稲作は私にくれません。あなたも……」
 え?
「バレンタインデーってどういう日か知っている?」
 本来の意味は別として。
「日本では、女性が好きな男性にチョコレートを渡す日と聞きました。……でも、マダムもお姉さん達もお客さんもくれました。男なのに」
 ジルが勤めるお店は特殊環境だ。一番判りやすく言うとオカマバーなのだ。
 今は、自分のために買う人、ジカジュ(自家需要)とか、友チョコ(女友達同士で渡し会う)とかが流行っていると聞くから、僕だってよくわからない。
「ワオッ!!……ジル!もしかして、これ、くれるの?凄い凄い、高級チョコばっかりだ!」
 やって来た妙ちゃんは大喜び。彼女が一番嬉しそうです。

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2005/02/14

バレンタインの風景

 今日は、バレンタインデー。

「いらっしゃませ、昌子さん」
 美少女だった彼女は、大人になって美しい人になった。
「絹さん、これ」
 センスのいいラッピングがしてあるそれは、もちろんチョコレート。
 義理でも、おじさんは嬉しい。
「それから、これ、あいつに渡しといて」
 甘い物が苦手な稲作への包みはビンの形をしている。
「自分で渡さないの?」
「ああ、まだ駄目だ」
「わかった。預かります」
 彼女は、直ぐに帰ってしまった。早く、自分で渡せる日が来ればいいと思う。

「ちわーす。絹さん、これ、マダムからだ」
 稲作がジルと一緒にやって来た。大きな紙袋を持っている。
「昨日、私が預かってきました」
 と、ジル。彼は、マダム麗華の店で働いている。
 麗華からの義理チョコは、ゴディバのトリュフ。高いんだろうなぁ。
「僕も預かっているよ。お千代ちゃん、お梅ちゃん、昌子さん」
 稲作のファンのおばあちゃん達、お千代ちゃんのチョコは、ハート形。お梅ちゃんのは、柿の種形?
 昌子さんのは、
「わぁ、酒だ。飲もうぜ。……つまみは、これでいいかな」
 包みはブランディーだった。稲作は、お梅ちゃんのチョコを開けている。
「これ、ホントに柿の種にチョコが掛かってる。ピリ辛で甘いや」
「おいしい?」
「微妙だな。ちょっと癖になるかも」
「君、甘い物苦手なんじゃなかったっけ?」
「苦手だぜ。でも助かるんだよ、これ。腹が減っている時のカロリー補給になる。金がない時、昼飯になる」
「何か、遭難でもしているみたいだね」
 さっきから、店内を甘く焦げ臭い匂いが漂っている。
「みんな、お待たせ!」
 エプロンをチョコだらけにした妙が持ってきたそれは、フルーツにチョコを掛けた物だった。言葉で表現すると‘グッチョリ’している。
「食べてみて」
 もちろん、みんなが「おいしい」と言わされたのは言うまでもない。

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2005/02/13

おじさんライダー!

 おじさんライダーと言っても、10人くらいでハーレーダビットソンに乗ってツーリングをしている人たちのことではありません。
 思い出したのが、今朝8時ちょっと前。
「日曜日の朝と夜の8時をよろしく」
 と、俳優の細川茂樹さんが何かの番組で、言っていたのを思い出したのです。
 夜の8時は、大河ドラマで、平氏の中にいました。
 朝の8時は、仮面ライダーを演じているというのです。
 仮面ライダーは、これまでは若手の出世作、というイメージでした。それが何故、30を過ぎた中堅俳優さんが演じることになったのでしょう。
 見てしまいました。
 僕の時代は、1号、2号、V3です。
 凄く久しぶりに見たライダーは、大人が見ても恥ずかしくならない構成とCGでした。
 ちょっとミュージカル風?登場する中学生にも、しっかり「おじさん」と呼ばれていました。
 途中で流れるCMは、昔と変わらず変身グッズや学習ノート。
 見終わって、思いました。
 細川さんって、ちょっと似ているのです。
 V3、青レンジャー、怪傑ズバットを演じた、宮内洋さんに。
 テレを無くして、所作を決めると、もっと格好良くなれるでしょう。

「何、ニヤニヤしてるんだ?」
「稲さん、ちょっと子供の頃を思い出してね。君の頃は、何ライダーだったの?」
「俺はあんまり見てなかった。‘それ以上乱暴になると困るから見るな’って、親父から禁止令が出てたんだ。……友達と遊ぶ時、俺の役は決まっていたからな」
 言わなくても、何の役だったかわかる。

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2005/02/12

ポーの一族?

 ようこそいらっしゃいました。
 こちらは、何処かにあるかも知れない喫茶店〔月の光〕のマスター(僕)とお客様の日常です。
 掛け合い漫才だと思って、ご覧下さい。

 実家に行って、昔読んだ漫画の単行本を探しました。
 今回のお話では、かなりの影響を受けているはずの、萩尾望都さんの「ポーの一族」です。
 当時、妖しい気分に浸りながら読みましたっけ。
 今読み返してみても、その魔力は健在です。

「あなたに映る私は、この主人公エドガーに似ているのですね」
 ジルは古びた漫画をパラパラと捲りながら言った。
「いらっしゃい、ジルちゃん。今日は一人?」
「はい。……主人公エドガー、お友達アラン、一族ポー」
「そうだね。ネーミングは小説家の、エドガー・アラン・ポーから来ているんだね。江戸川乱歩と同じだね」
 初めてポーの作品に出会ったのは、小学生の時。
 子供用の雑誌にカラーの挿絵入りで掲載されていた。
 ラストシーン。壁に塗り込めた妻の死体の頭の上で、黒猫が赤い口を開けて鳴いている絵だった。
「読んだ後、恐くてトイレに行けなくなっちゃったんだよ」
 その小説が、エドガー・アラン・ポーの作品『黒猫』だったと認識したのは、それから随分経ってから、『モルグ街の殺人』『黄金虫』を読んだ時だった。
「私は『赤死病の仮面』が好きです」
 何か、ジルちゃん、見た目とキャラが違うんだよね。

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季節到来

P307004412 いよいよ花の便りが届きました。
 早春の花「節分草」が咲き始めたようです。
 節分草は風変わり。石灰質の土地を好みます。セメントの採掘場がある様な土地に咲くのです。お近くにそういう環境がある方は、是非、会いに行ってみてください。
 花のシーズンが始まってしまったのに、2004年度の整理が出来ていません。やらなくっちゃ。

「絹さん、いいのか?」
「なに?」
「鍋、沸騰しているぜ」
「わっ、わっ、どうしよう。僕のカスピちゃん!」
 カスピ海ヨーグルトを湯煎していたのだ。
 気温が低いから、ちょっと温めてあげようと思ったのに……。
「殺菌しちゃった」
「ご愁傷様」
「可哀想な事をしてしまったけれど、保険が掛けてあるんだ」
「保険?」
「それも、2重にね」
 冷蔵庫に種菌が保管してある。種として使うのなら、1ヶ月は大丈夫。
 冷凍庫にも種菌が保管してある。こちらは、1年は大丈夫。
「食べる?」
「いらねえ」
 稲作は、見かけに寄らず新しい物に弱いのだ。
〔2005.2.11〕

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カスピ海ヨーグルト

 かれこれ3年の付き合いになります。
『カスピ海ヨーグルト』
 流行った理由はわかります。普通のプレーンヨーグルトより管理がテキトーで良いからでしょう。
 以前は、プレーンヨーグルトを作っていました。
 容器や混ぜるスプーンなどを煮沸殺菌して、牛乳は75度まで温めます。それを40度まで下げて、種のヨーグルトを入れ、40度を保たなければなりません。
 カスピ海ヨーグルトは、容器や混ぜるスプーンなどの煮沸殺菌はした方がいいですが、夏場だったら種を入れて固まるまで室温で放っておけばいいのです。冬は暖かい部屋に。
 続けているのには訳もあります。
 『カスピ海ヨーグルト』は花粉症に効くらしい。と言う噂。
 そういえば去年は余り症状が出なかったような気がします(飛散量が少なかったというだけかも知れませんが)。
 信じる者は救われる。
 溺れる者は藁をも掴む。の、心境なのです。
 ああ、花粉の飛散量30倍。

「僕の可愛い、カスピちゃん」
 ヨーグルトを仕込んで混ぜていると、背後から気配が。
「いよいよ、おかしくなったようだな」
「いらっしゃい、稲さん。……見ていたの?」
「見たぜ」
「やっぱり、生き物だから、可愛がった方がいいかなって思って」
「何、それ?」
「ヨーグルトだよ」
「くれ」
「これはまだ食べられないんだよ。作って置いたのをあげるから」
 僕は彼に食べさせてみた。コケモモのジャムを添えて。
 カスピ海ヨーグルトは、店のメニューにはないのだ。
「うわ!何だこりゃ!!」
 思った通りのリアクション。
「――あんたが粘っこい愛情を注ぐから、糸引いてるじゃねえか、これ!」
 それが、このヨーグルトの特徴。糸は引かないけれどね。
〔2005.2.10〕

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雨の日に

 昨日の昼頃は、雨が降ったり止んだり。
 街で唯一となってしまったデパートに行きました。
 そこには紅茶の専門店があります。眺めていると、「どうぞ、お試し下さい」と、フレーバーティーをいただきました。チョコレートとベリーの香りの紅茶でした。
 変わった物もいいけれど、今日はオーソドックスなフレーバーティーにしようと、アールグレイを買う事に決めました。決めたのには理由があります。
『本日のお買い得品。詰め放題で50㌘分の価格』とあったからです。
 入れ方によっては100㌘入りますと書いてありました。欲も働きましたが、自分で詰めて良いという所に心惹かれました。
 めいっぱい詰めたと思った所で、店のお姉さんに渡すと、底の部分を平にして、とんとんとん。上が三分の一ほど空きました。
「もう少し入りますよ」と、お姉さん。
 また、詰めて渡すと、やっぱり上が空きます。
「私が詰めても良いですか?」と、彼女が詰めてくれました。なるほど上までぴっしりと詰められています。
「今日は、雨ですから、雨の日のサービスも入れておきますね」
 と、2回分のフレーバーティーのパックもいただきました。
 雨の日も悪くない。

「ふーん、お姉さんは美人だったのか」
「そうだよ、悪いかい。稲さんも、飲む?」
「何だ?こりゃ?これ、紅茶か?猫じゃらしみてぇな味がするぜ」
 ベルガモットの香料は、初めての人にはキツイかも知れない。
 猫じゃらしの味って、どんな味だろう?
〔2005.2.9〕

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パンの耳

「クワッ、クワッ」
 明け方から、聞き慣れない声がしています。
 〔月の光〕のえさ台には、ニューフェイスの鳥。『ツグミ』です。
 そっと見に行ってみると、彼のお目当ては、林檎でした。
 林檎を突きながら「クワッ、クワッ」と、鳴いています。
 昔『ツグミ』と言う題名だけで吉本ばななさんの小説を読んだ事がありましたっけ。
 小説の『ツグミ』は、変わった女の子の名前でした。
 えさ台にはいろいろな種類の鳥たちが来ます。
 オナガ・キジバト・ヒヨドリ・ムクドリ・ツグミ・スズメ・シジュウカラ・メジロ。
 好物はそれぞれ違いますが、どの種類も好んで食べるのは、パンです。
 パンを細かく千切るのが、この季節の僕の日課です。

「相変わらず、貧乏くさい事やっているな」
「いいじゃないか、趣味なんだから」
 稲作は、手伝ってやると言ってパンの耳を何本か手に持った。
 パンの耳は、サンドイッチを作るとどうしても出来てしまう副産物。以前は揚げて砂糖を掛けておやつにしたりしていたが、今は僕の店に来てくれる癒し系のお客様へのサービス品に落ち着いている。
「これ、結構美味いな。辛子バターがちょっと付いていたりして」
 彼は、細長いパンの耳を口にくわえながら言った。
 うーん、これは卑しい系のお客様へのサービス品にもなるのかしら。
 彼のためにコーヒーを淹れる、午前11時。
〔2005.2.8〕

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〔月の光〕の日常

P521001911思いがけない所に、スノードロップの花が咲いていました。
 今のところに越してきた時に、玄関先に植えたのですが、そこにはまだ芽も出ていません。
 花が咲いたのは全く別の場所。
 むしった草の中に球根が紛れて、何かの拍子に根付いたのでしょうか。
 咲いているのを見つけなければ、存在を忘れてしまうような小さな花です。
 ちょっと春を見つけたような気持ちになりました。

「何メルヘンチックな事言ってるんだ?オヤジのくせに」
「あっ、いらっしゃい、稲さん、ジルちゃん。……酷いな、オヤジはメルヘンしちゃいけないのかい?」
「人によるな。鏡を見てからにしろ」
「悪かったね」
「いつものヤツをくれ。……ところで、あそこにいるのは、新しい色か?」
「ちょっと、やめてよ」
 稲作が、顎でしゃくった先には、ノートパソコンを開いて真剣に打ち込んでいる高校生がいる。
「常連のS君だ」
 〔月の光〕には珍しい、存在がわかっているお客様だ。
「ふーん。お前Sなのか」
 稲作は、噛み付きそうな顔をしてS君を見た。
 確かに、何か書こうという人はS寄りなのだと思う。肉体的にしても、精神的にしても、登場人物を悩ませなければならないのだから。
「名前だよ。……頼むから、脅さないでくれ」
「そうだよ、稲作。可哀想に、怯えているじゃないか。……ごめんね、君」
 ジルは、S君の手を取ると、手首にキスをした。
「止めろ、ジル」
『大丈夫、いただいていませんよ』

 これは〔月の光〕の日常?
〔2005.2.7〕

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